期待されずに始まって

　新しい衣装を着けて練習することの必要性など、ショーが始まった頃はなかなか分かって頂けませんでした。フルートを操る手に着ける手袋を馴染ませることがいかに大事か、それさえも分かってもらえませんでした。音楽を掛けて毎日練習することについても、嫌な顔をされました。それが、最近は分かってもらえるようになったな、とふと思いました。年月が掛かりましたが、いろいろなことを分かって頂き、やり易くなりました。そして、また契約更新の面談の時のことを考えていました。期待されずに始まって、良かったのかもしれないと思いました。いろいろなことに直面したことも、良かったのかもしれないと思いました。不器用だから何でもゆっくりです。でも、自分の歩みで進めました。
　カンパニー・マネージャーのダイアンさんが最後の週なので、ホットドッグの移動販売車が来て、一人二つホットドッグを頂くことができました。一つはトマトのサルサのようなもの、もう一つはマンゴーのサルサのようなものがのっているものにしました。飲み物とポテトチップスも付いたので、持ち切れないほどでした。おいしかったです。
　音楽を掛けて通している時に、感覚がおかしい気がしました。左の骨盤は、少し開いている感じです。そして、自分が思っている位置と実際の位置がほんの一ミリとか二ミリずれている感じがします。
　それがそのまま演技に出てしまったようで、小さなことがなんとなくおかしい一回目でした。でも、最後のお辞儀の時に、お立ちになって拍手を送りながら、「ありがとう。」とおっしゃって下さる方が目の前にいらっしゃいました。舞台が下がり、胸が温かくなるのを感じながら歩いていると、「あのね、私の前に『ありがとう。』と言いながらお辞儀をして拍手をしている人がいたのよ。」とゲイル。彼女の目の前と私の目の前はずれているので、同じ方とは思えません。ゲイルは、その方の身なりを説明してくれましたが、やはり違う方のようです。二人で微笑みました。
　二回目のショーの前に、ダイアンさんのスピーチがありました。そしてその後、彼女は客席でご覧下さいました。また、以前このアパートに泊りに来てくれたことがある亜梨ちゃんのお友達も、再びいらして下さいました。さらに、ジェイソンも客席から観ていました。私は、待機場所に行くとすぐに咳き込んでしまい、脂汗まで出てきましたが、みなさんのお蔭でしょうか、何とか頑張ることができました。