阿部ブログ

日々思うこと

『ココダ』~遙かなる戦いの道~読了 悲惨すぎる東部ニューギニア戦

2012年07月27日 | 日記
「ココダ」とは東部ニューギニアにある街道の事。
ココダ街道は、オーエンスタンレー山脈を超える街道で、標高2000mのココダ峠を越え南岸の要衝ポートモレスビーに至る山岳道だが、日本軍は、北岸のブナからの直線距離にして200km以上ある南岸の要衝ポートモレスビーを目指すを作戦を実施した。

この『ココダ』はオーストラリアで製作・放映(2008年9月)されたドキュメンタリー作品「Beyond KOKODA」(フォックステレビ系列ヒストリーチャンネル)をベースにした書籍で本当の書名は「THE PATH OF INFINITE SORROW」。

『ココダ』は、オーストラリアの映画祭で最優秀作品賞に輝いたドキュメンタリー番組『Beyond Kokoda』の制作陣が、日豪両軍の元兵士に取材を敢行している。特に旧日本軍人についても50時間を超えるインタビューをしている。

ポートモレスビー作戦に投入された南海支隊の生還率は、驚く事に数パーセント。米国公刊戦史をして「世界最強の抵抗」と言わしめた南海支隊の戦闘は、スタンレー山脈ココダ街道からブナ・ゴナの死闘に至る壮絶な戦いの連続であり、その戦闘は「凄まじい」の一言につきる。

是非とも、ご一読される事をお薦めする。

※因みに、南海支隊が戦ったココダ街道は、現在ココダ・トレイルと呼ばれる山脈越えのトレッキングコースがある。このコースは、標高約2000mのココダ峠を越え、全行程5日~10日ほどの日数を要すると言う。

IED(Improvised Explosive Device)~即製爆破装置~

2012年07月26日 | 日記

最近の爆発物テロで、多用される爆弾にIED(即製爆破装置)がある。
このIEDの定義は、米国防総省によれば「破壊、無力化、撹乱、混乱を生じさせるため応急的に設置または作成された破壊、殺傷、有毒ガス、焼夷の効果を有する装置をいう。また装置の多くは軍用品以外から作られる事が多い。」
(Joint Publication 1- 02「Department of Defense Dictionary of Military and Associated Terms」12 April 2001)

因みに防衛省ではIEDを「即製爆破装置」、または「簡易爆弾」と表現している。

IEDは、前述の通りテロ組織による爆弾テロに多用されており、特にイスラエル軍のレバノン侵攻地には、メルカバ戦車を破壊するなど、多大な被害を与えている現状がある。
それと、爆発物テロは簡単な訓練で自爆テロが可能であり、一人百殺ができて、社会的混乱を引き起こせるというメリットがあり、アフガニスタンなどの紛争地帯で頻繁に実行されている。
少々古い数字で恐縮だが、2003年~2007年の5年間に生起した大規模テロは55件と言われる。そのうち51件が爆発物を使用したテロである。

このIEDに使用される爆薬は、軍用爆薬、産業用爆薬、手製爆薬が考えられるが、イラク、アフガニスタン等の紛争継続地域では、軍用爆薬の入手が容易で、使用するテロリスト側にとっても、運搬、加工等に際し安定性が高くIEDの原料として最も良い爆薬であり頻繁に利用されてきた。

IEDに用いられる高性能爆薬(High Explosives)にはTNT爆薬とRDX(Research Department explosives)がある。

有名なTNT爆薬は、1902年にドイツではじめて砲弾の炸薬に使用して以来、現在まで軍用爆薬の最も基本的な爆薬として利用されてきた。TNT爆薬の爆速は、約7,000m/secで、爆轟圧は17.7Gpa。
このTNTは爆薬として極めて安定性に優れ、加工が容易である事は広く知られる所である。

RDXは、第二次世界大戦中の1940年頃から、TNTと同様に砲弾の炸薬として使用された。
RDXの特性としは、高密度に圧搾した場合、安定性に問題が生ずる為、TNTと混合してCompB(Composition B)として利用される場合が多い。
このRDXの爆速は、9,000m/sec、爆轟圧34.1Gpaであり、TNTに比較して威力が飛躍的に向上しているた。

いずれにしてもこのTNTとRDX が今後とも、世界の軍用爆薬の基本デあることは間違いない。特にRDXは、可塑剤を添加したC4爆薬として、1987年の大韓航空機爆破事件や、2004年シベリアボルガ航空機爆破事件に使用されている。

爆弾テロを行う組織にとって、やはり軍用爆薬の入手は困難であり、IEDの爆薬としては、市販されているダイナマイト、硝安油剤爆薬、含水爆薬(スラリー、エマルジョン爆薬)が爆発物テロに使用されている。
特に、硝安油剤爆薬は入手が容易で大量に確保可能なので、車両に大量積載して広範囲を破壊する車両爆弾として、1995年のクラホマ市庁舎爆破事件や、2006年インドムンバイ列車爆破事件に使用され多大な被害を与えている。

それと注目すべき産業用爆薬としては、セムテックス(Semtex)と言う可塑性爆薬がある。
当然の事ながら、産業用爆薬は軍用爆薬に比し威力が低いが、このセムッテクスは軍用爆薬のC4と同じ威力を有する。
このセムテックスは、パレスチナゲリラ、イスラム過激派、IRA などが多用したため、2001年にチェコ政府も生産、輸出の管理強化した。しかし時既に遅く、1975年~1981年にかけてリビアに700トンのセムテックスが輸出され、今回のアラブの春の時にも反政府勢力に利用されて、最終的にカダフィ政権を打倒するに至っている。

また、2001年9月11日の米国同時多発テロ以降、IEDの原料となる爆薬の入手をテロ組織が出来ないようにする為、世界的に管理が再強化された。これによりテロ組織は、市販の薬品を調合して手製の爆薬を製造する手法にシフトしている。
特に硝安油剤爆薬、TATP(過酸化アセトン:TriAcetone TriPeroxide)及び液体爆薬(Liquid xplosives)が利用されるようになっている。

日本においても、革マル派などの組織が多用した、硝安油剤爆薬は、手製爆薬としても製造が簡単で、原料の入手も容易。この硝安油剤爆薬は農業用肥料として世界各国で使用されている硝安に数%の軽油を混合するだけで簡単且つ大量に製造できる。2008年のきた皇居爆発物発射事件にも硝安油剤爆薬が使用されている。

TATPは、アセトン及び過酸化水素水に触媒として硫酸又は塩酸のような強酸を混合することで合成できるが、合成され乾燥されたTATPの結晶は衝撃、摩擦、熱に対し極度に敏感でり、極めて危険であり、テロ組織にとっては市販薬品から入手できるので、利用度の高い爆薬となっている。

また、液体爆薬(Liquid Explosives)については、2006年8月、英国ヒースロー空港で、未遂であるが、米国向け航空機にペットボトルに仕込んだ液体爆薬を持ち込み爆破しようとした事件がある。
現在、液体爆弾は、爆発物探知器では探知できず、警備当局にストレスを与えている。このため、皆さんも経験している事であるが、機内への100cc以上のペットボトル等の液体の持ち込みが禁止されているのは、この液体爆薬対策の為である。

この液体爆薬は、ニトログリセリン、PLX(Picatinny Liquid Explosives)及びアストロライト(Astrolite)などが代表例である。液体爆弾は、取り扱いが危険である為、テロ以外には使用されないが、前述のように検知されない為、危険度の高い爆薬であり、今後も更なる警戒が必要である。

「トリウム熔融塩炉の設計」について豊橋技術科学大学の三田地紘史名誉教授が講演

2012年07月23日 | 日記
先週の土曜日、即ち2012年7月21日に静岡市で、NPO法人「トリウム熔融塩国際フォーラム」主催による「トリウム原子力フォーラム」が開催され盛況の内に終了した。参加募集数は92名程度であったが、予想を超えて120名を超える参加者があり、活発な質疑応答もなされ、関心の深さを再認識した。

このNPO法人による静岡市でのトリウムに関するイベントは今年2回目である。特に静岡県知事がトリウム熔融塩炉に深い関心があり、浜岡原発地域でのトリウム炉開発に注力したい意向を示しているからだ。報道(毎日新聞 2012.6.1)によれば中部電力でも内部にトリウム原子力のチーム組成した?と報じられており、時節柄、旬なテーマではある。

今回のフォーラム参加で一番の成果は、三田地先生の講演を聴けたこと。原子力関係者内部では評価の高い先生であるので、一度話しを聞いてみたかったのだ。
以下に、三田地先生の講演内容の概要を自分なりに記して見たい。

■「トリウム熔融塩炉の設計」豊橋技術科学大学・三田地紘史名誉教授の講演

古川和男氏の研究を受けて、トリウム溶融塩炉(FUJI)の後継となる、FUJI-U3とFUJI-Pu1と言う2つの溶融塩炉の設計を行った。本日はその設計の概要と得られた成果を発表する。

炉の寿命が30年間で黒鉛減速材を交換せずに運転できる炉を設計した。これらの炉では,基本的にはオークリッジ国立研究所(ORNL)で確認されたプロセスを用いて5年~8年ごとに燃料塩をバッチ的に化学処理する方式を採用している。ORNLの実験炉の燃料転換比(CR)は0.92~0.95である。

今回設計した炉は半径方向にも軸方向にも3領域の炉心をもつ熔融塩炉であり、CRは、1.0 である。この炉は核燃料の立場からすると自給自足炉(Self-Sustainable Reactor)となるので、始めに一定量の核分裂性ウラン(233U)を用意すれば、その後は永久に運転を継続でき、ウラン資源の節約およびTh 資源の有効活用に貢献すると考えられる。

炉寿命は30年とし、この間,黒鉛減速材は交換なしに用いる。電力需要に応じて負荷追従運転する条件で平均負荷率を0.75とすれば、耐照射損傷を勘案して、黒鉛減速材では52keV以上の高速中性子束を4.2×1013以下にし、また、Hastelloy N 製の炉容器では0.8MeV以上の高速中性子束を1.4×1011以下に,1.0eV以下の熱中性子束を7.0×1012以下に抑える必要がある。

熔融塩炉を長期に渡り運転し続けると、燃料塩中に核分裂生成物が増加し沈殿析出する恐れがある。また、核分裂生成物の増加は中性子経済の悪化を引起しCRを低下させる。このような不都合を起こす前に、燃料塩を化学処理する必要がある。今回の炉心設計ではCRを0.98以上とし、定期的に燃料塩を化学処理し、処理に際しては、LiF、BeF2、ThF4、UF4はすべて回収し、化学処理後に熔融塩炉に再装荷する燃料塩として使用する。残りは炉運転中に必要となる補給燃料として使用する。不足する燃料塩成分は新規に投入する。なお,プロトアクチニウム(233Pa)は大半が半減期27.3日で233U に壊変するので、化学処理においてPaF4はすべて回収し、化学処理後に再スタートする炉の燃料塩に全量を再投入する。これら以外の核分裂・捕獲生成物はすべて燃料塩より取除く。

持続可能なトリウム溶融塩炉には、核分裂性ウラン233Uを初装荷量(Initialinventory)1.132tで、30年間の追加補給量(Feed)は0.344t。運転30年後の炉内残留量(Final remaining amount)は1.505tとなる計算結果を得ている。ただし、233Pa は半減期27.3日で233U に壊変するので、233Uの炉内残留量は(233U+233Pa)量とした。これより233Uの必要量は1.476t (=1.132+0.344)となり、増加量は29kg(=1.505 t-1.476 t)である。この233Uの増加量は約7.5年ごとの燃料塩化学処理における233U損失を補うと考えられるので,熔融塩炉は核燃料の立場から見ると自給自足炉と言える。なお、30年間のPu生成量は0.29kgと少ない。233Paを除くPa生成量は3.57kg、Np生成量は1.74kg, (Am+Cm)の生成量はわずか0.04gである。これらを合計してマイナーアクチニド(MA)は、30年間に5.32kg 生成されることになる。

この熔融塩炉を30年間運転した後に炉内に存在する核分裂生成物は合計1,033kgである。核分裂生成物には、核分裂ガス、液体核分裂生成物および固体核分裂生成物に分類される物質群が生成されるが、この内、キセノンなどの核分裂ガスは燃料塩に対する溶解度が低いので、運転中にHeガスバブリングにより燃料塩より分離する事が可能である。

液体核分裂生成物のうち3価の生成物の濃度は0.078molであり、この値は燃料塩に対する溶解度(1.0mol程度)に比較して十分に低く、3価生成物が沈殿析出することはない。3価以外の生成物の濃度は合計0.153mol。この程度の濃度であれば黒鉛や炉容器に対する化学的な悪影響はないと考えられる。

まとめると、トリウム溶融塩炉は3領域の炉心で構成され、出力200MWe(熱出力450MWth)、負荷率0.75であり、運転33日ごとに燃料補給されつつ30年間運転される。また燃料塩は約7.5年(平均)ごとにバッチ的に化学処理される。

この炉は、黒鉛減速材の交換なしに運転可能で、30年間の燃料転換比は約1.01で自給自足炉である。即ち、炉運転を続けても核分裂性ウランは減少しない。また233Uの初装荷量は1.132t、30年間の追加補給量は0.344t。233U 必要量は1.476tである。出力1GWe当たりに換算すると233U必要量は約7.4tとなる。また出力1GWe当たり30年間に生成されるPuは約1.5kg, MAは約27kg。BWRのPu生成量5.08t、及びMA543kgに比べて極めて少ない。

※補足:
この炉の実現に向けた最大の課題は、如何にして初期装荷する233Uを確保するのかである。過去に233Uを原子炉で生成する実験を企図した事があったが、国内外の様々な理由で立ち消えとなった経緯があり、楽観は出来ない。

最初から233Uの確保が難しい場合には、別の手段で中性子をトリウムに照射する事を考えなくてはならない。この問題は古川和男先生が既に「加速器溶融塩増殖炉」(AMSB)と言う炉の構想を研究発表されている。
このAMSBは、核スポレ-シヨン反応装置を利用して、約10億eVに加速した陽子をベリリウムに衝突させ、そこから発生する多量の中性子を利用してトリウムに火を付けるもの。古川先生は、ターゲット・ブランケット兼用の溶融弗化物塩浴中のトリウムと反応させる方式を考案しています。

これは直径約4m、深さ7mの溶融塩タンクの上部から陽子を入射させる方式で、照射損傷はなく、熱除去も容易な方式。しかしながらこのような陽子加速器は存在しない為、開発が必要である。

※補足:
最近日本国内企業で有望な加速器技術が開発され、低コスト低電力での中性子を発生させる事が可能となっている。

加速器を用いて中性子を得る方式以外で、実現性が一番高いのはやはり、プルトニウムを火種に使う事だろう。これは、FUJI-Pu1と言う熔融塩炉であり、炉心設計も完了している。

FUJI-Pu1は、1年間の運転で991kgのプルトニウムを消費し、455kgの核分裂性物質、即ち233Uを得る事が出来る。現在のMSBRやフランスの熔融塩炉FMSR、改良沸騰水型軽水炉(ABWR)、AMSBなどの炉型とFUJI-Pu1をU233の生産能力と経済性で比較すると、身びいきかもしれないがFUJI-Pu1が一番である。Ufes(t/y)は0.306である。他の炉型の場合、未解決な酸化トリウムの再処理法や安価な加速器が必要であるなど、抱えている問題があり実現性には遠い。

次に熔融塩炉による超ウラン元素の消滅させる能力についてであるが、超ウラン元素(TRU)は、半減期が非常に長い為、消滅させる研究が成されているが、抜本的な解決策は見いだせていない。所謂「トイレのないマンション」と言われる由縁。

このTRUは中性子を照射すると核分裂するので、高速中性子炉である増殖炉よりも熱中性子炉である軽水炉がこの場合適している。例えば超ウラン元素の代表的なものにネプツニウム237がある。この半減期はナント210万年。このネプツニウム237に中性子を照射するとその半減期は、4年に短縮されるのだ。アメリシウムやキュリウムでも同様に半減期が現実的な時間に短縮される。

TRUの消滅&短寿命化で一番高い性能を得る炉型はいかなる炉であろうか?
そこで計算してみた。中性子加圧水型原子炉(PWR)と高速増殖炉、そしてFUJI-Pu1を比較すると、その超ウラン元素消滅率は何と84.7%に達する。PWRは35.7%で高速増殖炉においては31.6%に過ぎない。

FUJI-Pu1の特性をまとめて見ると、プルトニウムを起動用燃料(火種)として使用すると、プルトニウムを消滅させながら、発電でき、かつ233Uを効率良く生成させる事が可能で燃料転換率1.0を達成し、自給自足な炉となる。

満鉄におけるオイル・シェール事業 ~シェール革命の本命はオイル・シェール~

2012年07月20日 | 日記

米エネルギー省エネルギー情報局(DOE/EIA)の2012年7月の発表によれば、今年4月米国史上初めて天然ガス火力発電量が石炭火力発電量に並んだ。10年前の米国にける発電総量の半分以上は石炭火力であり、天然ガス火力は、その4分の1以下だった。それがついにそれぞれが32%となった。
米国で天然ガス火力発電が伸長した要因は、所謂シェール・ガス革命によるものである。

但し、非在来型資源の本命は、シェール・ガスではなく「シェール・オイル(shale oil)」である。
ガスは単なるエネルギー源であるが、石油はエネルギー源でもあり、且つ様々な化学品を生成する多用途資源である。この石油に代わる多用途資源は地球上に存在しない。

非在来型資源の本命である「シェール・オイル」には、2つの生成源がある。
第一は、頁岩や砂岩の隙間に貯留された原油。つまり一般的な「シェール・オイル」。これは別名タイト・オイルとも言われる。
第二は、「オイルシェール(oil shale)」から乾留した原油。

「オイル・シェール」とは、ケロジェン(kerogen:石油または石油ガスに変化し得る固体高分子有機物質の事)が比較的高濃度(10%程度)に蓄積された泥岩に含まれる油分を言う。普通は4%以上含む泥岩をオイル・シェールに分類するが、この泥岩の事を油母頁岩、または油頁岩とも言う。

この「オイル・シェール」の開発については、意外と速い段階から日本が関与して実績を挙げている。それは、満鉄、即ち南満洲鐵道株式會社の中央試験所が、中国北東部の撫順炭礦で「オイル・シェール」からの製油を事業化していた。
満鉄のオイルシェール事業は、 撫順炭礦の石炭層表面を覆う油母頁岩を採掘し、それを乾溜し石油類似の軽質油を生産する事業である。当時の日本にとっては死活的な重要性を持つ石油代替資源であり、極めて貴重な事業であった。
満鉄は、ドイツ同様、撫順において石炭液化にも取り組むが, 石炭液化技術は遂に未完に終わった。 それに対して、 オイルシェール事業は独自の乾溜技術の開発に成功し、石油代替燃料の供給に貢献をした。

満鉄の中央試験所は、1907年に関東都督府の研究機関として大連に設立され、1910年に満鉄に移管されている。
撫順炭礦でオイル・シェールが発見されたのは、中央試験所設立から2年後の1909年。この時のオイル・シェールの含油率は2%程度と低く経済的価値はないと言う事で研究は中止された。

しかし満鉄はオイル・シェールの研究を再開する事となる。それは、1920年から古城子で石炭の露天堀が開始され、石炭層表面を覆う油母頁岩を取り除く必要があり、その大量の頁岩を如何に取り扱うのか、如何に処分するかが問題となっていた為。
しかしながら、良く調査してみると、オイル・シェールの含油率が石炭層から離れれば離れるほど含油率が高く、撫順炭礦では平均して5.5%である事が判明している。また詳細な探査によって撫順炭礦には2億トンのオイル・シェールがあると試算され、満鉄しては取り組むべき事業価値が明らかになった。

そこで満鉄は、1921年に100トンのオイルシェールをスウェーデンとドイツに送り、乾留試験を依頼し、1924年にはイギリスに500トンのオイル・シェールを送り、同様に乾留試験を行っている。
この乾留試験の結果は良好であった為、1925年の専門家会議を経て、乾留の方式をイギリス式の外熱式炉型から内熱式炉型に変え、更に乾留炉と発生炉にプロセスを分ける事とした。
この方式は、実際に撫順炭礦のガス工場内にオイル・シェールの試験プラントとして建設され、1日当たり10トンの処理能力を得る事が出来ている。

この後、本格的なオイル・シェール乾留プラントの建設が1928年に開始され、1930年に完成。このプラントは1日当たり50トンのオイル・シェールを処理する能力を持っていた。その後、プラントに改善が施され処理能力は100トン/日に増大させる事に成功している。これによ石油生産量は、14.5万と達している。
最終的に、このオイル・シェール・プラントは、年間30万トンの石油を生産するに至っている。
当時の日本国内における石油生産量が5万トン程度であった事からも分かる通り、国家的にも重要な事業であった事が理解できる。

その後、1945年8月のソビエト侵攻により、このオイル・シェール・プラントは一部を残して破壊されたが、1948年の中国共産党による旧満州の支配権確立により、プラントは生産を再開し、1952年まで合計22万トンの石油を生産している。

日本の敗戦に伴い、満鉄は消滅したが、この満鉄によるオイル・シェールの取組は、現在においては Royal Dutch Shell社に引き継がれ、同社が開発した地中で乾留する「インシチュー(in situ)法」による「オイル・シェール」開発が旧満州の吉林省において行われていると言う。

「シェール・オイル」と違い「オイル・シェール」は比較的浅い地層(深度1,000m以浅)に賦存し、水圧破砕による環境破壊引き起こさない。またオイル・サンドと違い軽質油の為、熱分解する手間が省ける事も「オイル・シェール」の利点である。

「オイル・シェール」の埋蔵量は世界で3兆バレルとも言われ、資源の偏在性が無く、石油資源に恵まれない日本においては十分に注目に値する非在来型資源である。我々は満鐵調査部・中央試験所での「オイル・シェール」開発における先人の事績を学び、イノベーティブな第二の「シェール革命」により石油と言う多用途資源の安定供給を実現するべきである。

ロシア軍の軍改革と軍人の待遇改善

2012年07月18日 | 日記

プーチン氏は、大統領に就任後、相次いで大統領令を出している。
その中でも重要なのが、ロシア軍の再興を期す『大統領令第603号「ロシア連邦軍及び他の軍事組織の建設及び発展並びに軍需産業の近代化に関する計画の実現」』である。

プーチン大統領は、満を持してロシア軍の装備品の更新に着手する。目標は、2015年までに陸海空軍の30%を最新鋭型に更新し、更に2020年までに70%の装備を更新する。
特に、サイバー戦能力を高め、指揮・通信・諜報・偵察能力を向上させ、米軍が多用する無人航空機と遠隔操作によるロボット兵器の開発を進め、勿論、核抑止力の新鋭化などを行う。
また地球温暖化で重要性を増している北極海や極東方面の海軍力増強が注目される。

北極海におけるロシアの動向は、過去ブログでも書いている。

ロシアの北極域での防衛力強化 ~ロシア北極軍~

北極海におけるロシア海軍の動向と原子力発電プラント船&原子力機関車

軍装備品の更新作業を続けつつ、新たに国家的脅威を予測する戦略企画部門を新設するとある。
この組織がどのような形で組成され運用されるのか個人的には非常に高い関心を持っている。

また兵器などの装備品調達については、欧米流に競争原理を働かせ、品質を維持しつつコスト削減にも着手する。また兵器の新規開発についてライフサイクル全般を網羅するプロセスを明確化し、効率的に基礎研究から、開発製造、運用・廃棄までを管理する具体的手法を2016~2025年の期間に確立する事となっている。

それと軍人の待遇改善についてもプーチンは、『大統領令第604号「ロシア連邦における軍務の更なる改善について」』を発令している。

ソビエト連邦崩壊後、軍人住宅の劣化と不足、及び軍人給与の低さが大きな課題となってい久しいが、最近になって軍人官舎の建設が大規模に進んでいる。官舎建設の目標は、2013年中には全ての軍人への官舎が提供する事となっており、政府は目標達成に邁進している。また継続的にメンテナンスをし、老朽化して官舎を廃棄し新規建設する基金を2014年以降に制度を確立すると言う。

また給料も2012年1月以降、一挙に2.5~3倍に引き上げられ生活に支障の無い程度に昇給が実現している。また退役軍人の年金支給も継続して行いつつ、インフレで過酷な生活を強いられた経験から、ロシア国内における物価上昇率より2%高い割合で増額することが規定されている。
中国人民解放軍も同じだが、退役軍人の年金や医療に配慮しないと社会不安の要因となるので、この手当は必須のものだ。

最後になったが、徴兵拒否超や逃亡が絶えない為、米軍と同様に志願制による兵力整備を検討するとしており、段階的に毎年5万人ずつ増加させたいとの意向だ。

いよいよ、ロシア軍が再興する事となりそうだ。


用語の解~50歳の事は、「G寿」、KSD48は「国民の生活が第一」~

2012年07月17日 | 日記

「50歳」の事を「G寿」(ゲージュ)と言うそうです。

音楽界、特にJazz業界での用語のようです~
何故、G寿なのか?
Gは、音階としては「ソ」で5を意味する。これに米寿などの「寿」を付けたもの。

これを書いている今、ラジオで「KSD48」と言っている。
先週、小沢一郎さんが立ち上げた新党「国民の生活が第一」で所属議員48人を合わせて「KSD48」らしい。

「原子力潜水艦・原子力動力装置計画計算書」なる文書

2012年07月14日 | 日記
「原子力潜水艦・原子力動力装置計画計算書」と言う79ページの文書がある。
作成されたのは1958年5月、作成したのは川崎重工業。
当該文書は、(1)原子炉、(2)原子炉関係補機、(3)原子炉遮蔽、(4)二次系統、(5)重量で構成される。

この文書では、熱出力35MWの加圧水型原子炉、4000SHP(軸馬力)の蒸気タービン2基、基準排水量2500トン、水中での巡航速度18ノット、連続航行260日間と言う性能を持つ原子力潜水艦を検討している。

検討する為の設計目標は、原子炉、及び推進機関の総重量は、軸系、プロペラ、蓄電池及び操舵装置を除く重量を1000トン以下に抑える事。

原子炉区画は直径8.2m、長さ12m。機械室は直径6.5m、長さ18m。原子炉の炉型は加圧水型(PWR)。当該文書では、炉型として沸騰水型(BWR)も検討するとしているが、フクイチ(福島第1原子力発電所)を経験しなくてもBWRを原子力潜水艦の炉型に採用する事は無い。

潜水艦の場合、容積に制約を受けるので、原子炉関係機器の最適配置、放射線の遮蔽の有効性を確実にする為原子力関係機器は、原子炉区画に全て納める。また他の潜水艦区画への放射線の影響を限定、隔離する為に原子炉区画の隔壁は50mmの鉛板を張るとしている。

この文書において2500トン、8000SHPの原子力潜水艦の設計検討の結果は、原子炉系、二次系を含めた際の容積重量は、設計目標である1000トン以下に抑える事が可能で、原子力潜水艦としての現実的な製造が可能との結果を得ている。

さて何故、川崎重工業が原子力潜水艦の研究を行うのか?
戦前、川崎重工業は、航空母艦「加賀」や「瑞鶴」などの戦闘艦艇を建造し、最大の建造件数を誇るのが、実は潜水艦であった。なんと61隻の潜水艦を建造している。
戦後も、再軍備最初の潜水艦である「おやしお」は川崎重工業が建造して就役させているのだ。

さて、「原子力潜水艦の原子燃料の交換は如何に?」でも書いているが、艦番号501の非大気依存推進 (Air-Independent Propulsion:AIP)の「そうりゅう」が就役しているので原子力潜水艦は不要と意見もあるようだが、自主防衛能力、特に核抑止力を得る為には、原子力潜水艦の開発と建造は必須である。6隻は就役させる必要があり、弾道ミサイルに核弾頭を搭載して排他的経済水域を越えて遊弋しつつ、我が国の専守防衛を確実にする事が重要である。

対米従属を是とする自衛隊に、我が国の安全保障を任せる程、日本国民は単純ではない。
自衛隊の対米従属は、ナイーブであり、無責任である。今本当に自主防衛を担える真の軍隊、国防軍が必要である。

リバースイノベーションと性比不均衡

2012年07月14日 | 日記

リバース・イノベーションとは、商品やサービスを新興国で開発し、先進国を含む世界各国に持ち込み新市場を開拓することで、従来であれば先進国で製品開発した製品を、新興国や途上国で販売してきたが、リバースイノベーションは、それとは反対のアプローチである。

リバース・イノベーションには、製品を構成する部品の現地調達や製品構造の単純化によって、低価格の製品を開発する、所謂「Frugal Engineering」が重要。また途上国の求めるニーズを取り込む事が、これまた重要である。

リバース・イノベーションの成功例で有名なのは、ゼネラル・エレクトリック(GE)がインドで開発した「超音波診断装置」である。GEは、インド以外でも中国の病院のニーズに合わせた、低価格の「超音波診断装置」を開発し、当初の病院据え置き型から、改善を施して今では、携帯型で簡易な超音波診断装置の開発に成功している。またパソコンに接続して正確に診断する為の製品を開発した。価格は従来製品の1/6だと言う。圧倒的な価格性能比を誇り、GEの中国における超音波ビジネスを拡大する事に貢献している。しかも米国でもヒット商品となった。

一方、インドにおけるGEの超音波ビジネスは、ウィプロとの合弁事業でインド市場を席巻している。少々古いデータだが、2006年にはGEメディカル・システムズとウィプロの超音波診断装置の売り上げは2億5000万ドルに達している。

リバース・イノベーションの典型的な事例である超音波診断装置は何故、インドや中国の市場で成功する事になったのか?
意外に思われるかも知れないが、アジア特有の「女の子」よりも跡継ぎや労働力になる「男の子」を欲しがる傾向にある。これは過去ブログでも書いている性比不均衡である。

アジアで拡大する性比不均衡

性比不均衡を生んでいるのはリバース・イノベーションで生み出された「超音波診断装置」による胎児の性別判定が、正確に行われるようになったこと。胎児が女の子とわかると「堕胎」するのだ。

通常、妊娠20週で胎児のアナトミー・サーベイ(解剖学的検分)が行われる。母親のお腹にトランスデューサーを当てて性器の形で性別を判定するのだ。インドや中国では、超音波による診断においては、性別の判定しか学ばない事が大半だと言う。
ただし、超音波装置などによる胎児の性別判定は、インド、中国、韓国では違法である。だから怪しげな業者が誤った判定を下してトラブルに発展する事も珍しくない。

この為、GEは同社の超音波診断装置を産み分けに使わない事を誓約させているが、一度売ってしまえば、その後の使途など知り得る訳がない。

リバース・イノベーションが性比不均衡を引き起こしていると言う話しでした。

原子力潜水艦の原子燃料の交換は如何に?

2012年07月13日 | 日記
現在の商用炉の主流を占める軽水炉は、原子力潜水艦用炉STR (Submarine Thermal Reactor) から発展した加圧水型軽水炉 (Pressurized Water Reactor, PWR、WH社系列)である。GE社が開発した沸騰水型軽水炉 (Boiling Water Reactor、BWR)は、福島第一原発事故を引き起こした。BWRに未来は無い~

世界初の原子力潜水艦は、1954年就航の米国USS Nautilus号。
1958年には歴史上初めて、北極海の下を潜航し、歴史に名を刻んだ。旧ソ連最初の原子力潜水艦は、Leninsky Komsomol号で1958年に就航。

Nautilus号向けの核燃料を開発したのは、米国バテル記念研究所で、ウラン燃料セラミックペレットを開発している。バテルがね~

原子力潜水艦の燃料は、ウランとジルコニウムのセラミック、若しくは金属合金で、ウランの濃縮度は20%~98%であり、米国の原子力潜水艦の燃料体の場合は,戦闘の衝撃に耐えられるように設計され,重力の50倍以上の戦闘衝撃負荷に耐えることができる。これは,商用原子燃料体の地震衝撃負荷の10倍以上である。

原子力潜水艦の原子炉本体は、全体が完全に溶接されており、一次系は,炉心を収納する原子炉圧力容器と一次冷却水の循環パイプによって構成され、加圧された高熱の水を一次系の中に閉じこめる単一の構造体を構成している。

一次冷却水を循環させるポンプは,密閉された水没型のモーター・ポンプで、全体が完全に溶接された一次系の金属の防護壁の内側に格納されている。このポンプは,外側から電磁力によって操作されポンプに動力を供給するために一次系の外壁に穴を開ける必要はない。原子力潜水艦の一次系防護壁を貫通する金属物は存在しない。

さて原子力潜水艦の原子燃料の交換は如何にの答えであるが、原子燃料の交換は退役まで行われない。20年から30年の現役期間を過ぎると原子力潜水艦本体は解体され、核燃料が抜き取られ原子炉区画だけがハンフォードに運ばれる。

米海軍の場合は、以下のプロセスを経る。

(1)米国海軍は、退役した原子力艦艇、原子力潜水艦の原子炉部を本体から分離し、陸上にて施設にて残存する使用済燃料を取り出したのち米国海軍ピュージェット湾造船所 (ワシントン州シアトル付近)に係留され海上保管される。

(2)海上保管された原子炉からは順次、使用済燃料が分離され、核燃料自体は、列車で国立アイダホ原子力研究所に輸送される。

(3)燃料が取り出された原子炉は、除染され廃止措置が行われた後、原子炉部は、ワシントン州ハンフォードへ輸送され永久処分される。

こうした退役原子力潜水艦や艦艇の原子炉は、2007年9月までに 117基 がハンフォードへ搬入されている。

日本は中国の軍拡を眼の前にして原子力潜水艦に核ミサイルと搭載して排他的経済水域を中心として遊弋して、核抑止力を持つべきではないか?
AIPを搭載した「そうりゅう」が就役しているが、AIPでOKか?

アラン・チューリング ~生誕100年~ 生命は計算できるか?

2012年07月12日 | 日記
エニグマ暗号解読やチューリング機械などで著名なアラン・チューリングが生まれてから100年らしい。1912年6月23日が誕生日である。

だからと言う訳ではないが丸の内の「丸善」で『チューリングを読む~コンピュータサイエンスの金字塔を楽しもう~』を購入して今将に読んでいる所。チューリング本はこれで2冊目。

最初の本は『甦るチューリング~コンピュータ科学に残された夢~』で、内容は非常に広いテーマを網羅しており、とても読み応えがある本だ。即ち述語論理、ゲーデルの不完全性定理、チューリング機械、オートマトン、暗号戦争、チューリングテスト、ホモセクシャル、形態形成などなど。

特に興味深いのは「論理哲学論考」、「数学の基礎」などを著した哲学者ウィトゲンシュタインとチューリングは、キングスカレッジで討論をしたと言う。1939年の事で、これは初めて知った。

この本の著者は、21世紀にチューリングは甦るとしている。そしてチューリングが出した課題に我々は答えていないと言う。生命は計算できるか?と言う問いに対して~

『チューリングを読む』に戻ると、この本でも初めて知った事がある。

チューリングの画期的な論文「計算可能数とその決定問題への応用」(On Computable Numbers, with an Application to the Entscheidungsproblem)に先立つ事こと15年前に数学者ヒルベルトの助手をしていたハインリッヒ・べーマンがゲッティンゲン数学界で講演した「決定問題と論理学の代数」の、その内容に驚愕した。
著者のチャールズ・ベゾルドも「顎が外れるぐらい驚くべきものである」と述べている。
即ち、

「この問題の性格からいって、根本的に重要なのは次の事である。
厳密な意味での思考を一切使わずに、与えられた命令に従って機械的な計算だけが証明の道具として許されることである。
浴するならば、機械的な思考について論じることもできる(おそらく、のちにその手続きを機械で実行できるだろう)。」


いやはや、これは参った。これはコンピューターとアルゴリズムについて語っている!
ベーマンは1921年に既に上記について言及しており、その先進性、先駆性を正しく評価されるべきだ。

しかしながら1936年のチューリングの論文における数学の証明法のユニークさも、当時の数学界からすれば相当なものだ。架空の計算機械を想定しての証明だから~
よくもまあ、指導教官だったM・H・A・ニューマンはこの論文を受理したものだと思う。

さて、この本はチューリングの論文に逐一注釈している形式で中身が濃いので、読了までまだまだ時間がかりそうだが、この連休に集中して読み込みをしたい。

ワイヤレスネットワーク

2012年07月11日 | 日記

従来、技術開発は進んではいたものの産業的な出口が見えにくかったセンサ系はスマートグリッド・スマートメータや環境負荷低減といった産業システムへの適用が世界全体の傾向として少し見えてきた。
これは欧州のFuture Internetや中国の物聯網(ウーレンワン=Internet of Things)、そして韓国のIT839の一部にも現れている。産業システムとしてシステムを構築し、運用するためにはワイヤレス技術とネットワーク技術そして情報システムを連結させ、様々なサービスに共有する部分(たとえば、サービス発見、データ設定・取得の手続き)を情報プラットフォームとして共通化して構築することが重要である。

ワイヤレスネットワークは従来、無線アクセス技術で縦割りになっていたが、音声通信サービスやインターネットアクセスサービスなどのサービス指向でネットワークアーキテクチャを構築、再編成することが重要と思われる。

ワイヤレスネットワークは、中国(2008-2009は1億人/年で増)やインド(2008-2009は1.8億人/年で増)における携帯電話サービスの急激な立ち上がりに加えて、日欧米におけるスマートフォン普及(日欧では新規加入の20%以上がスマートフォン、米国では30%)とともに市場が急拡大している。
スマートフォンや高機能携帯電話からの発生する大量通信トラヒックを処理するため、無線アクセスネットワークの大容量が急がれている。我が国でNTTドコモ、au、 softbankの3大キャリアが同様にLTE利用を表明しているように、既存大手キャリアは、3Gとのマルチモードでチップが提供されるため共用端末が作りやすく、国際的な周波数をすべてカバーしている(マルチチャネル)LTEを選択する。また国際標準であるLTE-A(rel10)、 IMT-A(4G)へのロードマップができていることも強い。

従って、今後は日本や欧米のような先進国では、LTEへの投資が進行していくが、エリクソン、アルカテル・ルーセント、ノキア・シーメンスネットワーク、Huaweiなどのグローバルベンダの設備投資は、人口の割にはまだ広がっていない南アジア、アフリカを中心に進んでいくことになろう。

3G、LTE、 4Gのオペレーションを先行している日、欧、米のキャリアは、長い目で見ると、後発国がLTE、4Gの時代になる際に、ノウハウ提供等で優位に立つことができる。特にLTEが共通のアクセス技術として広がって来た時には、キャリア毎の差異化はベアラサービス以上のアプリケーションのサービスプラットフォームおよび、churn防止のためのカスタマサービス・運用保守となろう。
だが欧米では、まだ8割程度の収入が音声通信であり、データによるビジネスモデルに不慣れである。データ通信先進国の日本キャリア・ベンダはその点で優位と考えられる。

既にNTTドコモ、KDDI、SBMが半分程度の収入をデータで稼ぎ出していることは世界でも先駆的なビジネスモデルといえる。しかし必ずしも、増収・増益に直接つながらない点が問題である。
基本的には加入あたりの収入(ARPU)は激しい競争の結果、減じていることが実状である。

今後は、①LTEの即応性、②高速通信を利用した、たとえばITSなどのM2M通信など、いわゆるインターネットアクセスでない領域での端末認証、データ収集、制御などの領域までキャリアが取り込んでいく可能性が高い。

情報符号化/ネットワーク符号化技術

2012年07月11日 | 日記

ネットワークの高速大容量化が続き、デジタル処理応用がますます展開される中で、ネットワーク環境の通信速度、容量、品質ともに多様性が増すため、効率的な伝送、蓄積、処理の必要性は高まる一方である。

ハードウェア実装技術の性能向上と実装アルゴリズムの性能向上により高性能ではあるが実現できなかった符号を実用化できるようになってきており、符号理論の産業への応用が順調に進みつつある。

特に、誤り訂正能力が非常に高く、シャノン限界に近い特性を示すLDPC符号については、WiMAXなどの無線系への利用をはじめとして、2010年からハードディスクの信号処理チップにもその利用が開始されている。今後ますますLDPC符号の活躍の場面が増えることが予想される。

また、多元LDPC符号、空間結合LDPC符号、ポーラー符号などの新たな誤り訂正符号の研究も進展しつつある。

更には、マルチキャスト通信を対象とする通信路符号化を行うネットワーク符号、消去操作により寿命が短くなる特徴を持つフラッシュメモリのためのフラッシュ符号、分散情報源符号化技術、画像、音声、動画などを最初から圧縮した形で取得するための圧縮センシング技術は高度化する通信形態、情報蓄積装置や方式のための符号理論としてその進展に注目すべきである。

通信トラヒック理論について

2012年07月10日 | 日記

情報通信ネットワークシステムは今後益々増大かつ大変動を伴うデータトラヒックを効率的に収容する一方で、高い通信品質をエンドユーザに提供しなければならない。そのためにはデータトラヒックの測定技術、確率統計の理論を基にしたネットワークシステムの性能解析手法、さらにはネットワーク性能の予測技術をより一層高度化・高精度化することが欠かせない。

特に、測定時系列データの統計解析・確率分布推定手法、通信トラヒック理論で取り扱い可能なクラスへのマッピングと性能予測は今後も重要な研究分野であり、この方面に対して応用確率論・応用数学・情報理論に代表される数理工学的観点からのキャッチアップと理論の積極的な応用が必要不可欠である。

近年ではクラウドコンピューティングに代表される大規模なデータセンターの設計や高効率な運用が求められており、そのような大規模システムのマネージメントには非常に多くの構成要素における確率的変動の影響を考慮したシステム設計や性能解析が欠かせない。
そのためには従来のマルコフ連鎖や中心極限定理等の基礎的確率論に加え、大偏差理論や極値理論のような多くの確率的変動を取り扱う確率論を積極的に応用して知見を獲得していくことが重要である。

クラウドコンピューティング自体は世界規模で研究開発が進められているが、通信トラヒック理論や応用確率論を駆使したシステム設計法や構成論については米国が先んじて研究を展開しているのみで、その他の国々ではほとんど研究が行われていない。
そのため、この方面での研究を国内でも積極的に展開し、クラウドコンピューティングやデータセンターの設計・運用に対する基礎的知見の獲得と実システム開発への応用を目指す必要があると思われる。

※付記:
通信トラヒック理論・待ち行列理論の基礎研究は欧州ならびに米国が世界を牽引している。
基礎理論を応用した研究は米国が強く、欧州、日本がそれに続く状況である。近年の性能評価研究ではマルコフ連鎖をベースにした研究のみならず、中心極限定理等の確率論を基にした研究が展開されてきており、この動きは特に米国で顕著である。

日本は大学を中心に基礎理論とその応用に関する研究が行われているが、最近はモンテカルロ型シミュレーションによる評価研究が多く、また新しい理論展開もそれほど活発化していない。韓国も日本と同様の状況下にある。中国はこの研究分野の歴史が浅いため、現時点では発展途上にあるが、世界で活躍している中国出身の研究者と中国国内の研究者の共同研究が年々活発化してきており、中国研究者の存在感は今後益々増してくるものと予想される。

待ち行列理論やマルコフ連鎖を基にした性能評価研究が活発なアジアの国として台湾も挙げられる。中国も台湾も米国等外国で学位を取得した研究者が帰国してレベルの高い研究成果を発信している。

「食べる醤油」のブームが来るか?

2012年07月08日 | 日記
「食べるラー油」がブームになり、すっかり我々の食文化の中に定着した感があるが、今年は『食べる醤油』がブームになるかもしれない。
食べる醤油を作っているのは、香川県の「かめびし屋」。

「かめびし屋」は、宝暦三年(西暦)1753年に創業し、現在257年目になる。典型的な長寿企業の一つだ。
「かめびし屋」は、日本で唯一「むしろ麹」による醤油作りの伝統を頑なに守り続けている。この「むしろ麹法」による醤油は、独特のコクやうまみによる深い味わいが出せる。

醤油は「かめびし」が最高!

この「むしろ麹法」の伝統を守り続けてきた事が、「食べる醤油」を生み出す事となった。素晴らしい発想の転換でありイノベーションだ!
「かめび屋」は、醤油をフリーズドライ製法で粉末状にして「ソイソルト」を作り上げた。

「ソイソルト」には、チョコレートとのマッチング商品である「ソイショコラ」や、醤油の材料である炒り大豆と小麦を使った「豆ちょこ」などがあり、定番商品として着実にファンを増やしている。
フリーズドライにしても醤油の味を損なわず、チョコレートの強烈な味に埋没しないのは、やはり「むしろ麹」による伝統製法によるものだ。とても美味しいので、一度食される事ををお薦めする。
 
自分が一番美味しいと思うのは「ソイソルトクリアボトル 3年醸造」だ。パスタやサラダに振りかけて食べている~
もしかすると、うどんにも合うのかも知れない。

この食べる醤油「ソイソルト」は、第19回芦原科学賞奨励賞を受賞している。
芦原科学賞は、芦原義重氏(関西電力名誉会長、香川県名誉県民)からの寄附金を基金として、香川県内の産業技術の高度化及び産業の振興に寄与することを目的として設けられた賞との事。

かめびし屋の「食べる醤油」を一度は味わって欲しい。しかし知らずに食べている可能性がある。東京の某有名レストランで使われているからだ。

それと、以下の過去ブログもご参照頂ければ幸い~

むしろ麹でつくる、徳島・かねさ味噌本舗の絶品お味噌

むしろで長期保存する、超絶「利尻こんぶ」