
習近平氏の来日延期、政府が発表
政府は5日、4月に予定していた中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席の国賓としての来日を当面延期すると正式発表した。
日中両政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、準備を円滑に進められないと判断した。
感染症の収束状況や政治、外交日程を見極めて時期を再調整する。7~9月の東京五輪・パラリンピック後の秋以降が有力との見方がある。
菅義偉官房長官が5日午後の記者会見で発表した。
「新型コロナウイルスの拡大防止を最優先する必要がある」と述べた。
中国外務省の趙立堅副報道局長も「最も適した時期に、環境と雰囲気が整った上で実施し、円満に成功を収めなくてはいけない」と話した。
習氏の国賓来日は2019年6月の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)にあわせて実施した首脳会談で安倍晋三首相が要請した。
20年の「桜の咲く頃」に招くと確認し、4月上旬を念頭に日程を調整してきた。
日中両国は国内の感染症対応に追われている。
日本政府は2日から全国の小中高校に一斉に休校するよう要請した。
中国は5日に開幕する予定だった全国人民代表大会(国会に相当)を延期した。
訪日時に成果を打ち出すための事務レベルの準備協議も滞っていた。
菅氏は記者会見で、来日日程について「双方の都合の良い時期に行うことになった。
外交ルートを通じて改めて緊密に調整する」と語った。
茂木敏充外相は外務省で記者団に「日中両国が地域、国際社会が直面する課題に共に責任を果たしていくことを内外に示す機会にする考えに変わりはない」と強調した。
中国の国家主席の国賓来日は08年以来となる。
両政府は習氏の来日で両国関係の改善を打ち出し、日中関係の「新時代」を印象付ける方針だ。
新しい両国関係を定義する「第5の政治文書」の作成も検討している。米中対立を背景に、習指導部は対日関係の改善を最重要課題に掲げている。
国内外に成果を打ち出すには、新型コロナウイルスの収束にメドが立った後の方が効果的だとの判断がある。
首相は2月28日に中国外交担当トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)政治局員と会談した際に「十分な成果をあげるために入念な準備をしなければいけない」との認識を示していた。
中国の国家主席の来日が延期された例は過去にもある。
江沢民(ジアン・ズォーミン)氏は1998年9月6日に来日する予定だったが、中国国内で洪水の被害が深刻になったため同年11月25日に先延ばしした。