ハワイを分岐点に東側は米国の縄張り、西側は中国の縄張りとして米中が互いに尊重する。習国家主席はオバマ大統領にそういう提案をして一蹴された。
米中の縄張り談合が最終的に成立しなかったからこそ、3年半も拒否していた日中韓首脳会談にいまになって応じるハメになった。だからといって、縄張り思考を捨てたわけではない。
「南シナ海は古来から中国のものだ」という主張が証拠である。太平洋分割がうまくいかなかったから、より中国に近い南シナ海に舞台を移したにすぎない。そもそも「自分たちの縄張りとして尊重せよ」という思考自体が「他国と相互依存にある」という認識と相容れない。「自分たちの繁栄のためには相手の繁栄が不可欠だ」という認識が欠如しているのである。目的は自分たちの繁栄だけだ。「他国は他国の縄張りで勝手にやってくれ。オレの縄張りには触らせないよ」というヤクザの思考とまったく同じなのである。
縄張り思考は本質的に敵対思考である。自分の縄張りに入ってきたら、相手を蹴散らすと考えている。南シナ海で起きている事態は、まさに敵対思考そのものだ。米国のイージス駆逐艦が人工島周辺に進入してくると「必要なあらゆる措置をとる」と威嚇した。実際には、何もできなかったが…。
中東のテロリストたちがここ数年で一段と過激化した背景には、中国とロシアの無法がある。ロシアがクリミアに侵攻し、中国が勝手に「南シナ海も尖閣諸島もオレのもの」と言っているなら、「イラクとシリアの砂漠はオレの国」と言って何が悪いのか。テロリストはそう考えているに違いない。
中国とロシアの無法がテロリストに伝染し、無法と残虐行為を一層、加速させている。言ってみれば、いま中学校の学級崩壊が世界レベルで起きている。そんな事態である。
放置すれば、どうなるか。無法は一段と過激化し、世界の縄張り分割が進むに違いない。それで平和は実現しない。本質的な敵対関係が残るからだ。
敵対思考は過激派組織「イスラム国」(IS)に対する反撃でも、一段と鮮明になっている。典型がフランスとロシアによる共同作戦の合意だ。フランスはクリミアに侵攻したロシアに対して制裁を課している。にもかかわらず、対イスラム国でロシアと共闘するのは、双方が「敵の敵は味方」とみたからだ。
航空機を爆破されたロシアにとっても、テロ事件を起こされたフランスにとっても、敵はイスラム国で共通している。つまり両国を動かしたのは敵対思考であり、けっして双方が相互依存関係にあると認識したからではない。ということは、もしもイスラム国が滅びれば、両国は再び敵対する可能性もある。
こうした敵対思考は今後、ますます強くなっていくだろう。
敵対思考に傾斜した相手に対して、いま相互依存思考で語りかけるのは間違っているだけでなく、効果もなく危険である。思考の原理そのものがまったく異なるからだ。
敵対思考は基本的に相手を「敵か友人か」で判断する。これに対して、相互依存思考は基本的に相手を友人として扱う。
経済原理を重視するエコノミストは相互依存思考で世界を理解しようとする。相互依存を深めれば、自然に平和も達成できると考えて相手を相互依存原理で説得しようとする。「話せば分かる」という議論である。
だが、いま私たちが向き合っているテロリストや中国は初めから「話して分かる」相手ではない。いつかは話して分かる可能性もあるかもしれないが、まずは話しても分からない相手という認識に立って、戦略を組み立てなければならない。相手は自分たちを敵とみているのだ。
中国に比べれば、日本にとってはロシアのほうがまだましかもしれない。
ロシアはソ連崩壊を経験し、G8のメンバー国になった経験もある。しかも、いま経済は中国以上に停滞し、とりわけ日本の経済協力は是が非でも手に入れたい。だから、ロシアとは相互依存関係に基づいた取引が成立する可能性が残っている。
だが、中国はいまだ南シナ海支配の妄想にとりつかれ、経済もようやく崩壊劇が始まったばかりである。米国と覇権を競って負けたロシアに比べれば一周遅れ、いや二周も三周も遅れているのだ。
いま、中東のテロリストたちは相互依存関係の構築など、まったく頭の片隅にもないだろう。彼らはどんな暴力に訴えても、自分たちの縄張り構築が最優先と思っている。
私たちが相互依存原理を捨て去る必要はまったくないし、いつか日本が中東の繁栄に一肌脱ぐ日もくるだろう。だが、いまテロリストたちに「話せば分かる」式で対応しても仕方がない。
「武力の応酬で問題は解決しない」という主張は一見、美しく響くだけで、どうすべきか、何も政策を語っていない。日本は日本自身の存立が脅かされない限り武力行使をしないが、テロリストとの戦いでフランスと連帯すべきである。
フランスは国境の監視強化どころか、非常事態宣言を発して令状なしの家宅捜索、逮捕に踏み切った。この後、テロ防止対策に法改正や憲法改正にも乗り出す方針という。人権宣言をしたフランスでさえも、テロと戦争の時代には人権の制限もやむを得ない、という現実的判断に立っている。
日本が対応しなければならないのは、そんなテロリストと中国、それから北朝鮮なのだ。テロリストも中国も北朝鮮も相互依存思考ではなく、敵対思考にとらわれている点で共通している。そういう原理の文脈においてこそ、テロはけっして他人事ではない。
残念ながら、世界は「平和と繁栄の時代」から「テロと戦争の時代」に完全にモードチェンジした。いまは、その意味をかみしめる必要がある。
☆
今の野党のノーテンキなお花畑感覚はどうにもならない...沖縄のサンゴ保護、自然破壊阻止バカか。
米中の縄張り談合が最終的に成立しなかったからこそ、3年半も拒否していた日中韓首脳会談にいまになって応じるハメになった。だからといって、縄張り思考を捨てたわけではない。
「南シナ海は古来から中国のものだ」という主張が証拠である。太平洋分割がうまくいかなかったから、より中国に近い南シナ海に舞台を移したにすぎない。そもそも「自分たちの縄張りとして尊重せよ」という思考自体が「他国と相互依存にある」という認識と相容れない。「自分たちの繁栄のためには相手の繁栄が不可欠だ」という認識が欠如しているのである。目的は自分たちの繁栄だけだ。「他国は他国の縄張りで勝手にやってくれ。オレの縄張りには触らせないよ」というヤクザの思考とまったく同じなのである。
縄張り思考は本質的に敵対思考である。自分の縄張りに入ってきたら、相手を蹴散らすと考えている。南シナ海で起きている事態は、まさに敵対思考そのものだ。米国のイージス駆逐艦が人工島周辺に進入してくると「必要なあらゆる措置をとる」と威嚇した。実際には、何もできなかったが…。
中東のテロリストたちがここ数年で一段と過激化した背景には、中国とロシアの無法がある。ロシアがクリミアに侵攻し、中国が勝手に「南シナ海も尖閣諸島もオレのもの」と言っているなら、「イラクとシリアの砂漠はオレの国」と言って何が悪いのか。テロリストはそう考えているに違いない。
中国とロシアの無法がテロリストに伝染し、無法と残虐行為を一層、加速させている。言ってみれば、いま中学校の学級崩壊が世界レベルで起きている。そんな事態である。
放置すれば、どうなるか。無法は一段と過激化し、世界の縄張り分割が進むに違いない。それで平和は実現しない。本質的な敵対関係が残るからだ。
敵対思考は過激派組織「イスラム国」(IS)に対する反撃でも、一段と鮮明になっている。典型がフランスとロシアによる共同作戦の合意だ。フランスはクリミアに侵攻したロシアに対して制裁を課している。にもかかわらず、対イスラム国でロシアと共闘するのは、双方が「敵の敵は味方」とみたからだ。
航空機を爆破されたロシアにとっても、テロ事件を起こされたフランスにとっても、敵はイスラム国で共通している。つまり両国を動かしたのは敵対思考であり、けっして双方が相互依存関係にあると認識したからではない。ということは、もしもイスラム国が滅びれば、両国は再び敵対する可能性もある。
こうした敵対思考は今後、ますます強くなっていくだろう。
敵対思考に傾斜した相手に対して、いま相互依存思考で語りかけるのは間違っているだけでなく、効果もなく危険である。思考の原理そのものがまったく異なるからだ。
敵対思考は基本的に相手を「敵か友人か」で判断する。これに対して、相互依存思考は基本的に相手を友人として扱う。
経済原理を重視するエコノミストは相互依存思考で世界を理解しようとする。相互依存を深めれば、自然に平和も達成できると考えて相手を相互依存原理で説得しようとする。「話せば分かる」という議論である。
だが、いま私たちが向き合っているテロリストや中国は初めから「話して分かる」相手ではない。いつかは話して分かる可能性もあるかもしれないが、まずは話しても分からない相手という認識に立って、戦略を組み立てなければならない。相手は自分たちを敵とみているのだ。
中国に比べれば、日本にとってはロシアのほうがまだましかもしれない。
ロシアはソ連崩壊を経験し、G8のメンバー国になった経験もある。しかも、いま経済は中国以上に停滞し、とりわけ日本の経済協力は是が非でも手に入れたい。だから、ロシアとは相互依存関係に基づいた取引が成立する可能性が残っている。
だが、中国はいまだ南シナ海支配の妄想にとりつかれ、経済もようやく崩壊劇が始まったばかりである。米国と覇権を競って負けたロシアに比べれば一周遅れ、いや二周も三周も遅れているのだ。
いま、中東のテロリストたちは相互依存関係の構築など、まったく頭の片隅にもないだろう。彼らはどんな暴力に訴えても、自分たちの縄張り構築が最優先と思っている。
私たちが相互依存原理を捨て去る必要はまったくないし、いつか日本が中東の繁栄に一肌脱ぐ日もくるだろう。だが、いまテロリストたちに「話せば分かる」式で対応しても仕方がない。
「武力の応酬で問題は解決しない」という主張は一見、美しく響くだけで、どうすべきか、何も政策を語っていない。日本は日本自身の存立が脅かされない限り武力行使をしないが、テロリストとの戦いでフランスと連帯すべきである。
フランスは国境の監視強化どころか、非常事態宣言を発して令状なしの家宅捜索、逮捕に踏み切った。この後、テロ防止対策に法改正や憲法改正にも乗り出す方針という。人権宣言をしたフランスでさえも、テロと戦争の時代には人権の制限もやむを得ない、という現実的判断に立っている。
日本が対応しなければならないのは、そんなテロリストと中国、それから北朝鮮なのだ。テロリストも中国も北朝鮮も相互依存思考ではなく、敵対思考にとらわれている点で共通している。そういう原理の文脈においてこそ、テロはけっして他人事ではない。
残念ながら、世界は「平和と繁栄の時代」から「テロと戦争の時代」に完全にモードチェンジした。いまは、その意味をかみしめる必要がある。
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今の野党のノーテンキなお花畑感覚はどうにもならない...沖縄のサンゴ保護、自然破壊阻止バカか。