京都国立近代美術館で開催中の「青木繁展」を見た。
没後100年を記念して、関西では初めて開かれる回顧展だそうである。
「わだつみのいろこの宮」や「海の幸」などは美術の教科書に載っていたりして有名なので知っていたが、画業全体を見渡す展覧会で、これだけの作品を見るのは初めて。
28歳で逝った画家だから、作品数は多くはなかったけれども、青木繁という人が天才的な画家だったということがよくわかった。
「海の幸」はさすがにすばらしい。後で描き直したといわれる群像の中の福田たねの表情が、思った以上に見る者に迫ってくる。
海を描いた他の作品や、人物画(恋人・福田たね、たねとの間に生まれた長男・幸彦=のちの福田蘭堂の肖像画はとくによかった)、神話や聖書、歴史にインスピレーションを得て描かれた作品群にも心をひかれた。絶筆となった「朝日」はモネの「印象 日の出」よりよほどいい。
技術もさることながら、絵に対する情熱、人間のとらえ方、文学的センス、神話・歴史に対する関心と想像力の豊かさが伝わってきて、28歳という若さで失意のうちに亡くなったということが残念でならない。
明治という時代に、これほどの画家がいたということに改めて驚かされた。
生前は世に知られず、亡くなった翌年、友人の坂本繁二郎、梅野満雄らによって遺作展が開かれ、さらに翌年、画集が刊行されたことで、人々の絶賛を浴びたことも、初めて知った。
もし、彼らの行動がなかったなら、青木繁の作品は世に知られることなく散逸していたかもしれないのだ。
友人たちが苦労して遺作展を開かずにはおられなかったほど、青木繁という画家はすごい存在だったのだろう。