ゴルフの空(GET Golf Academy 主宰 松村公美子のブログです)

ゴルフレッスンのこと、スイング理論(ゴルフスイング体操)のこと、日常でのこと、色々、時々、書いています

一目散にプロを目指したい子供たち…2

2011年11月18日 | 人として思うこと
内田樹さんは、ある著書の中で、このようなことを書いておられました。

『いつかは「クリエイター」になれると夢見る若者たちを収奪するだけ収奪して、百人のうちの一人くらい、能力のある者だけ残して、あとは棄てるというラフな人事を「業界」は続けている。

どこかで「君にはそこで勝ち残るだけの能力がないのだから、諦めて身の丈にあった仕事を探した方がいい」ということを忠告することが必要なのだけれど、そのような作業を担当する社会的機能は、いまは誰によっても担われていない。

かつては親や教師や地域社会の人々が不適切な自己評価で膨れあがった子どもたちに「夢を棄てる」ことを進言すると同時に、彼らの次の行き方の「受け皿」を用意するという仕事を担当していた。

だが、今の親たちは、子どもの潜在能力についてはしばしば本人以上に楽観的である。
わが子を歌手にしたい、サッカー選手にしたい、医者にしたい、弁護士にしたい…という種類の幼児的な成功願望に、子どもより親の方が深く病んでいるケースは珍しくない。
そういう病んだ親は子どもが親の膨れあがった成功願望を満たしてくれないと、手のひらを返したように「おまえには何の価値もない」といって見捨ててしまう。
それによって子どもは深く傷つけられて、今度は不当に低い自己評価に墜ち込んで、身動きできなくなってしまう。

教師にしても、子どもの夢をゆっくりと諦めさせるような手間ばかりかかる(割には感謝もされず、敬意も得られない)仕事をできれば引き受けたくはない。
それよりはTVドラマの教師たちのように「君たちには無限の可能性がある」と言って卒業させてしまう方がずっと楽である(まかりまちがって卒業生が「サクセス」した場合には、「先生の励ましがあったからです」と感謝されることだってありうるし)。』

…はっきりと書いておられる割には、ジョークも混ざっていますが…(笑)。

かなり鋭い現状観察だと思います。

皆さまは、この文章を読んで、どのようにお感じになったでしょうか?

私は、別に、プロになってトーナメントで活躍したい思うジュニアゴルファーの夢に水をさすつもりで、このようなことを書いているのではありません…。

現在の日本のゴルフ業界とトーナメントを考えれば、今年も、賞金王と賞金女王は、韓国勢になりそうだし、日本人の中からも、強くてスター性のあるプロゴルファーがどんどんと育って欲しい状況であるのは確かなことだ。

しかし、そこに向かおうとするジュニアゴルファーたちは、プロゴルフ業界に入れる入れないに関わらず、使い棄てになどできない、一人の人間なのだ。
トーナメントで優勝できるようなスコアを出せないからと、全人格を否定するようなことになってはいけない…、本人が、そう感じてもいけない…と思う。

しかし、プロゴルフ業界は、「プロになってトーナメントで活躍したい」と夢見る子どもたちを、なるべく多く収奪して、その中で、できるだけ熾烈でハイレベルな競争をしてもらって、プロゴルファーの場合は、百人に一人どころか、もっと、もっと、それ以上の倍率で…、能力のある者だけを受け入れてプロ資格を与え、その中から、また、さらに能力のある者だけが、トーナメントで活躍することができますよ…と言うスタンスを取っているのだ。
とても冷酷で、厳しいようだけど、それが、プロの世界なのだから、仕方がない。

だからこそなのか…、
そんな世界に憧れを抱き、親が自分の夢を子供に賭けて、子供に「藍ちゃんや遼くんみたいなプロになって欲しい」と願い、煽り立てるのは、“知らないが故の無謀”である。

子供の夢に親が付き合ってあげること、協力を惜しまないことは、勿論、素晴らしいこと。

だけど昨今の、ゴルフをしている子供たちを見ていると、内田さんが『今の親たちは、子どもの潜在能力についてはしばしば本人以上に楽観的である』と書いておられるように、子供がゴルフをしたがっているのか、親が子供にゴルフをさせたがっているのか、どちらなんだろう?
トーナメントで活躍する夢を見ているのは、子供なのか?親なのか?…と思う親子を確かに見かけるような気もする。

ま、この辺りのことに関しては、子供が自ら進んで、プロになりたいと強く願っているのだと、私たちは、そう信じているが…。

そんな子供たち…、プロの世界は厳しいけれど、それでも、チャレンジしてみたい、その世界に入って行けるかどうかの自分の可能性を「試したい」と思う、ジュニアゴルファーたちを目の前にして、我々、ジュニアゴルファーを見守る大人たちは、何を考えてあげるべきなのか?
どう指導して行くべきなのか?
それを、よ~く、考えてみないといけない…と思う。

それが、子供をゴルフの世界に送り込んだ、あるいは、ゴルフを好きにさせた、我々、大人の責任だ…と。

夢が叶って、人生のある一時期は、トーナメントで活躍できたとしても、それから以降も、その子の人生は続くのである。

夢が、たとえ叶わなくても、その子には、自己嫌悪や自己否定をしてしまうことなく、また、違う世界で、自分なりの人生を明るく生き生きと、生きて行って欲しいのである。
子供の頃や学生時代にゴルフに打ち込んでいたことを“誇り”にしながら…。

そのための“教育”とは?
“指導法”とは?

プロになりたい子供が増えるのは、嬉しいことなのだが…、
その数に比例して、プロになるのは、難しくなる。
競争が熾烈になればなるほど、
頑張って練習して実力をつけても、プロになれない子供たちが、増える。
プロになるには、“運”によっても左右されるくらいになる。

だからこそ、考えて行かねばならない…と思う。

バブルがはじけたことにより、接待ゴルファーの社用族がゴルフ場から姿を消し始めた頃、
これからやがて突入してしまうであろう、ゴルフ業界の氷河期を回避するための方法として、
ゴルフ業界は、ジュニアゴルファーの育成に力を入れ始めた。

その画策が実って、宮里藍ちゃんや石川遼くんなど、若くしてトーナメントで活躍できるプロが誕生した。

これは、ゴルフ業界にとっても嬉しいことには違いないが、
“氷山の一角のその頂上”を造ってくれる氷山となった子供たちは…?

プロゴルフ業界からは、「試された」上で、門戸を閉ざされてしまったとしても、
我々は、その子が、また自分の新たな可能性を見つけて「育って」行けるように、指導しておかないといけないのではないだろうか?

これらのことを考えた上で、
私は、内田樹さんの、可能性は、「試す」ものではなく、「育てるもの」に、“同意”するし、
プロゴルファーへの可能性も「試す」より、「育てる」意識で取り組んで行かないと、ジュニアゴルファーの指導に関わる人たちは、その方向性を誤ってしまうのではないかと思うのである。

…『一目散にプロを目指したい子供たち』に関しては、まだ、さらに書いておきたいことが有るのですが、これ以上書くと、長くなり過ぎるので、また、明日にします…m(__)m

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