本能寺の変 「明智憲三郎的世界 天下布文!」

『本能寺の変 431年目の真実』著者の公式ブログです。
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大河ドラマ「江」の歴史捜査33:朝鮮侵略から生じた反目

2011年09月04日 | 大河ドラマ「江」の歴史捜査
 先週の大河ドラマ「江」では朝鮮からの撤兵後に石田三成に対して加藤清正、福島正則らの反感がつのり、三成襲撃に至る話が出てきました。清正ら朝鮮侵略の現地軍と秀吉の代理として朝鮮に派遣された三成ら朝鮮奉行との間の確執が関ヶ原の戦いの伏線となっています。このように秀吉の朝鮮侵略は日本の戦国史に大きな影響を与えましたが、これまでの歴史研究はなるべく触れないで済ませて来たように感じます。前回の記事をお読みいただくとその理由がわかります。
 ★ 前回の記事「秀吉の死と現代への遺産」

 清正ら現地軍の戦いは過酷だったようです。第一次出兵(文禄の役)の出陣時の陣立てでは清正軍は一万人ですが、停戦時にソウルへ引き上げてきた清正軍は五千五百人程度とのことです。兵力の四十五パーセントを失う戦いだったわけです。これを見ても、朝鮮侵略が朝鮮・日本の両国にとって多大な損失と不幸をもたらしたことが推測できます。

 さて、先週の放送で朝鮮侵略に関する話は終わりと思いますので、一言申し上げておきます。
 朝鮮侵略の現地での戦争の実情が全く描かれなかったのは残念!
 道義のない侵略戦争に駆り出された日本軍から脱走者が相次ぎ、沙也可(さやかと名乗り日本軍と戦った日本人武将までいたこと、第二次出兵(慶長の役)では秀吉の命令で敵兵の首の代わりに鼻を削いで日本へ送ったこと、手柄を大きくみせるため鼻切りは民間人も対象となり鼻を切られた人が多数いたこと、集められた耳や鼻を秀吉が葬った耳塚(鼻塚)が京都に今でもあること、朝鮮の民衆が多数とらえられて奴隷として売買されたことなどをご存知の方は残念ながら大変少ないのではないでしょうか?
 かく言う私も知識を得たのはこの一年ほどのことです。関心を持ったのはNHKの「日本と朝鮮半島2000年」という番組でした。素晴らしい番組だったと思います。
 ★ 日本と朝鮮半島2000年(深く知るべき歴史

 この戦争の概略はWIKIPEDIAの「文禄・慶長の役で知ることができますが、詳しく知りたい方には以下の本をお勧めします。 
 
豊臣秀吉の朝鮮侵略 (日本歴史叢書)
北島 万次
吉川弘文館

 
 なお、蛇足になりますが、歴史に学ぶとは歴史を正視するところから始まるというのが「歴史捜査」の大原則です。自分の都合の良いように歴史を解釈したのでは歴史に学ぶことにはなりません。くれぐれも「自虐史観」などとはおっしゃらないでください。
 ★ 愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ 

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3 コメント

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Unknown (hitomi)
2011-09-04 19:56:12
はじめまして、私も 朝鮮侵略の現地での戦争の実情が全く描かれなかったのは残念です!
 沙也可の事、強制連行、有田焼き(伊万里焼)耳塚など読んで知っています。京都の方広寺に行ったとき、韓国人らしい方たちを見かけ恥ずかしかったです。
わらび座のためにジェームス三木さんが書いた「ツバメ」は秀吉により引き離された朝鮮半島の夫婦の物語を描いています。

今回の大河には、俳優さんが気の毒なぐらいですが史実を知らない方には面白いようです。
初めは見ないつもりでしたが俳優さんがうまいので吹きながら見ています。
返信する
星火燎原のごとくに (明智憲三郎)
2011-09-04 21:19:54
 いずれもご存知でしたか!ジェームス三木さんがとりあげてくださっていましたか!
 今はほとんど知られていない歴史の真実の蛍火が次第に燃え広がって燎原の火のごとくに世の中に知れ渡っていくことを期待しています。
返信する
私のように知らない人間もおりますし (M・M)
2011-09-05 21:08:26
明智様、書いて頂いて有難うございます。
直視するのがつらいと、目をそらしがちですが、やはり過去に
なにがあったか知らない事は、日本人として恥にあたりますね。

少しは勉強しようかと、本も買ってたのですが、その本の
量の少なさに、あぜんとした事があります。
返信する

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