赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

⑥中国のロビー活動の実態————移民の力 その2

2024-12-10 00:00:00 | 政治見解
⑥中国のロビー活動の実態——移民の力 その2




(続きです——本講演録は、特別に許可を頂いて公表いたしております。)


IT企業の集まるカリフォルニアのシリコンバレー、インテルをはじめ多くの大企業のトップがアメリカ連邦議会議員に訴えようとした主張というのは明解でした。中国への輸出増加というのは、アメリカに数億ドルの追加収入と新規の雇用をもたらすだろう。こういうものなんですね。

だから我々——インテルやIT企業——が中国で儲ければ、アメリカの利益にもなるんだよと、そういうことを言っているわけですね。だから中国でも商売しやすいようにしてくれと、アメリカ企業自身がアメリカ議会に働きかけていた。

もちろん北京側でも働きかけるわけですけれども、このIT関係団体というのがハイテク開発に協力する人々を支援すると宣言しまして、中国市場に関心を持つ企業の声に耳を傾ける議員らを支 援しますと、こう宣言する、明言するんですね。

これは、中国との関係改善を進める議員には票を集めるけれども、そうでない議員には票を回さないぞという、半分恫喝、脅しにもなっていたんですね。だから議員側も考えますよね。

ロビイストのキャンペーンというのはマスメディアを籠絡して、貿易障壁の撤廃、そして中国との貿易発展を支持する記事を量産するんですね。同時にハイテク企業の何千人もの従業員が間接的なロビー活動に参加しまして、議員に手紙を送り始めたりしているわけです。

事実上のロビイストの先生が結成されているわけですね。これは民主党や共和党と 何の関係もなく、超党派だった点が注目されるわけです。もう金儲け、金儲けです。

アメリカの商工会議所も、中国に対する制裁解除を求めるロビイスト運動や、米中ビジネスの促進を主張し、これに影響を受けた上下両院の連邦議員は、アメリカ製品の中国への販売促進は中国の民主化を進めるものだという主張が、幅を利かせるようになったので す。

この結果、中国のロビー活動の様子は劇的に変化しました。中国ロビーがワシントンで 活動を活発化させるのと表裏一体で、この時期同時にアメリカのロビー会社は、逆に中国政府内に浸透していったのであります。

例えばGE (General Electric)社は企業リーダーシッププログラムというものを開始しまして、毎年25人の中国の高級管理職をアメリカに招きました。GEのトップ自身が認め たように、このプログラムの目的はGEが生産する航空機エンジンや風力発電所を、巨大な中国市場に展開することだったんですね。既に200人以上の中国高級専門家が中国共産 党中央統一戦線工作部——統線部ですね――との合意に基づきまして、このプログラムの 下で試用期間を終え、中国企業に採用されております。

中国へのロビー活動を行った結果として、アメリカ企業にもたらされる魅力は、中国当局の利益を考慮しない外国企業は、中国共産党の容赦ない制裁に直面する一方、中国当局の意に沿う企業活動を行っていれば大きな利益をもたらしてくれるという点です。

中国が国有企業を奨励し、市場への自由なアクセスを制限するとともに、アメリカの利益のためのロビー活動は収益率の高い巨大なビジネスとなっております。アメリカのロビイストや コンサルティング会社は、アメリカの顧客が中国の権力中枢内でうまく立ち回れるよう支援するため、中国での活動を拡大しております。

例えば、クリントン政権時代に国務長官だったマデレーン・オルブライト、それとアメリカの元大統領、国家安全保障担当問題担 当大統領補佐官のサンディー・バーガーというのがいたんですけれども、これが率いる才 ルブライト・ストーン・ブリッジ・グループというのがあるんですね。これは最大10人の 元中国政府高官を、自分の会社の北京事務所で雇用しております。皆、中共の統線部の工作員か、その監視下にある従業員とみて間違いないでしょう。

GE社は、北京事務所に最大30人のロビイストを抱えております。中国人です。オルブライト・ストーン・ブリッジは、中国商務省の元有力者を引き入れたおかげで、クライアントであるアメリカのファーストソーラー社のために、内モンゴルに——南モンゴルですね――世界最大の太陽光パネル生産工場を建設する交渉で、前向きな結果を確保することができたというんですね。あれあれ、ですよね。

ウィグルで採掘される太陽光パネルの原料となるシリカゲルや、それを元に生産されるソーラーパネルも、これはアメリカ企業の関与を調べたほうがいいかもしれません。

なぜなら、採掘現場でウィグル人が中国共産党 に強制労働させられているという人権問題について、アメリカ政府の動きが今一つ鈍いん じゃないかと、私はそう見ているんですけれども、その鈍いのは、中国におけるこうした アメリカ企業のロビー活動と、アメリカにおける中国サイドのロビー活動が何らかの影響を与えている可能性があるんじゃないかと思うからなんですね。

中国の権力の中枢でのロビー活動に、オルブライトのようなアメリカ政府の重鎮、元高官を引き入れたというやり方は、中国の巧妙なアプローチの手法だと言えるのではないで しようか。中国に融和的なクリントン政権時代、現職の国務長官として北朝鮮を訪問し、 例の有名なマスゲームを見て感動して褒めそやしてしまった、案外軽い人物なんですね、

オルブライトさん。籠絡しやすい人物として、中国に格好のターゲットにされてしまったんじゃないでしょうか。同盟国日本の存在は、もう全然目に入らなかったみたいですね、 オルブライトさん。

中国当局は、イデオロギー抜きで経済的利益だけを考えておりまして、アメリカの良きビジネスパートナーになれると振る舞っているんですね。老猶なイギリスやフランスなどと違って、欧州大陸という嬲魅魅魅の世界でもまれたことのない、ある意味、単細胞と言ったら怒られますけれども、単純なアメリカは、外交上の経験の浅い。政府も企業もそれを信じて——それというのは、中国が言うことですよね。「アメリカの良いビジネス パートナーになれますよ」ということ。それを信じて、ワシントンと北京という両方で中 国にのめり込んでしまったんですね。

北京のアメリカのロビイストの一般的なアプローチ方法は、中国当局の目標、これは政治的、経済的、個人的なこういったものを吟味したプロジェクトを提示することであります。今、アメリカにおける中国ロビー活動の実態や、中国における アメリカのロビー活動の実態を見てきました。オルブライトの会社みたいに。では、今後の日本はどうなんでしょうか。

日本政府は2024年11月のアメリカ大統領選挙、バイデン大統領の選挙戦からの撤退で、トランプ前大統領が再選する可能性が高まったということでございまして、これまで 以上にロビー活動の強化に乗り出しております。

ちなみに、アメリカ大統領選というのは 2012年、私が直接取材したオバマ対共和党のロムニー候補というのもいたんですけれども、結局誰が出てこようが51:49みたいになってくるんですよ。それまでの支持率なんて、はっきり言ってどうでもいい。

他のどっちが強いという分析材料というのはありますけれども、それはここのテーマとは関係がないので、また別の機会があればお話ししたいと思いますが、そういう情勢の変化、バイデンが引っ込んで今度はトランプvsカマラ・ ハリスという、そういう情勢の変化もあったので、これはアメリカの日本大使館もロビー 活動を本格化させていると。

(つづく)
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