赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

安倍外交の新たな展開 コラム(65)

2015-10-27 00:00:00 | 政治見解



コラム(65):安倍外交の新たな展開


遠交近攻?

安倍総理は10月22日~28日の日程でモンゴルと中央アジア5か国【※1】との関係強化のため【※2】、歴訪の途につきました。一方、中国の習近平氏は10月19日~23日の日程でイギリスを訪問中で、日中両国とも「遠交近攻策【※3】」を用いているように見えます。

【※1】モンゴル国、トルクメニスタン、タジキスタン共和国、ウズベキスタン共和国 キルギス共和国、カザフスタン共和国。

【※2】出発前の総理発言:「モンゴルと中央アジアは、アジアの中心に位置し、東西の結節点ともなる地政学的に大変重要な地域で、地球儀を俯瞰する外交にとって、非常に重要な地域。これまでは天然資源の輸出に依存していたが、今は付加価値の高い経済を目指して質の高いインフラを求めている」。

【※3】遠い国と手を結び、背後から牽制させながら近い国を攻める策。中国戦国時代の范雎(はんしょ)が秦王に進言した戦略。



中国の警戒

今回の安倍総理の歴訪を中国は嫌がっていました。

実は、この中央アジア5カ国はロシアと中国のせめぎあいの地なのです。中央アジアの国々はもともとソ連邦の中にありましたが、ソ連崩壊後に独立しました。しかし、ロシアにとっては今でも勢力下に置きたい地域なのです。

それに対し中国の覇権戦略である一帯一路構想では、シルクロード地域である中央アジア諸国からヨーロッパへの侵出を目指しているため、ここはロシアと中国の思惑が交差する地点になっています【※4】。その地域に日本が入ってくることは、中国の思惑を妨げる大きな不安材料となるのです。

中国は民主党の岡田代表らを使い、再三にわたり安倍総理の外遊を牽制させようとしました。民主党の異常ともいえる臨時国会召集要求の裏にはこのような事情があったのです。

中国政府は日本の国会議員の大半が親中議員であると誤解し、どうやら日本の国会議員を操ることができると信じているようです。

【※4】中国はモンゴルを含めると9000kmのも及ぶ長い国境線をロシアに接し、領土問題がくすぶっている。中国人(漢民族)によるロシア領への不法侵入、中央アジア諸国への侵食、北京条約でロシアに編入されたウラジオストクをめぐる問題等を考慮すると、両国の関係の本質は敵対関係にある。


日中首脳会談の展望

11月1日には日中韓の首脳会談が開かれます。安倍総理と中国の李克強首相との首脳会談では、「経済や環境、防災の3分野」について協議すると報道されていますが、安倍総理は、日本企業が一方的に不利益を被る中国国内法の是正を強く求める可能性があります。

その背景にはTPPによる自由貿易体制の確立や ASEAN諸国との連携、モンゴル・中央アジア諸国との連携が強化されることによる安倍総理の「確固たる自信」があります。


「安倍外交は完全に行き詰った」などと安倍外交を矮小化して評価している評論家や一部のマスコミは、もっと豊かで公平な国際感覚を持ち、発展的な日本の外交を論じていただきたいものです



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