阿部ブログ

日々思うこと

食料資源としての昆虫

2010年08月14日 | 日記
8月2日、海洋生物の多様性や個体数を10年にわたって調査してきた国際プロジェクト「海洋生物センサス(Census of Marine Life、CoML)」の報告が科学誌プロスワン(Public Library of Science、PLoS ONE)に発表された。世界の海の中で生物の多様性に最も富んでいるのは日本とオーストラリアの海で、海洋生物の中で最も種類が多いのは甲殻類であると報告されているが、この甲殻類より個体数が多いのは実は"昆虫"である。地球上に生息する生物の約80%を占めると言われ、この"昆虫"を食糧資源として捉える見方がある。
世界人口は2050年に90億人になると予想されているが、この膨大な人口を養う為には、農業生産を70%以上の増やす必要があると試算されている。
特に新興途上国での食肉の消費が増えており、近い将来、食肉の不足をもたらすのは必須の状況。この為、食肉の代替が必要となるが、農業昆虫学者のマーセル・デイックは、食肉を代替する最有力は"昆虫"であるとしている。彼によれば現在でも人類1人当たり200kgと言う膨大な"昆虫"が存在していると言う。食用昆虫の生産は、食肉に比べて極めて効率的で、10kgの餌でバッタ9㎏を生産できる。これに比べ鶏は5㎏、豚3kg、牛においてはたったの1kgの肉が生産出来るに過ぎなく極めて非効率。また昆虫は育成過程で生じるアンモニアや二酸化炭素など温室効果ガスの排出も圧倒的に少ない特徴も備える。しかも昆虫は、蛋白質、脂質、ビタミン類など栄養が豊富であり、カイコ100gには日常生活に必須な栄養素である銅、亜鉛、鉄、チアミン、リボフラビンなどを豊富に含み、コオロギはカルシウムに富み、シロアリは鉄分が豊富で、バッタは地上のエビに譬えられる。
世界で食べられている昆虫は、メキシコの約300種類を筆頭に、500種類以上はあると推定されているが、日本では大正時代に農商務省の昆虫学者・三宅恒方が食用・薬用昆虫の全国調査を実施している。それによると昆虫食は、ハチ類14種をはじめ、蛾類11種、バッタ類10種など、合計55種との結果を得ており、決して昆虫食は我が国にとっても珍しいものではない。今後、農業生産に必要不可欠な耕作可能地の面積が減少し、世界的な気候変動による農業生産の不安定さが増す可能性を考えると、昆虫と言う最も生物多様性に富む種を食糧資源として捉えた取組みも検討する必要があるのではないだろうか。

レアアースとトリウムの動向_2010

2010年08月03日 | 日記
○1月、資源エネルギー庁・原子力政策課(三又課長)が「レアアース・トリウム国際動向研究会」(仮称)の立ち上げを企画。トリウムを全面に取り上げる事からエネ庁ではなく東京財団を事務局とする方向で調整。

○3月3日、米国議会上院でハッチ氏とリード氏が共同で「Thorium Energy Security Act of 2010」法案を提出。
≫特に可決される現実味というよりは、トリウムに対する意識をあげるための周知活動のようなものとリード氏のスタッフは発言しているとの情報あり。
≫下院では、Joe Sestak(民主・ペンシルバニア)議員が、HR1534という法案を提出し、DOD長官に、thorium-liquid fueled nuclear reactorsの使用について、海軍(もしくは海上での)電力ニーズとその他の適用について研究を行うことを提案。2009年3月に下院の軍事関係の委員会に提出。2009年4月に海洋エネルギー等の小委員会に渡り、そこから動きが止まっている。

○3月29日~30日、グーグル本社(マウンテンビュー)にて「トリウム・エナジー・アライアンス」のイベントが開催された。

○5月25日、原子力学会・核燃料部会にトリウム委員会を三菱商事が主導して設立。

○6月3日、中国国務院はレアアース(希土類)鉱物を一握りの国営企業だけがコントロールできるようにし、民営の未認可レアアース鉱山についても中国政府管理とすることを検討。中国産の大量のレアアース鉱物が不法に輸出され、安値で取引されており、中国政府高官は同鉱物の価格上昇を望んでいる。また、「外国企業は採掘による環境汚染コストを支払うべきだ」と述べた。

○6月初旬、パリにてノルウェーのThor Energy社が「軽水炉用トリウム・プルトニウム混合酸化物燃料に関する技術会合」を開催。
≫ノルウェーのハルデン試験炉でTh-Pu燃料照射実験の計画を発表。日本企業にも出資を持ちかけている。

○6月17日、欧州委員会の専門部会が、今後EUで供給リスクが高まるレアメタル・レアアースを14品目指定し、将来的にどう対応すべきかの報告書を発表した。欧州委員会はこの報告書をもとに今秋までにレアメタル・レアアースの戦略提言をまとめる。
 ≫指定された14品目のレアメタル・レアアースはベリリウム、コバルト、ガリウム、ゲルマニウム、タングステンなどで、世界全体で2030年におよそ3倍(2006年比)の需要量になると予測している。供給リスクが高い理由は、中国が、今後自国内での需要が増え、さらに高性能、高付加価値の製品開発を進める場合、他国への輸出を制限するリスクがある。レアメタル・レアアースの資源国であり且つその最大の市場になりうる中国という存在はEUの今後の産業政策にとって重要な鍵を握るかもしれない。
 報告書は対策案として、5年おきのEUの輸入・製造・消費におけるモニタリング・統計調査、代替資源の可能性検討、リサイクルの強化を挙げている。また今後上市される新製品に使われるレアメタル・レアアースの需要予測の必要性や、供給国との良好な通商外交の維持を指摘。

○6月22日、米上院に米国内のレアアース産出再開を経済的に支援する法案(Rare Earth Supply Technology and Resources Transformation Act)がLisa Murkowski上院議員(共和党、アラスカ州)によって提出された。同法案では米国内のレアアース産出を促進するための融資保証や備蓄をオバマ政権が検討するよう求めている。下院にも同様の法案(HR 4866)が3月17日にMike Coffman下院議員(共和党、コロラド州)によって提出されているが、年内成立の見通しは明らかではない。1980年代半ばまでは、米国がレアアース市場を主導していたが、その後は中国が低価格でレアアース供給市場を掌握。最近は中国が輸出量を減らしているため、物量確保が難しい状況にある。

≫米通商代表部(USTR)は現在、中国がレアアースを囲い込んでいるという証拠や情報を業界団体や労働組合から集め、世界貿易機関(WTO)に中国の輸出規制を訴える準備を進めている。米政府監査院(GAO)が今年4月に発表した報告書によると、中国は世界のレアアース生産の97%に関与しており、「米国に対する市場支配力」があると指摘。また、輸出割当や最高25%の輸出税を通じてレアアースの輸出を制限しているという。EUも今月上旬、「レアアースの調達がますます困難になっている」との報告書を発行した。米国とEUは昨年、WTOに対し、中国によるレアアース市場の独占状況を調査するように要求している。

○7月1日、日本学術振興会原子炉材料第122委員会にて「トリウムとエネルギー戦略」など講演が行なわれた。亀井さん、高木教授、日本エネルギー経済研究所の小宮山氏などが講演。

○7月9日、東海大学・原子力工学科の高木教授が「トリウム資源の大規模利用に向けた次世代原子炉開発の展望」と題して同大学・高輪キャンパスで説明会を開催。

○7月20日、エネ庁・原子力政策課が「レアアース・トリウム研究会」の第1回開催にむけて関係者の日程調整に入る。

○7月29日、原子力委員会(第40回)にて京都大学・山名教授が原子力政策大綱審議に関わる意見を提示し、その中でトリウムを軽水炉プルサーマルの燃料として利用することにより燃料サイクルの柔軟性をもたらす効果あり、と発言。