阿部ブログ

日々思うこと

米国4大シンクタンクが 「Strategic Choices and Management Review」を実施

2013年05月31日 | アメリカ
東京財団で開催されたカーネギー国際平和財団の「2030年の中国の軍事力と日米同盟」の説明会の際に、モデレータの浅野貴昭氏(東京財団研究員兼政策プロデューサー)が発言していた通り、国防費の強制削減対応策を検討する戦略レビュー(Strategic Choices and Management Review:SCMR)に対する事前提案が、5月29日に行われた。
浅野氏は、4大シンクタンクの政策提案を実に羨ましいとも発言していたが、全くその通りだ。

SCMRに対する事前提案をしたのは、以下4つのシンクタンク。
(1)The American Enterprise Institute(AEI)
(2)The Center for a New American Security(CNAS)
(3)Center for Strategic and Budgetary Assessments(CSBA)
(4)Center for Strategic and International Studies(CSIS)

各シンクタンクは、国防費削減環境下にある国防戦略を立案し、国防総省のポートフォリオをリバランスする提案をCSBAのリバランスツールと方法論を使用して説明をを行った。

CSBAは、今後10年間の予算削減の目標を2つのシナリオ設定している。
A案は、52兆円の削減と、B案の24兆円削減で、A案では10年間均等削減、B案は前半は緩やかな削減過程を経て、後半に削減規模を大きくするシナリオ。またCSBAは、リバランスツール(Rebalancing Tool)を用意しており、650個の削減オプションを準備し、各シンクタンクは、個別の試行に基づき選択して削減目標を如何に達成するかシュミレートする。

各シンクタンクは、①UAV、②戦闘員/戦術航空機、③爆撃機、④海軍能力、⑤水上艦艇、⑥陸軍部隊、⑦陸軍戦闘兵器、⑧陸軍予備戦力、⑨宇宙とサイバー戦、⑩戦略兵器とミサイル防衛、⑪特殊作戦、⑫事前備蓄、⑬人件費(文官)、⑭研究開発に分けて分析し提示しており、各シンクタンクの提案比較はココ参照。

『次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)』 の幹部人事と活動概要

2013年05月30日 | 雑感
インドネシア訪問中の新藤義孝総務相が4月29日に明らかにした「次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)」が、5月2日に一般社団法人として発足しているが、同フォーラムの主要幹部の人事が決まり本格的に活動を開始する。

フォーラムのトップである会長には、トヨタ自動車の渡辺捷昭相談役(経団連副会長)が就任。理事長には、総務省系の東京大学大学院・須藤修教授が就任。教授は「放送サービスの高度化に関する検討会」で座長を務めており、5月24日に参議院を通過し成立したマイナンバー法案に尽力されている。副理事長には、NHKの松本正之会長と、ソニーの平井一夫社長が就任。

当初、須藤教授は理事長就任を固辞していた。
地上デジタル投資が一段落して間がない事や、安部政権の成長戦略が必ずしも成功するとは限らず、自分のスキルも勘案して就任する事を断り続けていたが、渡辺氏から全面的に支援するとの言質を取り付け、更に松本氏と平井氏も理事長を完全にサポートする事を確約した事から、理事長就任を承諾した。但し無給。

「次世代放送推進フォーラム」は、現在の2Kを大幅に凌駕する超高精細テレビ4K、8Kといった次世代テレビの段階的な普及と、新しいアプリケーションの開発を促進させる為の様々な取り組みを官民連携で行う事となる。この次世代放送は、6月に発表される成長戦略にも盛り込まれる。

このフォーラムにはNHK、TBSテレビ、テレビ朝日、テレビ東京、フジテレビジョン、日本テレビ放送網など放送局、CATVのジュピターテレコム、衛星放送のスカパーJSATや、テレビメーカーのソニー、東芝、パナソニック、シャープ、そして通信会社、広告代理店、商社など21社が参画。

総務省の計画では、2014年のワールドカップに向けて、CSの124から128チャンネルの間で4Kの試験放送を開始。CS以外のBS、地上波と順次、使用電波を拡大させ、2016年に8Kの実用化試験放送、2020年に次世代放送が本格的に放送サービスを開始する。

「次世代放送推進フォーラム」が、放送免許を得てテストベッドの運営を行い、2014年からの4K試験放送の実証に着手する。4Kや8Kといった次世代放送については、アメリカ、EU、韓国がプロジェクト計画を始動しつつあり、日本としては、これに乗り遅れる事による家電企業への影響を最小化し、凋落傾向にあるテレビ関連ビジネスにおいて日本発のイノベーションを引き起こし、一気に挽回を期することを企図している。

さて、新しいアプリケーションとしては、リモコン操作から音声認識でお年寄りや障害者でもテレビを操作できるようにするとか、マイナンバー法案で実現するであろう行政サービスのプッシュ型のワンストップサービスを次世代テレビで提供するとか、個人認証も可能となるから電子投票や大容量インターネットを通じたショッピングや、通話機能も搭載するなど、素人でも様々考えられる。
2015年以降だと、HTML5も完全に普及し成熟し、次世代放送を見据えた機能が追加され、それこそ次世代HTMLが登場している可能性もあり、ユーザーインターフェースを含めた革新的サービスの提供を可能とするだろう。

個人的にはテレビを観ないので、4K、8Kテレビがどのくらい普及するかは???だが、最新技術で一新した次世代放送基盤は、新たなビジネスを生み出す温床となる可能性は十分ある。

オーストラリアが潜水艦戦力を倍増させ中国海軍力に対処する

2013年05月28日 | 雑感
オーストラリアのギラード政権は、中国の海洋進出を受け、海軍力増強を企図し、現在6隻のコリンズ(Collins)級潜水艦を倍増し新型潜水艦12隻体制とする。オーストラリア政府は、今年2013年の国防白書で、次期潜水艦調達計画「Project Sea 1000」を明らかにし、400億豪ドル(約4兆円)の予算で、2020年から新型潜水艦を導入する。。コリンズ級は、スウェーデンのコックムス社(Kockums AB)に1987年に発注し、オーストラリア国内で建造した通常型潜水艦。
オーストラリアのシンクタンク・インデペンデント・リサーチは、米国の原子力潜水艦の購入を提案しているが、オーストラリア海軍は、スターリングエンジン(AIP:Air-Independent Propulsion(非大気依存推進))を搭載する海上自衛隊の「そうりゅう」型潜水艦に注目している。「そうりゅう」型の静粛性は、ドイツ海軍のUボート212A型と並ぶ程の性能を有すると言う。212型は燃料電池推進でその静粛性は世界一との評判だ。

オーストラリア海軍(RAN : Royal Australian Navy) は、水中排水量4000トンクラスの、通常動力型の大型潜水艦を要求しており、4000トン級の通常潜水艦は、海上自衛隊の「そうりゅう」型潜水艦であり、前述のUボート212A型の水中排水量は1830トンで2000トンに満たない中型艦。武器輸出三原則など廃棄して、インドに新明和の飛行艇を、オーストラリアには「そうりゅう」型を提供するべきで、中国海軍の伸張に対抗するべきだ。

スターリングエンジンを実用化したのは、スウェーデン海軍の「ネッケン」で、量産型は「ゴトランド」で、前述のコックムス社が開発したエンジンを搭載している。「そうりゅう」型のスターリングエンジンは、このコックムス社からのライセンスを得て、川崎重工が生産した「V4-275R MkⅡ」を搭載。当然の事ながらオーストラリアは、前例を踏襲しコックムス社に対し2012年6月に、次期通常型潜水艦のデザイン・スタディを発注している。今年5月には、オーストラリア国防相とスウェーデンの国防相が、会談しスウェーデンのスターリングエンジンなど潜水艦関連の知的所有権に、オーストラリアのアクセスを認めるという合意に達している。

オーストラリアの動きは周到で、スウェーデンとの合意と同じ5月には、米豪防衛通商条約 (Australia - United States Defence Trade Cooperation Treaty) が発効した。この条約は、軍事分野での技術に関する両国の協力関係へのコミットメントを反映したもので、ダーウィンへの海兵隊配備を含む、米豪軍事同盟の強化につながるもので、我が国としては歓迎すべき条約締結だ。またオーストラリア海軍とシンガポール海軍 (RSN : Republic of Singapore Navy) が潜水艦救難に関する合意文書 (Submarine Rescue Support and Cooperation Arrangement) に調印した。この合意文書には、両国が共同で開発した潜水艦救難資材の相互運用性についての具体的・詳細な取決めを行う内容であり、対中国海軍包囲網が着々と構築されている。
最も、不動産バブル崩壊、地方政府の債務危機、不良債権問題が顕在化して、中国経済は失速して軍拡もままならくなるだろうが。
 
日本は、台湾、ベトナム、フィリピン、オーストラリア、インドなどと対中海軍力包囲網を構築するべきだ。特にベトナムやフィリピンには強力に武装した、最新鋭の沿岸監視船を早期に供与して、人材育成、共同訓練などを実施して対中監視・抑止を確実にする事が重要で、今後もやるべき事は様々あり、着実に事を進めるべき。

さて、オーストラリアの海軍力増強は、インドのそれと同じ背景にあることは理解頂けると思う。
着々と海軍力と沿岸防衛監視能力を強化するインド

社会インフラ・ヘルス・モニタリング

2013年05月28日 | 雑感
東京大学の工学系研究科・総合研究機構、藤野陽三教授のお話をお聞きする機会を得た。

藤野教授の学歴は、
・昭和47年4月 東京大学大学院工学部土木工学科卒業
・昭和49年3月 東京大学大学院工学系土木工学専門課程修了,工学修士
・昭和51年9月 ウォータールー大学工学部博士課程修了,Ph.D

藤野教授の専門は、橋梁の設計・建設。特に橋を中心とした社会基盤構造物の計画・設計・モニタリング・マネジメントが専門領域で、この他、動的外乱に対する応答予測と振動制御、長大橋の風に対する応答予測,風工学、橋梁の耐震,地震工学、都市の安全,知動化空間などの研究活動も行っている。
今まで携わったプロジェクトは国内では、
 ①本州四国連絡橋(瀬戸大橋,明石海峡大橋,多々羅大橋など)
 ②東京レインボーブリッジ
 ③横浜ベイブリッジ
 ④鶴見つばさ橋 
 ⑤名港トリトン 
 ⑥白鳥大橋(北海道 室蘭)
 ⑦東神戸大橋
 ⑧碓井橋(長野県)などがある。

また海外では、
 ①ロンドンのミレニアム橋(歩行者に振動制御に対するアドバイサー)
 ②香港のストーンカッター橋(設計パネルのメンバー)
 ③バングラディシュのパドマ多目的橋(JICAのFSアドバイサリ委員会委員長)などがある。
橋梁以外ではヒースロー空港新管制塔の風に対するアクティブ制御とその装置に対するアドバイサーを務めてもいる。

藤野教授の言いたいことは、インフラのヘルス・モニタリングと言っても、ありきたりだが結局イイモノを作るに尽きる。米国の友人曰く、競争入札で作った橋梁が一番弱く、劣化が早いと言っていた。今後の社会インフラ整備を考えると日本も一般競争入札は止めるべきだと考えている。利益を生むためには必然的にコストを削減せざるおえなく、出来上がったインフラは脆弱性を秘める事となるが、それは作った当事者もわからないからだ、と言うこと理解した。

藤野教授の話の概要を以下に列記する。

・米国では、1940年代から本格的なインフラ整備が行われ、既に1970年代から劣化が問題視されており、現在、橋梁だけで60kmに達するインフラを、年間半分の30万kmの目視点検を義務付けて実施している。日本は義務ではない。
・また2007年から定量データを集める「長期橋梁性能プログラム」がスタートし、20年間にわたりデータを収集分析する。この間に廃棄される橋梁については解剖的解明処置が行われる予定。米国の素晴らしい所は、20年と言う長期に渡りプロジェクトを遂行する点にあり。日本の国土交通省が行う同様のプロジェクトは高々5年に過ぎない。結局、データ収集期間が短い為にデータの任意修正と推測を織り交ぜての分析となる為、実質的に役立つデータとはならないだろう。

・解剖的解明とは、取り壊す橋に人工的に損傷を与え、振動などの構造特性にどのような影響がでるかを調べ、橋梁の状態評価を行うこと。EUでは具体的なプロジェクトとして動いており、オーストリアのウィーン=ザルツブルグ間の高速道路を跨ぐPC橋が高速道路の拡幅に伴い撤去されることになり、この機会を期に解剖的解明がなされた。つまり人工的に橋梁に変状を加え、それに伴う橋梁挙動の変化を詳細にモニタリングした。

・このPC橋の4本の橋脚のうち1本について、仮の支柱を併設し荷重を移した上で切断し、PC床版上面近くのテンションケーブルの切断がどのような影響与えるのか。橋の動特性や構造特性に及ぼす変化を実地で計測し、損傷の程度との定量的な関係についてのデータが得られている。アメリカ、EUなど先進国では、橋梁の状態評価は共通する課題であり、様々な実測データを共有することが必要とされている。

・日本において重要なのはストックマネジメント(センシングなど)とリスクマネジメント(地震など)、それにアセットマネジメントを加えたトータルなインフラのマネジメントシステムが必要。

・インフラのヘルス・モニタリングの重要なポイントは、どこに当たりをつけたら良いか?を判断・決定し、実際に計測して分析、そして必要な処置を施す事。問題は見えない部分にあり、今までの橋梁崩落事故の殆どは、目視出来ない部分の劣化、若しくは設計ミスによるものであった。またモニタリングの場合、何を測定するのか?測定したデータは誰が分析するのか、どこにセンサーを付けるのか?この問題解決は難しく、自分も解を持ち合わせていない。

・さらにセンサーのコストが問題。良い精度を得るには高価なセンサーが必要となり、コストが嵩む。コストが嵩むと少量のセンサーしか付ける事が出来ずに、全体像の把握に役立つデータを得る事が出来ない。安いセンサーだとデータが粗く使い物にならないと言うジレンマを抱えている。センサーの価格がワンオーダー下がると、インフラのセンシングは普及する可能性がある。

・明治以来、100年以上にわたって、社会インフラの整備が行われ、今や国や地方自治体などの公的機関が所有して社会インフラは1,000兆円を超える規模となっている。戦後、高度経済成長期、特にオリンピックを契機とした時期には、膨大な数の社会資本が整備が行われ、当時は短期間に大量に安く造る必要があったので、品質的かつ強度的に問題のあるインフラが数多く生まれる要因となり現在に至っている。

・これは橋梁も同じで、明治以降に橋の建設数が多かったのは、1923年に起きた関東大震災後の震災復興の時期と、1964年の東京オリンピック前後。この2つの最盛期に造られた橋の補修費を比較すると、80年前に造られた古い橋に比べて、40年前に造られた橋の補修費の方が多いのです。今でも関東大震災の震災復興で作られた永代橋が今だに現役なのは、先程述べたように「イイモノ」を造ったから。つまりセンシング以前にやる事がある。

・そうは言っても社会インフラの経年劣化に伴う事故が多発し、東海・東南海・南海地震の発生など地震災害を含め、安全・安心な社会を維持する為には、構造物の健全性を定量的かつ客観的に評価することが可能な構造ヘルスモニタリングシステムの構築が重要。

・インフラのリスクは「ハザード」と「脆弱性」によって決定される。全国に張り巡らされたインフラ群を対象としたハザード、脆弱性についての要素技術を統合し、モニタリング、データ送信・処理に関わる実用性の高いシステムを構築し、インフラ・リスクの統合的評価手法の確立を目指すべく活動を続ける。

・インフラの特に劣化した都市基盤における災害や事故防止による安全・安心の実現に向けて、リスクを定量的に評価・監視し合理的なリスクマネジメントを支援する統合センシングシステムを開発する。また国土強靭化にも関係するが、長期的防災保全の最小化、災害事故の事前防止・影響波及の最小化と言う目的を達成する為に、
 ①インフラ、特に重要な都市基盤のリスクをリアルタイムに監視し、
 ②そのリスク特性を明らかにした上で、合理化かつ迅速に必要な対策を講ずる。

・この為に、インフラの「ハザード」×「脆弱性」をセンシングし、それを統合したリスク評価を行う基礎的技術を確立し、光系センシング、電気・磁気系センシング技術に関する基盤技術の高度化を図り、社会実装に向けたシステム開発を行う事。特に前述のようにセンサーのコスト低減が重要である。またセンサノードを増加させ、そのネットワーキングを適切に運用管理し、データの分析と結果の伝配送技術の洗練化も必須である。

以上だが、事例として面白いと思ったのはロンドンのミレニアム橋だった。これは後日書いてみたい。

カーネギー国際平和財団の 「2030年の中国の軍事力と日米同盟」

2013年05月27日 | 雑感
カーネギー国際平和財団が「2030年の中国の軍事力と日米同盟:戦略的ネットアセスメント」(CHINA’S MILITARY & THE U.S.-JAPAN ALLIANCE IN 2030 CHINA’S MILITARY & THE U.S.-JAPAN ALLIANCE IN 2030~a strategic net assessment~)という報告書を発表した。この報告書は、2030年を睨んで、中国の軍事力の進展と意図が、日本と日米同盟に与える影響を、対する日米同盟の能力や意図を軍事だけでなく、包括的な分析・評価、即ちネットアセスメントで分析し、日米同盟のあり方について報告しており、400ページを超える大部の報告となっている。

ネットアセスメントという分析手法は、前述の通り軍事力/準軍事力だけの比較だけでなく、政治・経済・社会・文化など国内の非軍事分野や日米中以外の周辺領域からの外的影響も考慮にいれて多面的に分析するもの。
今回のカーネギー国際平和財団の報告書の分析過程において、東京財団の安全保障関係者がヒアリングに応じている。反面、中国側へのヒアリングは無かった。このようなカーネギー財団との関係もあり「2030年の中国の軍事力と日米同盟:戦略的ネットアセスメント」の調査を担当した2名の専門家を東京財団に招聘し、中国の軍事的台頭を睨んだ今後の日米同盟のあり方について公開討論を5月23日に開催している。

【テ ー マ】「2030年の中国の軍事力と日米同盟 ― 米シンクタンクの戦略的分析と評価」
【日  時】2013年5月23日(木)10:00~12:00
【会  場】日本財団ビル2階 会議室(港区赤坂1-2-2)
【報 告 者】マイケル・スウェイン (カーネギー国際平和財団上席研究員)
   マイク・モチヅキ (ジョージ・ワシントン大学教授)
【パネリスト】山口昇 (東京財団上席研究員、防衛大学校教授)
   渡部恒雄 (東京財団上席研究員兼政策研究ディレクター)
   小原凡司 (東京財団研究員兼政策プロデューサー)
【モデレータ】浅野貴昭 (東京財団研究員兼政策プロデューサー)

東京財団での報告会と公開討論の概要は、以下の通り。

○スウェイン氏:
・先週、中国で米中リスク会議に参加した。この会議の尖閣問題がテーマだったことから日本からも3名参加しており、その一人が東京財団の秋山理事長でした。

・当該ネットアセスメントは、資料に戦略的とあるよに軍事力だけを評価分析したものではない。報告書の分析プロセスにおいて東京財団も研究員と意見交換した。

・この報告書は、向こう15年の将来を予測した分析報告ではない。地域安全保障の観点からの蓋然性を示したもので、異なるシナリオで日米同盟はどうなるか?を6つのパ地域シナリオを提示している。

・今回の調査は、9名。調査分析を担当したのは、5名、サポート4名体制で実施した。インタビューしたのは、東京財団を含む日米関係者で、中国への現地調査は行ったもののヒアリングはしていない。

・我々の分析としては、中国と戦争状態に突入する可能性は低いとだろう。しかし紛争の頻度は高まるだろう。中国が、6つの軍事分野、即ち海洋、空軍、陸軍、核、指揮統制、サイバー戦、及び準軍事分野も含めて必要な能力を獲得すると西太平洋地域のバランスが当然の事ながら変わる。

・今後、相対的に西太平洋地域野における米軍の能力は衰退する可能性が高いが、日本はその軍事的な空隙の穴埋めを出来ないし、やらないだろう。

・但し、中国の軍事能力が拡大するが、西大平洋での米国の軍事優位性を崩す勢力となならないだろうし、別の勢力が現れる事もない。但し、中国の海洋伸張に対して、日本は巧妙な外交で対応する必要がある。

・中国と日本との本格的軍事衝突を抑止しているのは経済力学である。両国の貿易投資関係が極めて密だから、軍事シナリオの発動を抑止するだろう。しかし、最低減の軍事力での抑止、緊張回避が難しくなる可能性がある。

・中国は、今後も経済成長を続けるだろうし、軍事的能力を向上させ続ける。しかし、日本の軍事政策は現状から大きく変更される事はないだろう。もし財政的、かつオフショアバランシング政策への移行による、西太平洋域における米軍の空洞化が進むと日米同盟がどう変質するか等々、6つのシナリオを我々は考えた。

・6つのシナリオは、①日米同盟が相対的に低下、②軍事的危機の発生、③軽減された持続する脅威、④中国の経済力の成長限界により日本への影響が小さくなる、⑤アジア冷戦、⑥中国覇権、米軍撤退。

但し、⑤のアジア冷戦の蓋然性は低い。何故なら東アジアは世界的にも稀に見る経済的な関係が緊密だから。また⑥の中国覇権の蓋然性は低い。今後も死活的に重要で国益に直結する西太平洋から米軍が撤退することはない。但しこの地域での米軍の戦力低減は、カオス状態を生起させるだろう。

・最終的に、中国の軍事的台頭に対応する方策は3つ。
①迅速な戦力投下を可能とする米軍の覇権を維持。特にエアシーバトル構想が重要だが、中国によるディープストライクが可能であるとの前提で戦略を考える必要がある。
②オフショアコントロールにより中国封じ込めつつ、西太平洋域における中国の海空軍力を第1列島線、第2列島線で阻止する想定。
③中国を封鎖する。海洋進出だけでなく、ロシア、中央アジア、インド、東南アジア域の全域における中国包囲網を構築する。しかし、封鎖といえあくまでも抑止であり、外交努力は継続する。米軍は、ハワイ、グアム、オーストラリアなど後方からの長距離投射能力を保持する。先に言及したエアシーバトルだと、軍事的にエスカレーションする可能性が高い。
③米軍の優位性を保持する。つまり中国の海上戦域を抑止阻止する。現状の韓国、台湾、南シナ海で、ある一定の軍事的優勢を確保する。しかしより防衛的であり、中国が持てる軍事力の発動を自制するようにする事が目的。特に中台問題へ介入し、中国が特定の行動を行えないように米国が積極的に抑止行動を行う。

スウェイン氏のプレゼンテーション資料は、以下URL。
China's Military and the U.S.-Japan Alliance in 2030: A Strategic Net Assessment

○マイク・モチヅキ:
・日本の国別分析は一番揉めた。意見の分裂の要因は、今後どういう日本になりそうか? 重要なのは日本にどうなってほしいかは別である点。それとこの報告書の発表タイミングと自民党の政権復帰が同じ時期であった事が状況を複雑にした。

・戦略的には対中ジレンマにより、日本は米国へ自国の安全保障を求める。しかし日本は、経済的に中国の成長を利用し続けるだろう。しかし日本の軍事化、憲法改正など極端なシナリオにならない可能性が高いと分析している。

・日本は、中国の軍事力伸張により防衛システムを改革するだろう。しかし防衛予算は増やさないし、増やせない。この資源制約を超えて効果的な軍事能力を獲得する事が必要である。

・中国は、低強度侵出を行うが、日本にとっては防衛費と資源制約があるので、巧妙な外交が重要。また経済的にはアベノミクスが注目されているものの、長期予想では日本の高度経済成長はない。成長率は、年率1%程度だろう。

・蓋然性は低いものの、米国の対外政策が劇的に変化する。例えば国内回帰政策に舵を切ると、必然的に中国が軍事的攻勢を強める事が予想され劇的なシナリオが現実のもとなる。

・しかし米国の政策変更はあり得ず、日米の真の同盟化が重要。前述の通り、日本は軍事的資源制約により、防衛改革が避けられない。私見だが日本の憲法改正は軍拡とならない。集団安全保障に突き進まずとも、個別自衛権で出来る事はある。このような中、どこまで日米同盟を展開するのか? 日本はインド洋まで展開するとの意見もあった。

・2030年以降、中国の経済的成長が継続すると、既存の日米同盟では中国の覇権阻止は難しい環境、厳しい状況となる事は明らかである。

和文化の交流普及の為には 「グレイトフル・デッド」 に学べ

2013年05月26日 | 雑感
5月24日、三越日本橋本店にある三越劇場で、特定非営利活動法人・和文化交流普及協会 設立25周年記念公演『夏めく宵の女楽』が開催された。

能の宝生流家元、地唄舞・花崎流家元、車人形の家元などが出演する豪華な公演会で、初めて浄瑠璃を鑑賞できたなど、得るものが極めて多かった。感謝です。

しかし、日本のハードロック津軽三味線の感動を伝える術がない。この公演会でみた浄瑠璃の素晴らしさ。これを他人に伝えるのはテキスト、言葉のみ。今の世界でそれはないだろう?

相も変わらず撮影禁止、音声録音禁止と壊れたレコードのようにアナウンスするが、そんな事言っているから和文化を鑑賞し、学び伝承する若年層を増やせないのですよ。根本的に認識を変えて欲しい。

最前列で公演を見ている俺は、当然デジカメで激写したいし、録画モードで動画も撮りたいのだよ。当然、ブログやFacebooなどソーシャルメディアで流すし、会社に言って同僚にも共有するのですよ。ただで広報してくれるのだから、積極的に撮影・録画は認めるできです。

和文化は、今の爺さん婆さん死に絶えたら、どうなるのでしょうか??過去ブログを読んでみて下さい。参考になると思います。多分...
グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』 を読了!
カルトムービー 『ロッキー・ホラー・ショー』 と 『グレイトフル・デッド』 の類似性

着々と海軍力と沿岸防衛監視能力を強化するインド

2013年05月23日 | インド
アントニー(Antony)国防相はインド海軍の指揮官会議で、アンダマン諸島(Andaman Islands)、ニコバル諸島(Nicobar Islands)、ラクシャディープ諸島(Lakshadweep Islands)、ミニコイ諸島(Minicoy Islands )に海軍基地・海軍航空基地を増設するとしている。既にインド沿岸警備隊は北アンダマン島に基地を設置済みで、海軍も新たにアンダマン=ニコバル諸島南部にINS( (India Naval Station))Baaz基地を開設する。

インド国防省は、以前からインド洋における中国海軍のプレゼンス増強に懸念を表明しており、これに対抗して海軍力の強化と、84カ所の監視ポストから構成される沿岸監視センサー網(Coastal Security Network)も今年から本格的に稼働を開始する。併せてインド軍や治安機関も含めた指揮統制通信システム (National Command Control, Communication and Intelligence Network System)も、年内に稼働する事となっており、インドの防衛・監視体制は強化される。

5月15日には、対潜哨戒機P-8Iの第1号機「IN320」がインド海軍ラジャリ航空基地(INS Rajali)に到着した。ラジャリ海軍航空基地は、アジアで最長クラスの滑走路を持つ航空基地で、ロシアから提供されているTu-142Fを配備しているインド海軍にとって重要な基地である。

さて、P-8Iは、ボーイング737をベースにした長距離哨戒機で、アメリカ海軍P-8Aポセイドンをインド海軍向けにチューニングした機体で、P-8は、2012年7月7日に初フライトし、インド海軍には、合計8機が納入される。1号機に続き2号機、3号機も、2013年度内にインド海軍に配属されるイニシャル・トレーニングを経て実戦運用に入る。P-8I の搭載兵装は、Mk.54短魚雷、Mk.82爆雷、AGM-84 空対艦ミサイルを搭載する。
因みに引き渡された「IN320」は、ボーイング737-800、型式、P-8I (737-8FV)、製造番号:40610/3702。

またインド国防相は、海軍と沿岸警備隊の合同指揮官会議で、2012年12月13日に決定した「Coastal Security Plan Upgrades」を計画通りに完了するよう指示を出している。「Coastal Security Plan」は、2008年11月26日に発生したムンバイのテロ攻撃が契機となっている。テロリストはボートで沿岸から侵入し、ムンバイに潜伏していたのだ。

インド政府は、7516kmの沿岸を警備防衛する為、「Coastal Security Plan」を立案し、46カ所(インド本土36箇所、島10箇所)に沿岸監視レーダーを設置した。またインド沿岸の漁業従事者や海事関係者には、生体認証カードを配布して個人レベルで識別できる措置を執っている。配布対象者は116万人に達し、カード配布には4年掛かった。このカードは1枚76ルピー(約140円)でスウェーデンのSAAB社のカード認証システムを採用している。

過去ブログでも書いている通り「日本とインドの軍事同盟 ~日印ラッパロ条約を締結せよ~」だし、インド海軍が望む新明和の飛行艇US-2を早期に提供するべきだ。特にベンガル湾のアンダマン諸島、ココバル諸島などインド本土から遠距離に位置するが、中国海軍抑止にとっては極めて重要な拠点を防衛するためにも、また航空救難、急患搬送などへりでは対応出来ない距離とスピードを有するUS-2は、インド海軍・沿岸警備隊にとって有効だ。

在韓米軍司令官が交代する

2013年05月22日 | アメリカ
2011年7月から現職の在韓米軍 (USFK:U.S. Forces in Korea) 司令官James D.Thurman陸軍大将の後任としてCurtis M. Scaparrotti陸軍中将が、大統領から指名された。

Curtis M.Scaparrotti陸軍中将は、1978年に陸軍士官学校を卒業し任官。配属は第82空挺師団第3大隊。その後、第10山岳師団87歩兵連隊第1大隊勤務。海外はイタリア駐留の第325空挺戦闘チーム第3大隊に配属。帰国後は第10山岳師団作戦将校、ペンタゴン勤務を経て第82空挺師団第2旅団長。イラン、アフガニスタン、ソマリアでの作戦立案・支援業務を担当した後、2008年には第82空挺師団長に就任。

今般、在韓米軍司令官として指名されが、正式には上院の承認を経た後、韓国着任となる。
マーティン・デンプシー統合参謀本部議長が来日中」にも書いたが、米軍の主要幹部の交代が行われる時期である。

近衛兵の叛乱 ~竹橋事件の墓碑が青山墓地にある~

2013年05月22日 | 雑感
過去ブログ「火はわが胸中にあり~竹橋事件、近衛砲兵大隊蜂起~」にも書いた明治11年の近衛兵による叛乱で処刑された兵士の殉難墓碑が青山墓地(2種(イ)11号29側)にある。
               ←「旧近衛鎮台砲兵之墓」
竹橋事件の墓と碑の由来が書かれている金属板が左側にある。
           
書かれている内容は↓の通り。

竹橋事件
墓と碑の由来

 「旧近衛鎮台砲兵之墓」は、一八七八(明治一一)年八月二十三日の竹橋事件で死刑に処せられた、近衛砲兵大隊兵士四七名・近衛歩兵第二連隊兵士一名・東京鎮台予備砲兵第一大隊兵士五名・同隊下士官二名および事件当夜自殺した近衛砲兵大隊兵士一名の計五六名の墓である。
 下士官二名は、翌一八七九(明治一二)年四月十日になって処刑されたが、兵士五三名は事件後二か月足らずの十月十五日深川越中島で銃殺され、当青山墓地の陸軍墓所(現都立赤坂高校正門付近)に埋葬された。
 一八八九年(明治一二)年の帝国憲法発布に伴う大赦により、墓碑建設が許され、無期流刑から生還した鎮台予備砲兵大隊少尉内山定吾や同志、遺族らの手によって、頭書の墓碑が建立された。
 しかし、第二次大戦後、赤坂高校の建設の際、墓は現在地に移されたと言う(異説もあって、経緯の詳細は不明)。たまたま隣接地に住む遺族の高樋和夫氏が、独力で墓を探し当て、守って来たが、くしくも兵士の一00回忌に当たる一九七七(昭和五二)年、作家澤地久枝氏も墓を突き止め、広く世間に紹介した。
 同じ年、麻生三郎氏を中心に、「明治一一年竹橋近衛暴動の真相を追求する会」(現「竹橋事件の真相を明らかにする会」)が結成され、すでに澤地氏が始めていた全国的な遺族の「掘り起こし」を、さらに精力的に進めた。
 その結果、多くの遺族が判明し、一九八五(昭和六0)年遺族有志によって全国遺族会が発足し、左隣の「合葬之碑」と、合わせた「旧近衛鎮台砲兵之墓」管理権を、東京都から委譲された。
 「竹橋事件の真相を明らかにする会」の運動も大きく前進し、事件の真相とその意義の解明は本格的な軌道に乗りつつある。
 墓の右隣の碑(撰文 澤地久枝氏)は、この事件を、裏面に刻まれた五六名の殉難兵士たちの名とともに、日本の歴史に永遠に留めるため、兵士たちの一一0回忌を期として多くの人々の思いと協力を集めて、建てられたものである。
 なお、前記「合葬の墓」は明治年間に陸軍刑務所で刑死なし獄死した兵士の内、引き取りの手のなかった一七名を合葬してその中には事件に参加して準流一0年に処せられ、獄死した、近衛砲兵大隊兵士市川朝吉・宮崎又作の二名も、含まれている。

一九八七年一0月一五日
  竹橋事件全国遺族会
  竹橋事件の真相を明らかにする会

お墓の右側には『火はわが胸中にあり』の著者である澤地久枝氏による殉難鎮魂の碑が建っていおり、こう書かれている。
            
『この碑は、一八七八年(明治一一年)八月二十三日夜に起きた「竹橋事件」殉難者の鎮魂のためにものである。
事件は東京竹橋にあつた、近衛砲兵大隊の兵士を主力に東京鎮台予備砲兵第一大隊、近衛歩兵第二連隊の同調者をまじえて、将校、下士官の連座者をふく、日本陸軍史上唯一の兵士の叛乱となつた。三百余人が、待遇改善その他の要求をかかげて直接行動に訴えたのである。
兵士たちはすべて徴兵によつて陸軍にとられ、その多くは、前年の西南戦争の戦火をくぐりぬけて命をひろつている。徴兵制度への根本的疑問、明治維新以後の政治に対する不満が、天皇への直訴をふくむ行動へ兵士たちを駆り立てていつた。生ま在所の百姓一揆の伝統、のちの自由民権運動につながる志向も、兵士たちをささえる火でもあつたと思われる。
叛乱は鎮圧され、同年十月十五日、兵士五三名が深川越中島で銃殺刑になり、遺体は青山墓地に埋められた。現在の都立赤坂正門付近と推定される。

一八八九年(明治二二年)帝国憲法発布にちなむ大赦ののちに、福井清介、内山定吾らの発起により、計五六名の事件殉難者を祀る「旧近衛鎮台砲兵之墓」に建立された。
この墓は、第二次世界大戦末期の混乱で行方不明になつていたが、百回忌にあたる一九七七年十一月、現在地に移されているのを発見した。

事件の真相は明治政府によつて抹殺され埋没せしめられ忘れられた歳月が過ぎたが、全国的な研究と調査がすすみ、ようやく全容があきらかになろうとしている。
たたかい、かつ踏みにじられた明治の青春の記念として いまここにこの碑を建て、「竹橋事件」が後世に伝えられるべき火となることを願う。
この碑は、遺族をはじめ事件にかかわつたわれら一同の反戦平和への悲願の証でもある。
一九八七年十年十五日
澤地久枝 撰』

この殉難の碑の裏には処刑された兵士53名の名前が書かれている。
                

竹橋事件殉難者名簿
一八七八(明治一一)年一0月一五日 刑死
近衛砲兵大隊兵士
浅見綾次郎  伊藤丈三郎  今井政十郎
岩本 久蔵  浦塚城次郎  小川 弥蔵
門井 藤七  金井惣太郎  菊池作次郎
木島次三郎  木村 円解  久保田善作
小島 万作  是永 虎市  近藤 祖舟
桜井 鶴次  笹井 常七  佐藤種五郎
沢本久米吉  新熊安治郎  新家 仲吉
高橋小三郎  高橋竹四郎  田島 盛介
谷新 四郎  辻  亀吉  堤  熊吉
中沢 章治  長島竹四郎  永合竹次郎
野中 与吉  羽成 常助  馬場 鉄市
広瀬 喜市  藤橋吉三郎  布施 仙吉
松居 善助  松宮弁次郎  松本久三郎
宮崎関四郎  水上 丈平  見山今朝治
本橋兼次郎  山中 繁蔵  山部 七蔵
山本 丈作  吉田 定吉
東京鎮台予備砲兵第一大隊兵士
真田 兼松  鈴木 直次  高見沢卯助
宮崎 忠次  横山  昇
近衛歩兵第二連隊兵士
三添卯之助
一八七九(明治一二)年四月一0日 刑死
東京鎮台予備砲兵第一大隊下士
平山  荊  梁田 正直
一八七八年八月二三日 自殺
近衛砲兵大隊兵士      大久保忠八

現在・過去の竹橋はこんな感じ。
                         

テスラ・ロードスター「モデルS」~シェール革命はEV革命を引き起こすか~

2013年05月21日 | 雑感
昨日、テスラ・モーターズ(TESLA MOTORS)を訪れ、様々お話をお聞きする事が出来た。残念ながらショールームにはテスラは無く、何でもイベントで大阪に行っていると言う。勿論、自走で。仕方がないので、展示してあるシャーシを激写した。
それがコレ↓だ。
              
この写真はテスラの動力部分で、説明によると左側がモーターで、右はインバーターとの事。
                            

お店の人によると、主力セダンの『モデルS』は、フル充電で500kmを達成していると言う。普通は150kmとか200kmの航続距離がせいぜいだろうが、テスラ『モデルS』は、この点で内燃機関を超えたとも言える。米国環境保護庁によると、平均的なアメリカ人の通勤距離は平均約64km/日。最大航続距離が500kmのロードスター「モデルS」だと一週間5営業日は、充電する事がなく、乗り続けることが可能。充電にしても家庭用電源(200V)でOKだし、日本の100Vにも対応しており、都内だと1000箇所以上の充電ステーションが既に設置されているとの事なので、廃業が続くガソリンスタンドに頼る事が無いので、地方でもEVは普及する可能性は高かも~
因みに航続距離の測定は、NEDC(New Euro pean Driving Cycle)と言うEUの測定方法に準拠しているそうだ。しかも電気自動車ならではだが、ロードスターは時速100kmまで加速するのに4.6秒で達すると言うからカーマニアには堪らないだろう。

このテスラが今米国で売れていると言う。何故か?
短視眼的ではあるが、ガソリン価格の高騰にあるようだ。カリフォルニアのガソリン価格はガロン当たり$4.1に達しており、これでは車しか移動手段のない人達にの生活を直接圧迫する。米国は、世界の全石油量の約25%を消費しているが、その3分の2は、輸送セクターで消費されていると言う事から、ガソリン価格高騰は、テスラ・モータースには強力な追い風になっている。またリチウム・イオン電池の価格が技術革新や生産がより拡大する事により低減すると、購入コスト自体も低くなるから、買い換えの際にEVを選択する人もこれらは増えるのではないか?

参考まで、テスラ・ロードスターをフル充電するコストは$5(約425円)程度。ザックリ1km当たり1円程度と言うことになる。片や一般的なガソリン車は、1km当たり8円程度でコスト優位性も明らか。しかし、日本の電力価格は高いので米国と単純に比較は出来ない。

それと、今後要注目なのが、米国発のシェール革命が、EV普及に与える影響だ。
シェール・ガス/オイルがふんだんに供給されるようになると、原油価格も影響を受けてガソリンも安くなり、従来型の自動車の優位を脅かす事にはならないだろうと思われそうだが、米国ではEV需要が着実に伸びる可能性が高いと考えている。
何故なら、安価なシェールガスによるガス発電が、老朽化した発電設備に取って代わるだろうし、発電装置以上に劣化している長距離送電網を考えると、やはり分散型電力網による地産地消型の電力システムに早晩移行することは、多分、間違いないと思われる。

今の自動車産業もさることながら、EVなど新たなモビリティの開発生産による米国の製造業回帰を促進する起爆剤となる事もあるし、連邦政府は様々な政策手段を用いて他国を圧倒するイノベーションを企図していることは間違いない。しかもテスラのロードスターはIT技術の塊で、その内装やインターフェースなどは絶賛されている。米自動車専門誌『MOTER TREND』は“CAR OF THE YEAR 2013"にテスラ「モデルS」選んでいる。
しかし、ジョージ・ミッチェル氏によるシェール革命は、様々なイノベーションを生む事になりそうだ。

最後に、ロードスターは試乗が可能との事なので、次回はモデルSの実写と試乗レポートしたい。

ユニバーサル・コミュニケーション研究所

2013年05月20日 | 日記
ユニバーサル・コミュニケーション研究所は、、独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)隷下の研究組織で、ユニバーサル・コミュニケーション基盤技術に関する研究を行う専門組織。ユニバーサル・コミュニケーションとは、ネットワークを介して流通する膨大な情報の効率的かつ的確な活用や、多様な情報のより豊かな活用など、「人と人」、「人とネットワーク」等の様々な階層間において人との親和性が高い情報通信を実現するため、豊富で柔軟な言語コミュニケーションを実現する技術及び臨場感豊かなネットワークコミュニケーションを実現する技術等を総称した言葉。

ユニバーサル・コミュニケーション研究所では、「言語の壁」を越えるための多言語音声翻訳、「情報の量と質の壁」を超えるための情報分析技術、「距離や臨場感の壁」を越えるための超臨場感通信技術を研究・開発している。また、これらの技術を利活用するための「知識・言語グリッド」と呼ばれる情報利活用基盤上で大量のWeb情報やセンサ情報などから構築された大規模高度情報資産を作り上げる取組を進めている。
研究所では、多言語音声翻訳システム VoiceTra4U-M、音声対話システム AssisTra、情報分析システム WISDOM2013、多感覚インタラクションシステム、臨場感あふれる立体ディスプレイである電子ホログラフィなど、研究成果を見る事が出来る。

特に感心したのは、iPhone向けアプリ"VoiceTra4U-M"。
この"VoiceTra4U-M"は、23言語、5人同時に会話しながら、音声を翻訳するアプリケーションで、全世界の95%をカバー出来る優れものだが、この技術は、NICTが国際標準化したネットワーク型音声翻訳通信プロトコル(ITU-T※勧告書F.745及びH.625に準拠)で実装したものである点。日本は国際標準化活動が余り得意ではない印象が強いが、国際電気通信連合に採用されたのは、高く評価したい。"VoiceTra4U-M"は、AppStoreから無料でダウンロード可能。

ITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門:International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)  
ITU-T勧告F.745:音声翻訳サービスに必要な機能モジュール(音声認識、機械翻訳及び音声合成)をネットワーク接続するための要求条件、アーキテクチュア等を規定。
ITU-T勧告H.625:機能モジュール間での通信を実現するためのインタフェース、プロトコル及びデータフォーマットを規定。

標準化活動もさることながら、多言語音声翻訳を日本単独で確立することは非常に困難なため、世界各国の研究機関が参加する国際研究コンソーシアム「U-STAR」をNICTが中核となって立ち上げ、世界規模の音声翻訳研究ネットワークの実現を目指している。現在、世界23か国、26の研究機関と連携したグローバルな研究共同体となっている。

※U-STAR(ユニバーサル音声翻訳先端研究コンソーシアム:The Universal Speech Translation Advanced Research Consortium)http://www.ustar-consortium.com/index.html 

それとバーチャルに五感で体験できる「多感覚インタラクションシステム」も凄い。ユニバーサル・コミュニケーション研究所の多感覚・評価研究室では、人間の味覚以外の視覚、聴覚、触覚、嗅覚の情報をリアルにかつ自然に伝える超臨場感コミュニケーションを実現するために、立体映像、感触、音響、香りなどを統合して、多感覚の情報を違和感なく自然に体験できる多感覚インタラクション技術の開発を進めている。
 多感覚インタラクション・システムはコレだ→

多感覚インタラクション・システム(Multi-Sensory Interaction System: MSenS)は、視覚や聴覚、触覚など複数の感覚情報を統合して物をバーチャルに再現するシステム。立体映像ディスプレイや、物に触れた際の接触音などを再生する音響システム、ペンを使って触覚を再現する装置などで構成されている。このシステムでは、高松塚古墳から出土した「海獣葡萄境」の再現デモと風船を破裂させるデモの2つを体験した。3Dメガネをかけ、棒状に伸びたペン型アームをつかんで立体映像を触ると、感触や重さ、触った際に起こる音や匂いを体験できる。その〝リアルさ“に驚愕!

この多感覚インタラクション・システムは、ペン型アームを3つのモーターで制御する。このアームには位置センサが付いており、アームの座標を元に、立体映像のどこを触っているかを判断する。モーターを使ってアームを押し返すフォースフィードバックで手に感触を伝え、接触音も事前に登録しておき、感触と同時に音も出るようにしている優れもので、遠隔医療など様々な利活用が可能だろう。

同じ、多感覚・評価研究室では、球形スピーカーによる立体音響の研究を行っている。
立体音響と聞くと5.1chサラウンドなどを想像するが、当室では、従来とは全く異なる音響環境の研究を行っており、次々世代くらいの空間再生型、立体テレビに対応した音響技術の確率を目指している。
従来の音響技術は、聞く人の周囲に音を提供し、その環境の中に入ってもらう、あるいは没入してもらうという形のもの。それがモノラルからステレオになり、それがサラウンドシステム5.1chになってきたが、この研究室では、演奏者なり音源が目の前にあって、そこから音が出ているというシステムの実現させた。例えばSF映画の『スター・ウォーズ』でR2D2というロボットがメッセージを再生すると、レイア姫の姿が目の前の空間に浮かび上がって「ヘルプミー」と言っている場面があるが、そのような空間再生型のテレビや音響デバイスを開発したいと言う。
                 

この研究所では、下記でも述べるが3D映像研究も行っているが、本当に立体ホログラフィ技術が確立されると、やはり音響も立体化する必要があるので、研究開発を進めていると言う訳。この立体音響の為には、立体録音が必要となるが、実際に42個のスピーカーを配置したかご型のフレームの中に入ってもらって実際に録音する。
スピーカー自体はその辺で売っている安いスピーカーで十分だが、録音した音響を立体化するアンプと制御装置が重要。球形スピーカーは、iPadで遠隔操作する方式で、直感的で操作しやすいと感じた。またきちんとした数学的基礎の基に立体音響を実現させている事も強調していたのが記憶に残っている。

最後に、多人数で観察できるテーブル型裸眼立体ディスプレイ「fVisiOn」。
この「fVisiOn(エフ・ビジョン)」は、テーブル型3Dディスプレイで、テーブルトップに表示された3D映像を全周360度から観察を可能とした。一般的な3Dディスプレイの技術では、3D映像をテレビのように正面側の限られた範囲でしか観察することができないが、「fVisiOn」は、より自然なコミュニケーションを達成するためには、特別なメガネをかけることなく、何人でも同時に3D映像を観察できることが望ましいと考え開発したもの。

現実世界の物体は、両目が左右に離れているので、それぞれの眼には少しずつ違う見え方で写る。この見え方の差が立体を感じる要因のひとつですが、fVisiOnでは、円状に並べた多数のプロジェクタを使って様々な方向へ向かう光線群を大量に作り出し、それらの進み方をうまく制御する光学素子を使うことによって、見る方向で見え方が変わる映像をテーブルトップに表示する。これにより、立体的な映像として両目で知覚することができる。

fVisiOnの開発では、上記の再生原理を実現する光学素子の作製が難しかったが、すり鉢状のアクリル円錐に糸状のレンズを巻くという工夫で、必要な光学的性能を得ることに成功した。糸状のレンズとは言っているが、実際は「釣り糸」。釣具屋で買ってきた釣り糸をアクリル円錐に、研究員自らが手で巻いて作成した。現在のfVisiOnでは、テーブルトップから5cmほど飛び出した3D映像を全周から観察できるようになった。勿論、静止画だけではなく動画も再生可能で、実物の模型ではできない動きのある情報提示が可能であることもfVisiOnの利点のひとつ。

様々な画像と動画を見せて頂いたが、最後に満を持して見せてくれたバーチャルアイドル「初音ミク」の3D動画。それがコレだ!と言いたいが撮影に失敗~
                       

シリアのS-300問題 ~イスラエル、ロシア、CIA、そして中国~

2013年05月19日 | 雑感
ロシアが、シリアに対して、射程距離300キロの対艦巡行ミサイル「ヤホント」と、対空ミサイルS-300を契約通りに輸出。特にイスラエルが最大の脅威と認識しているS-300システムは、6台の発射装置と、5N55系ミサイル×144発。イスラエルは、シリアへのS-300輸出を阻止する為に、ネタニアフ首相がロシアを訪問しシリア支援を止めさせる魂胆だったが、失敗。ロシアは、過去S-300の契約不履行の代替としてシリアに対し近距離対空防御システムや中高度防空ミサイルS-125を、2011年に提供している。

ロシアは、シリアと2010年に合意した契約を履行しただけで、2012年にはS-300の提供を一旦は中止した経緯があるが、今回は、欧米のシリア反政府軍への軍事支援の増大と、アサド政権維持を懸念したロシアは、契約を履行した。シリアは、既にS-300購入の為に9億ドルをロシア外国開発銀行を通じて支払っている。S-300はシリアだけでなくアルジェリアにも輸出された。

シリアに提供されたのはS-300P型でシリーズの初期ヴァージョン。NATOコードネームは、SA-10グランブル。5N55対空ミサイルの最大有効射程は、47kmで最大有効射高25,000m、重量1500kg。ミサイル自体は全長7.11m、直径0.45m、固体燃料式。弾頭には130kgの高性能炸薬が装填されているタイプ。今回のシリアのS-300Pシステムは、ウラル375トラックで牽引される5P85T発射機と、30N6E1目標捕捉・追尾レーダー、64N6Eミサイル追尾・誘導レーダーなど一式で運用される。

現在、ロシア太平洋艦隊が東地中海を遊弋中だが、こんな中、CIA長官(John O. Brennan)長官が、5月16日にイスラエルを訪問し、モーシェ・ヤアロン国防大臣と会談している。討議されたのは、シリア内戦に乗じてヒズボラが戦力を充実させ、対イスラエル攻撃の準備をしている状況を看過できないとの評価と今後の対応の摺り合わせとされるが、実態は米国としてイスラエルの好戦派の抑制を企図しているのだ。

既にイスラエルは、シリアへの空爆作戦を2回実行しているが、ヒズボラへの武器供給ルート遮断は、限定的で失敗しているのが現実。そこにS-300システムがシリアに存在するとなると、中東における軍事バランスに影響が無いわけはない。イスラエルは万難を排して絶対にS-300システムを破壊するか、サイバー戦闘能力を駆使して無力化するだろう。多分、後者だろう。何故なら、S-300システム一式を中国から入手してイスラエルは対抗策を練っているからだ。

“かるがも”と 不空成就如来

2013年05月17日 | 日記
三井物産本店ビルの敷地内にある人工池で“かるがも艦隊”が遊弋中だ。
        

同じ敷地内に、目立たないがインドネシアから贈られた不空成就如来座像が鎮座している。
          
『不空成就如来坐像
高 106.5cm。
8~9世紀、ボロブドール マゲラン/中部ジャワ
ボロブドールの北側仏塔内にある92体の仏像の一つ。
左手は定印、右手は伸ばして、掌を掲げて前に向けている。
一切衆生の畏怖厄難を救済して、これを保護する施無畏印という印相を結ぶ。
不空成就如来に相当する。
このレプリカは中部ジャワの活火山メラピ山(2911m)裾野の安山岩を使用して製作され、
当社の発展を祈念してインドネシアから寄贈されたものである。
インドネシア教育文化省の国外搬出許可取得済。』
           
不空成就如来坐像の銘板の少し離れた同じ壁には東大寺長老の偈が掲げられている。
        
  『一、慙愧懺悔六根罪障
   一、利益有情無量無辺
   一、當願衆生體解大道
   右條々社是日々返照
   東大寺長老公照書』  

京阪奈(けいはんな)の NTTコミュニケーション科学基礎研究所

2013年05月16日 | 日記
「けいはんな学術研究都市」にNTTコミュニケーション科学基礎研究所 (通称CS研)がある。住所は、京都府相楽郡精華町光台2-4 NTT京阪奈ビルとなる。東京からだと新幹線で京都まで行き、近鉄線で新祝園駅下車で、バスにて15分。

        

NTTの研究開発組織は、NTT持株会社直轄で、現在、3つの総合研究所体制で研究開発を行っている。3つの総合研究所とは、①サービスイノベーション総合研究所、②情報ネットワーク総合研究所、③先端技術総合研究所。NTTの事業形態から理解できる通り、ネットワーク上で実現する革新的なコミュニケーションサービスと、新たなサービスを実現する次世代情報ネットワーク基盤技術の開発を中心に行っている。特にトップクラスと自負する光関連技術など、新たしい物理原理や新素材・新部品を開発する先端的な基礎研究は、今でも国際的にも抜群に優秀。

NTTの研究開発拠点は、横須賀YRP、武蔵野(三鷹)、筑波、厚木、それと京阪奈で、NTTコミュニケーション科学基礎研究所は、先端技術総合研究所に属し、情報通信に革新をもたらす情報科学と人間科学の新概念・新技術の創出を日々行っている。名前からNTTコミュニケーションズの研究組織と思われがちだが、勿論、NTT持株会社の研究機関である。

コミュニケーション科学基礎研究所は、人間情報研究部、協創情報研究部、メディア情報研究部、守谷特別研究室の3部、1室で構成されている。特徴は人間の五感を研究する学者が一同に集っている事。最近特にユーザーインターフェースの重要性が強調されるようになってから研究内容が注目されるようになっている。

特に研究所訪問にて面白いと思ったのは「幼児言語発達の解明に向けた基礎研究」。人間は、言語を操作して、高度な社会的コミュニケーションや概念的思考による問題解決などを行う唯一の動物だが、その言語習得のプロセスは謎に満ちている。CS研究所の言語知能研究グループでは、赤ちゃんがどのように言語を習得するかを科学的に解明し、その知見をICT技術と連動させて、育児支援や幼児教育につなげることを目指して研究を進めている。

赤ちゃんが1歳頃になると初語を発し始める。
初語とは、赤ちゃんが母語音声から特定の音声配列を抽出し、それと意味を結びつけること。その後、1歳後半になると、効率的に単語学習が行えるようになり、単語を連結させた文も話し始める。2歳では文法知識も格段に増え、言語による精緻なコミュニケーションを達成するが、この過程を語彙爆発と称するが、こうした語彙・意味・文法の各機能の発達過程を実験心理学、心理言語学、自然言語処理、認知科学などを駆使して学際的アプローチから研究を進めて、最近、この語彙爆発の謎を解明している。

従来、語彙爆発は心的機能の質的変化を示す指標と考えられて来たが、CS研の研究により、語彙爆発は、線形関数とプラトー割込みによるモデルで説明出来ると結論している。つまり心的機構の質的変化はなく、発達初期から一定速度で学習する機構の存在を示唆するデータを得ているのだ。このデータは、日誌法により、初語20語について京阪奈周辺の赤ちゃん17人から得た時系列データで語彙学習の速度の変化点を特定している。

日誌法とは、お母さんに、新しく言えるようになった語の記録をお願いしたもので、初語20語までとした。この日誌法は、時間的な漏れが少なく,日齢単位でデータが取得できるために語彙発達における速度成分の詳細な解析である。日誌法により得られたデータによると、17人とも線形に語彙取得を行う時期と、それが停滞するプラトーの時期があるが、このプラトーを除去すると線形関数で近似した。つまり語彙爆発は、線形関数+プラトー割込みと言う事になるのだ。面白い!

この研究成果から、語彙学習速度を加速する?要因の研究が進捗する契機となるだろうし、語彙習得の成長を後押しする教育法、育児法や、言語習得が緩やかな赤ちゃんの早期発見と適切な対処が出来るようになる可能性がある。勿論、英語など外国語が苦手な大人の言語習得にも役立つ研究だと感得した。

北極評議会が開催~北極圏での物流イノベーション~

2013年05月16日 | 日記
5月15日からスウェーデンのキルナで「北極評議会」が開催されている。北極評議会は、1996年9月のオタワ宣言より設立された国際組織で、参加国は北極海に面するロシア、カナダ、アメリカ、フィンランド、アイスランド、フィンランド、スウェーデン、それとグリーンランド自治とフェロー諸島を含むデンマーク。
北極評議会は、北極圏の氷の溶解が進む中での新たなルールづくりなどについて話し合うが、最大の焦点は、資源開発と北極海航路の2つだ。

北極圏航路について、例えば横浜港からオランダ・ロッテルダムまでは、スエズ運河を経由する為1万1200カイリだが、北海航路だと半分の6500カイリで済んでしまう。スエズ運河の航行料や、貴重な燃料も節約できるし圧倒的に経済性が良い。またスエズ運河やパナマ運河を通れない巨大タンカーなどの艦船についても北極海航路を通ると事ができるので、海運業界にとってのメリットは計り知れない。北極海航路が本格的に活用できるようになると、世界の海運業界全体で年間数十億ドルの経費削減になると試算されている。また不安定な中東・インド洋海域を通過しなくても良いし、狭いマラッカ海峡の通過も無しと言う事でよいことずくめだ。

今後、さらに北極圏のアイスキャップの後退が進むと、北極点域を超える航路も実現する可能性がある。具体的には、北米カナダのハドソン湾とロシアのムルマンスクが直結すると、北極アウトバーンが現出する。これは北米の高速道路網と鉄道網と直結する事で世界的な物流環境を大きく変貌させる。北米の港湾を起点として、太平洋からアフリカ、南米へのアクセス出来る。これはシェール革命並のイノベーションとなる。

この北極海シーレーンが重要性を増す中、各国は様々な動きを示している。特に過去ブログでも書いているが、ロシアの動きが顕著だ。
ロシアの北極域での防衛力強化 ~ロシア北極軍~
北極海におけるロシア海軍の動向と原子力発電プラント船
ロシアの北極圏での活動を財政的、技術的支援を行い、国益につなげる為にも、ロシアとの包括的な平和・経済条約の締結が必要だ。それもプーチン大統領の任期中に。しかしプーチンさんの健康が心配だ。

さて、北極航路を砕氷する能力を持つ艦船は、世界で262隻。しかし全世界で砕氷能力を有する船が、今後234隻が建造され運用されるようになるし、新たな形態の船舶が考案され、これまた船舶イノベーションが起こる可能性も否定出来ない。特にダブル・アクティング・タンカーなど砕氷船の先導が不要なタンカーなどは、北極圏での資源開発を促進させる事になるだろう。日本の海運業もそうだが、造船業界にとってもチャンスではないのか?

時間があれば、中国の北極政策と警戒するロシアの状況を書いてみたいと思っている。 

※ご参考まで。アメリカも頑張ってはいる。「最新の北極研究船「シクーリアック」が進水