フィレンツェから電車で約40分のところにある
Castelfiorentino(カステルフィオレンティーノ)。
その駅から徒歩3分のところにできたのが
BeGo Museo Benozzo Gozzoli
(ベノッツォ・ゴッツォリ美術館)。
常設作品は「Visitazione(訪問)」と
「Madonna delle Tosse(咳の聖母)」の
2つの有名なTabernacolo(小壁龕)と
そのフレスコ画の下絵であるシノピエ。
どちらもカステルフィオレンティーノの郊外にあった
小さな礼拝堂を飾っていた作品で
どちらもベノッツォとその工房による作品。
この常設展に加え、7月31日までは
いつもはウフィツィ美術館の保管庫に
眠っている作品を含む特別展を開催中。
1400年代後半のほぼ同時代を生き、
フィレンツェとシエナの間に広がる
Val d'elsa(ヴァル・デルザ)地域にも
作品を残した2人の作家の作品を中心にした展覧会です。
一人はベノッツォ・ゴッツォリ。
彼の師匠はBeato Angelico(ベアト・アンジェリコ)で
特別展ではヴァチカン所蔵の
ベアト・アンジェリコの「聖母子像」も展示されています。
もう一人はCosimo Rosselli(コジモ・ロッセッリ)。
因みに彼の師匠はNeri di Bicci(ネリ・ディ・ビッチ)。
コジモ・ロッセッリは最初の師匠であるビッチの影響はもちろん
その後ドメニコ・ヴェネツィアーノやバルドヴィネッティ、
ヴェロッキオなどの影響もうけています。
もちろんベノッツォの影響も強く受け
また二人は共同製作もしており、
展示されている作品のあちこちに、
例えばバラの花の表現の仕方など
お互いの影響が見え隠れして興味深いです。
この特別展に展示されているロッセッリの作品の一つは
カステルフィオレンティーノの郊外Dogana(ドガーナ)の
Chiesa di Santa Maria a Lungotuono
(サンタ・マリア・ア・ルンゴトゥオーノ教会)に収蔵される
「聖母子と4聖人」。
描かれる4人の聖人はAntonio abate(アントニオ・アバーテ)、
Francesco(聖フランチェスコ)、Chiara(聖キアラ)、
Verdiana(聖ヴェルディアーナ)ですが
アントニオ・アバーテの足下に
笑みを浮かべる豚が描かれています。
古代では豊穣のシンボルであった豚は
キリスト教では通常、悪習慣の象徴であり、
淫欲、吝嗇、大食、怠惰などのシンボルとして
描かれることが多いのですが、
アントニオ・アバーテと共に描かれる場合は
その限りではありません。
聖人の足下に描かれている場合は、
豚の象徴する悪習慣に打ち勝った
聖なる人を讃えることにもなりますが、
アントニオ・アバーテの場合は
別の意味合いを含むことがあります。
イタリアではヘルペスは
別名Fuoco di Sant'Antonioといわれますが、
その昔、中世の時代には、
寒さにも強いライ麦に寄生する菌類によって
引き起こされる中毒症状も同じ名前で呼ばれていました。
アントニオ・アバーテおよびアントニオ派は
豚の脂(ラード)をこうした皮膚炎の治療薬として扱っていたため
敷地内で豚を飼育する許可も得ており、
豚は首に鈴をつけて
自由に敷地内を闊歩していたらしいのです。
豚のラードを傷口に塗って治療を行った聖アントニオは
長くそうした皮膚炎を患う人々から信仰されてきました。
こうした背景からアントニオ・アバーテの横には
時折豚が描かれていたりするのです。
普段なら交通手段もなく
なかなか観ることのできない作品も
今なら結構気軽に観に行けるので
会期残りは短いですが、
時間のある方は是非足を運んでみてください。
Benozzo Gozzoli e Cosimo Rosselli
nelle terre di Castelfiorentino
Pittura devozione in Valdelsa
会場:Museo di Benozzo Gozzoli
Via Testaferrata 31, Castelfiornetino
会期:2011年7月31日まで
開館時間:水曜日から月曜日 9:00-13:00、15:30-19:30
火曜日 15:30-19:30
入場料:6,00ユーロ