情報と物質の科学哲学 情報と物質の関係から見える世界像

情報と物質の関係を分析し、心身問題、クオリア、時間の謎に迫ります。情報と物質の科学哲学を提唱。

情報と物質の相互依存的二元論

2019-05-04 09:08:31 | 情報と物質の科学哲学
測定器や認識器を一般化した情報化器を内蔵するシステムには情報が実在します。
同時に、システムを構成している物質も実在します。
このシステムには情報と物質という異質なものが共に実在しています。
 
情報化器が定義/創発した情報によってシステムを制御する場合、情報が物質に影響します。
情報と物質という異質なものが実在して相互に作用しています。
このような状況下では
(1)情報と物質とは独立的な存在ではなく、
だからと言って
(2)一方を他方に還元できるのでもありません。
この二元論を相互依存的二元論と名付けます。
 
対象の見方は、観測者の立場によって様々です。
それぞれの見方によって対象についての理論や説明形態も変わります。
 
未知の対象を説明したいとします。
先ず決めるべきことは、
(1)対象を物理的手段によって測定するか
(2)主観で観察するかです。
 
次に、
(1)対象のどの物質的部分(モノ)を
(2)どのように(コト)測定/観察するかです。
(モノ:物質的な存在を指す。コト:非物質な存在を指す。哲学用語。)
 
未知の対象のどこをどのように測定/観測するのかは理論的には決まりません。
測定者ないし観察者が決めることです。
 
これには極めて重要な意味があります。
それによって対象の見方/説明の仕方/理論などが決まるからです。
 
(1)モノとして見る場合(物理的な見方):
ミクロからマクロまで無限に多くの物質的部分があります。どの部分に注目して、どのような測定器を使って測定するのか。
 
(2)コトとして見る場合(非物理的な見方):
対象に情報的属性/機能的属性/心的属性のどれを与えるのか。
 
物理的/非物理的な見方のいずれも、測定器あるいは感覚器が不可欠です。
これらに依存しない見方や説明は有り得ません。
 
測定器ついてはそれを道具として使うので存在を忘れることはありません。
物理学ではどのような測定器を使うのかは理論構築にとって本質的役割を果たします。
 
測定器をどのように設計するのかも自明ではなく、研究者が考え出すものです。
実験結果が理論を構築するのではなく、理論が実験方法を決めるのです。
 
感覚器はヒトが生まれたときから備わっているので、その存在を忘れがちです。
感覚器は、動物の種によって様々です。
色の感覚は、種によってかなり違います。
目の配置によっても見え方が違います。
 
蝙蝠は、超音波によって外界を認識します。
 
(1)対象を測定器で測定した結果を利用して理論を構築する場合
(2)対象を感覚器で観察した結果を利用して理論を構築する場合
のいずれも理論を構築するのはヒトの脳です。
 
対象の見方や説明を構築するためには
(1)先ず測定器や感覚器が不可欠であり
(2)それらの結果を利用して理論を作る脳の働きも不可欠です。
 
同一の対象に対して、モノとしての見方とコトとしての見方の双方が有り得ます。
どちらが正しい見方(説明)かという問いは無意味です。
 
脳やコンピュータ内部の事象に対しては、
(1)モノとしての見方(物理的説明)と
(2)コトとしての見方(心理的/情報処理的/機能的説明)
の両方が同時に可能です。
一方を他方に還元することはできません。
 
モノとしての見方とコトとしての見方とが相互に関係している場合もあります。
 
中村量空
 『シュレーディンガーの思索と生涯-波動のパラダイムを求めて-』、
 工作舎(1993)の156頁
に興味深い話があります:
アインシュタインからシュレーディンガーへの手紙の中に
「あなたは、私がほんとうに相談をしようと思うただ一人の人だ。
ほかの友人はいずれも、現実から理論を見るのではなく、理論から現実を見ているのだ。」
という文章があるそうです。
 
アインシュタインが客観的実在(=現実)を信じていたことが分かります。
この見方は、古典物理学のものと同じです。
 
現実を見るためには脳の影響を避けることはできません。
(1)脳の働きは自然界を認識する脳の機能によるものであり
(2)その機能には哲学/宗教観/人生観などが影響することを考慮すると、
アインシュタインが「現実から理論を見る」ときでも脳の影響を避けることは不可能です。
 
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超名訳 リーダーズ・ダイジェスト版 サミュエル・ウルマン 「青春の詩」

2019-05-03 20:03:30 | 情報と物質の科学哲学

サミュエル・ウルマン「八十歳の歳月の高みにて」より )

若さとは人生のある時期のことではなく、心のあり方のことだ。

若くあるためには、強い意志力と、優れた構成力と、激しい情熱が必要であり、
小心さを圧倒する勇気と、易きにつこうとする心を叱咤する冒険への希求が
なければならない。

人は歳月を重ねたから老いるのではない。理想を失うときに老いるのである。
歳月は皮膚に皺を刻むが、情熱の消滅は魂に皺を刻む。

心配、疑い、自己不信、恐れ、絶望、これらのものこそ、成長しようとする
精神の息の根を止めてしまう元凶である。

七十歳になろうと十六歳であろうと、人間の心の中には、驚異に対する憧憬や、
星や星のようにきらめく事象や思想に対する驚きや、不屈の闘志や、
来るべきものに対する子供のような好奇心や、人生の喜びおよび勝負を求める
気持ちが存在するはずなのだ。

人はその信念に比例して若くあり、疑いに比例して老いる。
自信や希望に比例して若くあり、恐れや絶望に比例して老いる。

大地や人間や神から、美しさ、喜び、勇気、崇高さ、力などを
感じることができるかぎり、その人は若いのだ。

すべての夢を失い、心の芯が悲観という雪、皮肉という氷に
覆われるとき、その人は真に老いるのだ。
そのような人は、神の哀れみを乞うしかない。

ウルマン「青春の詩」の訳にはいろいろあります。
上記のものは大昔の雑誌リーダーズ・ダイジェストにあったものです。
この訳は、リズム感があり分かりやすく説得力もあるので一番気に入ってます。


物質の情報化と情報の物質化

2019-05-03 17:06:19 | 情報と物質の科学哲学

測定器は、入力する物理量を測定値情報として出力します。
これを物質の情報化と名付けます。

3Dプリンターは、入力された設計図情報に基づいて加工品を作ります。
これを情報の物質化と名付けます。

生物は、遺伝情報に基づいて生命を誕生させます。
これもある意味で情報の物質化と言えます。

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情報と物質の相互作用

2019-05-03 10:27:42 | 情報と物質の科学哲学

情報は、抽象的な存在で非客観的な存在です。
物質は、
具象的な存在で客観的な存在です。
情報と物質は、本質的に異質なものです。

この異質な情報と物質とが相互作用できる簡単な機械の例を紹介します。

この機械は、光センサーと光の強さの測定器から構成されます。

光センサーは、光の強さが閾値を超えると強さに応じてパルス列を出力します。

測定器は、そのパルス列を基にして光の強さの測定値情報を出力します。
測定器には光の強度という物理量を測定値情報に変換する機能があります。

これが光センサーと測定器という物質による測定値情報への作用になります。

次に、この測定機に測定値情報を用いて光センサーの閾値を変える仕組みを付加します。(マイコン制御で実現されています)
この仕組みが測定値情報による光センサーという物質への作用になります。

以上が、異質な存在である情報と物質とが相互作用できる簡単な機械の例です。

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情報的属性と物質的属性

2019-05-02 15:47:08 | 情報と物質の科学哲学
宝石は、分子/原子から構成され、質量などの物理量が備わっています。
物質的属性物理量は、測定器によって確認できる客観的存在です。
 
一方、宝石には名称/色/形などの情報的属性/心的属性も備わっています。
情報的属性や心的属性はコンピュータや脳などのシステムに依存します。
これをシステム依存的存在と名付けます。
情報的属性と心的属性は、非客観的存在です。
 
光子の偏光の値は、光子の物質的属性ではなく情報的属性として理解すべきものです。
何故なら、偏光の値は光子と測定器の相互作用によって作られる情報だからです。
 
「情報的属性は物質固有のものではない」ことには別の意味もあります。
この属性は、観察者を含む観測システムによって物質に付与されることです。
これを情報のシステム依存性と言います。
 
情報的属性の付与は、観察者(観測システム)の都合で決まります。
情報概念や情報的属性が極めて扱いにくい最大の理由はここにあるのです。
 
「脳神経回路に流れる神経パルスがどんな情報を表現しているのか」
は物理的手法のみでは決して分かりません。
観察者の脳による解釈が不可欠です。
脳科学者はこの事実に気付いていないか、これが問題になるとは考えていません。
 
深層学習などの脳神経回路の数理モデルは、
(1)神経パルスが数を表現していると仮定することで
(2)神経回路に学習機能があることを数学的に証明しています。
 
更に、数理モデルの効果は知能ロボットなどで実証されています。
知能ロボットがヒトと同レベルの認知機能をもつということは、
神経パルスが数情報を担っていることを裏付けています。
 
脳現象を説明する方法として、
物理学的説明/生理学的説明/心理学的説明/数理モデル的説明
などがあります。
これらの説明は互いに関連しますが、互いに還元不可能です。
 
物理還元主義を信奉する脳科学者や物理学者は、
「脳や心に関するすべての現象」
は物理則のみで説明できると頑迷に主張します。
しかし、先の議論からこれらの主張は間違いです。
 
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