阿部ブログ

日々思うこと

東芝本社の川崎移転 ~徒然なるままに~

2011年09月30日 | 日記

浜松町にある東芝の本社が川崎駅西口に移転するようだ。
これは川崎駅周辺の住民から聞いた話で、新たに建設される15階建ビルの建設反対派で、問題はありきたりで日照権の話である。

しかし個人的に思うのは、今でも川崎駅&ラゾーナ川崎プラザ周辺は大変な混雑を呈しており、これに東芝本社機能が移転する事により、新たに1万人近くの人間が勤務する事になると、朝夕の混雑たるや凄まじい事になりそうだ~。

東芝本社が移転する場所は、ラゾーナ隣の駐車場で、この場所は野村不動産ホルディングス(HD)と東芝不動産が共同出資した会社が取得している。このビルは、2013年春には完成の予定との事で、総床面積は10万8000平方メートルと言う規模だが、今の浜松町のビルと比較して小さくなるのは大丈夫なのだろうか? 関係者によると、どうも川崎駅近辺は、羽田空港の空域管理上、高層ビルの建設は制限されているとの事で、横に広げるしかないようだ。

しかし、空域管理上での制約と言う事とは違う見解もある。
東芝と三井不動産は、当初超高層タワーを建設する計画だった。周辺に空地を作り周辺住民などの環境や利便性を損なわない配慮が東芝&三井にはあった。しかし、野村が資本参加してから計画が変更され、高さを低くして容積率一杯の低層ビルにする方針に転換したと言う。コスト削減を優先すると野村のやり方になるし、低層で容積率一杯のビルによる周辺の日陰時間が長くなると言う事で、反対も出ることになる。

しかし、もともとラゾーナが出来る前は東芝の堀川工場があったし、実は東芝自体の登記上の本店所在地は2000年まで「川崎市幸区堀川町」となっていたので「川崎回帰」と言う事。それと311やその後の余震などでも、築26年の本社ビルは結構揺れたようで、老巧化したビルより最新鋭で免震対応のビルに入居した方が、働く側としては安心だ。

余談だが、堀川工場では、以前「青色蛍光体」「緑色発光蛍光体」の原料となる硫化亜鉛の製造を行っていた。この硫化亜鉛は、硫酸の海に亜鉛を投入し、この硫酸亜鉛水溶液中に、硫化水素ガスをバブリングすることにより製造していた。
硫化水素。つまりは「毒ガス」である。

このような原料製造を行っていた関係から、工場閉鎖から解体後の土壌汚染処理にかなりの時間を費やす事となった。(あくまでも推測です)
この堀川工場跡地の土壌汚染処理を行っていた時期、丁度NTTの基幹システム「CUSTOM」の開発作業が川崎興和ビル、及び隣接するリクルートビルで行われていた時で、長い時間をかけて土壌処理を行っていた事を知る人は結構多いのではないか?特に隣接するソリッドスクエアビルからは良く見えた。IBMとJFEスチールが株主であるエクサの受付が13階にあり、旧堀川工場を一望出来た。結構な範囲をかなり深くまで掘削していた。(※重ねて土壌汚染処理云々は推測です)

因みに、NTTの「CUSTOM」と言うシステムは、料金、SO(サービス・オーダー)、故障の3システムを統合し、更に料金明細を連携させた巨大システムである。現在のシステムは富士通と日立が担当しているようだが、堀川工場解体など行われている時期のベンダーは東日本:IBM、中日本:日立製作所、西日本:富士通と言う3ベンダー体制だった。
当時は7500万加入で電話加入者が最高に達しつつあった時期で、オンライン処理及びバッチ処理も非常に重かった。特に登録3と登録4の処理がある日は、担当する関係者は終夜寝ずの監視。お疲れ様です~

バッチ処理では、一番加入者が少ない中日本を担当する日立製作所が苦戦。当時のメインフレームMP5800シリーズだったが、中々性能が上がらず、担当SEなどは秦野にあるSSTセンターなどで性能試験など繰り返していたのでは?とこれまた勝手な推測をしている。
日立のバッチ処理が終了しないとオンラインを立ち上げられないので、NTTの運用チームは大変だったろう。

やたらと東芝の話からズレましたが、徒然まるままに...

ロシアの北極域での防衛力強化 ~ロシア北極軍~

2011年09月25日 | 日記

ロシア海軍は2011年、北洋艦隊の大型対潜艦、戦略原潜、旗艦の原子力巡洋艦“Pyotr Veliky”、ロシア海軍唯一の空母“Admiral Kuznetsov”を含む、300隻近い艦艇の改修をアルハンゲリスクのズヴョーズダチカ(Zvezdochka)造船所に発注した。

ズヴョーズダチカ造船所では、戦略核ミサイル搭載のデルタ級原子力潜水艦などの解体作業が行なわれていたり、インドに売却したキロ級潜水艦のアップグレードなど軍用艦の修理補修施設として有名。

ロシア海軍のこうした動きの背景になるのは「北極海」だ。

北極海の海氷域面積が減少している事は、広く知られているが、今年は2007年9月に記録した431平方kmと言う最小記録を上回る勢いで海氷域が減少しており、こうなると北極海航路の商業利用が拡大するのは必然だ。ちなみに北極海航路の貨物量は、今年(2011年)500万トンを越えると予想されている。

北極海航路のメリットは、スエズ運河やパナマ運河・パナマ第二運河などを経由せず、太平洋域から大西洋域へ移動が可能な点。また貨物輸送の場合など5000海里、輸送期間も1週間程度の短縮が可能な点。

この北極海航路を管理する行政機関は、ロシア運輸省隷下の「北極海航路局」。
同局は、北極海航路関連の法律の制定、北極海航路の安全施策の立案、砕氷船の運航命令、民間船会社に対する行政指示、ロシア船籍以外の外国船に対する北極海航路の利用許可、及び航路通行料の徴収を行う。
但し、実際の北極海航路の管制業務及び各種管理支援業務を行う「運行管制所」はロシア政府認可の民間企業が担任する。

北極海航路の運航管制所は、(1)西部運行管制所と(2)東部運行管制所の2箇所がある。
(1)西部運航管制所(ディクソン)東経125度から西方の海域の管制業務及び支援業務をムルマンスク海運会社が行う。
(2)東部運航管制所(ペベク)東経125度から東方の海域の管制業務及び支援業務を極東海運会社が行う。

さてこの北極海域の防衛を固めつつあるのが、ロシアである。

ロシアには既に北極海専用の国境警備隊が存在する。
ロシアの国境警備隊はロシア連邦保安庁(FSB)に属し、北極海は、北極地域国境局(本部:ムルマンスク)の管轄。

そう言えば北海道にいた時、北方領土を望む根室・納沙布岬に行った事があった。当然旧KGB所属の国境警備隊の警備艇が遊弋しているが、我々制服を見つけた彼らは、こちらから見て横向きだった警備艇の船首をこちらに向け、船首砲塔の口角を上げて威嚇するような動きを見せたのは、今から思えばお愛嬌だったね。現在も昔のように常時監視を続けているとは思われないが、やはり巡視艇が警備しているのだろう。

ロシア陸軍も2011年に北極海地域の防衛力強化の為、2個旅団を新設。その一つがコラ半島のノルウェー国境付近に配備されており、この旅団は4000人規模。
それと、もう1個旅団は極東に配備されているだろう。

これは、フランスからミストラル型強襲揚陸艦2隻が極東に配備される予定であり、強襲揚陸艦と聞くと旧ソビエトの海軍歩兵部隊を想起させるが、これに乗船するのは、将来「北極軍」の一翼を担うこの旅団だろう。但し、極東への旅団配備は推測である。
だが「北極軍」については、ロシアの新聞“Nezavisimaja Gazeta”などが報じており、これ自体秘密でも何でもない。

ロシアの北極域での活動については、今後も注目して行きたい。

航空自衛隊・松島基地 と 津波対策 ~土地の嵩上げ~

2011年09月23日 | 日記
航空自衛隊・松島基地では20機の戦闘機、航空機が流され甚大な被害を蒙っている。

ブルーインパルスの部隊で唯一、311当時福岡にいた5機だけがかろうじて残存した。

基地をめぐる自治体は、津波対策として現在の土地を1mから1.5m程嵩上げする事が検討されているが、現状では松島基地は対象外となっている。

自衛隊の土地は当然、国有地であり財務省管理下にあるが、自衛隊基地は地元自治体からすれば関係がない土地なので、このまま計画が進めば基地が取り残され、基地全体が嵩上げされた土地に囲まれる事となる。

こうなると排水やら、様々検討しなければならない事が発生する事が予見されるが、誰も自衛隊・財務省と話をしようとしていない。

土地を嵩上げするにしても莫大な土が必要となるが、この為、切り崩す山の選定も進んでいる。これは松島湾の景観に関係しない地区から持って来る事になる。

実は“松島湾”は「世界一美しい湾クラブ」(事務局:フランス)から参加を促されており、前向きに参加を検討するが、景観を損なうようなものは建てる事が出来ない。風力発電などもってのほか、となる。

まあ、問題、課題が山積する中、復興に向けた動きが具体かしつつある。

マックスウェルのオリジナルの方程式の復権

2011年09月17日 | 日記

リーマンは、1827年に発表されたガウスの曲面論を n次元の場合に拡張してリーマン計量という概念を提示し、所謂リーマン幾何学の構想を確立した。この構想は1854年6月10日、ゲッティンゲン大学の講義で披露された。
これはより高次元の不可視の次元が存在する事を示唆する数学的論拠を示したことになる。

この講義の背景には、リーマンがゲッティンゲン大学への就職の為に作成した1951年の論文を、審査官であったガウスがこれを高く評価し、彼の曲面論の拡張については、ガウス自身がリーマンに要望したものであった。
リーマンは、論文で n次元の曲面を「連続な多様体」(Stetige Mannigfaltigkeit)と表現しているが、これは現代数学で言う多様体(Manifold)の事である。

このリーマン幾何学の影響は、数学者だけでなく物理学者にも影響を与えた。

この影響をもろに受けたのが、マックスウェルである。
マックスウェルは、リーマンの高次元の存在を示唆する幾何学を基礎として、ファラディーの「場」の概念を数学的に表現する際に、1840年代に導入された超複素数である四元数(Quaternion)を用いて磁力、電磁力、重力という3つの力を定式化し20個の方程式で表した。
オリジナルのマックスウェル方程式は、一般共変性を持つ非線形の方程式群である。

ハミルトンの四元数の特性は、非群的と言うか非線形的であり、「AB ≠ BA」、Non-abelian である。
つまりオリジナルのマックスウェルの方程式は解析的に解くことができないので、線形化が必要となるが、これはマックスウェル自身がやろうとしたが、寿命が尽きて出来なかった。

現在の我々が学ぶマックスウェル方程式は、実はオリバー・ヘビサイドと言うスカラーポテンシャルとベクトルポテンシャルの混在するオリジナルの方程式を酷く嫌った学者が線形に書き換えたものだ。このヘビサイドが書き換えた方程式を「マクスウェル-ヘビサイド方程式」若しくは「マクスウェル-ヘビサイド-ヘルツ方程式」呼ばれる事があるのは、このような背景による。

現在、「マクスウェル-ヘビサイド方程式」では説明がつかない現象。たとえば逆ファラディー効果と呼ばれる光磁気効果。この現象は、非線形なオリジナルのマックスウェル方程式で導くことが出来る。

これ以上書かないが、電磁気の非線形性がでなければならない現象が現れてており、今将にオリジナルのマックスウェル方程式の復権が必要である。

ウランを含む廃触媒を保管し続ける企業とその解決策

2011年09月14日 | 日記
最近知った事だが、民間企業でもかなりの量の放射性物質を保管管理していると言うこと。

レアアースをモナザイトなどから抽出分離する際にトリウムが随伴生成される事は、昨年のNHKクローズアップ現代の報道などで知られるようになっているが、金属資源関係企業だけでなく、化学関連企業でも触媒に劣化ウランを含む複合酸化物をを利用していた時期があり、未処理のまま管理保管していると言う。

例えばアクリルニトリル(Acrylonitrile:AN)と言う、アクリル繊維や樹脂原料となる不飽和ニトリルの一種である基礎化学品がある。アクリルニトルは、分子量53.07、融点-83.55℃、沸点77.6~77.7℃で、無色透明の液体。
このアクリルニトルの製造過程で、過去ANの合成反応の一つであるプロピレンのアンモオキシデーション反応による合成反応触媒として、過去にウランとアンチモンとの複合酸化物が利用されていた。

このウラン-アンチモン複合酸化物を用いたアクリルニトル製造法は、1960年代に当時のスタンダードオイル社によって開発され、Sohio(Standard Oil of Ohio)法と命名された。

このSohio法は、従来のプロピレンの酸化によりアクロレインを合成した後、アクロレインをアンモニアと共に酸化してアクリロニトリルを合成すると言う2段階の反応を、ウラン-アンチモン複合酸化物を触媒として用いることで1段階でアクリルニトルを生成すると言う方法で、日本においても1970年代後半から1980年代前半にかけ、ウラン-アンチモン複合酸化物が触媒に利用されていた。

この触媒は、ウラン-アンチモン複合酸化物を多孔質のシリカに担持したもので、ウランを15%、アンチモンを30%含有する。

問題はウラン-アンチモン複合酸化物は、化学的に極めて安定で硝酸や塩酸のような強酸性物質を使用し酸侵出されない、つまり溶解しない事。

この為、アクリルニトリル生成後のウラン-アンチモン複合酸化物“廃触媒”は処理する事なく、そのまま、ケミカルドラム(ポリエチレン樹脂製の内筒を鋼製ドラムで外装した複合容器)などで放射性廃棄物として保管し管理されている。その保管量はウランだけでも国内に200トンとは存在すると言われている。

例えばチッソ石油化学株式会社の五井製造所(千葉県市原市)の場合、劣化ウラン量765kg、廃触媒総量7,650kg、200リットルのケミカルドラム33本相当で保管している。

(URL:http://www.mext.go.jp/a_menu/anzenkakuho/news/trouble/1268967.htm) 

このウランを含む廃触媒は、原子力基本法で定める核燃料物質もしくは核原料物質に該当し、核原料物質&核燃料物質に関する法律の規制を受け、廃触媒保有メーカーは、工場内に管理区域の設定し、定期的な管理状況の確認および報告を文部科学省に行い、廃触媒の量によってはIAEAの査察も受けるという。これは堪らない。

当然、廃触媒からウランを分離抽出する研究を澤田佳代准教授(名古屋大学エコトピア科学研究所)が行っている。
澤田准教授のウラン分離抽出方法は、最初に塩化水素を用いてウラン-アンチモン複合酸化物からアンチモンを塩化揮発させた後、超臨界二酸化炭素を用いて、残りのウランを溶解抽出すると言うもの。
実証実験により、廃触媒から分離されたウランが酸化ウランと変化し、超臨界二酸化炭素抽出処理すると実際に94%のウランが除去されたと言う。
現在も継続してウラン除去率の向上を目指して研究を続けていると言う。

福島第一原子力発電所の事故によりセシウム134&137に汚染された土壌をプルシアンブルーを用いてセシウムを分離する産業技術総合研究所(川本研究グループ長)の研究と同様に、ウラン-アンチモン複合酸化物廃触媒から分離抽出した後の酸化ウランを確実に保管管理する施設が是非とも必要である。

※現在もSohio法は、アクリルニトリルの製造法であるが、流石にウランを含む複合酸化物を触媒に使うのではなく、モリブデン-ビスマス-鉄系、鉄-アンチモン-テルル系など安全な複合酸化物の利用に転換している。

オイルサンド と トリウム溶融塩炉 と バナジウム

2011年09月12日 | 日記
多胡敬彦氏の最新著書『石油崩壊』を読んだ。とても読みやすく新幹線の中で一気呵成に読了。
面白かったのは、太陽光や風力、それと原子力は“電気しか生み出さない”。

成る程~石油はプラスチックなど様々な製品の原料となり、将に今の文明を支えているが、今はやりの再生エネルギーはその通り電気しか生まない。しかも原子力は、電気の他、やっかいな放射性廃棄物を大量に生み出す。

それと北米共通通貨アメロの話や、米国のクラッシュプログラムによる債務返済関連では、実はドルには2種類あり、符牒のあるドルと無いドルがあるとか?
いや、面白い。

最後には、やはりシェールガスなど非在来型石油・ガス資源に紙面を費やすと思いきや、同書の最終部には、トリウム溶融塩炉について書いてある。これには驚いた。
まあ、何故今までトリウム原子力が注目されなかったのか、とか中国がトリウム溶融塩炉の開発に乗り出したとか、ごく普通の内容ではあるが、何故トリウムか。

しかし、多胡氏の提案は、非在来型石油資源である「オイルサンド」の生産にトリウム溶融塩炉を使うというアイディア。
カナダのオイルサンドの80%は地下数十メートルに存在する。このオイルサンド層に対し最初垂直に、それから水平に掘削する。
この穴にパイプを通し、水蒸気を送り込んで高温で蒸し、油分を溶かして回収する、所謂「SAGD法」と呼ばれる採掘手法が用いられている。
この水蒸気を送り込む際に、当然地上では水を沸騰させる必要があり、これに燃料代などのコストがかかるのだが、多胡氏によるとこの水蒸気に変わり、トリウム溶融塩炉から出る高温の溶融塩を用いるて油分を溶解し回収するというもの。

オイルサンドの生産にトリウム溶融塩炉を用いる事により、高温高圧な水蒸気にする天然ガスが不要で、「水」が不要、しかも溶融塩は500度~600度に達する超高温で生産性が高まる。
確かに水が不要とは言わないまでも、最小にできるのであれば、NHKオンデマンドで見たオイルサンド生産地域の悲惨極まりない環境汚染を軽減出来るだろう。

オイルサンド生産に必要なのは一にも二にも『熱』が必要で、これにトリウム溶融塩炉などの原子力の最大特徴であるエネルギー密度の高さを利用するのは利に叶っている。

『石油崩壊』と言う書籍からトリウム溶融塩炉の話がでるとは意外だったが、サンドオイルの生産に役立つのだ~という多胡氏のお考えは斬新である。

さて、トリウム溶融塩炉の熱で生産性を挙げる事が出来ても、実はオイルサンドには、レアメタルのバナジウム (vanadium)が含まれており、サンドオイルから抽出された原油のバナジウムはポルフィリン化合物として揮発性を持ち、製油によって重油に移行するが、これがタービンなどでの燃焼時に酸化物となると、鋼材表面の不動体皮膜を低融点化させる高温腐食現象、所謂バナジウム・アタックを引き起こしガスタービン・エンジンで非常に高価なフィンを傷めるケースが多く大きな課題となっている。更にバナジウムは触媒毒となるため、燃料重油中のバナジウムは十分除去されるのが望ましいが、バナジウム除去技術は確立されていない。

バナジウムはは原子番号23、元素記号V。バナジウム族元素の一つ。灰色がかかった銀白色の金属(遷移金属)で、主要な産出国は南アフリカ、中国、ロシア、アメリカで、この4か国で90%超を占める。バナジン石などの鉱石から算出されるが、上記の通り原油やオイルサンド(原油分を含んだ砂)にも多く含まれている。しつこいが、オイルサンド(極めて粘性の高い鉱物油分を含む砂岩)やオイルシェールから得られる重質油の燃焼灰にも希少なバナジウムが含まれているのだ。

さて世界中に埋蔵されているオイルサンド、オイルシェールから得られる重質原油は5兆バレル以上と推定されており、原油代替の石油燃料資源として注目を浴びている事は衆知。
大規模なオイルサンドは、カナダ・アルバータ州、ベネズエラ東部のオリノコ地域やコンゴ、マダカスカルにも分布している。
特にカナダ産オイルサンドからの重質の合成原油にはバナジウムが66ppm、残渣に249ppm 含まれている事が判明しており、カナダのオイルサンドから得られた油分には160ppm 程度のバナジウムが含まれているとの報告もあるようだ。
更にベネズエラのオリノコ河流域に埋蔵されている“オリノコタール”の資源埋蔵量は膨大で推定可採埋蔵量約2700億バレルの超重質油だが、バナジウム濃度は400~500ppm に達する。

いずれにせよ、オイルサンドを高性能タービンでも利用するためにも、貴重な元素であるバナジウムを除去する必要がある。

プルシアンブルーによる放射性セシウム除去

2011年09月10日 | 日記
産総研が、土壌中のセシウムを除去する技術を開発した。
このセシウム除去技術は、平成22年度科学技術戦略推進費「放射性物質による環境影響への対策基盤の確立」プロジェクト(概算予算4.9億円)で開発されたもので、低濃度の酸と顔料の一種であるプルシアンブルーを利用して土壌中の放射性セシウムを除去するのも。

※放射性セシウムには、半減期2年のセシウム134と半減期30年のセシウム137があるが、この両放射性物質の土壌からの除去を実現する。

今回開発したセシウム除去技術によると放射性廃棄物の量をもとの土壌の150分の1に減らせる見込み。従来手法よりも扱いやすく低コスト化が期待できる。高レベルに汚染されている福島県などでの除染に役立てたい。また農地だけでなく、手つかずの山林などにも適用可能で、現状では樹皮に付着したセシウムの除去に関する相談などが来ている。

土壌中に存在する放射性セシウムの除去技術には従来より「土壌剥離」と「土壌洗浄→年度粒子分離」などの手法があるが、「土壌剥離」については、福島の警戒区域、計画的避難区域、避難準備区域、併せて26,000haの農地が存在し、単純計算で1,800トンの廃棄土壌が発生するので非現実的。また「土壌洗浄→年度粒子分離」についても膨大な汚染排水と残土が分離発生する為、現実的でなく、両手法の共通欠点である大量の放射性廃棄物の減量処理が必須である。

既存の手法である土壌剥離の場合のコストは住友信託銀行のレポートにより試算すると26,000ha、剥離土壌5センチとすると3,000億円から6,000億円のコストがかかる。今回開発したセシウム除去技術だと土壌洗浄と吸着材であるプルシアンブルーの費用を合わせ、かつ除染する土地の選択を適切に行うと仮定すると500億円から1,000億円程度に圧縮可能。

土壌中のセシウムは特に粘土粒子にくっついているので、まず薄い硝酸か硫酸を土壌に通して粘土から水溶液中に抽出する。この薄い硝酸を使った場合は200度、45分でほぼ100%のセシウム抽出が可能。さらに水溶液中のセシウムイオンをプルシアンブルーの微粒子に吸着させると、微粒子の量は汚染土壌の150分の1で済み、放射性廃棄物の減量化を実現できる。

今回の産総研の実験では非放射性のセシウムを使っているが、放射性セシウムでも同様の結果が得られる。従来のセシウム抽出法は高濃度の酸を使うので取り扱いが難しく、コストもかかり、かつ農地の土壌を傷める難点もあったが、今回のプルシアンブルーを用いた除去技術は酸の濃度が従来の12分の1と薄く利用しやすい。

このセシウム除去技術の核となるプルシアンブルー(Prussian Blue)は、関東化学において1日当たり1トン程度の生産が可能で、かつ1kg当たり1,000円程度と安価、かつナノ粒子状にする手間は少々かかるが、生産自体も容易。プルシアンブルーは、セシウム・イオンを吸着するのに最適の大きさの空孔を有し、海水からの抽出も可能である。このプルシアンブルーは、既にチェルノブイリ事故時に家畜への投与を行い、内部被爆を低減する効果があることが実証されている。

プルシアンブルーは、フェロシアン化第2鉄(C18Fe7N18)に属し、鉄イオン(Fe)を銅イオン(Cu)に置換すると電気化学的反応によりセシウムを取り出すことも出来る物質である。プルシアンブルーは一般的には青色顔料として使われているが、消化管に吸収されないコロイド状の物質の為、人間が経口しても大丈夫で、仮に経口した場合でも吸収されず、排泄される。また日本でも、平成22年10月27日に厚生労働省から内部被爆用の薬剤として承認(承認番号:22200AMX00966000)されている。ただしセシウムの内部被爆事例がない為、投与した場合には厚生労働省への臨床報告が必要と言う承認条件が付されている。

従来の手法と比較して低濃度の酸と市販の圧力容器を使用して土壌から抽出したセシウムイオンはほぼ100%、プルシアンブルーで回収する事ができ、かつ大きな課題となっていた放射性廃棄物を1/150に減量する目途がたった事で、具体的な福島での汚染フィールドでの除染が行える状態になっており、連携できる企業などとの連携を模索したい意向が示されている。
今後は、更なる改良を重ね連続処理による効率化を目指し研究開発を進める予定。

このセシウム除去技術は、福島以外でも様々な企業が汚泥、焼却灰などの汚染物質の除染に活用出来、また放射性廃棄物の減量処理が可能となるので、当該技術を使えるフィールドを探している。ただ最大の課題は除染後の、結構高いレベルの放射性セシウム廃棄物の保管貯蔵施設が存在しない事である。

今回の福島第一原発事故による放射能汚染は、実質的にセシウム134と137の除去対策で大丈夫と判断している。世間ではストロンチウム90の問題が取り上げられているが、あるプラント会社の原子力・環境部門の人間に聞いてもそもそもストロンチウムは検出されておらず、この会社で問題にしているのはセシウムのみ。

参考情報として、福島第1原発1~3号機から放出されたセシウム137は1万5000テラベクレル(テラは1兆)で、福島原発事故で外部環境に出たセシウムは広島原爆にして168.5個分。
ちなみにヨウ素131は、福島原発で16万テラベクレル。広島原爆換算で6万3000テラベクレル。
ストロンチウム90は、福島原発で140テラベクレル。広島原爆換算で58テラベクレル。

(ヨウ素131の半減期は約8日。ストロンチウム90は約29年。)

※プルシアンブルーは、濃青色の顔料で「紺青」。
皇居の大手門を入ると宮内庁三の丸尚蔵館がある。この尚蔵館に伊藤若冲の『動植綵絵』30幅が所蔵されている。
この若冲の『動植綵絵』は、皇居の売店で30枚の絵はがきで入手可能で1200円だったと思うが、
プルシアンブルーを我が国で最初に使用したのは、この『動植綵絵』の中の「群漁図(鯛)」にあるルリハタを描くのに若冲が用いたのが嚆矢。
ちなみに「群魚図(鯛)」をみるとルリハタは、右上に見える。



産総研がディスプロシウム(Dy)不要の高性能「等方性焼結磁石」を開発

2011年09月01日 | 日記

レアアースの価格高騰が続いている。とりわけ供給不安が深刻なネオジム(Nd)とディスプロシウム(Dy)の取引価格は、先1年前と比較して、それぞれ5倍と10倍に高騰している。特に7月7日にはディスプロシウムが2400㌦USD/kgを超え、今週中には2500㌦に迫る勢いだ。

レアアースの価格高騰と輸入制限の影響により、ついに磁石の国内シェア4割を占める昭和電工が、中国国内での生産を増やす決定をした。今後も中国のレアアース輸出規制により、生産が制約されるリスクを回避する狙いがあるが、磁石製造に関する技術は、確実に中国に流出する事になるだろう。

無能な民主党政権には、今更何も期待できないが、レアアースを巡る対中国問題は、単なる資源問題では無い事を認識し、早急に必要な政策を打ち出し、速やかに実行するべきだ。

こんな中、産業技術総合研究所(産総研)サステナブルマテリアル研究部門相制御材料研究グループが快挙を成し遂げている。つまりディスプロシウムを必要としない高性能磁石の開発に成功したのだ。素晴らしい!

産総研は、現在最強の「ネオジム-鉄-ホウ素(Nd-Fe-B)」系磁石に次ぐ高い磁石特性を持つ材料の「等方性サマリウム-鉄-窒素(Sm-Fe-N)系」磁石(大同特殊鋼)の粉末を使って、温度400℃を1分間保持し焼結させ「等方性焼結磁石」を生成した所、この焼結磁石の残留磁束密度0.91T(9.1kG)、保磁力770kA/m(9.68kOe)、最大エネルギー積129kJ/m3(16.2MGOe)であり、最大エネルギー積約88%の性能を維持していることを確認したと言う。

ディスプロシウムは、100%中国からの輸入に頼っており、ディスプロシウムを含有しない高性能磁石の開発が喫緊の課題となっていたが、今回産総研は、磁石粉末としての特性は高いが、500℃以上の高温で焼結すると磁石特性を失ってしまう「サマリウム-鉄-窒素(Sm-Fe-N)系」磁石粉末に対し、アモルファス合金粉末を低温で高密度に焼結する技術適用し、500℃以下での焼結実験を繰り返し、今回、最大エネルギー積100kJ/m3に満たなかったものを、129kJ/m3に引き上げる事に成功した。

成功の要因は、前述のように400℃程度の低温でサマリウム-鉄-窒素(Sm-Fe-N)系」磁石粉末をパルス電流によって焼結し、荷重制御をするためのサーボプレスを組み合わせた新たな焼結法を用いた。パルス電流による焼結法を「パルス通電焼結法」と言うが、これは文字通り粉末の入った金型に電流パルスを流して焼結を行うもの。

通常、金型と粉末は双方ともに電気抵抗を持つため、金型と磁石粉末自身が発熱するが、パルス電流を使うと粉体の温度を上げることなく粉末界面での結合を促進することが可能となる。これにより粉末特性を低下させることなく焼結することが可能となったもの。

産総研では、今回作製された「等方性Sm-Fe-N系焼結磁石」は、Dyを使用しない為、レアアース資源の寡占状態の緩和に貢献することが期待されるとしており、今後は、異方性のSm-Fe-N系磁石粉末を用いて異方性焼結磁石を開発し、焼結技術だけではなく、磁石粉末自体の研究開発を行って、更に高性能なSm-Fe-N磁石の開発を目指すとしている。

今後の開発に大いに期待する。