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■『皇帝の嗅ぎ煙草入れ』(1942)は、言うとおりにロマンス小説、いわゆるハーレクイン小説に挑戦した作品だと思う。
発表された時点で、ハーレクインというレーベルは存在しなかったが、そういった女性向け小説のジャンルはあったわけで、
実際にイギリスで出版されていた女性向けの『Woman's journal』という雑誌に分載されていた。
〇1942年『皇帝の嗅ぎ煙草入れ』 Woman's journal 43年2月~5月
4回分で全部を掲載できたのかどうか、想像するにアブリッジ版ではなかったか。
★アブリッジ版?
■要約版のことだよ。クイーンの『創作の秘密』を読むと、クイーン(リー)が『アブリッジ版を書くのは、
もう一冊書くのと同じだ』(大意)とぼやいている箇所がある。
クイーンの場合は伏線を外さないように要約しないといけないので、それは大変だったろうね。
その話は後にするとして、カーは『Woman's journal』をはじめ、雑誌にいくつか作品を載せている。
雑誌連載
1937年『四つの凶器』 Woman's journal 37年12月~38年4月
1937年『孔雀の羽根』 The Passing Show 37年11月~38年1月
1938年『曲がった蝶番』 The Passing Show 38年10月~39年1月
1938年『五つの箱の死』 Home journal 38年8月~9月
1939年『緑のカプセルの謎』 Woman's journal 39年5月~7月
1939年『テニスコートの謎』 Modern Woman 39年11月~40年3月
1940年『かくして殺人へ』 Woman's journal 40年6月~9月
1941年『殺人者と恐喝者』 Woman's journal 41年5月~8月
1942年『皇帝の嗅ぎ煙草入れ』 Woman's journal 43年2月~5月
1944年『爬虫類館の殺人』 Woman's journal 43年12月~44年2月
1946年『別れた妻たち』 Woman's journal 47年4月~6月
1947年『眠れるスフィンクス』 Woman's Own 47年5月~7月
1950年『ニューゲートの花嫁』 Woman's journal 50年6月~9月
1952年『赤い鎧戸のかげで』 Argosy 52年1月~4月
1955年『喉切り隊長』 Argosy 55年5月~8月
■『評伝 奇蹟を解く男』の巻末資料から抜き出したんだが、実際にこれだけなのかな。
英語版wikiで見ると、『Woman's journal』に作品を載せた作家は、ナイオ・マーシュ、マージョリー・アリンガム、
ジョーゼット・ヘイヤーをはじめクリスティなど女性作家があがっている。
★日本でいえば『婦人公論』みたいなもんですかね。『The Passing Show』は旅行雑誌ですか。
『Woman's Own』はそのまま『女性自身』。
にしても『連続殺人事件』『死が二人を分かつまで』あたりが雑誌連載されていないのは不思議です。
■さすがに全作品が掲載なんてことはなかったろう。『Argosy』はアメリカのSF雑誌とは別モノらしい。
『Woman's journal』は当然ながら読者が女性なので、カーは重要な登場人物に女性を設定する気配りを見せている。
★『緑のカプセル~』のヒロイン、『テニスコート~』のバカップル、『かくして殺人へ』の女性脚本家、そして『殺人者と恐喝者』の奥さん。
みな女性が窮地に立たされるストーリー。
■『別れた妻たち』の主役は妻を殺す青髭だし、『ニューゲートの花嫁』にいたってはタイトルからしてハーレクインだよ。
『ハーレクイン・ロマンス 恋愛小説から読むアメリカ』(尾崎俊介 平凡社新書)からの受け売りだけど、
ハーレクインのお約束として、最初は反目しあう二人が次第に惹かれあい、最後はめでたく結婚で終わる。
★少女マンガそのものですなあ。
■同書からの引き写しだけど、ハーレクインロマンスの男性主人公は
「イケメンで頭も優秀で親の遺産で金もある。たいていは医者か弁護士かプロスポーツ選手」だそうだ。
★『皇帝の~』に出てくる前夫はプロテニス選手、今彼氏は銀行員。キンロス博士は精神科医だし、ぴったりですね。
■ヒロインのほうは「小柄で正義感が強く、自分の魅力に気づいていない頑張り屋」。
★こっちはちょっとズレてますね。頑張っている雰囲気は無さそうですし、正義感があるのかどうか。
■ヒロインの造形が流され易い女性というのがカーらしい。だからクリスティが褒めたというエピソードは眉唾なんだ。
ただ「反目しあう二人が次第に惹かれあう」という展開は『かくして~』『連続~』『爬虫類館~』でしっかり展開されている。
★最後はめでたく結婚、ということになるとフェル博士やHM卿の出番はないわけで。
■いつものワトスン役の青年でもいいけれど、ロマンス物語としての訴求力が弱い。
はっきりと主人公がヒロインと結ばれる、というラストを強調したかったがためのノンシリーズだと思う。
カーのラブコメ趣味はカー内側からの発露ではなく、外部要因からの要請もあったんじゃないか。
※そういえば、『皇帝の~」はこの講談社版世界推理小説大系10巻でしか持っていなかったことに気づきました。
『皇帝~』はともかく『黒死荘~』はこの巻でしか読めなかったのですよ、当時。
故山藤章二描く「ロジャー・ダーワース」「H・M卿」はこの本でしか見られません。
発表された時点で、ハーレクインというレーベルは存在しなかったが、そういった女性向け小説のジャンルはあったわけで、
実際にイギリスで出版されていた女性向けの『Woman's journal』という雑誌に分載されていた。
〇1942年『皇帝の嗅ぎ煙草入れ』 Woman's journal 43年2月~5月
4回分で全部を掲載できたのかどうか、想像するにアブリッジ版ではなかったか。
★アブリッジ版?
■要約版のことだよ。クイーンの『創作の秘密』を読むと、クイーン(リー)が『アブリッジ版を書くのは、
もう一冊書くのと同じだ』(大意)とぼやいている箇所がある。
クイーンの場合は伏線を外さないように要約しないといけないので、それは大変だったろうね。
その話は後にするとして、カーは『Woman's journal』をはじめ、雑誌にいくつか作品を載せている。
雑誌連載
1937年『四つの凶器』 Woman's journal 37年12月~38年4月
1937年『孔雀の羽根』 The Passing Show 37年11月~38年1月
1938年『曲がった蝶番』 The Passing Show 38年10月~39年1月
1938年『五つの箱の死』 Home journal 38年8月~9月
1939年『緑のカプセルの謎』 Woman's journal 39年5月~7月
1939年『テニスコートの謎』 Modern Woman 39年11月~40年3月
1940年『かくして殺人へ』 Woman's journal 40年6月~9月
1941年『殺人者と恐喝者』 Woman's journal 41年5月~8月
1942年『皇帝の嗅ぎ煙草入れ』 Woman's journal 43年2月~5月
1944年『爬虫類館の殺人』 Woman's journal 43年12月~44年2月
1946年『別れた妻たち』 Woman's journal 47年4月~6月
1947年『眠れるスフィンクス』 Woman's Own 47年5月~7月
1950年『ニューゲートの花嫁』 Woman's journal 50年6月~9月
1952年『赤い鎧戸のかげで』 Argosy 52年1月~4月
1955年『喉切り隊長』 Argosy 55年5月~8月
■『評伝 奇蹟を解く男』の巻末資料から抜き出したんだが、実際にこれだけなのかな。
英語版wikiで見ると、『Woman's journal』に作品を載せた作家は、ナイオ・マーシュ、マージョリー・アリンガム、
ジョーゼット・ヘイヤーをはじめクリスティなど女性作家があがっている。
★日本でいえば『婦人公論』みたいなもんですかね。『The Passing Show』は旅行雑誌ですか。
『Woman's Own』はそのまま『女性自身』。
にしても『連続殺人事件』『死が二人を分かつまで』あたりが雑誌連載されていないのは不思議です。
■さすがに全作品が掲載なんてことはなかったろう。『Argosy』はアメリカのSF雑誌とは別モノらしい。
『Woman's journal』は当然ながら読者が女性なので、カーは重要な登場人物に女性を設定する気配りを見せている。
★『緑のカプセル~』のヒロイン、『テニスコート~』のバカップル、『かくして殺人へ』の女性脚本家、そして『殺人者と恐喝者』の奥さん。
みな女性が窮地に立たされるストーリー。
■『別れた妻たち』の主役は妻を殺す青髭だし、『ニューゲートの花嫁』にいたってはタイトルからしてハーレクインだよ。
『ハーレクイン・ロマンス 恋愛小説から読むアメリカ』(尾崎俊介 平凡社新書)からの受け売りだけど、
ハーレクインのお約束として、最初は反目しあう二人が次第に惹かれあい、最後はめでたく結婚で終わる。
★少女マンガそのものですなあ。
■同書からの引き写しだけど、ハーレクインロマンスの男性主人公は
「イケメンで頭も優秀で親の遺産で金もある。たいていは医者か弁護士かプロスポーツ選手」だそうだ。
★『皇帝の~』に出てくる前夫はプロテニス選手、今彼氏は銀行員。キンロス博士は精神科医だし、ぴったりですね。
■ヒロインのほうは「小柄で正義感が強く、自分の魅力に気づいていない頑張り屋」。
★こっちはちょっとズレてますね。頑張っている雰囲気は無さそうですし、正義感があるのかどうか。
■ヒロインの造形が流され易い女性というのがカーらしい。だからクリスティが褒めたというエピソードは眉唾なんだ。
ただ「反目しあう二人が次第に惹かれあう」という展開は『かくして~』『連続~』『爬虫類館~』でしっかり展開されている。
★最後はめでたく結婚、ということになるとフェル博士やHM卿の出番はないわけで。
■いつものワトスン役の青年でもいいけれど、ロマンス物語としての訴求力が弱い。
はっきりと主人公がヒロインと結ばれる、というラストを強調したかったがためのノンシリーズだと思う。
カーのラブコメ趣味はカー内側からの発露ではなく、外部要因からの要請もあったんじゃないか。
※そういえば、『皇帝の~」はこの講談社版世界推理小説大系10巻でしか持っていなかったことに気づきました。
『皇帝~』はともかく『黒死荘~』はこの巻でしか読めなかったのですよ、当時。
故山藤章二描く「ロジャー・ダーワース」「H・M卿」はこの本でしか見られません。
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