空の道を散歩

私の「仏道をならふ」の記

情報公開

2011-03-15 19:20:16 | 日記・エッセイ・コラム

 昨日、福島原発事故についての原子力資料情報室の記者会見を知ったのは、作家の高橋源一郎さんのTwitterだ。原子力資料情報室という、反原発の、しかも民間の団体の情報をRTしたことに対する批判があったそうだ。それに対して、高橋源一郎さんらしい反論が載っていて、さすがと思った。

 RTとは、Retweetの略で、他のユーザーのTweetを自分のアカウントで再投稿することだそうだ。ちなみに、私がTwitterを見るようになったのは、ダライ・ラマ法王のTwitterが最初。

 批判した人は、原子力資料情報室がどういう組織か知らないのだろうか。

 民間とはいっても、組織を立ち上げた高木仁三郎さんは、原子力の専門家で、人間としても、科学者としても、信頼、尊敬に値する人である。

 高木仁三郎さんという人間に共感して、多くの優れた科学者や市民が参加し、脱原子力の世界を目指して、調査研究活動を続けている。

 何より、市民の目線、分かりやすい言葉で、情報を発信していることは、とても大切なことだと思う。

 原子力については、一般人は知識に乏しいし、専門用語が飛び出すと、それだけでギブアップである。

 原発の構造や運転システム、安全性について、一般市民や、自治体が、理解に必要な情報を十分に提供されているとは思えない。

 今回の事故についての記者会見で、東電や保安院の情報に基づいてだと思うが、枝野官房長官が、また保安院や東電の社員が直接説明していたが、それを聞いて、理解し、納得できた人がどれだけいただろうか。 

 奥歯に物が挟まったような説明に終始したのは、単刀直入に発言したら、後々の原発政策や、電力政策、経済界、政界に影響が及ぶからだと思う。

 洗いざらい情報を公開したら、隠ぺいしていた過去の不都合な事柄が明るみに出る恐れもある。

 それでも、首相が、東電本社にに乗り込んで、政府・東電合同の対策会議を開いたのは、あまりにも情報が入ってこないことに、危機感を抱いたからだろう。

 首相は、いい加減な原子力安全保安院(経済産業省に属しているんだから、国民の安全より、経済界の利益を優先していると思う)や東電の説明を聞くよりは、原子力資料情報室の説明を聞く方が、よっぽど国民の安全に役立つと思う。

 空母で救援に駆けつけた米軍兵士の被曝が明らかになると、米軍はヘリでの救援活動を中止したそうだ。

 自衛隊員は、安全だという東電の説明を信じて、原発の注水作業に従事し、被曝した。自衛隊の幹部は、十分な情報がなかったことに対して、怒っているらしい。

 福島原発の地元自治体の首長が、「安全だと言われたから、原発を受け入れたのに、だまされた」と言っていた。彼らは、受け入れる前に、東電や政府とは利害関係のない専門家を呼んで勉強し、理解に十分な情報を東電に要求したことがあったのだろうか。

 原発事故がのっぴきならない事態だということが分かってから、記者会見では、記者が、枝野官房長官や、保安院のスタッフや、東電の社員に、声を荒げて質問していたが、彼らだって、はじめは、政府、東電の説明を、そのまま垂れ流していたのだ。

 大新聞やテレビ局など組織に属する記者は、記者クラブに入っていて、通常は、自分は特別の取材をしなくても、官公庁が発表する情報をそのまま垂れ流すことに慣れている。

 日頃は、お役所が親切にまとめてくれた資料を継ぎはぎするだけで記事を書いているのだ。

 そんな記者が、正義の味方面して、大声で、枝野さんや、保安院や東電の社員を追及する姿は、茶番である。

 だから、原子力資料情報室のような、政府、企業から独立した調査研究機関が必要なのだ。

 心あるジャーナリストは、お役所がまとめたリポートより、自分の頭、足を使って、本当の情報を拾い集める。

 そのために、日頃から、幅広い人脈を作っていて、誰に会い、誰に話を聞けばいいか、情報源をたくさん持っている。

 幅広い取材をしていれば、誰の視線で情報を集め、どんな言葉で情報を発信するか、おのずと分かってくるはずだ。