フジはつる植物であり、ウィキペディアで見ると
「自らの剛性で体を支えるのではなく、他の樹木を支えにすることで高いところへ茎を伸ばす植物 」
だそうです。
柔よく剛を制す、、というか、剛でありながら、しなやかに昇りゆく感じです。
実は、藤の弦に纏わる逸話がタケミナカタ神にはいくつかあります。
安曇野は、叔父であるホタカミの支配していた地でしたが、信濃は縄文時代からの一族守矢(モレヤ)氏が支配していました。タケミナカタ神が信濃を支配するに至るたたかいが次の通りです。(諏訪の神話より)
タケミナカタ率いる出雲の軍勢と信濃のモレヤの軍勢は、天竜川の橋原の地で呪術戦いをし、両軍の大将の一騎打ちで勝負を決することになります。
モレヤは、鉄輪の杖を持ち、タケルは藤弦の杖を持ち、一騎討ちとなり、結局モレヤは、タケルに敗北します。命をさしだすというモレヤに、自分の力となって欲しいとタケルはいいます。その後、モレヤはタケル(タケミナカタ神)に服従を誓います。こうして、諏訪の地はタケルの率いる出雲族の支配する土地となります。
諏訪の語り部の方によりますと、諏訪大社の前宮の裏手にはタケミナカタ神の陵墓があるとされています。今でもそこに聳え立つ巨木のそばに藤の弦が確かに2本絡まっていたのを見ました。
タケミナカタ神は、国譲りをした後、父の大国主命に、「信濃に、新たな王朝をたて、それを護るのだ』と命じられます。
そして、その後信濃一国を守り通したタケミナカタは、父の言葉どおり後々まで英雄として諏訪の民に称えられます。
母のヌナカワヒメを越国糸魚川から呼び寄せて、母はタケミナカタと家族に見守られ、諏訪で天寿を全うしましたと諏訪の伝説では書かれています。
また、諏訪のまつりごとも、モレヤの支配していた時代からあった奇石巨石の磐座や湛(たたえ)と呼ばれる日諸木(ヒモロギ)に諏訪の古代からの自然の精霊である『ミシャグジ』を降ろすことにより、土地と民の安寧を祈る方法を、タケミナカタは踏襲しました。
まつりごとの祈りはモレヤが踏襲し、自らは『現人神』として人々の調和を守る役割を担いました。
狩りの大好きなタケミナカタは、しばし八ヶ岳山麓に狩に出掛け、鹿や猪を狩っては持ち帰り、民人と饗応をしたそうです。これが、現在残る御頭祭や御射山祭の元になったとか。
この祀りは、タケミナカタ神の叔父のホタカミから幼いころ教えられ、安曇族が古来からまもり続けたものを信濃の地で守りつづけたのかもですね。
幾星霜の時が過ぎ、タケミナカタも天寿を全うし、天に召される時に、タケミナカタは、臨終の床で、遺言を残しました。『私が亡くなったら、その亡骸は前宮の御霊位岩の袂にうめてくれ。そして、墓の上には天に昇るために藤の蔓をいけてくれ。妻のヤサカトメも、私の隣に。』
それが、前宮の奥の陵墓となり、藤の弦は今も絡まり天に伸びていました。
私は、ふとこの話に、倶利伽羅明王の剣に龍が絡みつく姿が頭に浮かびました。
龍王を祀る田無神社より
出雲タケル(諏訪の伝説によるとタケミナカタ神)の奥様のヤサカトメ神(安曇族)は海の神様ワタツミのお子様、穂高見命が祖で、龍神にも強く縁がある気がします。
タケミナカタ神自身の母方は、白山あたりの縄文信仰と安曇族にも縁があり、父方は素戔嗚尊を祖父にもち大国主命を父にもつ出雲族でもあります。
まるで、諏訪大社の前宮の奥に眠っているご夫婦の陵墓で藤の弦を龍神のように絡ませながら諏訪の地で、古代からの民を護り続けてきたようにも感じました。
タケミナカタ神は、オオクニヌシの御子神であり、出雲の国譲りのときに、武の神タケミカヅチ神に果敢にも挑み、諏訪の地に封じ込められてしまった神と古事記では言われています。
しかし、劣勢の状況でも屈しない強い武威を示す神であり、敗北を喫した神でありながら日本三軍神に入り、武田信玄をはじめとした戦国武将にも崇敬された神様です。
現人神として、確かに古代生き、自らの生きた土地で土着の信仰と自らの信仰を融合させた御方であり、藤の話に象徴される優しく純粋な人柄を諏訪の逸話から感じました。
ちなみに、藤の花で思いつくのは、鬼滅の刃です。鬼は藤の花を嫌います。
藤の花の花言葉には「優しさ」というものがあるようです。
藤の花は好日性植物で、日光の当たる場所を好む特性があるようです。
また、藤の花がマメ科に属していて、言葉の響きから「魔滅」という文字が当てられることがあります。
全国に5000を越す諏訪神社の御祭神、タケミナカタ神。古事記には一度しかかかれていない神様ですが、
しかし、調べれば調べるほど鬼滅の刃の炭治郎のような、純粋で優しくて強く、信念を曲げず、忍耐のある、そしてモレヤと闘いに勝つも、モリヤ一族とも溶け合おうとする寛容な、家族や友達や仲間や人を大切にする、そんな神様がタケミナカタ神なのかも、、と思いました。
先日フォローワーさんの記事に綺麗な藤が紹介されていて、それが信濃の藤でした。
藤の紫って、綺麗ですね。