阿部ブログ

日々思うこと

ジャスミン革命とSNS ~ありきたりですが~

2011年05月31日 | 日記
TwitterやYouTube、Facebookなどソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)を介した膨大な人と人との繋がりが、2011年にチュニジアやエジプトで起きた民衆蜂起で長期独裁政権が倒されるという事態が生起している。ただ、中東で起こっている革命騒ぎはTwitterやFacebookにより引き起こされた訳ではなく、実際にデモの呼びかけに影響があったのは、伝統的な口コミやクルマのフロントウィンドウのワイパーに挟まれたチラシなどだったと言う意見もあるが、SNSの影響力が無かったかといえば、事はそう単純ではない。

チュニジアでの政権打倒運動のトリガーは、26歳のムハンマド・ブーアズィーズィー氏の横暴な警察への抗議としての焼身自殺だった。それを受けて、同じく5人の若者が相次いで、焼身自殺を遂げたが、それが映像としてフェイスブックを通じて伝わり、抗議デモが急速に国内に拡散し、ジャスミン革命と呼ばれる一連の運動が勃発する事になった。もうひとつの引火装置となったのが、2010年末のウィキリークスによる米国外交公電の公開である。この曝露により、旧ベン・アリ政権の腐敗を裏付ける揺るぎない証拠が示されていた。フェイアン・ベルハジ氏は、このチュニジア関連の文書をアラブ語とフランス語に翻訳し、Facebookに掲載した。掲載後、1週間経たない時間で約17万人がこの翻訳文書を閲覧したと言われる。これにチュニジア政府が対抗し、約1週間程して翻訳文書を削除した時には、既に、多数の国内外のサイトに転載されており、情報の拡散は留まることなく広がり続ける事となった。

エジプトでは、チュニジア同様、警官に殺害されたハーリド・サイード氏のページを、『4月6日グループ』と呼ばれる団体がFacebookに開設した事が契機となり、政府への抗議デモが頻発し、多くの若者が携帯カメラを持ってデモに参加。そして写真や動画を撮影して、そのまま複数のブロガーに送信し、ブロガーは直ちにブログに掲載する。リアルな情報に接した市民が更にデモに参加するなど、燎原の火の如く抗議デモが拡大し、軍隊も手を出せない状況に至った。その後、エジプト政府は、インターネットを遮断するなど対応策を講じたが、その裏をかくように2011年1月28日正午から1時間の間に、Twitter上では24万5000件の投稿があったとされる。これは、その時間帯における世界の「つぶやき」の8%にあたるといわれる。

このFacebook革命ともジャスミン革命とも言われる民衆運動を拡大させた要因は、SNSが最大のものであろうか?携帯電話やPCによるTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアツールの利用により、革命運動に関するニュースを広めることにおいては非常に役立つというという点は、間違いないことであり、、腐敗した長期政権打倒と言う最終目的を達成することを手助けはする。が、しかし、ソーシャルメディアだけでは、この活動目的が成就される事がないことは、自明である。但し、前節で述べた通り、世界中の人々が携帯電話、若しくはスマート・デバイスを所有し、ソーシャルメディアからの情報収集を容易に行なえる環境が整った結果、世界中の個々人の繋がりが、爆発的に拡張しうる可能性がSNSの出現により現実のものとなった。これは、今後のビジネスのあり姿を大きく変えうるポテンシャルを有するトレンドであり、新たなビジネスを創出し事業展開する上で重要なポイントとなるのではないだろうか。

福島原発事故後のロシアと中国の動向

2011年05月18日 | 日記

プーチン首相は4月30日、ペンザ州で地元の物理学研究所職員らと会談した。当然の如く福島第一原発事故に言及したが、福島の事後はそもそも津波の危険性が高い所への立地や発生直後の日本政府、東京電力の対応の問題など、天災と人災が幾つも重なったケースであり、ロシアの原発では同種の事故は起こらないと述べた。
またプーチン首相は「ロシアの原発は最新型であり、3日間は外部電源が喪失しても原子炉が正常に機能し続ける性能を有しており、世界一安全」であると強調した。しかし、プーチンが何と言おうと、ロシアの原発の信頼性・安全性には問題が山積し、今後も核事故が起こる可能性が高い事は、桜井淳氏の著書『原発のどこが危険か』からも明らかである。
ところでロシアの電力需要に占める原発の割合は現在16%程度であるが、これを25%に引き上げる方針には変更がないともプーチンは述べている。
現在、ロシアに10か所、合計32基の原子炉が存在し、その発電能力は合計24.2ギガ・ワット。これはロシア全土の総発電量の16%を占める。
懸念されるシベリアや極東地域には原子力発電所は存在しない。但し、軍事用途&研究用途は除く。

1986年のチェルノブイリ事故以降、最初に建設されたのは、高速実証炉「ベロヤルスク-4」(1999年)で、これを皮切りに3基が稼働中で、さらに12基が建設途上にある。この中で注目されるのは、ロシア原子力公社(ロスアトム)が計画している海上係留型原子力発電プラントで、これを7~8基建設するとしている。この発電プラントは700万kWの出力で、その1号機は2012年にカムチャツカ半島・ヴィリュチンスクで稼働予定である。シベリア・極東地域で初めての商用炉となる。海上発電プラントが何故最初にシベリア・極東地域なのか? 実は世界最大級の水力発電所が事故を起こして稼動停止状態が続いており、深刻な電力不足に陥っているという背景がある。

原子力産業は、ロシアにとっては、福島原発事故後も重要な輸出産業であり続けるのは確実。ロシアは、世界の原子力発電プラント市場におけるシェア16%、核燃料市場17%、ウラン濃縮の実に40%を占めており、過度に天然資源輸出に依存する国内経済からの転換する為、原子力、軍事産業など先端産業の育成を進めており、この方針は当面ぶれる事はない。
ロシアで全ての原子力を統括するロサトム(ROSATOM)傘下の原子力発電プラント輸出公社「アトムストロイエクスポルト」は、中国、インド、それと最近サイバー攻撃を受けたイラン、さらに今後はヴェトナム、イエメン、ブルガリア、ベラルーシ等で原発の新規建設を行なう。やはり新興途上国では安定した大容量の電力が経済発展に欠かせないだけに、他の代替手段がない現状では仕方がないだろう。
それとあまり表には出ないが、3月17日から29日、ロシア空軍の放射能塵収集装置を搭載した偵察機が日本領空に接近し、放射能の影響調査を実施している。航空自衛隊は、スクランブルをかけその対応した。偏西風からしてロシアに影響はないのだが、偵察機を飛ばす気持ちは理解できる。何せ4基同時の原発事故なのだから。

お隣中国では、2007年策定の「原子力発電中長期発展計画」(対象期間は2005~2020年)によれば2020年までに全中国の総発電設備容量を10億kWとし、そのうちの4%を原発としている。設備容量は4000万kW。その後、今後の経済発展を維持継続する為に、更に目標値が上乗せされ、最終的には総設備容量を14~15億kWとし、原発についても上方修正され、2011年1月の全国エネルギー業務会議において8600万kWとされた。また、今年から始動する「第12次5か年計画」(2011~2015年)では、原子力発電を2015年までに総設備容量4000万kWを目標としている。
 現在中国における原子力発電所は沿海部に6か所、合計13基の原子炉が稼働中で、中国の発電設備容量の総量9億6000万kWのうち1.12%を占める1080万kWである。(2010年統計)また現在建設中の原発は28基で、総設備容量は3097万kWに達する。
福島第1原発事故発生後、中国政府は原子力政策に変更はないとしていたが、中国人民の原発不安・不信が高まりを受け、3月16日開催の国務院常務会議においては一転「原発の建設は安全を最優先させる」とし、次の4つの大方針を示している。

① 原子力施設に対し直ちに全面的な安全検査を実施する。
全面的で緻密な安全評価、潜在的な危険を網羅的に調査することを通じて、絶対的な安全を確保する。

② 稼働中の原子力施設の安全管理を強化する。
原子力施設を保有する組織・機構は制度を整え、厳格に規則を適用し、運行管理を強化する。監督部門は、監督検査を強化し、企業が潜在的な危険を遅滞なく発見し除去できるように指導する。

③ 建設中の原発を全面的に審査する。
最新の技術基準により、すべての建設中の原発に対し安全評価を実施し、潜在的な危険が存在する場合には改善し、安全基準に合致しない場合には直ちに建設を停止する。

④ 新設の原発プロジェクトは厳しく審査する。
原子力安全計画を急ぎ策定し、中長期計画を調整し完全なものとする。原子力安全計画を承認するまでは原発プロジェクトの審査・承認を一時停止する。

国務院常務会議の決定を受け、海洋局は新規原発の審査を当面受理しないと発表し、新たな原子力安全計画について国家能源局が起案作業を開始し、パブリックコメントの一歩手前まで来ている段階。中国においてはパブコメから法律制定~公布まで通常1~2年はかかるので、この間は原子力発電所の新設の審査・承認は行われないため遅滞する。これで当初掲げていた「原子力発電中長期発展計画」の目標値は下方修正されると予想される。
 
 ロシアはともかく中国の原発事故は、偏西風の関係からその影響を受けるのは日本であり、国内でも徐々に黄砂など中国大陸からの空気伝播による環境被害が顕在化しつつある中、当地の原子力の安全確保は我が国においても最重要事項である。
以上

サイバー戦争とスマートグリッド

2011年05月11日 | 日記
福島第一原発の事故を受け、関東圏に住む我々は極めて精緻に構築された電力システムから多大なる恩恵を日々受けている事を、身を持って知る事となったが、日本では今いち盛り上がりに欠けていた「スマートグリッド」が、これを契機に息を吹き返そうとしている。但し注意するする必要があるのは、スマートグリッドを語る識者には「国家安全保障」と言う観点が欠落している点。

電力システムは国家安全保障上、最重要なインフラであり、軽々に同システムを元々セキュリティなど考慮されず構築されているインターネットなどに接続させビジネスの場に解放するなど、後世からの愚行の謗りを免れ得ない。

2003年、米国において「SQL Slammer(別名W32.SQLExp.Worm)」と呼ばれるワーム(Worm:ネットワークを介して自己増殖してCPUやネットワークの負荷を増大させる不正ソフトウェア)が電力供給網の制御システムに侵入し、制御処理速度を著しく低下させ、更に「監視制御データ収集システム(SCADA)」のソフトウェア欠陥もあいまってリアルタイムのシステム制御が実質不可となった、将にこの時、オハイオ州の送電線が倒木によって電圧変動を引き起こし、SCADAが適正な制御を行なえないまま、この電圧変動のドミノ倒しがニュージャージー州の停電につながり、最終的にはアメリカ8州とカナダの一部で大規模停電する結果となった。所謂「北米大停電」である。この大停電の直接の原因は倒木や脆弱な配電網にあると語られる事が多いが、電力システムに侵入したワームがそもそもの原因であった事は知られていない。

自衛隊もサイバー空間防衛隊を創設しているが、各国サイバー部隊は、主たる攻撃目標の一つに電力システムを上げており、米軍のサイバー部隊指揮官は、敵の電力網を破壊、若しくは不能にする事により統合的な敵の反撃を断固阻止すると明確に語っている。この為、サイバー戦士は、仮想敵国の電力システムのネットワークに孔を開け潜入し、SCADAなどに論理爆弾などを事前に仕掛けておくなど、サイバー戦争に備えた活動を行なっているとされる。

国家安全保障と言う意識が極めて希薄な日本が、オバマ政権のスマートグリッド構想に乗せられて、電力システムを各国のサイバー部隊が蠢くサイバースペースに裸のまま晒す事は絶対に避けなければならない。

311以降、配電自動化や極めて安定した電力供給など世界に冠たる電力システムを構築・運用してきた日本ではあるが、地震に脆弱な発電設備や周波数問題など我が国が抱える欠陥も明らかになった今、日本に相応しい次世代の電力システムを構想し、そのあり姿を国民と共有しながら、後世に恥じない戦略的取組みを行うが必要とされている。

中国の水問題 ~砒素とフッ素~

2011年05月06日 | 日記
中国の水問題が深刻さを増している。人口と国土に比して絶対量としての降雨が少ない上、工業分野では無駄な水の利用が改善されないなど、尚問題解決の目処は立たない状況である。さらに悲惨な事にヒ素とフッ素の汚染問題がある。中国には約300万人以上の慢性砒素中毒患者がいるといわれ、この慢性砒素中毒の原因は、そもそも砒素に汚染された井戸水利用にある事は明確であるにも係わらず中国政府、共産党は手をこまねいている。中国では高濃度の砒素に汚染された井戸水(3ppm~5ppm)の飲料でほぼ数ヶ月で発症する事が確認されている。
砒素中毒は手の平と足の裏に出る突起状の角化症が特徴である。

特に砒素中毒が多数報告されているのは、内モンゴル自治区の呼和浩特近傍で、黄河とその北方の陰山山脈の間にある沖積平野が殊に汚染がキツく、その南方の山西省にも大規模な砒素素汚染地帯があると言われる。
 
比較的東南アジアを始め砒素に汚染された水による健康問題は認知されているが、飲料水に含まれるフッ素の健康問題はあまり巷間話を聞かない。
フッ素が含まれている水(1.5ppm以上)を長期間飲料すると、歯が暗褐色になる斑状歯が生じ、フッ素の濃度が更に高くなると、特に子供の骨の発達異常、甲状腺障害、成長障害などが報告・確認されており、中国では、都市部以外では、まだ井戸による地下水を飲料水としている為、約2億6000万人以上が高濃度のフッ素に曝露しているとも言われ、この内既に4000万人以上にフッ素に起因する慢性障害があるとの報告もなされていると言う。

中国のエネルギー問題の中でも言及したが、最大のエネルギー源である石炭にも同様の健康障害となる砒素とフッ素の問題が隠されている。特に品質の悪い石炭にはフッ素が含まれて事が多々あり、こういったフッ素含有の石炭を燃焼させると空気中のフッ素を吸収し更に高濃度になり、水からだけでなく空気からの健康被害も大いに懸念される。特に貴州省では、フッ素と砒素の両方を含有する石炭が安価な為、大量に使用されており、呼吸器経由での砒素汚染も報告されていると言う深刻さである。

勿論、これら低品質な石炭燃焼による砒素、フッ素などが混入した大気は偏西風に乗り日本にも到達しているのではないか?あの硫酸塩エアロゾルと一緒に。

中国からの硫酸塩エアロゾルの健康被害

2011年05月01日 | 日記

国際エネルギー機関(IEA)によれば2009年時点で中国はアメリカを抜き、世界最大のエネルギー消費国となったと発表している。
中国のGDPは世界の10%程度であるが、エネルギー消費量は20%以上を占めている。特に石炭を燃料とする産業プラントなどから排出される汚染大気の排出量は世界一で、二酸化炭素など温室効果ガスの排出に関しても世界の25%を占める状況となっている。
これは、エネルギーを多く消費する製造業による需要が増加していること、またエネルギー利用効率が低いことなどが主な理由として挙げられる。
例えば中国の石炭火力発電所の発電効率は36%、先進国の水準より4%下回る、また鉄鋼生産のエネルギー効率は、先進国の1.3倍以上、自動車の燃費は1.5倍悪い。これは日本の8倍、欧米先進国の4倍、世界の平均の3倍と言う世界最悪なエネルギーの使い方をしている。

日本人の健康にとって最大の脅威が、中国から流れてくる硫酸塩エアロゾルである。

これは、中国国内の工場で、中国産の石炭(硫黄分などの有害物質が多い)を燃焼させることで、二酸化硫黄が発生する事に由来し、最悪なのは、中国の工場やボイラーなどでは脱硫せずに空気中に垂れ流ししており、実態としては中国の硫酸塩エアロゾルの発生量は、火山灰よりも多いとの試算もある程で、1990年代以降世界の工場と化した中国で発生する硫酸塩エアロゾルは膨大でこれが雨に落とされないまま偏西風に乗ると、風下の日本に大量に流入している事実はあまり報道されず、問題視されていない。

硫酸塩エアロゾルは、後頭神経痛を起こしたり、頭痛やめまいなどの症状が出るケースもあり、また神経痛、アレルギーなどの症状が出て、しかも花粉症を悪化させると言われている。
また硝酸塩エアロゾルの霧雨は最悪で、硫酸ミストになり、これは酸性雨であり、この雨が緑豊かな日本の森林を著しく荒廃浸食する主要な原因の一つ。

それと硫酸塩エアロゾルの最大の問題は浮遊粒子状物質(SPM)の生成に関わっている事。つまり揮発性有機化合物(VOC)と窒素酸化物(NOx)の混合系に紫外線があたると光化学オキシダント(主成分、オゾン)が発生するが、揮発性有機化合物と窒素酸化物と、硫酸塩エアロゾルが空気中で混じり合う事で、浮遊粒子状物質が生成されのだ。
ここであまり聞き慣れない揮発性有機化合物という言葉がでているが、これはトルエン、ベンゼン、フロン類、ジクロロメタン、ホルムアルデヒドなどで構成される有機化合物で約100種類以上あると言われ、これら有機物には発がん性物質が含まれ、特にホルムアルデヒドは、シックハウス症候群や化学物質過敏症の原因であり、人体に極めて有害な物質である。

揮発性有機化合物と窒素酸化物、それと硫酸塩エアロゾルから生成される浮遊粒子状物質が引き起こす健康被害が重大であることは、議論の余地がない。

安価な石炭エネルギーに大きく依存する中国経済は、発電用石炭を輸送する為に、鉄道の半分はこれらの輸送に携わっているとも言われ、中国国内の物流の大きな足かせともなっているが、問題解決には長い長い時間がかかるだろう。
抜本的解決はほど遠い事は認識できるが、少なくともこのような有害物質が中国から偏西風に乗って日本国内に流入している事実は広く知らしめ、必要に応じて警戒警報など適切な情報提供の仕組みが必要である。