spin out

チラシの裏

ディクスン・カー妄論02 殺人現場の舞台化

2025年02月03日 | JDカー
■カーのミステリにおけるモチーフとして「殺人現場の舞台化」がある。
★「密室」「不可能犯罪」「オカルト」「ロマン」とかじゃないんですか。
■読者への目くらましとして、そういった味付けを利用していただけだよ。
★簡単に言えば『髑髏城』ということですか。
■『魔女の隠れ家』も、『髑髏城』と同じように殺人現場を「犯人が目撃する」ことで犯人を隠匿し、
その様子を三人称(ときに一人称)の文脈を使って読者をミスリードする、これがカーのミステリにおける骨法の一つだよ。
その目撃者たちは、偶然あるいは犯人の意図により錯覚した証言をくりかえして読者を惑わせ、
さらに探偵さえも著者の命によって真相を悟られないようミスリードに加担しているんだ。
『三つの棺』でいえば、ペティスとかいろいろ有象無象が出てくるだろう。
かれらは目撃者という役目を与えられて登場し、犯人の意図により、あるいは偶然により
錯覚させられたかれらの証言が摩訶不思議な状況を作り上げてしまう。
★『夜歩く』『髑髏城』『魔女の隠れ家』『赤後家の殺人』『死時計』『皇帝の嗅ぎ煙草いれ』……、
みな犯罪現場の舞台化ですね。
■そうでない作品もある。『貴婦人として死す』はそうでない作品の代表で、
カーがクリスティ作品に挑戦した(と思われる)傑作だけど、クリスティの傑作とくらべると格落ちなんだなあ。
★『貴婦人として死す』をもってしてもクリスティには及ばないと?
■女性の造形が弱いんだ。クリスティは、そこんところ抜群だろう?
★まあ、たしかに。
■ポンコツ娘かじゃじゃ馬娘、年を経ては一族を支配する鬼婆(失礼)しか描けないカーにしては、
淑女/悪女の二面を持つ複雑な女性を関係者の証言を使って浮かび上がらせる、という意図もあったのでは。
★ちょっと褒めすぎな感が。

※新訳版が出ているとはいえ、「メイルジャア」推しの旧版ファンも多いのでは。
お話は、ミステリというより「一人の女性をめぐる三人の男の愛憎劇」と解釈したい。
バンコランは狂言回しみたいなものだし、世界大ロマン全集に収録されていたのも分かる気がします。
ちなみに創元文庫版『魔女の隠れ家』の装丁は、カー本の中でベスト1に推したい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ディクスン・カー妄論01 第... | トップ | ディクスン・カー妄論03 講... »

コメントを投稿

JDカー」カテゴリの最新記事