赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

朝日新聞は変わりましたか?  コラム(60)

2015-10-16 00:00:00 | 政治見解



コラム(60):朝日新聞は変わりましたか?

新聞週間が始まった10月15日付けの朝日新聞朝刊では、19~23面にかけて「朝日新聞は変わりましたか」という特集記事が掲載されました。

対談「朝日新聞は変わりましたか」に見る印象操作

19面は池上彰氏と朝日新聞ゼネラルエディター(紙面の最終責任者)長典俊氏の対談です【※1】。

【※1】リード文:「朝日新聞社は今年、『信頼回復と再生のための行動計画【※2】』を発表しました。東京電力福島第一原発事故にからむ「吉田調書」に関する記事取り消しや、過去の慰安婦報道の検証特集で謝罪しなかったことなど、昨年の一連の問題を深く反省して作成したものです。朝日新聞は変わったのか。新聞は信頼されるメディアであり続けることができるのか。・・・」

【※2】信頼回復と再生のための行動計画:「公正な姿勢で事実に向き合います」、「多様な言論を尊重します」、「課題の解決策をともに探ります」の3つ。


対談は、池上氏の「・・・目立つのは訂正欄。失礼ですけど、とっても面白い。なぜ、何をどう間違えたのか書いてある。とっても人間的で親近感があります」から始まっています。そして池上氏は「・・・いま、本当に読んでいる人の部数が出てきた。落ち込みはどこかで絶対に止まる。コアな部分で必要とされている・・・」と結んでいます。

結局、池上氏の言葉を用いて、朝日新聞に都合の良い記事を作っています。


モニターの意見

モニターアンケート(200名)では「以前と比べた紙面の印象を尋ねたところ『良くなった』との回答は49%・・・、『悪くなった』は16%だった」と書かれています。

ここで注目を引くのは、悪くなったとの回答者の意見を取り上げているところです。朝日新聞も「過度の萎縮を指摘する声が相次いだ」と述べつつ「権力批判の姿勢が弱まった」との意見を強調しています。

これは、暗に「世論からの朝日新聞批判のほうが問題なのだ」と言っているのです。

アンケート結果の最後を「紙の強みはなくなるとの指摘も複数あった」と締めくくっているように、ここでも朝日新聞は問題の本質を隠しています。


その他の紙面

20面、21面の見開きは単に記者がジャーナリストとしてまじめに取り組んでいるかのように装い、自画自賛したものになっています。

22面は「声が集まる、紙面に届ける」として当番編集長(5名)×パブリックエディター(河野通和、小島慶子、高島肇久の3氏)の対談構成になっていますが、ここでも朝日新聞に対する指摘は皆無で朝日新聞社にとって都合の良い援護に終始しています。

23面は「新聞週間に寄せて」と題して「新聞は心の必需品」の大見出しのもとに、林真理子、姜尚中、松浦茂樹の三氏が新聞の必要性や読み方についての意見を述べています。

ここでは、林、姜の両氏が消費税が10%になった場合に「新聞も軽減税率を適用を」と発言していることが特徴的です。本当にご本人が言ったかどうかはともかく、健全な新聞社であればいざ知らず、嘘や捏造記事を書く新聞社が主張することではありません。


朝日新聞は何も変わっていない

「紙面、以前と比べていかがですか」というモニターアンケート欄に朝日新聞の苦渋の解説がありました。

「朝日新聞は今春から訂正を原則、社会面にまとめて掲載するようにした。その結果、訂正の多さに驚く声が多数寄せられ、とくに単純ミスによるものが多いことへの不信感を抱く人もいた」としていますが、些細なことばかりを前面に出して、重大な問題の本質には触れていません。

慰安婦報道の捏造や誤報以来、朝日新聞に対する世論の厳しい眼に加えて、日本報道検証機構【※3】などのチェック機能が動き始め、ごまかしは効かなくなっているのです。

【※3】日本報道検証機構:民間の第三者機関として、報道の正確性・信頼性の向上を促進するために活動する非営利の一般社団法人。2012年11月設立。


今回の特集記事で、朝日新聞は変わったように見せかけていますが、本質は何も変わっていません。それは、朝日新聞に対する集団訴訟(慰安婦をめぐる朝日新聞の報道で誤った事実が国際社会に広まり日本国民の名誉と信用が傷つけられたとして提訴)の第一回公判を見てもわかります。

朝日新聞社側は「吉田清治氏の証言に基づく記事を取り消したとしても、慰安婦に強制の要素があったことは否定されない。報道で原告や国民の名誉が毀損された事実はない」と主張しているのです。朝日新聞の捏造した記事によって如何に日本国民が傷つけられ、絶望の淵に追い込まれたか【※4】を謝罪するどころか、ジャーナリズムとしての社会責任を放棄しています。

【※4】『慰安婦問題を考える』の執筆者は「私もそうでした。朝日新聞の報道に騙され、日本が嫌いになり、誇りが持てなくなり、自分の祖先が悪人に思えました。1990年代前半は日本全体がそういった空気に覆われていました・・・」と述べている。


開き直る朝日新聞

朝日新聞の特集に対して、同社の内情をよく知る識者から以下のお話が寄せられました。

今朝の朝日新聞に「朝日新聞は変わりましたか」という特集記事が5ページにわたり掲載されていました。
池上彰氏のコメントなどを交え、信頼回復に向けた行動計画について編集者などが論じています。

残念ながらこの特集記事自体に嘘と捏造が混じっています。
紙面全体は、池上彰氏を前面に出して真摯に反省しているように見えます。

ところが、実は池上彰氏の清潔なイメージを利用して、行動計画の偽装をしています。
また、林真理子氏などには失礼かもしれませんが、彼らはいまだに朝日新聞に権威があると信じているようです。

既に朝日新聞の過去の栄光は地に堕ちています。
購読者数の激減(朝刊の実売数は185万部に減少)を受け、社内では何度も経営会議が開かれています。

記事で信頼回復して、読者を取り戻したいと思っているのですが、
問題を起こした新聞社としての謙虚さや誠実さ、真実味が感じられないので逆効果になりそうです。




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新局面に入った日中、米中関係 コラム(59)

2015-10-15 00:00:00 | 政治見解



コラム(59):新局面に入った日中、米中関係


米中首脳会談の真相

米中首脳会談は、中国側の謳い文句であった「信頼関係の増進と疑念払拭の旅」とは裏腹に相互の溝の深さが浮き彫りになりました。

現地で取材していた情報筋も次のように述べていました。

・米航空機大手ボーイングに対して提示したジェット機300機の購入も、資金不足から実際は2機程度しか購入できないと見られる。ボーイング社もそれは先刻承知している。

・習氏は、マイクロソフトやアップル、アマゾン・ドット・コムなどの米ハイテク企業の幹部と会談したが、米企業側は歓迎の言葉とは裏腹に中国とは組みたくないと判断している。

・首脳会談では、中国によるサイバー攻撃や南シナ海での暴挙に対してアメリカからの強い抗議があった。それを中国が突っぱねたが、それにはオバマ大統領も激怒した。

・共和党の大統領選挙立候補者の面々も「南シナ海の人工島を爆撃せよ」とまで思っている。


実際、習氏への接遇も儀礼的なもので、同じ時期に訪米したローマ法王への歓待ぶりとは大きく違っていたことは、米中関係の軋みを露呈させるものとなりました。


国連で露呈した中国の資金不足

国連総会に出席した習氏は、一般演説の場で、「国連の活動を支援するため10年間で10億ドル(約1200億円)規模の平和発展基金を創設する」と表明しました。しかし、その一方で国連分担金の増額要請を拒否するなど、口先に過ぎないことがすぐに明らかになりました【※1】。本当は中国に資金力が無いことを意味しています。

【※1】10月8日、中国の王民・国連次席大使:「中国を他の発展途上国と区別することに反対する。わが国の支払い能力を超えた計算方法は受け入れられない。中国は経済規模が大きいが、1人当たりに換算すれば正真正銘の発展途上国だ。中国の支払い能力はここから評価する必要がある」(シンガポールの聯合早報網)。




日本への恫喝は資金目的

中国国内は経済環境が著しく悪化したため日本から如何に金を引き出すかを思案しています。いまだにAIIBへの参加を呼びかけていることからもよくわかります。しかし、日米関係が強固になった今、日米が連携している分野で日本に揺さぶりをかけることはできず、日中間の問題で恫喝しようと考えています。

現在、南京事件の文書を記憶遺産に登録した問題や、慰安婦問題を韓国と連携して登録しようとする行為も金銭対価を要求する手段です。かつて韓国が日本に対して行った「謝罪と引き替えの金銭要求」を模倣したものです。

また、中国公船による尖閣諸島接続水域への領海侵犯、「日本人スパイ」問題も同様で、あらゆることに難癖をつけながら、最終的には金銭対価を求めようとしているのです。


日本人の中国離れは加速する

以前、当ブログで「韓国への静かなる経済制裁【※2】」と書いたことがありますが、それと同様の現象が中国に対して起こりそうな気配になっています。

【※2】韓国への静かなる経済制裁:韓国政府や韓国メディアによる日本批判に対し、日本政府は細かく取り上げて反論をせず、積極的に韓国を排除しようともしていません。日本国民も不買運動をするわけではないのに韓国製品の購買意欲が低下し、渡航禁止を言うわけではないのに訪韓旅行者が低減しています。日韓の経済交流も減少し、韓国企業の低迷が続いています。専門家は「激しい憎悪や批判がその国への経済制裁に等しい状況をつくる原因になっている」と指摘しています。

問題は日本企業の中国からの撤退方法です【※3】。

【※3】専門家の指摘:「ほとんど資金の回収は望めないというのが現状のようです。さらに、撤退後の技術秘密保持や企業呼称の問題に加え、最も精神的に消耗するのは、上記プロセスの過程でパートナーと争いとなること、特に過去の経営方針の食い違いが蒸し返されたり、税務局・税関等の審査で企業内に内在していたさまざまな問題が噴出することです。このため、『撤退は合弁企業の設立より何倍も難しい』と言われています」。

また、中国は、日本企業の中国離れを怖れ、国内法を変えて国営企業に接収させる可能性があります。中国国内で63店舗を展開しているイオンですら例外ではありません【※4】。

【※4】8月12日に起きた天津市での大爆発事故では、現場から2kmしか離れていない店舗が大きな被害にあったが9月20日に1階部分の営業を再開した、なお、イオン側は中国政府に対して賠償請求はしていない。


中国が恐れていること

TPP交渉の大筋合意で巨大な経済流通圏が整備されるとともに、安全保障面でも重要な結びつきとなり、中国の覇権戦略は後退を余儀なくされています。

その上、国内には習氏に迫る大きな危機が存在します。経済の失速で国民の不満は鬱積し、また、共産党幹部同士の対立や軍部の不満は勿論のこと、過剰な人権弾圧に対する国民の憎悪の度合いは日ごとに激しさを増し、政府への反発は最高度に達しています。中国地方都市では役人が殺害される事件も多発し、これが北京に飛び火することを怖れています。また、次の主席と目される胡春華氏が、習氏の失敗を待ち望んでいることもあり、中国国内は何が起きてもおかしくない状況にあると言えます。

安倍総理の訪中が中国暴走の歯止めとなることを望みます。


最後に、米中間の最新情勢について、当ブログが最も信頼する情報筋の見解をお伝えします。

習主席の訪米の際、ローマ法王が同日に訪米しましたが、
これはアメリカが意図的に仕組んだものです。宗教弾圧を強める中国をこのような形で牽制したのです。

また、習主席訪米の直前、中国軍機が米軍機に異常接近した事件は
中国共産党が軍を掌握しきれていないことを如実に表している出来事で、
そんな習主席をアメリカが信用するはずはありません。

GDPなどの統計数字の嘘もアメリカは見抜いているようです。
中国経済の悪化の度合いを一番良く分析しているのもアメリカです。

習主席の失政が重なっていることから、習主席の今後の去就も党内で囁かれています。

また、次のアメリカ大統領の時には決定的な対中路線の見直しがあると思われます。




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米韓首脳会談から見る日米韓の三カ国関係 コラム(58)

2015-10-14 00:00:00 | 政治見解



コラム(58):米韓首脳会談から見る日米韓の三カ国関係


米韓首脳会談の行方

パククネ大統領は10月13日から16日の日程でアメリカを訪問し米韓首脳会談にのぞみます。当初の訪米予定は6月でしたが中東呼吸器症候群(MERS)の感染が拡大したため延期していたものです。訪米には、9月の訪中時を上回る160名の企業関係者を同行させ、「米韓の良好な関係」をアピールすると見られます。

しかし、実際の米韓関係は冷えきっているのが現状です。その典型例を「在韓米軍」の動向に見ることができます。在韓米軍は朝鮮戦争の際に国連軍主力部隊として派遣され戦争後も引き続き駐在しているのですが、情報筋によれば、「在韓米軍はすでに3000名規模になっており、近い将来は100名前後の連絡所程度に縮小される見込み」との話が寄せられています。

韓国メディアがどう報道しようと、米韓関係の綻びは否めません。したがって、15日にパククネ大統領が国防総省を訪れて同盟関係の再確認をしようとしても、アメリカは表面的な言及にとどめると思います。


韓国の二重外交の失敗

韓国がアメリカに信頼されなくなった理由は、中国への異常な接近と日韓関係を悪化させたことに原因があります。中国への傾斜は、「反日」という共通項と、中国経済に対する過剰な信頼によるものです。そのために判断を誤り、中国を支持する道を歩んでしまいました。

韓国は、アメリカと中国の間でバランスを取りながら外交を展開しているつもりですが、アメリカの前ではそのような甘い考えは通用しません。中国の習主席が訪米した際のアメリカ側の冷遇を見れば一目瞭然です。アメリカは中国を決して容認していないのです。

米韓首脳会談でアメリカは、中国と縁を切ることと日韓関係の正常化を強く求めると思います。それに対しパククネ大統領は中国との関係に理解を求めようとします。しかしアメリカは若干の理解は示しつつも、中国を射程にする高高度防衛ミサイルTHAADの配備などを強く求めて来ると思われます。仮に韓国側がTHAADの配備要請を受け入れない場合、アメリカは段階的に韓国から手を引くだけでなく、別の形で制裁を加えることも視野に入れているようです。


中国に傾斜する韓国の状況に対して、情報筋は以下の評価を寄せています。

アメリカの中国に対する見方は、明確に仮想敵国扱いに変わろうとしています。

南シナ海埋め立て問題、米軍機と中国軍機のニアミス事件、国内人権問題など、アメリカの権威や、
アメリカの精神を傷つける出来事は、民主党、共和党問わず全米の国民が中国を敵視します。

その中国に傾斜する韓国に対し、想像以上の嫌悪感を持っているようです。

韓国は「両国のバランスを取って」などと考えているようですが、
アメリカにとっては決して許容できる筋合いのものではありません。

ここに韓国の伝統的な国民性が表れているようです。




日本への影響

米韓首脳会談後も韓国の中国傾斜は変わらないと思われます。首脳会談はあくまでも外交儀礼に終るからです。

現在、韓国の経済状況は深刻の度合いを増し、日本に経済援助を頼みたいのですが、韓国政府は国を挙げて数々の反日工作をしている手前、日本に頭を下げることができず、日中韓の首脳会談で、中国を巻き込んで支援を求めてくる可能性が高まっています。

そのため、中国と韓国は、慰安婦や南京虐殺という架空の問題をでっち上げ、交渉のカードにしようとしているのです。

しかし、日米関係を深めている安倍総理が、中韓の言葉に簡単に迎合することはありません。安倍総理は日中関係と、日韓関係の改善のための提案にとどめようと考え、むしろ人権問題や歴史認識の訂正を提示することも視野に入れているようです。安倍政権の毅然たる政治姿勢の前に中韓の思惑は通用しないのです。



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内閣改造と党人事の意味――安保法制成立後の情勢変化(4)

2015-10-13 00:00:00 | 政治見解



内閣改造と党人事の意味  安保法制成立後の情勢変化(4)

不満を煽るマスコミ

10月7日、自民党五役の続投が決定後、第3次安倍改造内閣が発足しました。また9日には副大臣・政務官人事が決定し、次に党政務調査会(部会・調査会・特別委員会等)の人事が行われました。

こうした一連の人事について、マスコミや野党は「官邸に側近集めるお友達内閣」「閣内に危ない“時限爆弾”を抱えた」「全く新味がない」などの指摘をしています。さらに、党内部の派閥の争いが生じているかの思わせぶりな記事を書いています。

マスコミは、安倍政権がなぜ支持され続けているのかを理解出来ないのです。安倍内閣をかつての自民党政権の延長線上にしか捉えることが出来ず、いまだに派閥力学が働いているとの幻影に踊らされているのです。


人事権は総理総裁にあり

正彦副総裁は記者会見で「政高党低だろうと党高政低だろうと、国民のための政治がいい政治」と述べましたが、まさに至言です。

国会議員となったからには大臣や要職につきたいのは当然ですが、それが個人の名誉欲や特定の利益のためであれば、日本の発展はありません。田中角栄氏とその系譜が主流だった自民党時代の政治、また、民主党政権下の政治を思い出せば、特定の利益や私欲のために、国民が如何に迷惑を被ったか枚挙にいとまがありません。

安倍総理は「奇をてらうのではなく、しっかり仕事をして結果を出す」と記者会見で述べましたが、今回の人事の真意はここにあります。政権のアラを探すだけの報道は慎むべきです。


文部科学省改革を本気で行う

あまり報道はされていないようですが、安倍総理は文部科学省改革に本気で取り組もうとしています。文部官僚は、かつては気骨のある人材が多く、日教組と全面対決をしていました。しかし、リクルート事件以降、彼らには責任逃れの風潮が蔓延してしまいました。最近の東京オリンピックの国立競技場やエンブレムの問題も、文部官僚の無責任風潮の現れです。

さらに、文部官僚の問題点は、民主党政権時代に日教組の軍門に下ってしまったことです。文部科学省と日教組は民主党の輿石東氏の仲介斡旋で裏取引をし、それ以降、文部科学省は弱体化してしまったのです。



文部官僚のこのような状況に対し、安倍総理は文部科学大臣に馳浩(はせひろし)氏、副大臣に義家弘介(よしいえひろゆき)氏を登用しました。

馳氏はプロレスラー出身ですが、星稜高等学校の国語科(古典)教諭でもありました。「子を育て 妻をいたわり 親守ろう」のスローガンを掲げ、『馳浩のやさしい教育論』を含め16冊の著作があります。また、義家氏は「いじめ問題に立ち向かうヤンキー先生」として有名ですが、『ヤンキー最終戦争 本当の敵は日教組だった』を含めて9冊の著作があります。両者に共通しているのは、教育に対する情熱が誰にも負けないという点です。この人選に安倍総理の文部科学省改革と教育改革の本気度がよくわかります。

安保法制が成立したいま、日本を取り戻すために教育改革は必須であり、戦後教育の最大の問題点である日教組に対して、その解体に向けての布陣を敷いたのです。

安倍総理は若手議員時代から、日本の戦後教育のあり方に対し改革の必要性を力説する中心議員でもあり当然のことなのです【※1】。

【※1】1997年設立された「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の事務局長。総理大臣であった2006年12月には教育基本法を改正し「教育の目標の一つとして愛国心」を盛り込んだ。さらに、2007年6月には教員免許更新制を導入した。


改革のスピードを上げる

また、自民党税調の役員人事にも着手しました。

安倍総理は野田毅税制調査会長の後任に宮沢洋一前経済産業相を充てる方針を固めました。マスコミは軽減税率問題で公明党に配慮したためと言ってますが、その報道は間違いです。旧大蔵省の出身の野田氏の官僚的な発想が現実にそぐわなくなったことと、秘書の不祥事(覚醒剤所持)が原因です。

新内閣での人選についても身辺に不透明な問題を抱える議員を極力排除していたのですが、党の役員人事に関しても神経をとがらせていました。政治家が清潔であることは当然のことですが、野党やマスコミからの無用な指摘で、政治運営に支障をきたすことを避けたというのが本音です。スピードをもって改革を進めていきたい安倍総理の強い意思を感じます。


日本のために仕事をする政治に期待する

改造内閣の発足に当たり安倍総理は「一億総活躍という輝かしい未来を切り開くため、新しい挑戦を始める」と述べました【※2】

【※2】安倍総理の冒頭発言:「少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も人口1億人を維持する。そして、高齢者も若者も、女性も男性も、難病や障害のある方も、誰もが今よりももう一歩前へ踏み出すことができる社会をつくる」。
結論部分:「やればできる。その強い自信を持って、国民の皆さんと共に少子高齢化という構造的な課題にチャレンジする。一億総活躍社会という未来に向かって、大いなる挑戦を始めたいと思います」。


この発言は、安倍政権発足から1000日余り、アベノミクスにより雇用が100万人以上増え、デフレを克服した自信から発せられたものだと思います。同時に、安倍政権を信頼して政権選択をした国民の判断が間違っていなかったことを証明するものでもあります。

安倍内閣が、これからも言葉通り力強く挑戦していただくことを望んでいます。

内閣の本気の姿勢は必ず国民の支持を得られます。



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大国主義に立ち向かう日本外交――安倍外交の未来図――

2015-10-12 00:00:00 | 政治見解



大国主義に立ち向かう日本外交 ――安倍外交の未来図―― 

力の行使が紛争を増大させる

ロシアによるシリア爆撃【※1】、アメリカによる国境なき医師団の医療施設誤爆【※2】、中国の軍事基地を目的とした南シナ海埋め立てなど、いまだに大国が軍事力をもって自国の利益を得るという前世紀の考えに取り憑かれています。

【※1】イスラム教スンニ派過激組織IS=「イスラム国」掃討を名目に、ロシアの支援する現アサド政権の支援のため、欧米が支援する反アサド派組織に対する攻撃も行ったといわれている。

【※2】10月3日、アメリカ軍はアフガニスタン北部でNGO「国境なき医師団」の病院を誤爆し、患者やスタッフなど22人を死亡させた。反政府武装勢力タリバンの拠点と間違えた事件。


近年では、軍事的な制圧のみならず経済制裁という形で敵対する相手を窮地に立たせようとしました。しかし、いずれの力の行使をもってしても問題が解決した試しはありません。憎しみの連鎖を生み出し、それが再び紛争の原因となってきたのです。国際社会はもはやこのやり方が通用しないということを認識すべきです。


無力な国連

暴力を暴力で壊滅させることは憎しみを増幅させるだけでなく、問題解決の先延ばしでしかありません。とくに、シリア問題では難民の発生原因となっている内戦の収拾とIS対策に国際社会が協力して対応しなければならないことは言うまでもありません。しかし、現実は軍事大国のロシアとアメリカの思惑で、対立する双方を別々に支援しているため、問題を複雑化させています。

また、今日の状況を悪化させた要因に国連の無力さもあります。国内紛争の収拾どころか、その内紛を軍事大国の代理戦争化させた責任は極めて大きいものがあります。とくに、ロシアや中国の「力による横暴」を追認するかのように中露の軍事式典に参加した潘基文事務総長の責任は重大です。


国際社会に新秩序の構築を

国連は第二次世界大戦の戦勝国により形成されたものですが、初期の段階から米ソの対立で国際平和への調整機能を果たせなくなりました。現在では、常任理事国であるロシアと中国が国連への挑戦者となり「力による現状変更」を試みています。このような状態を続けていてはいつまで経っても世界が平和になるはずがありません。今こそ国連の有り方を見直す時期が来たのではないでしょうか。

安倍総理は戦後70年談話【※3】と第70回国連総会における一般討論演説【※4】の中で、日本は過去の反省の上に立脚し国際社会に安定と秩序をもたらすと宣言しているように、これからの日本の役割は非常に大きくなると思います。

【※3】戦後70年談話:「私たちは、自らの行き詰まりを力によって打開しようとした過去を、この胸に刻み続けます。だからこそ、我が国は、いかなる紛争も、法の支配を尊重し、力の行使ではなく、平和的・外交的に解決すべきである。この原則を、これからも堅く守り、世界の国々にも働きかけてまいります」。

【※4】第70回国連総会における一般討論演説:「第一に,日本には,戦後70年,平和を愛する国として自らを持し,世界の平和と繁栄のため努力を積んだ実績があります。(中略) 第二に,「オーナーシップ」と「パートナーシップ」を重んじるのが日本です。(中略)第三に日本は,当事者の声に,いつも耳を傾ける国であろうと努めます。(中略)以上三つは,これまで刻んだ足跡から,みなさまに頷いていただける日本の強みです。この強みをもって,私たちは,国連を強くしたいと思っています。」



実際、安倍総理は軍事大国であるロシアと中国に対して、「力による現状変更は決して容認できず、これは一地域の問題ではなく、国際社会にとっての問題である」とことあるごとに論及しています。


安倍外交の未来図

安倍総理が示した日本の決意が混迷する国際社会のあり方を変えるものとなると信じています。

70年談話には「いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない」と力の行使の不当性を訴えて「すべての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない」との普遍的原則を訴えています。

さらには「寛容の心」、「感謝の気持ち」が国際社会の相互の理解と和解への道筋であることを述べ、「繁栄こそ平和の礎」として、「暴力の温床ともなる貧困に立ち向かい、医療と教育、自立の機会を提供することの重要性」を提起しています。


70年談話は日本外交の教科書となるものです。この指針に基づいて日本が世界外交を展開し、有史以来続く人類の争いに終止符を打つことを時代は待ち望んでいると確信しています。



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安保法制成立後の朝日新聞社  current topics(114)

2015-10-11 00:00:00 | 政治見解
朝日新聞社では安保法制成立後、幹部の間では愚痴が多く聞かれます。

理由は、マスコミを挙げて安保法制に反対する大キャンペーンを敷いたにもかかわらず、
その効果もなく成立してしまったことにあります。

彼らの苛立ちと焦燥感の矛先は、民主党に向けられています。

「これだけバックアップしているのに民主党議員はろくな質疑もできないのか」
「デモも民主党じゃあれっぽっちしか集められないのか」
「議長席に飛びかかった小西のバカがテレビに映ってたぞ」
「津田のバカ、あんなところで女の体触るな」
「こっちは苦労して新聞テレビで反対の声を挙げてるのに、何考えてるんだ」

などと民主議員に対して聞くに堪えない罵声を浴びせ、挙句にバカ扱いをしています。


また、女性週刊誌も含め、マスコミ各社が総がかりでなりふり構わない反対キャンペーンをしたのですが、
結局は効果が見られず、マスコミの力の無さに愕然としています。

NHKをはじめ各社の体たらくを非難していました。

「民主政権樹立の時はうまく行ったのに」と釈然としない幹部も何人かいたのですが、
朝日新聞社には情報社会の変化をまったく認識していない人が多くいます。




※情報筋から当ブログに寄せられたニュースの要点をお伝えしています。


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クーデターを目論む共産党--安保法制成立後の情勢変化(3)

2015-10-10 00:00:00 | 政治見解



クーデターを目論む共産党  安保法制成立後の情勢変化(3)

政権を取って安保法制を廃案にする

9月19日、日本共産党は安保法制廃止と閣議決定の撤回に絞った新政府樹立構想を発表しました【※1】。これを受けて生活の党の小沢一郎氏は「次は選挙だ。選挙に勝利して政権を取り、法律の廃止を目指す」「他の野党も連携の輪を広げるように努力すべきではないかと思う」と語りました。

安倍政権憎しで固まっていた民主党執行部は、この動きに同調する流れもあったのですが、党内は必ずしも一枚岩ではなく、この構想に参加するかどうかは未知数です。ただし民主党が同調した場合、共産党に主導権を奪われ第二共産党に堕してしまうことは明白です。

【※1】志位委員長発言:「この連合政府は、“戦争法廃止、立憲主義を取り戻す”という一点での合意を基礎にした政府であり、その性格は暫定的なものとなります。私たちは、戦争法廃止という任務を実現した時点で、その先の日本の進路については、解散・総選挙をおこない、国民の審判をふまえて選択すべきだと考えます」


共産党の本音

「国民連合政権」構想は、従来の共産党構想である「民主連合政府」の一態様で、反体制、独立を求める統一戦線と日本共産党による新政府樹立の前段階に位置づけられるものと言えます。

これは民主的な改革ではなく、資本主義を破壊し、共産主義社会の実現を目論むものです。

民主党に提案した国民連合政府構想の背景には、「国民連合政府」の名のもとに共産党独裁政権を実現し、反米と大企業破壊、天皇制の解体などを目的とする共産党の本音が隠されているのです。


暴力革命を否定しない共産党

ところで、ジャーナリストの鈴木耕氏が「安倍首相の戦争立法はクーデターだ! 安倍の暴走を止めるためにクーデターを!【※2】」と叫んでいるのを目にしました。共産党に連なる人びとはクーデターと言う言葉に強い親和性を感じているようです。その背景には、共産党の「暴力肯定」の思想が存在しているのです【※3】【※4】。

【※2】クーデターは暴力的な手段の行使によって引き起こされる政変を言う。「政権側のクーデター」という論理はありえない。

【※3】マルクスとエンゲルスの『共産党宣言』の中には「共産主義者は、自分たちの目的が、これまでのいっさいの社会秩序の暴力的転覆によってしか達成されえないことを、公然と宣言する」とある。

【※4】党の綱領から「暴力革命」という言葉は削除したが、否定はしていないため公安当局によって調査指定団体とされている。



「安保法制反対」集会はクーデターの前哨戦

実際、安保法制反対運動は異常でした。動員に関しては60年、70年安保時に比べては小さなものでしたが、そこで飛び交う言論の暴力は革命前夜の様相を呈していました。それも組織運動家ならいざ知らず、知識人といわれる学者の言論の暴力は目に余るものがありました【※5】。

【※5】学習院大学教授の佐藤学氏:「私たちはこの歩行者天国をハイジャックしました。この力で安倍から日本を取り戻しましょう」。 法政大学教授山口二郎氏:「安倍に言いたい、お前は人間じゃない。たたっ斬ってやる!」

また、反体制のマスコミも安保法制反対の総力戦を展開していました。なかでも、毎日新聞出身の岸井成格氏のように安保法案に対して「メディアとして廃案に向け声を上げ続けるべき」と放送法に違反する発言を繰り広げるほどで、マスコミ全体が偏向している感がありました。

さらに、国会前集会で市民を装い、警備の警察官に暴行を加え逮捕された過激派活動家が参加していたことも明らかとなり、反体制勢力が総結集する状態でした。彼らにとっては革命前夜と認識していたのではないでしょうか【※6】。

【※6】以前であれば過激派組織は共産党の集会に参加しないものであったが、反体制という一点で共闘がはじまったようだ。


国民連合政権構想はクーデター計画

このような状態に対して、当ブログへの情報源で共産党の動向に詳しい情報筋は、「共産党にはクーデター計画が存在し武装革命も辞さない構えである」と警告を発しています。

その計画は官僚組織にも浸透し、外務省、財務省、文部科学省、防衛省、そして警察や公安調査庁にも魔の手が伸びていると指摘しています。特に防衛省については防衛大学出身の一佐クラスや指揮官クラスに20名前後の共産党員がいるとの情報を寄せています。いざとなったら一斉に蜂起し、武器を持った隊員に命令を下す場合もありうるという話が寄せられています。

また、マスコミにも共産党の浸透が進んでおり、NHKの360名を筆頭に、朝日新聞をはじめとする反体制新聞社だけでなく、読売新聞、産経新聞にまで共産党員が入り込み、それも部下を掌握する立場にあると言います。さらに、地方新聞の八割方は共産党の影響が大きいと指摘されています。

それ以外にも、民間企業、中でも大手銀行などの金融機関にも入り込んでいるようで、70年代には果たせなかった共産主義革命をいま起そうと考えているのです。


共産党を中心とする勢力は必ずしも大きいとは言えませんが、「クーデターなど起せるはずもない」と楽観視することはできません。各界の上層部にまで共産党員が浸透している事実を見逃してはならないのです。


有権者の「どの政党も当てにならないから、共産党にでも投票しておこう」という安易な考えの中には、実は大きな危険が潜んでいるということを認識しなければならないと思います。




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日本のノーベル賞授賞を妨げた事業仕分け  コラム(57)  

2015-10-09 00:00:00 | 政治見解



コラム(57):日本のノーベル賞授賞を妨げた事業仕分け


ノーベル賞ラッシュ

二日連続で日本の科学者がノーベル賞を受賞することが発表され、国民に勇気と感動を与えています。

10月5日には、大村智・北里大学特別栄誉教授の生理学・医学賞に受賞が決定しました。「世の中に役立ちたい」との思いが、アフリカなどの毎年約3億人にのぼる感染症の危機を救っているという事実に、改めて深い感動を覚えました。

続いて6日には東京大学宇宙線研究所所長の梶田隆章教授がニュートリノに質量があることを発見した功績により物理学賞の受賞が決定しました。これまでの素粒子物理学の常識を覆し、宇宙や物質の誕生の解明に迫る業績が評価されたものでした。


民主党の見識不足

これまでの科学分野のノーベル賞は、人類の発展に大きく貢献した発見に贈られています。しかし、そこに至るには膨大な時間と労力、そして資金が必要とされており、基礎研究の分野における苦労は並大抵ではありません。その意味で、日本の国家的な財政支援は極めて重要な要素だと思います。

ところが、民主党政権下における行政刷新会議では、こうした基礎研究の重要性を理解せず、無用の長物扱いをして予算削減措置をとりました。「ニュートリノ」の実験施設である「スーパーカミオカンデ」もその対象になっていたのです。


関係者の悲痛な叫び

2009年11月25日に、事業仕分け作業が「国立大学運営費交付金(2)特別教育研究経費」に対して行われた際には、「廃止6名、縮減6名、要求どおり2名」との結果となり、仕分け作業グループ【※1】の見解として「予算の縮減」ということが示されたのです。

【※1】第三ワーキング・グループ(文部科学省、農林水産省、防衛省担当)メンバー:田嶋要(衆議院議員)、蓮舫(参議院議員)、赤井伸郎、新井英明、小幡純子、伊永隆史、高橋進、中村桂子、永久寿夫、西寺雅也、原田泰、速水亨、藤原和博、星野朝子、松井孝典、南学、山内敬、吉田誠、渡辺和幸の各氏。



このとき、スーパーカミオカンデ実験代表者の鈴木洋一郎氏は次のような悲痛な声明を出しています。

この「特別教育研究経費」の中には、我々が、神岡の地下において推進している「スーパーカミオカンデ」や、国立天文台の「すばる望遠鏡」、高エネルギー加速器研究機構の「JPARC」「B―factory」など、日本を代表する基礎科学研究が含まれています。しかし、研究の意義などは一切議論がなされぬまま、予算全体を一括して縮減しなさい、ということになりました。

スーパーカミオカンデは、ニュートリノ振動の発見により、世界で初めてニュートリノに質量があることを示し、新たな素粒子標準理論構築への突破口を与えています。現在、未発見の最後のニュートリノ振動ともいうべき現象の発見をめざし、東海村のJPARCで作られたニュートリノを、295km離れたスーパーカミオカンデで検出するという壮大な実験が始まっています。この観測に成功すれば、宇宙には、何故反物質がなく物質しかないのかという、物質生成の謎に迫るステップを築くことができます。また、スーパーカミオカンデは、明日にも起こるかもしれない星の最後の爆発である超新星からのニュートリノの飛来に備え、24時間365日、年末年始も休みなく観測を継続しています。このように、これまでのニュートリノ質量の発見という大きな成果のみにとどまらず、今後もいくつかの重要な成果が期待されています。

予算の縮減により、観測が短期間でも止まるようなことになれば、10年から20年に一度しかない超新星からのニュートリノの検出を逃してしまう可能性もあります。また、予算の縮減により、測定器の質を維持することができなくなる可能性もあります。これまで、10年以上かかって、世界のトップになった日本のニュートリノ研究は止まってしまい、継続する研究者も絶えてしまうことでしょう。落ちるのは、早く、瞬く間に科学の2流国、3流国になってしまうでしょう。一度そのようになれば、世界のトップレベルにもどるには、さらに10年、20年とかかることになります。

基礎科学は短期的には、何も役に立たないものと思われるかもしれません。基礎科学は「分からないこと、不思議なことを探索して、真実を知る」ということが本質ですが、何十年か経った後に、思わぬところで役に立つこともあります。80年ほど前に、原子核のふるまいを研究して生まれた量子力学は、今では、半導体の原理を理解するにはなくてはならないものです。アインシュタインの作った一般相対性理論は、90年経って、カーナビゲーションシステムでお馴染みのGPSの基礎を支えています。

スーパーカミオカンデで行っているニュートリノ研究も、今は、物質の成り立ち(素粒子)と宇宙の謎に挑戦していますが、100年後には全く考えもつかなかったものに応用されているかもしれません。皆様の基礎科学研究に対するご理解とご支援を、強くお願いいたします。



民主党はiPS細胞の山中教授の予算も削減していた

2012年にiPS細胞の研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授も、民主党政権下で研究費を削減された一人です。

2008年の麻生政権では総額2700億円の研究費を30人の研究者に配分する「最先端研究開発支援プログラム」に認定されていましたが、2009年の民主党政権の事業仕分けで1000億円に減額されています。

当時のインタビューで山中教授は「iPS研究は国際競争を勝ち抜く重要な時期。せめて10年、資金繰りと雇用を心配せず、研究に没頭させてほしい。成果が出なければ10年後にクビにしてもらってもいい」(2010年1月3日付朝日新聞)と述べていました。

山中教授と同様の研究をしていた北海道大学の白土博樹教授も、「減額幅が3分の1と、あまりにも大きかったので、研究そのものを諦めようかという状況にもなりました」と言うほど、研究者の落胆は大きいものでした。


民主党政権が続いていたら・・・

三年三ヶ月にわたる民主党政権の不見識さにより日本の科学者の士気を著しく下げました。さらに民主党は、人類向上のための研究を妨害したに等しい重大な失策をしたのです。

私たちが選択する政党によっては、今回のノーベル賞の受賞は無かったかもしれませんし、地球や人類の起源に関する研究も大幅に遅れ、人類にとっての大きな損失を招くことになっていたかもしれません。

ノーベル賞受賞のニュースは、国民による政権選択の重みを再認識する機会になったと思います。




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民主党が生き延びる道--安保法制成立後の情勢変化(2)

2015-10-08 00:00:00 | 政治見解




民主党が生き延びる道  安保法制成立後の情勢変化(2)

共産党に主導権を奪われ続ける民主党

民主党は特別委員会や本会議での過剰なパフォーマンスが国民の顰蹙を買うばかりでしたが、一方の共産党は院外闘争で衆目を集めていました。

民主党は戦いの主導権が取れないまま、共産党の戦術に便乗するしかありませんでした。

また、国会前のデモ隊から、マイクを手にした民主党の枝野氏に対し「お前のためにデモをしているんじゃない」と言われたように、戦略と実情の違いが認識できないことも露呈してしまいました。


国会終了後の政界再編の動きでも、その渦の中心は共産党と小沢一郎氏で、野党第一党の民主党が主体となって動いているようには見られません。

本来、反安倍勢力結集のためには数的に優位な民主党が主導権を取らねばならなかったのですが、集団的自衛権容認派から共産党と親和性を持つ人物まで混在するようではまとまるわけがありません。共産党の「国民連合政府」構想で揺れ動き、「壊し屋」の小沢一郎氏の画策の前にはなす術もなく。自らの立ち居地を定めることができないのです。


捏造された世論調査結果に踊らされる

それでも、民主党幹部は安倍政権打倒を掲げることで世論は必ず付いて来ると思い込んでいるようです。その原因はマスコミによる世論調査の内閣支持率を根拠としているからです。しかし、彼らは、民主党の支持率については直視していません。都合のいい数字ばかりを見て、世論は必ず民主党に味方するはずと思い込んでいるわけです【※1】。

【※1】9月の時事通信の政党別支持率によれば、自民党が23.3%、民主党が4.9%となっている。岡田代表らが「安保法制に反対する世論が7割を超えている」と発言するのは、自民党支持率以外が70%を超えていることを論拠としているからである。しかし、この調査では63.5%が政党支持はないと回答していることを留意しなければならない。

共産党と親和性のある枝野氏らは「国民連合政府」構想に積極的に応じようとし、細野氏や前原氏などは維新の党に接近して自らの地位を確保しようとしています。しかし、確固たる信念もなければ定見も持ち合わせない状態で野合しても結局は迷走を繰り返すだけです。


民主党の本質的危機

2016年7月の参議院選挙では、民主党参議院議員59名中、改選議員は42名にも上ります。この中には、国会審議の過程で何かと話題になった人たち【※2】が目白押しの状態です。

【※2】2016年改選の有名議員:北沢俊美(長野)、小川敏夫(東京)、輿石東(山梨)、福山哲郎(京都)、蓮舫(東京)、徳永エリ(北海道)、小西洋之(千葉)、比例では津田弥太郎(引退)、白真勲、有田芳生、田城郁、・・・(敬称略)

これらの方々は安保国会で派手なパフォーマンスを繰り広げましたが、これが選挙で吉と出るか凶とでるかは有権者の選択次第ですが、正直、あまりいい感触はないように思えます。

一方、民主党の支持母体である連合は、民主党支援強化を承認してはいるものの、自らの組織自体に危機感を抱いています。連合会長の古賀伸明氏は「連合のメッセージが職場や地域に届かず課題解決の選択肢として認識されていない」と述べている通り、労働組合の求心力低下は否めず、危機感を募らせています。


民主党が再生するには・・・

現状を見る限り、次の選挙で民主党が躍進する要素はありません。仮に、共産党や維新の党、小沢一郎氏らと大同団結しても、それは「対案なき反政府連合」に過ぎず、世論の支持を得ることは不可能です。また、野党勢力の結集が共産党主導であれば、世論がこれを許すはずもありません。2016年参議院選挙では改選数の半分の確保も厳しいのではないでしょうか。

民主党が国政政党として生き延びる道があるとするなら、安倍政権への罵倒をやめ、対案を通して政策での競争をすることです。

「日本はどういう国家であるべきか」とのビジョンを国民に提示し、「日本国民のための政党」へと自己変革した上で、国家像、憲法観、安全保障政策、外交政策、経済政策を明らかにすることが何よりも先決だと思います。



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TPP交渉の真相と本質--安保法制成立後の情勢変化(1)

2015-10-07 00:00:00 | 政治見解



TPP交渉の真相と本質  安保法制成立後の情勢変化(1)

日本の外交力に著しい変化

安保法制の成立で日米間の同盟関係が一層強化され、国際社会に安定と安心感を生み出しましたが、この視点で国際社会を改めて見直すと、日本の外交の力が着実に上昇している事実に驚かされます。日本の発言が国際社会に大きな影響を与え始めているのです。

交渉が難航していたTPP=環太平洋パートナーシップ協定【※1】での甘利経済再生担当大臣の発言がその好例であると思います。甘利氏は自国の利益ばかりを主張するアメリカのフロマン代表に対して「ゲームを終わりにして誠実な対応をすべき」と発言して流れを変えました。一国の国益よりも国際社会全体の利益を考える日本の外交姿勢を示す画期的な瞬間であったと思います。

【※1】シンガポール,ニュージーランド,チリ及びブルネイ、米国,豪州,ペルー,ベトナム、マレーシア,メキシコ,カナダ及び日本の12カ国による環太平洋地域の国々による経済の自由化を目的とした多角的な経済連携協定 (EPA) 交渉。


TPPの本質

TPPの本質は当事国以外の反対する国から見るとその本質がわかります。

2013年に日本が参加表明した際、中国は「日中韓のFTA=自由貿易協定などさまざまな枠組みの交渉が同時進行しているという現実を尊重すべきだ」との牽制発言をしました。日本の参加表明によってアメリカが主導するTPPが中国にとっては不利益になると認識していたからです。

中国の貿易に対する考え方は軍事的覇権と表裏一体なものです。自国の利益のために経済力だけでなく軍事力を駆使して他国を支配しようとするものです。AIIBはその覇権主義の同一線上にあります。

一方、TPPは、環太平洋諸国の共存共栄が主目的で、相互の利益となる合意点を探り、貿易から生じる利益を高めるものです。中国とは根本的に発想が違うのです。この本質を理解するとTPPが環太平洋諸国にとり重要な貿易協定であることがわかります。


アメリカのエゴイズムを一喝

今回のTPPの閣僚会合での最大の焦点は、バイオ医薬品の開発データの保護期間や、乳製品の関税の取り扱いなどを巡っての問題でした。とりわけ、アメリカのフロマン代表は自国の利益のために、オーストラリアやニュージーランドと激しく対立し、溝がなかなか埋まりませんでした。

たとえば、フロマン氏はバイオ薬品の特許の期間の交渉では、製薬会社の利益を中心に交渉し、アメリカのエゴを丸出しにしていました。本来、薬は薬を必要としている人を助けるためのもののはずが、製薬会社の利益のためのものになっていたことは残念です。

アメリカは、今なお続く国内産業の保護主義的な政策を踏襲しようとしていたのです。その意味で甘利大臣の一喝は非常に大きな意味を持ったと思います。


TPPは農業分野に希望をもたらす

日本ではTPP締結に対して依然として冷ややかな見方をしている向きがあります。

コメや酪農製品の輸入が日本の農業に壊滅的な打撃を与えると主張してTPPに反対を続けているJA全農(全国農業協同組合連合会)です。しかし、農業生産額に占めるコメのシェアは二割を切り、コメの国際価格は上昇し、国内価格との差は小さくなって来ています。しかも、日本のコメはブランド品で、輸出している農家もあり、悲観する状況ではありません。

専門家は「米価を高くしている減反を廃止して価格を下げ【※2】、価格競争力をつければ、鬼に金棒だ。影響を受ける主業農家には直接支払いを交付すればよい」と指摘しているほどで、JAの主張はその根拠を失いつつあります。

【※2】米価は減反政策によって維持されている。現在、年約4000億円の補助金が税金から支払われている。国民は納税者として補助金を負担したうえで、消費者として高い米価を負担している。

また、乳製品の関税の交渉では、日本のマスコミは盛んに、酪農従事者が大変なことになると報じています。従来から酪農分野にも多額の国の補助金が使われていますが、あまり報道されていません。酪農家はもっと経営努力をして工夫をする余地があるように思います。

日本のほとんどの消費者は安い乳製品を手に入れることができることを喜んでいます。ニュージーランド産のおいしいチーズを安く輸入して、豊かな食卓を囲みたいものです。


TPPは日本に農業革命を起す

かつて日本の農業を支えてきたJAはその使命を終えるときが来ました。今やJAは農家を搾取するだけの組織でしかなく、国に対する圧力団体になっています。

JAは、農業の構造改革に反対し、米価引上げの政治運動を展開しただけです。JAが守ろうとしていたのは、実は農家や農業の利益ではなくJA自身の利益だったのです。これが今日の日本の農業衰退の根本原因です。

日本の農業を本当に守るという観点に立つなら、JAの解体が先決です。その意味でTPP合意は、日本の農業再生への道を開いたものとして歓迎したいと思います。


最後に、TPP合意の重大性について、情報筋から以下のお話が寄せられましたのでお伝えします。

TPP交渉が合意され、巨大な経済流通圏が整備されました。
アメリカのフロマン代表の力不足を、日本の甘利経産再生担当大臣が精力的にカバーし、
参加各国の交渉のイニシアティブを取り合意にこぎつけました。

この合意により、TPP参加各国の流通が円滑になり、より緊密な関係が築かれることになりました。また、参加国以外の国との輸出入についても、ここで決定した基準がスタンダードな形で適用されるようになります。

TPPの関係は経済的な関係のみならず、安全保障面での重要な結びつきでもあります。
中国主導のインフラ銀行の主目的が実際には軍事的覇権であることを考えると、
TPPの合意は中国の暴走を抑止する上でも大きな存在になります。

TPP合意によって、中国のインフラ銀行による覇権構想が後退し始めたことは言うまでもありません。

米中首脳会談や国連演説で評判を落としている中国の習主席にとっては、大きな打撃となりそうです。




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中国南西部の連続爆発事件  current topics(113) 

2015-10-01 11:05:19 | 政治見解
すでに160人以上の死亡者が出ています。(日本時間10月1日7時現在)

また負傷者が400人以上いるようなので、犠牲者の数はさらに増えると見られます。

これはテロ事件ですが、中国当局はテロ事件と認めていません。

また、逮捕された男はこの事件に関係のない人物のようです。

人権の抑圧が背景にあることは明確です。




※情報筋から当ブログに寄せられたニュースの要点をお伝えしています。


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第70回国連総会における安倍総理大臣一般討論演説

2015-10-01 08:00:00 | 政治見解


第70回国連総会における安倍総理大臣一般討論演説    平成27年9月29日

自国の首相の国連演説を報じることは、マスコミの義務です。
残念ながら正確に報道しているマスコミが少ないようですので、演説全文を掲載させていただきます。
(外務省サイト:http://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/unp_a/page4_001404.html から)




1.
 議長とご列席のみなさま,今年で設立70年を迎える国連とは,絶望的現実を前にして,容易に絶望しない人々の集団でした。だからこそ風雪に耐え,今日を迎えたのではありませんか。

 エボラ熱の跳梁(ちょうりょう)がありました。過激主義の跋扈(ばっこ)があります。今また私たちの目の前で,多くの難民が命を賭してでも,恐怖から逃れようとしています。

 しかしたとえどんな問題があろうとも,国連のもと,ともに立ち向かいましょう。各国が,それぞれもつ能力を持ち寄ろうではありませんか。

 日本には,いろいろな場所で,国造りを支えた実績があります。人材を育て,人道支援を惜しまず,女性の人権を守ろうと努めた経験があります。その蓄積を,いまこそ惜しみなく提供したいと思っています。

 日本は,シリア・イラクの難民・国内避難民に向けた支援を一層厚くします。金額に換算すると,今年は約8.1億ドル。昨年実績の3倍となるでしょう。

 レバノンでは,200万ドルの支援を新たに実行します。これをテコとして,人道援助機関と,開発援助機関の連携に,弾みをつけてまいります。

 セルビア,マケドニアなど,EUの周辺にあって,難民・移民の受け入れと格闘する諸国に対し,新たに約250万ドルの人道支援を実行します。

 これらはいずれも,日本がなし得る緊急対策です。一方,私たちの変わらぬ原則とは,いかなる時にも,問題の根元へ赴き,状況を良くしようとすることです。

 イラクの民生に安定をもたらすには,上下水道が信頼に足るものでなければなりません。これを含め,中東とアフリカにまたがり,平和を築き,確かなものとするため,日本は約7億5000万ドルの支援を準備しています。

 難民たちの背後には,難民となって逃れることのできない人々がはるかに多くいるという現実を,直視したいと思います。

 壊れてしまった国を建て直し,再び人々に幸福の追求を許す場とするには,人間一人,ひとりの力を育て,恐怖・欠乏と闘う能力を草の根から培うことが,回り道のように見えて,実は近道です。

 その信念が,教育,保健医療の普及を重んじ,とりわけ,あらゆる年齢層の女性に力をつけようとするわが国の政策になりました。「人間の安全保障」を確かなものにしようとする政策です。

 こうした人間一人ひとりを大切にする取り組みが,国連コミュニティが新たに設けた開発目標にしっかり組み込まれたことを,大変嬉しく思います。

2.
 嬰児(みどりご)をもつ母ならば,その健やかな成長を,それのみを願うことができる環境を,日本は作りたいと念じます。

 そう考えていたとき,一枚の写真に出会いました。ある難民女性の,カバンの中身を写した写真です。

 手荷物をたった一つだけ持って難を逃れるとき,人はカバンに,何を詰め込むのか。

 ダマスカス南方にあるパレスチナ難民キャンプを逃れ,ゴムボートで地中海を渡った二十歳(はたち)の女性,アベーサ(Aboessa)は,多くを持ち出せませんでした。

 写真に写っているのは,生後10ヵ月の,娘のものばかりです。

 靴下の替えが一足。一つの帽子と一ビンのベビーフード。眺めるうち,私の目は,ノートのような何かに釘付けになりました。

 ビニールで大切に包み,水がかかっても大丈夫なようにしてあるノートをよく見ると,それは,私たちがシリアの難民キャンプで配った「母子健康手帳」だったのです。

 日本では,懐妊を知った女性は手帳を貰います。母子の健康を長く記録するノートで「母子健康手帳」といい,この制度は70年以上続いています。

 手帳が書き留めた身長や体重を見て,わが子の成長に目を細める母のうち一体誰が,その同じ子が,成長したのち,恐怖の使徒となるのを望むでしょう。

 手帳は母の,「わが子よ,健やかなれ」と願う,祈りの記録です。それは力を帯びる。この子に,命を粗末にはさせじと,母親に念じさせる力です。

 絶望や恐怖を生む土壌を,母の愛で変えたいと願えばこそ,私たちは,パレスチナや,シリア,ヨルダンの難民キャンプで,母子健康手帳を配ってきました。

 そんな願いのこもった手帳を,脱出行(こう)のさなか,大切に持ち続けた女性が確かにいた。

 一人,ひとりを強くすることを目指す「人間の安全保障」の思想が,悲しくも,雄弁な結実を生んだことに,私は打たれたのであります。

3.
 議長,ご列席のみなさま,

 法の前の平等と,法の支配の原則もまた,日本がこのうえなく尊ぶ価値であります。その伸張も,人の力を育てるところに始まります。

 ご紹介するのは,法の番人となる警察官の育成を,日本が手伝っている,そのため,日本の若い女性が奮闘しているエピソードです。

 暴力・恐怖をその根底で絶つには,よい警察官と,その組織を育てなくてはならない。私たちはそう信じ,アフガニスタンほか随所で,警察官の養成に力を注ぎました。

 コンゴ民主共和国で,日本が2004年以来続けているのが,まさしくそれです。日本の国際協力機構(JICA)は同国で,国家警察の警官研修を支援し,今日に至ります。

 現在まで,2万人以上の警官が研修を受けました。中には女性の警官がいます。武装勢力の兵士だった人も,少なからず含まれていました。モットーは,「市民に親しまれる警察」を作ること。

 研修計画を立て,実行に移す役目を担ってきたのがJICAで,現地の日本側担当者は一貫して女性です。

 例えばその一人は,同僚の目に映る姿たるや「小さな巨人」でした。

 男性警官に混じると,なるほど小柄です。しかし,困難に臆せず,身につけたフランス語を駆使して率先立ち向かう様は,「巨人」のそれだったのでしょう。国家警察の人たちは,彼女に尊敬と,信頼を寄せました。

 日本の新しい旗が「国際協調主義にもとづく積極的平和主義」だということを,一昨年来,この場でみなさまに強調してきました。いま紹介した女性など,その最前線に身を投じた一人です。

 みなさま私は,日本の未来を拓く役割の多くを女性に期待する点で,人後に落ちません。日本が実施する対外援助も,女性に安全と健康,安心を与え,その人権を守る策に力点を置いています。

 内戦から復興途上の国で,法の支配の守り手を育てる仕事に,日本人女性が立派な貢献をしている。二重の意味で,誇らしく思います。

 私は,これまで機会をとらえて,21世紀こそ,女性の人権が蹂躙されない時代にすべきであると訴えてきました。

 本日は,日本も,安保理決議1325号にもとづく女性の参画と保護に関する「行動計画」を定めたことを,ご報告できるのを嬉しく思います。

 わが国の「行動計画」では,女性,少女を暴力から守り,基礎的保健サービスを行き渡らせることが,ひときわ重要な項目をなしています。

 また,昨年に続き本年も,「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」 (WAW!)を開催し,有意義な議論を行いました。

4.
 議長とご列席のみなさま,

 国連とは実に,「楽観主義的現実主義者」の集う場ではありませんか。

 将来をいたずらに悲観しない。しかし現実から目を離しもしない。そのようにして,国連は70年の歴史を刻んできました。

 私も,いくつかの点に関しては,現実を直視せざるを得ません。

 初めに北朝鮮について。拉致,核,ミサイルといった諸懸案の包括的解決のため,日本は,関係国と協調して働きかけを続けます。

 本年は,原子爆弾がヒロシマ,ナガサキに落とされて70年,悲しみを新たにした年でもありました。

 しかし遺憾にも,一部で核戦力の増強が透明性を欠くまま続くかにみえる中,本年のNPT運用検討会議は,将来の核軍縮・不拡散の指針を示せませんでした。

 核削減は,米露の間で休みなく進むべきです。しかし他の核保有国 も進めるべきものだということを,わが国は強く主張し続けます。

 核兵器廃絶に向けた決意の下,国際社会の共同行動を促すため,日本は,新しい決議案を準備しています。多くの国々から支持をいただけると信じて疑いません。

5.
 議長,ご列席のみなさま,

 国連創設70年の慶賀すべき年,安保理改革に関わる大きな動きが始まりました。

 前会期,関係者,各国の真摯な姿勢は,安保理改革の議論を大いに深めました。そして2週間前,私たちは本議場で,満場の拍手によって,今会期に熱意を引き継いだのであります。

 この熱意,さらには日本が果たすべき役割への確信をもって,私は,議長ならびに各国との協力のもと,安保理改革を実現し,日本が安保理常任理事国となり,ふさわしい貢献をする道を,追い求めてやみません。

 第一に,日本には,戦後70年,平和を愛する国として自らを持し,世界の平和と繁栄のため努力を積んだ実績があります。

 カンボジアや東ティモールで,日本は外交努力,PKO派遣,その後長年にわたる支援に力を尽くしてまいりました。

 PKOには,実施に3つのレイヤー(層)があります。まず,どこで何をするか決める意思決定の層があり,次いで,要員や資金の手当てが必要となり,さらに,現場での実働が続きます。

 その間に,得てして生じる格差に対し,日本は,"ギャップ・ブリッジャー(Gap Bridger)"になることができます。そして日本には,どのレイヤーでも言動に責任をもつ主体として,プラスの貢献をすることができます。

 今しも南スーダンで,自衛隊施設部隊の諸君が日夜努力を続けている。ケニアでは,陸上自衛隊の専門家たちが,ケニア,ウガンダ,タンザニア,ルワンダ各国軍隊を対象に,重機の扱い方を伝えています。道がなく,橋が壊れた環境では,PKOは随所で滞るからです。

 そして日本自身がこの先PKOにもっと幅広く貢献することができるよう,最近,法制度を整えました。

 第二に,「オーナーシップ」と「パートナーシップ」を重んじるのが日本です。

 絶望と戦い,幸福を伸ばすには,当事者の意思,国際協力の二つが,二つとも大切なのだと,日本は主張し続けてきました。

 すべての人々が,自分の人生を自分で決定するオーナーシップを獲得することこそが,私たちにとって究極の目標でしょう。これを強調するところからは,「人間の安全保障」を重んじる発想も生まれました。

 第三に日本は,当事者の声に,いつも耳を傾ける国であろうと努めます。

 3日前には,一昨年,昨年に続き,アフリカRECs議長国首脳のみなさんと会合をもちました。

 日本には,アフリカ開発を進めるため20年続けた,TICADという集まりがあります。来年私はこれを初めてアフリカで開き,一層多くの声に耳を澄ますつもりです。

 太平洋島嶼国の首脳とも,昨晩再び集まりをもちました。「11月5日,世界津波の日」をみなで共有し,訓練や,能力の向上を図ることなどを論じています。

 日本が初めて安保理の非常任理事国となったのは,1958年,国連加盟後,2年のことでした。この秋,ご支持を得て選ばれれば,通算11回目に当たります。

 日本は最も頻繁に,同僚たちのレビューに自らをさらした国でした。

 以上三つは,これまで刻んだ足跡から,みなさまに頷いていただける日本の強みです。この強みをもって,私たちは,国連を強くしたいと思っています。

 日本国民とは,UNの2文字に輝きを見る,見続ける者であります。「国際協調主義にもとづく積極的平和主義」を高く掲げ,日本は,国連を21世紀にふさわしいものとするため,安保理改革を行い,そこで,安保理常任理事国として,世界の平和と繁栄に一層の貢献をする責任を果たしていく覚悟であります。

 みなさまのご理解を期待し,私の議論を終えます。

 ありがとうございました。







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