赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

原油安はアメリカの外交戦略 コラム(130)

2016-01-26 00:00:00 | 政治見解



コラム(130):原油安はアメリカの外交戦略

数年間100ドル以上で推移していた原油価格は、2015年には60ドル台に、今年の1月12日には一時30ドル割れしました。


アメリカ発の原油安

アメリカは制裁を解除して、イランを原油市場に復帰させるとともに、自国の原油油種を解禁し、利益を無視したシェールガスの輸出に踏み切るなど、原油価格の下落を助長する政策を続けています。


ロシアの国家財政に黄信号

ロシアの通貨ルーブルは1ドル=69ルーブル台と最安値水準に近づき、ロシアの株価RTS指数もリーマンショック直後の水準に迫っています。ロシアの1人当たりのGDPは8400ドルとなり、2年前の15000ドルから大きく激減しています。

ロシアは、主要な外貨獲得源の70%をエネルギー産業が占めています。一方、食料品を輸入に頼っており、ルーブルの急落は、そうした生活必需品の獲得が困難になる恐れがあります。

つまり、燃料・エネルギー製品の輸出価格の低下は、ロシアの国内経済に深刻な危機をもたらしています


中東情勢の変化

アメリカのイランに対する制裁解除により、イランの原油の供給が過剰となり、結果としてISの原油密売を絶つ効果がありました。ISの劣勢はこうした資金不足が原因です。

したがって、一連の原油安はアメリカの外交戦略の一環で、ロシアに対する経済制裁だと言えます。同時に、EU諸国への支援と中東に対する牽制が含まれているのです。


日本への影響

原油安は負の側面ばかりではなく、メリットも多々あります。

ガソリン価格の下落は自動車メーカー、航空会社や陸運会社、海運会社にも恩恵をもたらします。また電力会社にもいい影響を与え、製造業の工場などは燃料コストの低減で利益が増大します。メリットを最大限活用しておく知恵も必要です。

原油安は日本にとって必ずしも悲観する材料ではないのです。



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