不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Le Incisione di Albrecht Durer

2007-04-24 07:14:24 | アート・文化

ドイツ・ルネッサンスを代表する作家
アルブレヒト・デューラー(Albrecht Durer)。
彼の作品はイタリア国内でも非常に人気で、
同世代および後の世代の作家たちが
競って模写をしたり版画コピーをしたりしています。

現在ローマのスクデリエ・デル・クイリナーレ
(Scuderie del Quirinale di Roma)で
行われているデューラーのアンソロジー展
「Durer e l'Italia(デューラーとイタリア)」
(2007年6月10日まで開催)と連動する形で、
フィレンツェのウフィツィ美術館内にある
デッサン・版画コレクション室
(Gabinetto Disegni e Stampe degli Uffizi)で
デューラーの版画に焦点を当てて展示中。
ウフィツィ所蔵のデューラーの作品群は
長年に亘る目録作業を終えたばかりで
それを受けて満を持しての展示となっています。

展示作品は約180点にもおよび、
決して大作ではないけれど、いずれも優れた作品が
6つのセクションのテーマに沿って選ばれています。

今回の展示の目玉となる作品は
Porta dell’Onore di Massimiliano I
(マクシミリアン一世の名誉の門)の初版。
巨大な木版画としてよく知られる作品ですが
192枚の木版ブロックを組み合わせて作られる
6メートル四方の作品。
今回の展示ではさらに
Johannes Stabiusの凡例注釈の6枚が追加された
198枚のブロックで構成。

Durer
この作品、実に35年ぶりの一般公開となっています。
神聖ローマ帝国皇帝マクシミリアン一世の
宮廷画家として活躍した時代の大作で
デューラーらしいきめ細かな作業の集大成ともいえます。
現在の技術を持ってすれば
6メートル四方の木版画も容易いものなのでしょうけれど
16世紀に192枚の木版ブロックをずれなく合わせて
これだけ大きな作品を作製した
デューラーの忍耐力と集中力に感心するばかり。

この作品以外には「海獣(il Mostro marino)」
「騎士と死神と悪魔(il Cavaliere, la Morte e il Diavolo)」
「書斎の聖ジローラモ(il San Gerolamo nello studio)」
「メランコニア(la Melanconia)」
「聖エウスターキオ(il Sant’Eustachio)」などの
版画も展示されています。

またイタリア国内で非常に愛された彼の作品は
数多くの作家によって模写されており、
そうした作品の中からSanti di Tito(サンティ・ディ・ティト)、
Giovanni Battista Naldini(G.B.ナルディーニ)、
Federico Zuccari(フェデリコ・ズッカリ)、Cigoli(チゴリ)、
Ventura Salimbeni(ヴェントゥーラ・サリンベーニ)の
デッサンや木版なども対比展示されています。
いずれもオリジナルの作品に非常に忠実で
反宗教改革の時代を生きた若き作家たちにとって、
如何にデューラーが師範として偉大で、
崇拝されていたかを物語っています。

個人的にデューラーのオリジナルのサインがとても好き。
作品の一部に溶け込むように描かれるサインは
とても独創的だと思うのです。
そして模写にはそれに代わってオブジェが描かれていたり
サインも工夫して真似していたりと
若き画家たちの試行錯誤も見られて
結構そんな小さいところで楽しめます。

デューラー展だけを訪問するなら
ウフィツィ美術館の長蛇の列に並ばずに無料で入場できます。
ウフィツィ美術館の2番入り口にいる係員に
「デューラー展に行きたい」旨伝えると通してくれます。
もちろん通常展示と合わせて鑑賞するのもOK。

Albrecht Durer incisore e alla sua fortuna in Italia
会場:Gabinetto Disegni e Stampe degli Uffizi
   (Sala Edoardo Detti e Sala del Camino)
会期:2007年3月29日から2007年6月10日まで
開館時間:8:30-18:30
休館日:月曜
入場料:無料