古いものを保存することに関しては
非常に積極的なイタリア。
それは国家的なレベルで行われるものが
もちろん主流になっていますが
草の根の企業や個人のレベルでも
様々な取り組みが行われています。
ルネッサンスの時代に隆盛となった細密絵画を描く画家や
細密画修復士が年々減少している状況ですが、
ボローニャを拠点として精力的に活動を続けている
Fondazione Marilena Ferrari-Franco Maria Ricciは
イタリア中に声をかけ、最後の細密画士といわれる人々や
丁寧な職人技で本を仕上げる優秀な装丁士を探し、
また印刷工場や製紙工場には、
その工場の倉庫などで眠っている
長年使われていない機械を引き出させました。
そして大理石職人、ガラス職人、指物職人なども総動員して
ルネッサンスの時代に作られていたような書籍を
製作する活動を続けています。
本の形をした芸術品といわれるもので、
この活動を通してルネッサンス時代の技術の再発見と
新しい芸術家、修復士の養成に貢献しています。
若年世代にこうした伝統芸術技術を受け継いでいくために
2009年2月からはボローニャの2つの高等学校を対象にして
新規コースを設定し、
徐々に新しい才能の発掘と養成を進めています。
彼らのうちたった一人でもこの道を選んでくれれば、
それで財団の目的は達成される、とは財団代表の言葉。
財団がこうして地道に製作する書籍は
年間を通しても数えるほどで、
その中には1900年代初めの技術を使って作製するものと
貴重な素材を使ってグーテンベルクの時代の
印刷技術を再現するものがあり
後者はこれまでに25例を製作、
3年間で5種製作するのが精一杯だそうです。
ちなみにそれをひとつ製作するためにかかる費用は
100万ユーロをくだらないといわれ
そうして製作される書籍の多くは
国立図書館や教育機関などへ収められています。
3月11日にFerrari-FMR財団では
ローマのPalazzo Grazioli(グラツィオーリ宮殿)に
財団オフィスを新たにオープンし
予約制でこうした書籍などの作品展示の一般公開も行っています。
映像、機械類などの展示も通して、
製作過程や技術の紹介も行っています。
芸術作品は芸術家と職人の共同作業で
生まれてくるものであることを改めて認識させてくれるような、
すばらしい活動の一部に触れることができます。
古くから受け継がれてきた技術の再認識には
会議やコンベンションは不要である、
必要なのはその仕事を再開することだ
という財団代表の言葉には深いものがあります。
Officina Ferrari-FMR
Palazzo Grazioli Roma
予約および問い合わせ先: +39-06-6976651