阿部ブログ

日々思うこと

資源経済シンポジウム「トリウムとレアアース」が盛況裡に終了

2010年10月31日 | 日記
10月29日(金)東京大学・駒場キャンパス(生産技術研究所)において資源経済シンポジウム『トリウムとレアアース』が開催され盛況裡に終了した。当初、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)主催で開催する筈が、JOGMECがシンポジウムの開催を突然中止する決定を下した。尖閣諸島沖での衝突事件が背景にある事は容易に推測できる。
JOGMECが開催を中止したにも関わらず、今般、東京大学で開催にこぎ着ける事が出来たのは、偏に危機感を募らせる関係者の尽力によるもので、敬意を表する次第。

『トリウムとレアアース』シンポジウムの開催を主催したのは「社団法人 資源・素材学会資源経済部門委員会」で冒頭挨拶は、関西大学の伊藤俊秀教授が行った。
司会は、秋田大学・国際資源学教育研究センターの安達毅氏。講師は、以下の通り綺羅星の如く当該分野での論客が勢揃いして講演を行い、また活発な質疑応答が行われた。
参加者も多彩で行政機関、研究組織、企業・団体、個人・学生などで会場は、NHKの取材をもありほぼ満席となった。

講師の皆さんは以下の通り。
(1) エネルギー資源論と日本の課題 京都大学名誉教授 西山孝氏
(2) 産業の救世主-トリウム 国際高等研究所 亀井敬史氏
(3) トリウムの利用および国際情勢 電力中央研究所 木下幹康氏
(4) トリウム・レアアース資源と資源確保戦略 日本メタル経済研究所 西川有司氏
(5) トリウムの核燃料利用と原子炉による原子炉による有用元素創成の可能性 東海大学工学部 高木直行氏

この度のレアアース問題については、資源エネルギー庁鉱物資源課の失策は明らかであり、我が国経済に対して極めて深刻な脅威を与えた鉱物資源課の無為無策に対する精密な調査が必要で彼らの「失敗」については、広く国民一般に衆知し二度とかのうな失策なきよう対策を講ずるべき。
何れにせよ、今回の資源経済シンポジウム「トリウムとレアアース」関係者・講演者の皆様に対し“敬礼”!

エネルギー基本計画と原子力政策

2010年10月30日 | 日記
2010年3月19日、2030年までのエネルギー政策の指針を定める「エネルギー基本計画」の概要が明らかにされた。その中で、原子力発電を「低炭素電源の中核」と位置づけ、今後少なくとも14基を増設するとし、現在60%台の原子力発電所の稼働率を90%に引き上げることなどが柱となっているが、原子力は本当に「低炭素電源」なのであろうか?
大島堅一立命館大学教授の著書「再生可能エネルギーの政治経済学」によれば、ウラン採鉱からウラン濃縮、発電、廃炉に至るライフサイクル全体からのCO2排出を計算するとkWhあたり66グラムのCO2を排出していると指摘している。原子力がクリーンであるということは欺瞞である。
原子力は、その特性から計画公表、電源開発調整審議会決定、着工から運転開始までの期間が10年と長く、更には戦争やテロの攻撃対象と想定されるため、極めて高いリスクと脆弱性を持っている。それと日本には活断層と言う脅威が存在する。原発直下またはその直ぐ近傍に活断層が存在している国は日本だけである。現存する53基のうちの約半数は、1978年の耐震設計審査指針すら無い時代に設計・施工されている事はあまり知られていない。

エネルギー基本計画の背景にある地球温暖化論は、化石燃料の消費量を減らす省エネルギー技術の開発を促進することになるが、その一方で化石燃料から再生可能エネルギーへの転換、または原子力エネルギーの推進の理論的根拠にもなっている。ただし現状の再生可能エネルギー技術は、よほど大きなブレークスルーがない限り基幹エネルギーとはなり得ない。この為、原子力を推進すると言うことになるが、原子力を中心にしたエネルギー基本計画は実現不可能に思える。現在も第4世代の原子炉開発が進んでいるが、新たな14基の原発立地は果たして可能だろうか?燃料のウランにしても偏在性が高く普通に考えると、今後世界中で原子力発電所が建設され稼動すればウラン価格は高騰し、資源は逼迫するのではないか。現在、モナザイトなどからレアアースを採取後、廃棄されているトリウムを軽水炉で燃やす事も有効であろうが、抜本的な解決には至らない。

また日本政府が進める核燃料サイクルの実現も極めて難しいだろう。今回のエネルギー基本計画にも「準国産エネルギー」と言う聞きなれない言葉があるが、これが核燃料サイクルを意味している。この核燃料サイクル(ウラン濃縮、使用済み核燃料再処理)に要する費用は18兆8000億円と見積もられている。しかしこれは再処理施設稼動100%を想定しているので実質的には六ヶ所村再処理工場以外にも第2の再処理施設が必要。97年に稼動する予定だった六ヶ所村再処理施設はいまだに稼動しておらず、現在まで2兆円の巨費が費やされている。74基の風力発電所が立地する六ヶ所村の再処理工場が稼動しないため、余剰プルトニュウムが国内に蓄積され続けている。不用意なプルトニュウムの蓄積は日本の核武装を容易に想像させる事もあり、これを少しでも利用するため必然的にプルサーマルを推進する政策がとられている。ようやく九州電力玄海3号機でプルサーマルが開始されたが、今の軽水炉はプルサーマル利用を前提として設計されていないため、想定外の事故の可能性を指摘する専門家もいる。最終処分場も未解決であり、高レベル核廃棄物は人類の手に余る厄介物であることが広く理解されるようになっている。

かように様々な解決困難な課題を持つ原子力をCO2削減策の中心に据えるのは真の低炭素社会を実現するものではない事は明らかである。過去の原子力政策の亡霊を引きずったエネルギー基本計画は抜本的に見直すべきである。
以上

【参照資料】
1.「エネルギー基本計画」見直しに当っての論点
http://www.meti.go.jp/topic/downloadfiles/100209a02j.pdf

2.「再生可能エネルギーの政治経済学」大島堅一(東洋経済新報社)2010年3月11日

警視庁公安部外事三課の情報漏洩

2010年10月28日 | 日記
2010年10月28日、ネット上に警視庁公安部外事三課のものと思われる114ファイルが流出した。
個人的な感想としては大した情報は見あたらないな~。

この情報漏洩は「コントロール」された朗詠、いや漏洩だ。
所謂、ヒューミント物のファイルのみで、電子的手段による様々な監視・追跡については皆無。
この漏洩の目的は多分、少々の機密ぽい事実とその他、様々偽情報を混ぜ込んだ類の情報を流して、この漏洩情報で動き出す奴らを特定の方向に誘導するのが狙いかと邪推したくなる。

平成20年4月作成の「大規模国際テロ事件発生時の初動捜査体制」などは、まあ誰が考えてもこうだろう、と言う内容で、テロ対策にあたる142名の実名入りのリストや、「国際テロリズム緊急展開班の班員名簿一覧」や新規指定候補者一覧などまあまあの内容。

国際テロ緊急展開班のファイルもあり、この班の大部分は鑑識が占めているが本当?
この緊急展開班の新規指定候補者に至っては氏名は勿論、生年月日、住所、電話番号、家族構成、特技などが記載された、しかも写真入りの13名の名簿がある。携帯の番号も記載されているので、番号の変更が必要だ。
実在する人物だとすればの話。

また他のファイルを見ると国際テロ事案が発生したら、直ちにモスクとイラン大使館を監視する事になっており、パルトークと言うチャット・サイトのメッセージをチェックする事などの対応をする事となっている。

面白いのはイラン大使館員の給料に関するリスト。全権特命大使より給料の多い館員がいるし、大使館には日本人スタッフ11名もおり、その給料の額も記載されてある。この他、東京三菱銀行が提供したイラン大使館の銀行口座の入出金リストがあるが、やはり金の流れを把握する事は重要である事が一見してわかる。

しかしイラン大使館とかイスラム教徒を単純にテロリストと想定するのは、単純すぎないか?
まあ、FBIやCIAなどからの要請で情報を提供しているデータもあるが、現場では違和感ありながら作業しているのが、なんとなく透けて見える。

この手の情報漏洩は無くならないだろう。
ただファイルを見ていて思うことは、東アジア反日武装戦線は爆弾闘争を行ったが、これからはサイバー空間上での虚実の闘争が繰り広げられるのだろうと言う事。

この警察系のサイバー戦では、仮想敵が本気だったら警察の通信基盤や監視ネットワークが狙われる可能性が高いと考えている。もし警察の通信手段を麻痺、若しくは擾乱されたら、警察は混乱し、身動きがとれない。指揮が出来ないし、命令も伝達出来ない。物理的にモノを破壊するまでもない。

イスラエルがシリアを爆撃した際、レーダーシステムに侵入、若しくは仕掛けてあったロジック爆弾を起動させF-15が接近しているにも関わらず、シリア空軍のレーダーには何も映らず、迎撃出来なかった事は有名。
これと似たような事は、日本でも起こりうることだ。

有事などに起動する緊急時のネットワークもあるだろうが、これら通信&ネットワークのハードウェアは勿論、ソフトウェアについても要チェックでソースコードレベルでの安全検証が必須。特に外国から調達した物には細心の注意が必要だろう。ブラックボックスのママ使うのはやめた方が良い。いざ鎌倉の時に動かないとか、動いても相手のコントロールされる可能性はゼロではない。

最後に、この手の公安調査においては、信頼のおける通訳と言うか、かなり広範な言語に対応できる捜査支援体制が必要なだし、単なる当該国の言語に習熟しているだけでなく、その国・地域の習俗、文化、歴史にも通暁している事が望ましいが、この手の人材を公務員から見出す事は難しいだろうから、人事採用制度を多様化することも検討要ではある。