阿部ブログ

日々思うこと

京都大学のiPS細胞研究所 ~ 内部階段と遺伝子周期表~

2014年07月30日 | 雑感
京都大学のiPS細胞研究所(CiRA:サイラ)を訪問し、iPS細胞について様々お話をお聞きする機会を得た。iPS細胞研究所は30の研究グループと300名の研究者から構成される研究所で、所長は山中伸弥教授。
      
iPS細胞は、人工多能性幹細胞の事。2006年に誕生。人工多能性幹細胞はinduced pluripotent stem cellの頭文字を取ってiPSと命名。iPS細胞は、人間の皮膚などの体細胞に、4つから6つ程度の遺伝子を導入し、数週間培養することによってできる、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力とほぼ無限に増殖する能力をもつ多能性幹細胞。

iPS細胞とは別に、以前から研究されているES細胞がある。ES(胚性幹)細胞は、生殖細胞を利用する事から倫理上の問題有との指摘を受け制限されている。ES細胞による研究は現在も行われているが、不妊治療などで未利用/廃棄する受精卵を患者の許諾を得て譲り受け研究利用。ES細胞はマウスで1981年に検証され、ヒトでは1998年に検証済み。

iPS細胞の初期型は、Oct3/4、Sox2、klf4、C-Myc(←実はガン源遺伝子)の4遺伝子によるレトロウィルスで細胞を初期化していた。ヒトでは2007年に実証。この功績をもって2012年に山中教授がノーベル賞を受賞。現在はOct3/4、Sox2、klf4、L-Myc(C-Mycはがん源遺伝子なのでL-Mycに変えた)、LIN28、p53siRNAを組込むエピソーマルプラスミドで細胞を初期化している。因みにエピソーマルプラスミドは、初期化する遺伝子は後に消えてしまうので、後からiPS細胞の由来検証は出来ない。レトロウィルスはそうではなく、細胞の由来を検証可能。
(※因みに米国チームは、OCT4 and SOX2, NANOG and LIN28で細胞を初期化)

iPS細胞は、細胞移植などの再生医療以外にも、毒性検査、病態再現、創薬に使える。iPS細胞の研究では、加齢黄斑変性の再生医療が進んでいる。早晩治験許可がおりる。この加齢黄斑変性の再生医療は神戸にある理化学研究所の高橋政代博士が行っている。眼では、網膜色素上皮細胞による再生医療の実績あり。但しこれはES細胞での実績。パーキンソン病の再生医療、これはドーバミン産生神経細胞の異常からドーパミンが生成されなくなることで発病する。これはiPS研究所の高橋淳博士が担当。来年には人の再生医療を申請する予定。血液疾患への応用。現在の医療技術では造血幹細胞を人工的には作れない。血液疾患の場合、巨核球と赤血球前駆細胞などをiPS細胞で再生させる事になるが、課題は大量にiPS細胞が必要になる点。この研究は、当研究所の江藤浩之教授が実施。

iPS細胞による再生医療は限定的で、治療に使える細胞を作るのに数か月から半年かかる。この為、iPS細胞のストックが重要。健康なドナーさんから血液を採取。これは日赤と提携して実施している。とてもiPS研究所だけでは無理。例え京都大学病院が隣で協力関係にあろうともだ・・・。iPS細胞の培養時間短縮の為、事前にiPS細胞を調製する細胞調整施設(FiT)を整備して、ここにストックする。要請があればFiTからiPS細胞を国内の研究機関や病院に分配する。これで最初から培養する時間を大幅に短縮する事が出来ると考えている。仮に70本人分のiPS細胞がストック出来れば、日本人を対象にする再生医療の80%に対応可能と試算しているとの事。

世界的にはALS(筋萎縮性側索硬化症)の状態を再生する研究が注目されている。しかし難病克服の為とはいえ、患者から直接ALS細胞を採取する事は流石に憚れる。そこでALSの患者から許諾を得て皮膚などの細胞を採取し、iPS細胞から運動神経細胞を再生する取り組みがなされている。自家細胞からのiPS細胞分化なので多分、患者と同じ運動神経細胞が再生するとの仮説。研究成果としては、ALSの患者さんからのiPS細胞から分化した神経細胞の突起が延びない事を検証しており仮説が正しい事が証明されている。今後は、神経細胞の突起が延びる処方を探求している。
アルツハイマー病には個人差がある事が分かっている。例えばアミロイドβが溜まっている人と、逆に溜まっていない人などなど個人差がある。将来的には、それぞれの個人差に適合した個別化医療とか先制医療が可能となるかもしれない。研究者は、井上治久教授。

iPS細胞はデファクトでは、神経細胞になる傾向があるようだ。細胞分化のポイント・ポイントで調整しながら望む細胞を得る努力をしているのが現状。ES細胞と比較してiPS細胞は、振れ幅が大きい特徴がある。ES細胞はその由来が判明しているのが特徴。しかしES細胞が良いかとか、iPS細胞が良いとか単純には判断できない。

以下、徒然なるままに書いてみます。

○再生医療にはどのくらいのiPS細胞が必要か?
血液の場合にはiPS細胞約400g程度の量が必要。眼の加齢黄斑変性の場合にはほんの少しのiPS細胞で大丈夫。

○自家細胞によらないiPS細胞による再生医療の場合の対応は?
自家遺伝子でないiPS細胞を移植する場合、遺伝子のHd型6座を調べて合致すれば移植しても拒絶反応が出ない可能性が高いと判断される。しかし拒絶反応のメカニズムは明確ではなく、遺伝子Hd型による判断は完全に大丈夫とは言えない。多分に拒絶反応が起きる可能性が低いとは言えると言う程度。

○米国ではiPS細胞分野への研究への投資が莫大である。しかし再生医療に傾いている日本とは異なり、米国では創薬系のiPS細胞研究が主流である。iPS細胞による再生医療分野は米バイオベンチャーからすると資金回収が難しいリスクありと判断しているようだ。逆に日本企業は、iPS細胞による創薬研究に目を向けない傾向がある。創薬だとiPS細胞の検証をする必要がないので、創薬リスクは低いはずだが、何故か日本企業の取り組みは遅れているのは残念。

○良く言われるiPS細胞の癌化リスクはほぼ無い。研究者は、iPS細胞は癌化しませんとは、絶対に言わない。聞かれれば癌のリスクは有りますと言う発言になる。この為、iPS細胞には癌化のリスクがあるとの認識が一般に広がっているが、医療に用いるiPS細胞に癌の問題無い。iPS細胞研究の第一線では、悪性腫瘍(=癌)より良性腫瘍の方が今は課題。

○iPSアカデミージャパン社長によると、iPS細胞の大量培養技術の確立は日本の最大の課題。元々のiPS細胞は米国からの輸入品であるとの事。

個人的には、iPS細胞の3次元化に関心ありだが、これはかなり難しいと言うことだ。

京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の10年目標(2020年まで)は以下の通りとの事。
(1)基盤技術の確立と知財の確保
    →京都大学による基本特許成立国は29ヶ国1地域。2014年3月現在)。
(2)再生医療用iPS細胞ストック構築
    →目標としては75種類のiPS細胞をストックする事。
(3)再生医療の臨床試験を開始
    →難病系ではパーキンソン病、糖尿病、血液疾患など。
    →加齢黄斑変性の再生医療。
(4)患者由来iPS細胞による治療薬開発(難病、希少疾患など)
    →この分野が一番有望か?

                  

今、iPS細胞研究所の隣では、第2研究棟が建設中だ。第2研究棟は、地上5階、地下2階、延床面積5,478.53㎡。第2研究棟と第1研究棟とは渡り廊下で繋がるようだ。因みにiPS細胞研究所の2階から上の研究フロアーは、内部階段で移動できるようになっており、これは山中所長の意向が反映されているとの事。これは良い。内部階段を設けてコミュニケーションを誘発することは、清水建設本社ビルの設計部でも見た。越中島の研究所も内部階段で移動できるようになっており狙いは同じだ。
※過去ブログ:清水建設本社ビルが凄い ~ CASBEE Sランク、LEEDゴールド認証~

最後に、iPS細胞研究所の3階には、ハイパフォーマンス・コンピュータを有する情報処理の部隊が入居している。神戸にあるスパコン「京」ともオンラインで接続されている。このiPS細胞研究所にはITを駆使して遺伝子の周期表を作ろうとしている研究者がいる。増殖分化機構究部門の藤渕航教授だ。是非とも研究を完遂して欲しい。


3次元積層技術による人工関節ビジネス~ナカシマメディカル~

2014年07月28日 | 雑感
岡山にナカシマメディカル(株)と言う会社がある。個人的には、平成のプロジェクトXのように思える。

ナカシマメディカルは、ナカシマプロペラのメディカル事業部を分社化し、2008年9月に設立された企業。資本金1億円、従業員数は175名。同社は、膝や肘などの各種人工関節、骨接合材料(髄内釘、固定プレート)等の医療機器の開発・製造・販売を生業としている。親会社のナカシマプロペラは、1926年創業で、船舶用のプロペラメーカーとしての加工技術を応用して、1987年に当時の厚生省より医療用具製造許可を受け、チタン合金製の人工関節の開発に着手。1995年にはメディカル事業部を立ち上げ、2001年にはメディカル棟を完成させた。2004年にR&Dセンターを岡山リサーチパーク内に開設するとともにISO13485の認証を取得し、2006年に人工関節のCEマーク(EU地域で販売される指定製品に貼付を義務づけられている安全マーク)を取得。このR&Dセンターでは、主に人工関節との接合のため最適な形状に患者の骨を削る手術支援ロボットなどを開発。2008年には、革新的医療技術の実用化を促進する先端医療開発特区、所謂スーパー特区(5年間)に採択されている。
このスーパー特区では全国から143件の応募があり、そのうち24件が採択された。ナカシマプロペラは唯一の民間企業として、産総研や理研などと伍してプロジェクトの中核研究機関の役割を担うことになった。ナカシマメディカルの研究テーマは、「生体融合を可能とする人工関節の患者別受注生産モデルの構築と、人工関節の超寿命化」である。スーパー特区の有利な点の一つは、規制を担当する厚生労働省、独立行政法人_医薬品医療機器総合機構と開発段階から薬事相談等が可能になる事である。

ナカシマプロペラが、中核事業であるプロペラ製造からメディカル事業を開始したきっかけは、異業種交流会でプロペラ工場を見学した医師から、「チタン合金でプロペラを製造できるのならば、生体親和性の高いチタン合金と曲面加工技術で人工関節を製造できるだろう」との意見をもらった事が発端。人工関節のシェアの大部分は欧米メーカーが占めるが、ナカシマプロペラは、骨格も生活様式も異なるアジア諸国の人々のための人工関節の開発を目指す事とした。全国で膝の関節痛で悩む人は1000万人以上と推測されており、歩行困難となる人の最後の手段としてアジア人向けの国産人工関節が必要とされていると考えた。しかし現在でも人工関節のシェアの過半は未だ海外製品である。
同社は、船舶用プロペラで世界30%のシェアを持つプロペラメーカーで、0.01ミリの誤差にも対応できる研磨技術を持つ。人工関節と言う全く畑違いの分野への進出であったため、当初は、「プロペラ屋がなぜ人工関節を作るのか」、「本当に使えるのか?大丈夫なのか?」との反応が多数で、製品が売れない日々が続いた。しかし、欧米の人工関節より優れた、精緻な人工関節の開発を継続し、遂に人工関節を完成させた。

2008年の分社化後、ナカシマメディカルは2010年に人工関節の研究や開発力を強化するため、今までのR&Dセンターの2倍以上の規模となる先端イノベーションの拠点を整備した。敷地面積3210㎡、鉄骨2階建て延べ1768㎡。この拠点では、基礎研究から臨床研究、医師の手術トレーニングまで一貫して対応できる環境を持ち、革新的な医療機器の研究開発を行っている。2011年、海外勢から国内シェアを奪う為に、医療機器商社(株)日本エム・ディ・エム(東京都新宿区)と販売提携し、骨接合用品のうち、骨折した部分を固定するため体内に埋め込むプレートや棒状のネイルなどの供給を開始。また国内だけでなく、販売承認が容易な香港において、人工指関節、肘関節の輸出を2009年に開始。2011年には中国本土での人工肘関節の販売承認を取得している。

ナカシマメディカルは、スーパー特区以降、積極的に産官共同研究に取り組み、地元の岡山大学、岡山理科大学とナカシマホールディングスが2009年に包括協定を結んだのを嚆矢に、東京大学、京都大学、名古屋大学などや、独立行政法人系研究機関と共同研究開発を実施している。また同社が主体となって「人工関節の機能高度化研究会」や「知能化医療システム研究会」などを立ち上げこの研究会活動から、多くの共同研究が生まれている。特に「人工関節の機能高度化研究会」には16機関、42名が結集している。この連携活動は、行政組織も認めるところとなり、2009年には「平成21年度おかやま産学官連携大賞」を2012年には「第4回ものづくり日本大賞中国経済産業局長賞」を受賞している。

ナカシマメディカルの共同研究については、最初に大阪大学の中野教授と骨細胞の応力環境下での働き適合する異方性孔構造設計、即ち人工関節への配向化した孔や溝構造の導入による力学特性に優れた骨組織の誘導に関する研究を実施した。その後、2009年に岡山県工業技術センターと人工股関節を長持ちさせる技術の開発に着手。人工股関節の可動部分にある球形の骨頭表面を電子ビームで加工し、体液を潤滑油のように働かせて摩擦を減らすことにより、摩耗を遅らせることを可能にした。2010年には、京都大学富田教授の研究成果をもとに、ビタミンEの添加により耐久性を高めた人工膝関節用の摺動部材を開発。人工骨が擦れ合う部分に使う超高分子量ポリエチレンをビタミンEの添加により酸化しにくくし、既存品の製品寿命(10~15年)より更に10年程度延ばすことを可能とした。
この成果により、厚生労働省から医療用具としての承認を受け、岡山大学病院で臨床使用が開始された。2010年に製造販売を開始。

また東京大学工学部、岡山大学医学部、千葉大学医学部、コアテックとの共同で人工膝関節の埋め込み手術に使うロボットを開発。このロボットは、患者の骨のコンピュータ断層撮影画像情報を3次元データ化してロボットに転送し、医師が皮膚組織を切開後、ロボットのアームが露出した膝の骨を高い精度で削る優れもの。医師の手だけで手術する場合には15㎝ほど皮膚を切り開く必要があったが、ロボットだとその切開部分は半分で済み、患者の負担を軽減できる。2011年には、旭川医科大学と北海道大学との共同研究に基づき、チタンの他にジルコニウム、ニオブ、タンタルを用いた合金を採用し、人工関節部材の生体適合性を確認、高めるとともに耐食性を向上させた。また、人工股関節の表面の一部に深さと幅が0.5mmの溝を設けて熱酸化処理を行い、溝の部分に骨の主成分の一つであるアパタイトを形成し易くした。これで骨との結合性を高める事に成功。

2012年は、最初に共同研究した大阪大学中野教授と人工股関節装着後の骨の強度を高める技術の開発に着手。人工股関節の表面の太ももの骨と接する部分に溝(幅、深さとも0.5ミリ)を20本ほど入れ、人工関節を装着すると、周囲の骨が成長(再生)し結合するが、溝の向きを骨の成長方向に合わることで強度を高めた。再生した骨の量が増加するとともに、強度に関わるアパタイトが健常な骨と同様に規則的な配列となることを可能にした。

これ以降の共同研究には、
・日本に2台しかない大面積電子ビーム照射装置による、インプラントの平滑化と表面改質、及び同時加工プロセスに関する研究(岡山大学、宇野教授)
・低コスト化を実現する摺動部材の研磨プロセスに関する研究。これはナノオーダーの研磨技術を適用し、平滑化と表面改質を行うもの(東京大学・割澤准教授)
・人工関節の機械的特性評価。これは各種規格・基準に基づく審査に対応した整形インプラントの検証と妥当性確認に関する研究(岡山理科大学・金枝教授)
・3次元骨形状・アラインメントを考慮した手術プランニングソフト、つまり医用画像を使用した骨形状の高速3次元再構成と、ナビゲーション&手術ロボットシステムの連携に関する研究(東京大学・光石教授、中島准教授)
・人工関節の設計技術とそれを用いた生産システムの構築、即ち医用画像による3次元骨CADモデルによるインプラント形状の最適化に関する研究などがある。

バイオマテリアルでは、生体との結合能・親和性を向上させる材料の開発や、人工関節の耐久性を向上させる研究開発を行っている。チタン=ニッケル合金、チタン=コバルト合金などの生体適合性、つまりニッケルやコバルトが生体内で微量に溶け出す事が知られており、有害との指摘もある(東京大学・生田教授)との指摘に対しては、専門ではなく、正しく答える事が出来ないとの回答だった。生体適合性は重要な問題である。
ナカシマメディカルでは、人工関節の形状精度の向上と低コスト化を目指すと共に、人工関節の高機能化を実現する技術開発を行っている。その他では、手術前プラニングシステムやナビゲーション技術を開発してり、更に高精度かつ高効率な手術が可能となるような医療システムの構築を目指している。

ベトナムと南シナ海に進出するインド、そしてロシア

2014年07月27日 | 雑感
中国がインド洋での覇権を目指して「真珠の首飾り」戦略を展開しているが、インドも着実に南シナ海での地歩を固めている。勿論、インドは南シナ海問題の当事国ではないが、インドの対米貿易の40%が南シナ海を経由して米西海岸に至る、所謂インドのシーレーンであるのが理由の一つである。またインド政府が進める「ルック・イースト」政策によりASEAN域内の全ての国と経済的な絆を深め、特にベトナムとは包括的関与政策を戦略的に進めている。

インドとベトナムの本格的な軍事連携は、2000年3月のインド国防相フェルナンデスがベトナムを訪問した際に締結された防衛協力に関する議定書が最初と考えている。この議定書に基づきインドは、ベトナム空軍のMiG-21へバージョンアップされたレーダーや電子システムを供給し、パイロットの訓練をインド国内で実施するなど協力の枠組みが拡大。21世紀に入るや中国の南シナ海でのパトロールが強化され、ベトナムの漁船が沈没させられるなど海事事件が発生するに至って、インド沿岸警備隊とベトナム海上警察は、共同パトロールについて両国は合意。2003年5月には、両国は 包括的な協力枠組みに関する共同宣言を出している。その後、インドとベトナムは、2007年11月戦略的パートナーシップに関する共同宣言を再度出し、同年12月には、早くもインドのAnthony国防大臣とベトナム国防大臣が軍事分野での覚書に調印。この共同宣言後、インドは、ベトナム海軍艦船に対するスペアパーツ(約5000品目)が提供された。このスペアパーツは、退役するインド海軍のペチャ級フリゲートからの部品が転用、提供された。2009年には、ベトナムがロシアから Project63Z Varshavyanka級(Kilo改級)潜水艦を導入することが決まり、HQ 182 Hanoi と命名された最新のベトナム潜水艦の補修・管理についてインドとベトナムは何らかの合意に達していると思われる。

2010年、ハノイで開催された第17回ARF閣僚会合において、インドは南シナ海の諸問題は多国間で行うべきとの立場を示し、インドは、この後、ベトナム海軍の能力を向上に力を尽くす事となる。2011年、中国はインドのベトナムへの軍事支援、特にベトナム海軍への協力に対し、難色を示して見せた。2011年7月22日、ベトナムを親善訪問していたインド海軍の強襲揚陸艦エイラバットが、ニャチャン港からハイフォンに向かう途中、海洋無線で 中国領海に入っているとの警告を受けた。インド海軍は当然これを無視。次いでインド外務省は、南シナ海における海上航行の自由、及び国際法において認められた原則に従った海上通航権について声明を発表している。中国のこの嫌がらせは、多分にベトナム沖での石油・天然ガスのベトナム=インドによる共同資源開発が背景にある。
2011年9月、インドはベトナムと南シナ海での石油・天然ガス開発計画に合意。翌月10月には、インドの国営石油天然ガス会社「Oil and Natural Gas Commission Videsh Limited」(OVL)が、ベトナム国営石油会社「Petro Vietnam」との間で、 石油・天然ガス開発に関する3年間の長期契約に調印。この契約は、ベトナム沖ブロック127、及び128における開発投資を含むもの。2013年11月20日、インドとベトナムは南シナ海での石油・天然ガス開発プロジェクトを拡大することに合意。ベトナムは、インドOVLに対し、南シナ海で新たな開発鉱区を提供。これは中国共産党の感情を逆撫でした。

さて、ロシアの存在もベトナムにとっては大きい。陸海空の装備はロシア製だ。インドも大体にて然り。インドと同様、ロシアも戦略的にベトナムと緊密な関係を構築・維持してきた。ベトナムは中国の隣国だからだ。その中国は1979年にベトナム侵攻。しかし中国共産党軍は負けた。戦績はは散々。そりゃそうだ、米軍との戦闘に従軍して来た古参兵が参戦している。中国共産党軍がベトナム軍に勝てる訳がない。当時のソビエト、今のロシアは、中国の影響力拡大に対し当時から目に見える形で対抗しているのは明らか。ロシアは、対中国包囲網という戦略目標追求のため、ベトナムとの軍事的&政経強化を加速させている。
ベトナムは、前述の通りProject636 Varshavyanka級(Kilo改級)潜水艦の導入している。これは潜水艦6隻で20億ドル取引だ。2013年、HQ 182 Hanoi はカムラン湾に配備された。公試は、2013年1月8日。HQ 182 Hanoi は、オランダの重量物運搬船、MVRolldock Seaによってロシアのサンクトペテルブルグから移送されている。HQ 182の同型艦5隻は、2016年までにベトナム海軍に配備される予定。現在2番艦 HQ-183Ho Chi Minh Cityは,2013年1月17日にロシアでの海上公試を終了。ベトナムに回航され3番艦HQ-184Hai Phongは、2014年末までに回航される。ベトナムが導入するロシアの Project 636 MVarshavyanka級(Kilo改級)潜水艦は、排水量3,100トン、潜航速度20ノット、潜航深度300メートルで、乗員は52人。兵装は、533ミリ魚雷発射管6本、Kalibr 3M54、若しくは3M-54 Klub。キロ級潜水艦は、ベトナム海軍の資産として対潜水艦作戦及び対水上艦攻撃任務を遂行する。平時は、南シナ海を中心とする偵察、哨戒任務に従事する。

南シナ海におけるインド、ロシア両国の戦略的動向を観るにつけ、東シナ海同様、南シナ海が軍事的抗争の場となる事は避けられないだろう。アジアでの戦争の次は、アフリカだ。これまた悩ましい~

全国水平社の碑~京都市美術館別館入り口左の樹木群脇にある~

2014年07月22日 | 雑感
今日、京都市美術館別館に日本写真家協会(JPS)展を鑑賞しに出張った。作品は内閣総理大臣賞を含めゴミだ。セコイが入館料700円返せ~という所か・・・まあ、南禅寺界隈を散策できたので、まあ良いか~。
さて、京都美術館別館の入り口左側の樹木に隠れてはいるが、全国の碑が屹立している。
しかし陸軍中野学校の碑と同じで分かりにくいぞ!

                

碑文はこうだ↓  

『建立の辞
大正十一年三月三日、全国から三千人の大衆が、この地、京都市岡崎旧公会堂に集い、歴史的な全国創立大会を開いた。
永い間の差別と屈辱の鉄鎖をみずからの力と団結によって解き放とうとする大衆はここに蹶起した。
人間の自由と平等を求めてやまないこの炬火はついに燎原の炎となって燃えあがっていった。
はかくして生まれた
人の世に熱あれ、人間に光あれ

と結ばれたこの創立宣言は、日本の近代民主化に黎明をもたらす最初の人間宣言の栄誉を担うものとなった。
それはこの宣言が単に解放のみならず、すべての人間の解放を目指す普遍的な原理に根ざしているからである。
このようにして生まれた解放運動は、幾多の試練と苦難を克服して、今もなお発展継承されている。
本日、ここに創立六十周年を記念して永く先人の偉業をたたえるとともに、国民的課題として差別を解消する決意を表わすため、この碑を建立するものである。
昭和五十七年三月三日 京都市』

今日、東京は梅雨明け宣言がなされたが、真の差別解放の宣言は何時来ることか。

東京海洋大学で開催されている 『鳥羽山鯨類コレクションの世界』

2014年07月06日 | 雑感
東京海洋大学の品川キャンパスで 『鳥羽山鯨類コレクションの世界』が開催されている。
パンフレットによれば、鳥羽山鯨類コレクションは、鴨川シーワールド元館長の鳥羽山照夫博士が収集した小型鯨類骨格標本群。それと彫刻家の高橋俊男氏が製作した鯨類ミニチュアモデルの総称だそうだ。
何でも骨格標本は全111個体分あり、これだけが一同に揃うコレクションは極めて貴重なもののようだ。鳥羽山鯨類コレクションは、東京海洋大学に寄贈され、現在に至る。

                                         

生物研究社から『鳥羽山鯨類コレクションの世界』が出版されている。この本では、コレクションの111個体全ての頭骨の写真が紹介され、ミニチュアモデル全86鯨種も掲載されている。専門外でも興味深く観れる本だと思う。

東京大学の河岡義裕教授が、免疫システムを回避するインフルエンザ変異株開発、これは生物兵器。

2014年07月05日 | 雑感
米ウィスコンシン大学の河岡義裕教授が、H1N1型インフルエンザ・ウィルスを改変して、ヒトの免疫システムを回避できるN1H1型変異株を開発したと報道されている。既に多くの人はH1N1型に対する一定の免疫を持つと考えられており、比較的脅威が低いインフルエンザであるとの評価だが、河岡教授が開発したH1N1型変異株は免疫システムを回避できるので、免疫を獲得していても抵抗力を持たない事になる。これは立派な生物兵器開発だ。河岡教授は、東京大学医科学研究所の感染・免疫部門 ウイルス感染研究分野の教授であり、この変異株の開発は、国内では難しい。河岡教授は、国際ウイルス学会の会長だが、それでも無理である。N1H1型変異株の開発は米国だったから可能だった。

インフルエンザを克服する事は極めて重要な研究である。毎年、世界中で1200万人がインフルエンザ感染症により死亡していると言われる。日本でも毎年、全人口の10~40%が感染する熱性呼吸器感染症の原因となるのはインフルエンザ。世界的にもインフルエンザは、世界中で毎年約50万人もの死亡者を伴うエピデミックを引き起すし、第一世界大戦中に発生したスペイン風邪のように世界中で4000万人を死に至らしめるパンデミックを引き起こすウィルス。インフルエンザは人類にとっては大きな脅威であり、驚異を克服する研究は欠かせない。

インフルエンザの研究は、スペイン風邪の悲劇を受けて、現在まで精力的に継続さ続けてきた。しかし、未だインフルエンザの病原性発現機構の詳細は明らかになっていない。特にインフルエンザのウィルス蛋白質-宿主間の相互作用、インフルエンザ・ウィルスの感染による宿主細胞応答のネットワークについては、全くの未知で、解明にはほど遠い状態。河岡教授は、我々人類にとって一番身近であるインフルエンザ・ウィルスを本質的に理解していいない、また知識が完全欠如している事が、感染予防ならびに抜本的な治療方法の開発につながっていないと認識し、これを克服する研究の一貫として、今回の変異株の開発をおこなったと信じたい。しかし、冒頭述べたようにこれは完全に生物兵器開発であり、インフルエンザの研究ではない。

N1H1変異株の開発が行われたのは、米ウィスコンシン大学のインフルエンザ研究所(マディソン)。この研究所のバイオセーフティレベルは3。ウィスコンシン大学は、変異株が実験室から流出する恐れはないと主張しているが、この手の研究内容は簡単に流出する。今回の研究は、日米同盟の流れでのバイオ研究であり、戦争放棄を明言している日本では行えない研究だった。ウィルス研究は、典型的なデュアルユースなので、真の研究意図は秘匿し易い筈だが、今回は世界的な反響を巻き起こした。河岡さん、功名に走ったかな・・・