①国際社会は嘘ばかり―情報戦に騙されるな :230823情報
「アメリカ、中国、ロシア等々、それぞれが自国の戦略に沿ったプロパガンダで国際社会を騙している」と国際政治アナリストの 北野幸伯氏は言います。『クレムリン・メソッド』という本にそう書いているのですが、これを伊勢雅臣さんが上手くまとめているのを見つけましたので、両者に許可を頂いて、掲載します。なかなか面白い内容なので大変に参考になると思います。
■1.中国の「平和的台頭」という嘘
2010年に起きた尖閣諸島における中国漁船体当たり事件は、日本中を震撼させたが、その2年前に「尖閣諸島から日中対立が起こる」ことを予測した識者がいる。国際関係アナリスト北野幸伯氏である。
氏の著、「日本人の知らない『クレムリン・メソッド』世界を動かす11の原理」では、なぜそういう予測ができたかの種明かしをしている。それは簡単なことで、「アメリカが撤退した後に、中国が何をしたのか」に
関する事実を見てみればすぐに分かるという。
(1) 1973年にアメリカは南ベトナムから撤退。
翌1974年1月、中国は西沙諸島の南ベトナム実効支配地域に侵攻し、占領。
その後、同諸島に滑走路や通信施設を建設。
(2) 1992年、アメリカ軍はフィリピンのスービック基地、クラーク空軍基地から撤退。
1995年1月、中国はフィリピンが実効支配していた南沙諸島ミスチーフ環礁に軍事監視施設を建設し、そのまま居座った。
要は、中国は米軍が後退した真空地帯にはすぐに侵出する、という事実である。
尖閣諸島も当時、米軍が日米安保の対象にするかどうか明確にしておらず、また民主党政権の弱腰もあって、軍事的には真空地帯であった。
■2.『国益』のために国家はあらゆる『ウソ』をつく
中国は口先では「平和的台頭」などと言っているが、「国益のために、国家はあらゆるウソをつく」というのが、国際社会の原理であり、それを見破るためには、「真実は、言葉ではなく行動にあらわれる」というのが、氏の考え方だ。
中国の「平和的台頭」に呼応するように、日本国内でも「沖縄に米軍基地はいらない」「平和憲法を守っていれば戦争は起きない」などと言う人がいまだにいる。
そういう嘘に騙され続けたら、我々の子孫はベトナムやフィリピンのみならず、チベットやモンゴル、ウィグルのような目に逢うかもしれない。
それを避けるためには、こういう嘘を見破るだけの見識を我々は持たなければならない。北野氏はロシアの外交官や情報員を養成するモスクワ国際関係大学を日本人として初めて卒業しており、国際政治の嘘を見破る方法を今回「クレムリン・メソッド」として説いている。
そのさわりを紹介したい。
■3.「世界のすべての情報は「操作」されている」
前節の「国益のために、国家はあらゆるウソをつく」というのが、クレムリンメソッドの第7の原理だが、
それに続く第8の原理が「世界のすべての情報は操作されている」だ。
世界にはいろいろな「情報ピラミッド」があり、その国の国民や世界に対して、都合のよい情報を流すというプロパガンダを行っている。
「米英情報ピラミッド」では、「米英に都合のよい情報」が流される。
「中共情報ピラミッド」では、「中国共産党政府に都合のよい情報」が流される。
「クレムリン情報ピラミッド」では、「ロシア政府に都合のよい情報」が流される。
日本人は「米英情報ピラミッド」しか知らないので、そのプロパガンダに騙されやすい。しかし、たとえば、「クレムリン情報ピラミッド」がどんな情報を流しているか調べてみれば、両者の食い違いから、世界の実態がよりよく見えてくる。
たとえば2014年3月のロシアによるクリミア併合は、欧米そして日本では「ウクライナ領クリミア自治共和国とセヴァストポリ市を、ロシアが武力を背景に併合した国際法違反」と言われている。
しかし、クレムリン情報ピラミッドでは
「クリミアは1783年から1954年までロシアに属していたロシア固有の領土」であり、
「クリミアで住民投票が実施され、97%がロシアへの編入を指示したから」と一蹴する。
そして
「欧米は2008年、コソボ自治州がセルビアから一方的に独立するのを支持したではないか? コソボが合法なら、なぜクリミアは違法なのか?」と反論する。
こうした二つの対立する「情報ピラミッド」を比較すれば、その矛盾から、どちらが嘘をついているか、見えてくる。これが北野氏の強みであろう。
(続く)
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