赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

①トランプの政策——不法移民、経済、国防 “20の方針”

2024-12-25 00:00:00 | 政治見解
①トランプの政策
——不法移民、経済、国防 “20の方針”


トランプ政権の誕生でアメリカは何もかも変わると見られます。国際政治学者の渾身の解説です。許可を得て掲載します。


ここでは「トランプ政策 共和党綱領に見る20の指針」というテーマについてお話しします。トランプ氏自身は、自らの政策アジェンダを「トランプ47」と名付け、第47代アメリカ大統領として取り組むべき政策を掲げています。

トランプ氏の公式ウェブサイトでは、これらの政策について詳しく紹介されています。ただし、その内容は各地で行われた演説をまとめた形式になっており、一貫性やまとまりに欠ける部分も見受けられます。

一方で、共和党の綱領(プラットフォーム)は非常に体系的に整理されており、わずか十数ページで構成されています。この綱領には10の主要分野が記載され、それぞれに具体的な政策目標が示されています。特に注目すべきは「20の指針」と呼ばれるもので、トランプ共和党が掲げる政策の方向性を具体的に表したものです。

これから、この20の指針について順にご紹介します。



1番目は、国境を封鎖し、違法移民の侵入を阻止するというものです。これは移民政策の基盤となる基本的な対策といえるでしょう。

2番目は、アメリカ史上最大規模の強制送還作戦を実行することです。違法滞在者を対象とし、移民政策を厳格化することが目指されています。

3番目は、インフレを収束させ、アメリカを再び手頃な価格で生活できる国にするという目標です。これにより、食料品や日常生活必需品が手の届く価格に戻り、全米の消費者が恩恵を受けるとされています。

4番目は、アメリカを世界最大のエネルギー生産国にすることです。この政策は、国内でのエネルギー生産を加速させ、結果的にガソリン価格を引き下げることで、インフレの抑制にも寄与するとしています。この3番目と4番目の政策は密接に関連しており、エネルギーコストの低下が全体的な物価安定に繋がることを狙ったものです。

5番目の項目では、アウトソーシングを廃止し、アメリカを製造業の超大国として再構築することが掲げられています。これは、国内生産を増やし、「メイド・イン・USA」の製品を増やす取り組みです。アウトソーシングとは、海外からの輸入に依存する現状を改め、国内での生産を重視する政策を指します。

6番目には、労働者への大幅な減税が含まれています。特に、チップに対する課税を廃止することで、現場で働く労働者に直接的な恩恵が及ぶとされています。この政策は、多くの低所得労働者にとって大きな助けとなるでしょう。

7番目の項目では、憲法、権利章典、言論の自由、信教の自由、武器の保有と携帯の権利を含む基本的自由を守ることが明記されています。特に、アメリカ憲法修正第1条が保障する言論の自由と、第2条が定める武器の保有・携帯の自由が強調されています。

修正第1条は、言論の自由や宗教の自由といった基本的な権利を守るものであり、民主主義の基盤を支える重要な条項です。一方で修正第2条は、市民が武器を持つ権利を保障することで、政府が専制的、独裁的な体制に傾いた場合に、それに対抗する手段を市民に提供するものです。言論の自由を守るための最後の手段として銃の保有が位置づけられており、この2つの修正条項は、アメリカの民主主義の柱として非常に重要な役割を果たしています。

8番目の項目は、第3次世界大戦を防止し、ヨーロッパと中東に平和を取り戻すと同時に、アメリカ全土に巨大なミサイル防衛シールドを構築するというものです。このシールドは「鉄のドーム(Iron Dome)」技術を基にし、すべてアメリカ国内で製造されることが強調されています。

トランプ氏は、第3次世界大戦の危機を回避することに強い使命感を持っています。特に、ウクライナ戦争を含むヨーロッパの情勢や中東の紛争を終結させることが、平和回復の鍵として位置づけられています。


さらに、この政策の重要な柱となるのが、アメリカ全土をカバーするミサイル防衛網の構築です。この「鉄のドーム(Iron Dome)」システムは、イスラエルとアメリカが共同開発した技術を基にしており、外国からのミサイル攻撃を防ぐ防衛システムとして高く評価されています。イスラエルではすでに実用化されているこの技術を、さらに拡張しアメリカ全土に適用する計画が掲げられています。

この防衛網の構築は、アメリカ国内の技術力を活用し、国内製造に限定することで雇用を創出し、経済にも貢献する狙いがあります。また、平和の維持という観点からも、この構想は非常に意義深いものと言えるでしょう。

アメリカ製の兵器について「全てMade in USA」で製造可能かどうかについては疑問が残ります。特に最先端兵器の製造には大量の高度な半導体が必要ですが、それらをTSMC(台湾積体電路製造)などが供給するとしても、全てアメリカ国内の工場で賄えるかは難しいと言えるでしょう。アメリカは移民国家であるため、世界中から優秀な人材を呼び寄せて対応せざるを得ないのではないかと思います。

製造業の再興についても課題があります。一度競争力を失い衰退した産業を再構築するのは容易ではありません。そのため、トランプ政権がどのように動き、この問題に対応するかが重要なポイントとなるでしょう。



次に、9番目「アメリカ国民に対する政府の武器化を終わらせる」というものです。これは、バイデン政権下で司法省やFBIが、あたかも政治的武器のように使われたことへの対抗策といえます。具体的には、政敵であるトランプ氏を排除するために、事件を捏造するなどして政治的に抹殺しようとした行為を根絶することを目指しています。司法機関が特定の政党や政治家の利益のために利用されるような事態を防ぎ、公正な運用を実現することが求められています。

 10番目は、「移民犯罪の蔓延を阻止し、外国の麻薬カルテルを壊滅させ、ギャングの暴力を抑え、暴力犯罪者を刑務所に収容する」という内容です。この方針は、治安の回復と国民の安全を最優先するものといえます。

11番目は、「ワシントンD.C.を含む都市を再建し、安全で清潔、そして住民が楽しめる都市に戻す」というものです。アメリカの主要都市の治安と生活環境の改善を目指しています。


12番目では、「アメリカの軍隊を強化し、近代化を図り、世界で最も強力で圧倒的な軍事力を誇る存在とする」とされています。これはアメリカの軍事的優位性を確保し続けるための重要な施策です。

13番目は、「米ドルを世界の基軸通貨として維持する」という内容です。これは、アメリカ経済の国際的な信頼性を支えるだけでなく、米国の経済的影響力を強固なものにするための基盤強化を示しています。

14番目では、「社会保障や医療保険を削減せず、定年退職年齢の変更を含めて、それらを確保するために戦う」という姿勢が示されています。国民の生活を支える重要なセーフティネットを維持することを強調しています。

15番目は、「電気自動車の義務化を中止し、高額で煩雑な規制を削減する」というものです。この政策は、バイデン政権が推進した電気自動車の義務化に対抗するものです。電気自動車メーカーのテスラにとって、義務化は直接的な利益となり得ますが、イーロン・マスク氏は政府からの補助金や義務化に依存しない立場を表明しています。彼のスケールの大きなビジョンを示す一例といえるでしょう。

また、トランプ氏が11月13日にホワイトハウスを訪れ、バイデン大統領との会談が約2時間にわたって行われたことが注目されます。この際、電気自動車義務化についての議論はなかったようですが、バイデン氏が終始笑顔を見せていた背景には、自分を引き摺り下ろしたカマラ・ハリス副大統領の敗北があったとも言われています。この出来事は、政権移行のトランジションが円滑に進められることを示すものとしても興味深い点です。

16番目は、「批判的人種理論(Critical Race Theory)や過激なジェンダーイデオロギーなど、子どもたちに不適切な人種的・性的・政治的コンテンツを押し付ける学校に対し、連邦資金を削減する」という内容です。この方針は、特定のイデオロギーを教育現場で子どもたちに押し付けることを防ぎ、公平な教育環境を確保することを目的としています。

17番目は、「男性を女性スポーツから排除する」というものです。これは、競技の公平性を守るために、性別に基づく適切な競技区分を維持するという意図を示しています。

18番目では、「ハマスを支持する過激派を国外追放し、大学キャンパスを再び安全で愛国的な場にする」という方針が掲げられています。これは、過激派の影響を排除し、学問の場を安心して学べる環境に整備することを目指した施策です。

19番目は、選挙制度の改革についてです。「即日投票を基本とし、投票時には有権者身分証明書を提示する」「紙の投票用紙を使用する」「市民権を証明する書類を提出する」といった具体的な手順を通じて、選挙の透明性と安全性を確保することを目指しています。

20番目の政策は、「国を新たな成功の水準へと引き上げ、国民を団結させる」というものです。これは、国内の分断を克服し、アメリカをさらに発展させるという包括的な目標を示しています。

これら20の指針は、トランプ氏がこれまで掲げてきた政策を具体化したものであり、次の4年間の政策方針を明確に表しているといえます。

(つづく)
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