阿部ブログ

日々思うこと

米国家安全保障局(NSA)が大手IT企業から個人情報を直接収集 するPRISM計画を展開

2013年06月10日 | アメリカ

国家安全保障局(NSA)は、2007年9月から対外情報活動監視法(Foreign Intelligence Surveillance Act of 1978,Oct.25,1978,Pub.L.No.95‑511,92 Stat.1783)(以下においてはFISA)の第702条の規定に基づき、対外情報活動監視裁判所(Foreign Intelligence Surveillance Court)と議会の承認を得た上で、パルトーク、アップル、マイクロソフト(Skype含む)、グーグル(YouTube含む)、フェイスブック、ヤフー、AOLなどIT企業のサーバーに直接アクセスしてから電子メール、動画、写真を直接、収集分析している。

FISAは、米国の情報機関が、他国の情報機関や反米勢力の活動の監視にあたる場合に、犯罪捜査の場合に要求される合衆国憲法第4修正に基づく「相当な理由(probable cause)」の要件を緩和し、情報収集活動を行うことを可能とする法律。9.11以後成立した「愛国者法」の影響もあり、厳格に「相当の理由」を要求されていたようだがFISA改正後、情報機関における情報収集活動が大きく緩和された。

当時から情報機関の暴走を懸念する意見があったが、今回の「PRISM計画」の発覚は、米国市民に対する監視活動が裏では行われているのでは?がとの問題意識が顕在化するだろう。最近でも記者の通話記録を司法省が収集するなど問題が生じている。またNSAは米国内に超巨大データセンターを4カ所建設しており、この手の情報を格納しているが、明らかに過大なコンピューティングリソースが投じられていることから、警戒感を示している人たちもいる。

NSAが、直接情報を収集しているのは、何もIT企業だけではなく、ベライゾンのような通信会社に対しても行われており、様々な問題があるが、これは合法。企業は連邦政府からの要請があればサーバーへのアクセスを許可しなくてはならない。9.11が全てを変えた。しかし、問題なのは、NSAの情報が、イギリスの政府通信本部(GCHQ)や、情報部(MI6)と保安局(MI5)と共有している事。今後の展開に注目。

今回のPRISM問題が、どのように事態が収拾されるのかに関心があるが、やはりクラウドコンピューティングの別の面でのセキュリティ問題が改めて浮上するのかもしれない。

米国4大シンクタンクが 「Strategic Choices and Management Review」を実施

2013年05月31日 | アメリカ
東京財団で開催されたカーネギー国際平和財団の「2030年の中国の軍事力と日米同盟」の説明会の際に、モデレータの浅野貴昭氏(東京財団研究員兼政策プロデューサー)が発言していた通り、国防費の強制削減対応策を検討する戦略レビュー(Strategic Choices and Management Review:SCMR)に対する事前提案が、5月29日に行われた。
浅野氏は、4大シンクタンクの政策提案を実に羨ましいとも発言していたが、全くその通りだ。

SCMRに対する事前提案をしたのは、以下4つのシンクタンク。
(1)The American Enterprise Institute(AEI)
(2)The Center for a New American Security(CNAS)
(3)Center for Strategic and Budgetary Assessments(CSBA)
(4)Center for Strategic and International Studies(CSIS)

各シンクタンクは、国防費削減環境下にある国防戦略を立案し、国防総省のポートフォリオをリバランスする提案をCSBAのリバランスツールと方法論を使用して説明をを行った。

CSBAは、今後10年間の予算削減の目標を2つのシナリオ設定している。
A案は、52兆円の削減と、B案の24兆円削減で、A案では10年間均等削減、B案は前半は緩やかな削減過程を経て、後半に削減規模を大きくするシナリオ。またCSBAは、リバランスツール(Rebalancing Tool)を用意しており、650個の削減オプションを準備し、各シンクタンクは、個別の試行に基づき選択して削減目標を如何に達成するかシュミレートする。

各シンクタンクは、①UAV、②戦闘員/戦術航空機、③爆撃機、④海軍能力、⑤水上艦艇、⑥陸軍部隊、⑦陸軍戦闘兵器、⑧陸軍予備戦力、⑨宇宙とサイバー戦、⑩戦略兵器とミサイル防衛、⑪特殊作戦、⑫事前備蓄、⑬人件費(文官)、⑭研究開発に分けて分析し提示しており、各シンクタンクの提案比較はココ参照。

在韓米軍司令官が交代する

2013年05月22日 | アメリカ
2011年7月から現職の在韓米軍 (USFK:U.S. Forces in Korea) 司令官James D.Thurman陸軍大将の後任としてCurtis M. Scaparrotti陸軍中将が、大統領から指名された。

Curtis M.Scaparrotti陸軍中将は、1978年に陸軍士官学校を卒業し任官。配属は第82空挺師団第3大隊。その後、第10山岳師団87歩兵連隊第1大隊勤務。海外はイタリア駐留の第325空挺戦闘チーム第3大隊に配属。帰国後は第10山岳師団作戦将校、ペンタゴン勤務を経て第82空挺師団第2旅団長。イラン、アフガニスタン、ソマリアでの作戦立案・支援業務を担当した後、2008年には第82空挺師団長に就任。

今般、在韓米軍司令官として指名されが、正式には上院の承認を経た後、韓国着任となる。
マーティン・デンプシー統合参謀本部議長が来日中」にも書いたが、米軍の主要幹部の交代が行われる時期である。

米軍の対シリア戦を見据えた前進部隊をヨルダンに配置

2013年04月19日 | アメリカ

過去ブログ「シリアでの化学兵器使用問題」で書いた化学兵器の件だが、国連の化学兵器調査団はシリア政府の入国許可が下りず、未だにキプロスで待機中だが、英国のSASが回収した土壌から化学兵器使用の痕跡が発見と報道されている。

レッド・ラインを越えたシリアに対して米軍が着々と部隊配備を行っている。既にヨルダン軍の特殊部隊へのBC兵器対処訓練と演習支援の為に、特殊部隊を中核とする200名を増強している。これは北朝鮮の核問題と同じで、シリア軍が保有する化学兵器などBC兵器の確保、若しくは破壊を企図しているもの。この対ヨルダン支援は、CTR (Cooperative Threat Reduction) プログラムを通じて行われており、最新のガスマスクや防護服一式を含む7000万ドル相当の装備を提供している。

また、シリア国境線におけるヨルダン軍の防衛行動を支援するため、第1機甲師団(1st Armored Division)の司令部の一部機能、情報(G-2)と特別任務大隊(Special Troops Battalion)、第141通信大隊(141SigBN)を中核とする師団要員をヨルダンに派遣する。状況によっては、戦闘旅団と航空旅団「アイアン・イーグル」を展開させる事を想定している。派遣期間は1年としているが、シリア内戦は長引く様相を呈しているので延長される事が予想される。

先進製造 (Advanced Manufacturing)

2013年04月17日 | アメリカ
先進製造について、徒然なるままに。

第2期オバマ政権は、グリーンニューディール政策の失敗から、直截的に雇用を増やせる先進製造技術の研究開発を重視している。米連邦政府における「先進製造」とは、「情報、オートメーション、コンピュータ、ソフトウェア、センシング・、ネットワーキング等の利用と調整に基づき、物理学、ナノテクノロジー、化学、生物学による成果と最先端材料を活用する一連の活動」としている。
米連邦政府における先進製造は、既存製品の新しい製造方法と新技術による新製品の製造の両方を含むもので、 2012年度予算では、先進製造技術のためのR&Dとして以下を推進した。先進製造に係る連邦政府機関の予算と取組概要は、以下の通り。

○NSF:ナノテクノロジーを基礎とした製造技術開発、ロボット工学における基礎・応用研究に対し8700万ドルを充当。
○DARPA:製造方法を根本的に変えるイノベーションを指向し、設計から製造までの所要時間の短縮を目指した先進製造技術分野に5年間で10億ドルを充当。
○NIST:ナノテクノロジー製造技術等において測定デバイスの開発や関連技術開発の為に7.6億ドルを充当。
○DOE:フレキシブル・エレクトロニクス等、エネルギー関連の先進製造技術向け研究開発に5億ドルを充当。

2013年度連邦政府予算案においても、先進製造分野、即ち革新的な製造工程、高度な工業材料、ロボット工学に焦点を当てた先進製造研究開発に22億ドルを投資する予定で、来年2014年度の連邦政府予算の優先事項として、産官学連携に重点を置き、ロボット工学、材料開発、積層造形技術等を優先するよう各省庁に指針を提示している。

■先進製造に関する米国政府レポート
(1)「先進製造における米国の指導性の確保」(大統領科学技術諮問会議:PCAST:President's Council of Advisors on Science and Technology、2011年6月24日)
http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/microsites/ostp/pcast-advanced-manufacturing-june2011.pdf 
先進製造分野における米国の地位を回復するためには、産業政策ではなく産官学連携による首尾一貫したイノベーション政策が必要であり、産学官共同でトランスフォーマティブな新技術の開発の加速に取り組む「先進製造イニシアティブ」の立ち上げ等を提言している。

○先進製造の促進のための原則
 ・市場の失敗を克服するために投資する
 ・米国で新技術が開発され技術を基盤とした企業が米国で繁栄するために投資
 ・有望な新技術領域において応用研究プログラムを支援する
 ・広範に適用可能で変容可能性がある技術開発の為の官民連携に投資
 ・企業による生産時間短縮・障壁低減に向けた設計手法の開発・浸透
 ・米国企業の生産を助ける共用の技術基盤への投資

○イノベーションに向けた豊かな環境を創造する
 ・企業がR&Dと製造活動を米国内で行うことを税制と企業政策により促進
 ・堅固な基礎研究活動を支援
 ・高技能人材の育成と誘因付与政策により技能労働者の供給を確保

■提言内容:
○提言1:先進製造イニシアチブの開始
 連邦政府は、米国の未来のための先進製造イニシアチブ(Advanced Manufacturing Initiative for America's Future- AMI)を開始すべきである。AMIは、協調的で、全政府的な努力で、商務省、国防省、エネルギー省が主導的な役割を果たし、大統領府(EOP)において、科学技術政策室、国家経済会議、あるいは製造政策担当大統領補佐官室が調整を行うこととする。商務省長官、国防省長官、エネルギー省長官は、商務省にあっては国立標準技術局(NIST)、国防省にあってはDARPA、エネルギー省においてはARPA-Eあるいはエネルギー効率性・再生可能エネルギー室(Office of Energy Efficiency and Renewable Energy- EERE)といった、各省において適切な機関に主導する責務を付与すべきである。この全政府的な努力が、産業界および学界(大学)において並行的に行われるイニシアチブにより補完されることが重要である。

AMIは、これらの部門が参加するメカニズムを開発し、技術的機会を明らかにすることにその専門性を引き出すべきである。先進製造の専門性へのアクセスを持つ外部諮問委員会が、この業務を支援すべきである。
 AMIの調整主体は、米国における先進製造を推進するために最も重要な連邦政府の投資のためのニーズについて、以下を含む隔年報告書を作成すべきである。

(1)新技術および設計手法に関する応用研究のための大学への調整された連邦政府の支援
(2)主な横断的課題に取り組む競争段階前のコンソーシアムを通したそのような技術を前進させる公的部門と民間部門の連携(public- private partnerships- PPPs)
(3) 企業が製品を製造する時間を大きく短縮させたり障壁を大きく低下させたりする設計手法の開発と流通、(iv) 中小企業がその製品を地球規模的に競争するために改善することを支援する共用の施設と基盤。報告書はまた、これらの活動で焦点を絞る価値のある最も重要な技術的課題を明らかにすべきである。

AMIはまた、これらの技術分野におけるパイロットプラントと初期段階活動のための資金の利用可能性を報告し、他国における対応する資金機会の分析と税収中立的な資金提供の機会を含めるべきである。
 AMIにより提案されたプログラムの実施にかかる資金は、商務省、国防省、エネルギー省において最も期待される機会を支援するために歳出予算配分されるべきである。資金の水準は、当初は年間5億ドルを三つの機関に適切に配分されることとし、4年をかけて10億ドルに増加させるべきである。このうちのいくつかの資金は適宜既存のプログラムから流用されるべきである。

○提言2:税制政策の改善
 連邦政府は以下のことを実施すべき。
・法人所得税を、オバマ大統領が2011年の一般教書演説において発言したとおり、他のOECD諸国と同様の限界税率とする改革を行う。これは、製造業の工場を米国に設置する強い誘因を創造し、利益の送還に対する阻害的誘因を除外し、それらに代わり、企業が米国民を雇用することに用いられるようになる。
・研究開発税制控除を、大統領による米国のイノベーションのための戦略(President's Strategy for American Innovation)および2012年度予算教書において示したとおり恒久化し、控除税率を17パーセントに高める。控除は継続すると知られていることにより、企業が研究開発投資の計画対象期間を長期化させることを促進させる。税制に関する規則は、製造プロセスが税制控除に相応しい価値であるか明白にするための検討が行われなければならない。

○提言3:研究、教育、トレーニングの支援
 イノベーションと国家安全保障を支える研究活動の健全性を確かなものとし、米国が先進製造を引き寄せ維持させるために必要な高技能の労働力を有することを確かなものとするため、連邦政府は以下のことをすべきである。
・大統領による今後10年間において国立科学財団、エネルギー省科学室、国立標準技術局という三つの主要な科学機関の研究予算を倍増する計画を実現させる。
・公的部門および民間部門の研究開発投資の対GDP比3パーセントを実現させるために、連邦政府の政策およびリーダーシップを用いる。
・大統領科学技術諮問委員会(PCAST)の最近の報告に記載された内容に基づき、科学技術工学数学(STEM)教育を強化する。
・米国企業により雇用される可能性のある高技能の外国人労働者の数を増加させる。これは、米国大学から科学技術工学数学の大学院学位を取得する外国人学生にグリーンカード取得を認め、また、個々の雇用に基づく査証を、自動的に労働者とその配偶者や子供を対象に含めるようにし、さらに、H1B査証の数を増加させることにより達成される。

■「国家先進製造戦略計画」
(National Strategic Plan for Advanced Manufacturing )
国家先進製造戦略計画は、米国競争力法再授権法の規定により、2012年2月に国家科学技術会議(NSTC)下の技術委員会が作成している。
当該文書によれば、先進製造研究開発を支援する連邦政府の活動を調整し、指針を与える戦略プラン。研究開発活動と、国内生産における技術イノベーションの実装との間のギャップを埋めるための「先進製造のためのイノベーション政策」を提言している。

○提言の概要:
・政府は、市場の失敗に対応する必要。かつての半導体産業のように、政府による研究・技術・教育・トレーニングへの投資を通じて新産業を創出すること。
・米国の伝統的なイノベーション政策は基礎研究への投資だったが、基礎研究の成果が米国を基盤とする製造業者に十分に活用されていないので改善要。

○国家戦略の原則:
・研究・開発・実装への結合力ある(cohesive)アプローチが必要
・製造業の大部分を占める中小企業による投資を促進することが重要
・産業クラスター内の多くの企業が恩恵を被るようなプラットフォーム技術への投資(ナノ材料プロセス、積層造形技術、先進ロボット工学、スマート製造、グリーン・ケミストリー)
・国・州・地域レベルにおける産労学官の集中的な取り組みを統合

■主な先進製造分野のプロジェクト
○先進材料分野:
•DARPA:セラミック製軽量装甲
•ManTech:安価かつ先進的なチタン粉末加工
•ARPA-E:輸送のための電気エネルギー保存バッテリー

○製品技術プラットフォーム:
•DARPA:集積回路のインテグリティ/信頼性を高める試み
•ManTech:電子機器の先進的な製造/梱包
•NIST, NSF:ナノ・マニュファクチャリング

○先進製造プロセス:
•DARPA:オープン・マニュファクチャリング(製造プロセスの効率化)
•ManTech:宇宙空間構築物の高速製造
•NIST:次世代ロボティクス及びオートメーション
データ/デザイン基盤
•ManTech:先進的なサプライチェーンのモデリング
•EPA:グリーン・エンジニアリング、環境のためのデザイン

※ManTech : DOD Manufacturing Technology Program

■第2次オバマ政権の一般教書演説(State of the Union Address)と先進製造分野

第2次オバマ政権としての一般教書演説が、2013年は2月12日(火)午後9時過ぎ(日本時間13日(水)午前11時)から約1時間、大統領が演説を行った。この演説では、中間層の雇用創出を通じた景気回復、富裕層増税、移民法改正、銃規制強化などを2期目の目標として掲げたており、経済・財政問題が全体の半分を占めている。その関係から製造業回帰を鮮明としており、先進製造分野においても言及があった。

○研究開発投資として、オハイオ州に2012年、初めての「製造イノベーション研究所」を設立しており、労働者が3Dプリンティング技術を習得している。

○また同様の製造ハブをさらに3つ立ち上げ、産業界とエネルギー省・国防総省との協力拠点とする方針で、全米に15の製造業関連機関をまとめたネットワークを構築することを議会に要請する予定。

※NHKのクローズアップ現代によれば、高等学校レベルの学校で3Dプリンティングの授業が行われていると報道されている。

米国の2014年予算教書

2013年04月12日 | アメリカ
米国大統領府が4月10日に2014年度(2013年10月-2014年9月)の予算教書を連邦議会に提出した。オバマ大統領の声明は、下記URLをご参照。

Remarks by the President Announcing the Fiscal Year 2014 Budget ; The White House, April 10, 2013

2014年度予算に関しては、行政管理予算局(OMB)のサイトに付属資料やファクトシートが掲載されている。
行政管理予算局(Office of Management and Budget, The White House;OMB)
Budget of the United States Government, Fiscal Year 2014

また2014年予算教書は、総244ページでファイル容量2.09MB。

注目の財政赤字見通しは、2018年まで4750億ドル以上で推移するとしており、10年間の財政赤字の総額は5兆2700億ドルと見積もっている。また2023年までの純債務は、19兆0300億ドルに達する。財政赤字削減目標は、10年間で1兆8000億ドルの削減を目指すとしている。またインフレ指標を導入して10年間で2300億ドルの歳出削減を実現したいとの意向が示されている。

米国においては、今年3月から政府歳出の強制削減が実行されていいて、2013年度は、850億ドルの削減であるが、当然ながら国防総省予算も削減されている。この予算削減の影響から国防総省民間職員の一時帰休が実施されており、陸軍長官、海軍長官、空軍長官が、自らの給与の一部を政府に返上しFederal Employee Education and Assistance Fundに寄付する事態に陥っている。また国防長官も国家国防大学 (National Defense University;NDU) で、米軍の組織全体を抜本的に再編成する必要があると発言している。組織をシンプルにして調達方式も見直し民間企業に学ぶべきとしている。

国防予算の強制削減は、海外企業にも影響を与えている。特に近年、対米国防関連輸出で成長著しいノルウェーの国防産業でレイオフが計画されている。Nammo A/S社では30名のレイオフを予定しており、2013年に対米輸出20%ダウンするとしている。同社の昨年度の対米国防関連輸出は5億 4000万ドルだった。

国防総省と同じくインテリジェンス・コミュニティにも影響が出ている。ジェームズ・クラッパー国家情報長官は、強制削減によって情報活動全般を縮小せざるを得ない状況に追い込まれると深刻な警告を発している。長官によれば、情報活動にとって最も重要なリソースは人間であり、予算カットによって、優秀な情報スタッフが現場からいなくなり、インテリジェンス・コミュニティ活動全体のパフォーマンスが低下すること発言している。

クラッパー長官は、過去国防情報局(DIA)長官在職中にも、情報予算が大幅にカットされた経験があり、この時も情報収集活動全般を縮小しつつ、人員削減にも取り組だ経験から、今回の予算削減による影響の深刻さが身に沁みているのだ。

強制的な予算削減の影響については、今後も注視していく。

米軍アフリカ軍司令官の交代~アフリカ戦略の更なる強化~

2013年04月09日 | アメリカ
米国のアフリカ軍 (USAFRICOM:US Africa Command) の司令官が、カーター・F・ハン(Carter F. Ham)陸軍大将から、デビッド・ロドリゲス(David M. Rodriguez)陸軍大将に交代した。

ロドリゲス陸軍大将は、陸軍総司令官を務めていた、2012年10月18日オバマ大統領から次期アフリカ軍司令官として指名されていた。アフリカ軍司令官交代式典に出席するため、統合参謀本部議長のマーティン・デンプシー(Martin E. Dempsey)陸軍大将がドイツ入りしている。

陸軍総司令官からの転任を見ても米軍のアフリカ戦略が本格化する。過去ブログもご参照。

米軍の対アフリカ戦略が本格始動

米国通商代表部が輸出に関する年次報告書を発表

2013年04月04日 | アメリカ
TPPの議論が様々報道されているが、このような中、米国通商代表部(USTR)が、米国の輸出に関する年次報告書を大統領と議会に提出した。報告書は「外国貿易障壁報告書」、「衛生植物検疫措置に関する報告書」、「貿易の技術的障害に関する報告書」の3本。

これらの報告書は、米国の輸出に関する障壁を取り除く為のオバマ政権の取り組みについて報告しているが、製造業回帰による雇用問題の改善を急ぎたいオバマ政権の今後の動向を予測するには良い資料となるだろうし、何せ輸出に関する報告なのだから今後のTPP交渉の展開を考える上でも興味深いものだ。

■外国貿易障壁報告書
2013 National Trade Estimate Report on Foreign Trade Barriers Office of the U.S. Trade Representative, April 2013

■衛生植物検疫措置に関する報告書
2013 Report on Sanitary and Phytosanitary Measures Office of the U.S. Trade Representative, April 2013

○報告書概要
2013 Report on Sanitary and Phytosanitary (SPS) Barriers to Trade Office of the U.S. Trade Representative, April 1, 2013

○ファクトシート
Fact Sheet: Expanding Food and Agricultural Exports: Successes in Reducing Sanitary and Phytosanitary Barriers Office of the U.S. Trade Representative, April 1, 2013


■貿易の技術的障害に関する報告書
2013 Report on Technical Barriers to Trade Office of the U.S. Trade Representative, April 2013

○報告書概要
2013 Report on Technical Barriers to Trade (TBT Report) Office of the U.S. Trade Representative, April 1, 2013

○ファクトシート
Fact Sheet: Successes in Reducing Technical Barriers to Trade to Open Markets for American Exports Office of the U.S. Trade Representative, April 1, 2013

米議会でのサイバー攻撃に関する公聴会

2013年03月24日 | アメリカ
米国の上院軍事委員会では、シリアでの化学兵器使用について公聴会が開かれているが、シリア問題だけではない。中国人民解放軍によるサイバー攻撃についての公聴会も3月20日に開催されている。

中国のサイバー攻撃について証言したのは、Mandiant社のケビン・マンディア(Kevin Mandia)CEOで、米国企業の秘密をサーバー空間から窃取する手口とその脅威について語った。北米を担当するサイバー部隊は、人民解放軍の総参謀第三部所属の第61398部隊であるが、サイバー攻撃を担当する組織は、軍の部隊だけでなく、経済情報などを収集する民間組織も存在する。

総参謀第三部は、旧中国共産党中央軍事委員会・第二局であり、1930年代から電波傍受、暗号解読を担当していた組織で、当然ながら日本軍の暗号解読に注力しており、この分野においてはドイツ国防軍の支援を受けていた。片や日本はポーランドから暗号解読の手解きを受けていた。因みにエニグマ暗号の解読はポーランド参謀部の貢献が極めて大きいし、ポーランド政府崩壊後のポーランド参謀第二部の情報網を引き継いだのは日本陸軍であったのは、奇なる縁を感ずるのは私だけではないだろう。

同じ20日には、米国下院国土安全保障委員会において、ジョージ・ワシントン大学のフランク・シルフォ国土安全保障政策研究所長も、中国以外では北朝鮮とイランからのサイバー攻撃に警戒すべきとの証言を行っている。重要な点は、中国やロシアによるサイバー攻撃は、情報窃盗がメインであるが、北朝鮮やイランの場合、米国本土の電力網など重要インフラへの直接攻撃を指向する傾向があり、中国&ロシアより脅威であるとしている点である。確かに北朝鮮は失う物がないので、戦略としては正しい。

こうした中、韓国が大規模なサイバー攻撃を受け、3万2000台以上のサーバー&クライアントにネガティブに陥っている。失うモノの多い韓国は、直ちに情報防衛態勢をレベル4からレベル3へと引き上げる措置を国防省が取っている。

攻撃したのは北朝鮮と報道されている。しかし北朝鮮が、適切な時期を調整して韓国内の電力網など重要インフラへのサイバー攻撃を行うと、それでなくとも不調な経済状況も相まって、財閥中心の輸出主導経済を破壊する威力を持ちうるだろう。反日国家を脆弱化させることは日本の国益にも資するものなので、素直に北朝鮮、頑張れ!と言いたい。