情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、波束の収縮問題、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

ニューラルネットにおける情報と物質の相互作用 心身問題への間接的回答

2019-05-24 09:38:18 | 情報と物質の科学哲学
人工知能に必須なニューラルネットは、ニューロン素子、結合素子、素子同士を結ぶ線などから構成されます。
その構成は、単純なものから深層学習のような超複雑なものまで様々です。

特に深層学習ネットにおいては、ネット内部を膨大な情報が行き来しています。
それらの情報の流れは同時並列的なものであり、ある意味ではどの部分も同じような形態をしています。
このようは特徴は、脳神経回路で顕著に見られます。

一つのニューロン素子(ニューロンに対応)は、複数の結合素子(シナプスに対応)を介して他の複数のニューロン素子と結ばれています。
各結合素子の値は情報の流れにより刻々と更新されていき、それが学習効果のもとになります。

このようにニューラルネットにおいては情報と結合素子という物質という異質なもの同士が相互に影響しているのです。

逆に言うと、ニューラルネットは情報と物質という異質なもの同士が相互に影響するように作られているのです。

このような状況を参考にすると、脳という物質と心という非物質とが情報を介して相互に影響している考えられます。
その結果、脳という物質がクオリアや意識という非物質を生み出していると推測されます。

脳が何故そのような機能を持つのかを物理的に証明することは決して出来ません。
その理由は、ブログ「情報概念を用いた物理還元主義破綻の証明」にあります。

高等動物の脳がこのような不思議な機能を持つに至った理由は、生物進化の妙にあるとしか言えません。

心は、脳神経回路により生み出されたものであることは疑いようもありません。
前述のニューラルネットにおける物質と情報という異質の存在が相互に影響している事実を踏まえれば、心身問題に対する間接的な回答は得られていることになります。

心身問題は、という異質なもの同士が何故影響しあえるのかを問うものです。
この問題の決着は未だについていません。
心身問題の致命的欠陥は、脳神経回路における情報の存在を無視していることにあります。

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ニューラルネットによる「心身問題は擬似問題である」ことの証明

2019-05-23 09:22:11 | 情報と物質の科学哲学
私たちは脳という物質の働きによる非物質的な心のもとで行動を制御しているように見えます。
このとき、
という物質がなぜという非物質を作り出せるのか、
物質と非物質という異質のもの同士がなぜ影響しあえるのか
という問題が生じます。
これがハードプロブレムと呼ばれる心身問題です。

心身問題に関して長年にわたり哲学、心理学、脳科学などで盛んに議論されてきましたが、未だに回答が得られていません。

一方、脳神経回路網を数理モデル化したニューラルネットが急速に進化しています。
深層学習を利用したAlphaGo(アルファ碁)や感情理解ロボットPepperがその例です。

このニューラルネットは、複雑な回路網で実現されています。
網同士は、シナプスに相当する結合素子で相互に結合されています。

結合素子の値は、ネットへの入力情報と出力情報との関係で随時更新されていきます。
入力情報および出力情報は、ロボットの行動により多種多様に変化します。
言い換えると、入力情報および出力情報の変化が結合素子という物質に影響しているのです。

このようにニューラルネットには、情報と物質という異質なもの同士の相互作用
実現する仕組みが組み込まれているのです。

以上が、ニューラルネットは「人心問題は擬似問題である」ということの証明です。

心身問題では、脳という物質と心という非物質とを直接関連させていることにも問題があります。
何故なら、そこでは脳回路網に縦横に流れている情報の部分を無視しているからです。
この情報こそが脳と心を仲介しているものであり、無視できるものではありません。

心身問題には意識という概念が登場しますが、この意識の科学的定義もありません。
議論している当事者同士が思い描く意識の定義がばらばらなのです。
心身問題を解決できない理由がここにもあるのです。
言い換えると、心身問題には科学的解決は不可能なのです。

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時間論の諸パラダイム

2019-05-16 06:26:44 | 情報と物質の科学哲学
時間論に関しては多種多様な議論が膨大にあり、そのすべてを知ることは
できません。
そこで、時間論に関する諸パラダイムをコンパクトにまとめた雑誌
『時間論の諸パラダイム』、別冊数理科学、サイエンス社(2004)、絶版
があるので、その目次を紹介します:

序論
 戸田盛和  時間とは ラプラスのデモン・マクスウェルのデモン
 金子務   科学と歴史における「時間の矢」の意義
 村上陽一郎 時間論と科学哲学
 
Ⅱ 物理的時間論
 阿部龍蔵  時間反転と不可逆性
 長谷川洋  物理現象における可逆と非可逆 確率過程による表現
 T. Petrosky   時間の対称性の破れと古典および量子力学の拡張
         タイムマシンは作れるか?
 江口徹   時間のアトム
 
Ⅲ 量子的時間論
 原康夫   波動関数と時間
 池上健   原子時計と原子周波数標準器
 松枝秀明  量子コンピュータにおける可逆・非可逆と同時性
 高野義郎  素粒子と時間空間
 
Ⅳ 宇宙的時間論
 佐藤勝彦  宇宙における時間 タイムマシンと宇宙の創生
 池内了   宇宙の構造と時間
 二間瀬敏史 時間の矢
 福島登志夫 天文現象と時間測定

Ⅴ 生物的時間論
 本川達雄  生物の時間
 本間研一  生物時計と時間感覚
 宮崎智 志村純子 菅原英明 生命現象における可逆と非可逆
 田沼靖一  生命の寿命とプログラム細胞死

Ⅵ 社会的時間論
 石川栄助  マヤの暦 管見
 塩沢由典  経済現象における可逆と非可逆
 白井利明  心理学と時間 なぜ人生の時間は速く過ぎるのか
 
Ⅶ 時間の哲学
 養老孟司  時間と自己同一性
 小嶋泉   自然の歴史と時間
 竹内泉   時間の論理
 茂木健一郎 時間の謎と意識のミステリー
 
時間論の多様性こそブログ「情報=時間」説を裏付けるものと確信しています!

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禁断の開かずの間を覗く「弱い測定」の功罪

2019-05-12 19:38:11 | 情報と物質の科学哲学
アハラノフ・ボーム効果の予言者として知られるアハラノフは、弱い測定という概念を提案しました。
この弱い測定に関する記事がいくつかあります:
アハラノフ、”宇宙の未来が決める現在”、『実在とは何か?』、別冊日経サイエンスNo.86、pp.48-52(2012.8)
井元信之、横田一広、”量子の開かずの間をのぞき見る”、同上、pp.53-59
細谷暁夫、”「光子の裁判」再び”、日経サイエンス、pp.34-43(2014-01)

量子現象の測定の場合、測定器が基本粒子をランダムに攪乱します。
そのため、測定前の粒子の状態を知ることは不可能とされます。

これに対して、アハラノフは「弱い測定」の概念を提案しました:
粒子への測定器の作用を極力弱くした測定を多数回行います。
そして、同じ初期状態と最終状態の組み合わせの実験結果のデータを平均します。
その平均値を「弱い測定値」と呼びます。
この弱い値は、測定前の量子状態の重ね合わせの情報を与えるというのです。

量子力学は、測定前の量子状態に関しては何も言えないとしています。
弱測定理論による予測はすべて量子力学に基づいたものですが、実験結果に対する解釈を巡って様々な批判があります。

井元らは、絡み合う2光子実験から”確率マイナス1”の結果を得たと言います。
しかし、負の確率という概念は数学的にあり得ません。

アハラノフも「負の確率」という表現には反対しています。

細谷は、二重スリットの一方に僅か偏光するガラスを置いたときの弱い測定の思考実験を考えました。
これによれば検出した光子が偏光板付のスリットを通った確率が分かるそうです。
そのときの弱い測定値を量子力学で計算すると負になりました。
この値を負の確率と解釈している。

細谷は、負の数があるのだから負の確率があってもいいと言います。
何ともよく分からない論法です。

二重スリット実験で1個の光子が片方のスリットだけを通るという考えは量子力学で否定されていっます。
その場合には干渉縞は出来ないからです。

細谷による奇妙な干渉縞は、通常の干渉縞とはかなり違います。
しかし、その奇妙な干渉縞は1個の光子が偏光板付のスリットと通常のスリットを
「同時に通過する」ことで生じるものなのです。
負の確率という表現で関心を惹きたいのだろうが、読者に不信感を与えるだけです。

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量子現象の確率は何の属性か?

2019-05-12 16:57:25 | 情報と物質の科学哲学
古典物理学は、現在の状態から過去未来の状態を決定するニュートンの運動方程式に基づいています。

気体や液体などを構成する個々の分子の状態もこの法則で表される。<BR>
しかし、1c.c.あたり10の19乗個オーダーという膨大な数の分子集団の振る舞いを扱う場合、個々の分子の状態をすべて正確に記述することは不可能です。

そこで、熱統計力学では止むなく統計的手法を用いますが、それでも多くの法則が成り立つのです。
しかし、古典物理学では確率が本質的役割を果たすことはありません。
古典物理学で確率が使われる理由は、人間の知識不足によるものです。

一方、量子力学は量子現象にはもともと確率的性格があるとします。
アインシュタインは、ボルンへの手紙の中で「神はサイコロを振らない」という有名な言葉でこの主張に反対しました。

アインシュタインは、放射性元素の崩壊や原子における電子の遷移は偶然に起きると考えました。
これは、人間の知識不足による止むを得ないものでした。
この考えが隠れた変数の理論という概念につながるのです。

ところで、量子現象のような奇妙な現象に対して従来の確率概念を適用できるのでしょうか?
この疑問に対して次のような見方を提案します:
量子現象に関する確率は量子だけの属性ではなく、「量子」「現象を起こす装置(スリット、偏光板)」「検出器」からなるシステム全体の属性である。
量子現象の確率は、これらの協調によって初めて定義できるからです。

確率を計算する際にはデータの分類が必要です。
分類の仕方は、観測者が決めるものです。
ここに主観的な影響が生じます。

従って、量子現象に関する確率は絶対的、客観的な量ではありません。

量子現象に特有な確率を扱う「量子確率論」があります:
(1)二重スリット実験で片方のスリットのみを開けたときの結果を合わせたものと
(2)二つのスリットを同時に開けた結果とが一致しない
「干渉効果」を確率論として説明するために考案されたものです。
(大矢雅則ほか編 『数理情報科学事典』、pp.1059-1063、朝倉書店(1997))

量子確率論における確率は、対象とする現象の属性である点では通常の確率論と同じです。

量子がジグザク運動していると仮定し、それを確率過程で表すことによってシュレーディンガー方程式と等価な方程式を導く研究もあります:
長澤正雄 『シュレーディンガーのジレンマと夢 -確率過程と波動力学-』、
森北出版(2003))

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