不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Pic-nic a Loggia di Lanzi

2013-08-14 16:55:14 | アート・文化
天井のない美術館といわれるフィレンツェ。
街のあちこちに美しいものが溢れて
そこここで美術品に触れることができます。
アクセスしやすいからか、
文化財へのいたずら描きが絶えなかったり
実際に触ってしまって彫刻を損傷するなどということも
結構頻繁に起きています。

シニョリア広場に面した開廊は
正式にはLoggia della Signoriaですが、
通称ランツィのロッジャ(Loggia di Lanzi)
もしくはオルカーニャのロッジャ(Loggia di orcagna)
と呼ばれています。
前者は
その昔1527年に神聖ローマ帝国の傭兵(Lanzichenecchi)が
ローマへの進軍途中にこの開廊で野営したことに由来しています。
後者は間違った解釈によるものですが、
オルカーニャが手がけたからだといわれています。
実際にはオルカーニャ本人ではなく兄弟の手によるものです。

このランツィの開廊は
1376年から1382年にかけて建設されたゴシック建築ですが、
天井部分には
ルネッサンス様式の先駆けともいえる
湾曲アーチ様式が取り入れられています。
元々はフィレンツェ共和制時代に
数多くの公共会議や公式式典などを
執り行うために使われていました。
1500年代に入り、フィレンツェ共和制から
トスカーナ公国となると
開廊はもっぱらトスカーナ大公である
メディチ家の彫刻コレクションを保管する場所となります。
これにより
世界でも初めての芸術品展示スペースの
一つとなったといわれています。
現在もトスカーナ大公コジモ1世が
共和制の終焉と大公による統治の始まりを示すために
チェッリー二(Cellini)に依頼した
Perseo(ペルセウス)をはじめ
古代ローマ時代からマニエリズモ期までの彫刻の
オリジナルが展示されています。

実際この開廊も
ウフィツィ美術館やアカデミア美術館と同じように
フィレンツェ美術館連合に組み込まれた
立派な「美術館」なのです。

しかし、ここ数年、
お行儀の悪い観光客が増えていて
歴史的建築物でもある、この開廊で
ピクニックをしたり、彫刻にのぼって写真を撮ったり、
靴や服を脱いで昼寝したりとやりたい放題。

24時間態勢で警備員が配備されていますが、
1800年代半ばに活躍したPio Fediの傑作ともいわれ
1800年代のイタリア彫刻を代表する作品でもある
Ratto di Polissena
(ポリッセーナの掠奪)は
他の作品に比べて新しく、
多くの人にとっては無名の作品で
コピーだと思っている人も多いからかもしれませんが
過去4年間で4回も損傷を受けています。
最近では2013年3月に彫刻によじ上った観光客により
指を折られています。

無料で一般公開され、
目立った柵も取り付けず、自由に鑑賞できる現状を
いつまでも保ち続けるためには
一人一人のマナー向上が必要です。
近い将来、柵を取り付けられて
アクセス制限されることがないように祈るばかりです。