のんのん太陽の下で

初めての一人暮らしが「住民がいるんだ・・・」と思ったラスベガス。
初めての会社勤めが「夢を売る」ショービジネス。

500ミリオン回

2010-07-31 | KA
 昨日の様に汗はかきませんが、今日も湿度が高い気がします。暑さ凌ぎに出掛けに濡らした袖だけシャツは、すぐに乾かず、いつもより長く涼を得られました。
 今日はゲイルとエクササイズをする約束をしていたので、早目にお昼。早目の支度。エクササイズの後は、振付を考える気持ちの余裕も珍しくありました。
 しかしながら、少し疲労感があります。まだ一回目のショーなのに、踊るシーンの前に気持ち悪くなりそうになりました。でも、今日咳き込むことがなければ、今週は一度も咳き込まなかったことになります。頑張ってこらえていると、後ろから声が掛かりました。「その角に後ろを向いて立ち止まっているということは、あまり調子が良くないことだと思うけれど…。」私は「丁度間といったところかしら。」と言って笑いました。一回目のショーのお客様は、みなさんお立ちになって拍手を送って下さいました。
 二回目のショーは、気持ち悪くなる兆しもなく、舞台に立つことができましたが、自分の身体のことばかり気にして、今日が最後の日であるステージマネージメントのシルバンのことを、考えずに終えてしまいました。ショーが終わり、彼にお礼を言いながら、今日のパーティには行くつもりだが少し遅くなると伝えると、「僕は四時までは居ないよ、一時までなら居るかもしれないけれど。」と言いました。私は「私も四時には行きたくありません。」と言いました。
 それから、急いでチャリティーショーの為の振付を始めました。私の目標は7月中に振付を完成させること。今日がその最終日。だからシルバンのパーティにも行きたかったのですが、こちらもどうしても終わらせたかったのです。そして、振付は完成しました。あまり得意ではないことを無事に完成させられたので、とても嬉しいです。
 パーティに着いたのは、ほぼ二時。仲間はほとんど去っていましたが、シルバンはまだ居ました。それから、彼と乳母役のジーナと、バックステージテクニシャンの一人と、いろいろと話をしました。ジーナは、ショーをよく観ていて、とても面白いです。彼女より古くから居るアーティストより、余程ショーのことを理解しているかもしれません。役者さんはこうやって役作りをするのかしら、と感心しました。
 そのうちに、彼女は私のことを「私は、自分のことをプロフェッショナルだと思って仕事をしているけれど、あなたみたいな人は見たことがない。」と言いました。そして、「私は役者として同じ演目を50回やるのでさえ“たくさん”と思ってやってきたけれど、ここでは年に476回もやるのよ。さらにあなたは、もう500ミリオン回もやったのでしょ。」と彼女らしく大げさに言いました。「どうして、同じことを毎日やってられるのかしら…」。乳母役は、“アクティング”乳母と“アクロバット”の乳母に分けて、二人の乳母役が一回のショーで舞台に立つようになっていて、その役割が二週間おきに変わります。だから、「ああ、もうクライムをやりたくないわ。」と思っていると、そのうちに二週間も経ち、“違う”役が出来るのだそうです。だから、毎日毎日チーフアーチャーの娘役をしている私、同じ役を500ミリオン回続けられる私のことは不思議なようです。
 そろそろ帰ろうかという頃に、シルバンは車を持っていないことが分かりました。車を持たずにずっとここで暮らすこと、私には分からなくはありませんが、彼は自転車に乗るような感じの人ではなく、訊いてみると、住まいはバスも通っていないような遠さ。私は、車の運転ができなかったので、ずっと自転車通勤になると思っていましたから、それを考えて、毎日自転車で通っても遠いと感じないほどの距離に決めたり、雨などで自転車に乗れないこともあるだろうから、24時間バスの便があるところを考えたりしました。しかし、彼の住む位置を考えると、車なしで何年も過ごしていることに驚きました。今日の帰りは、誰かが送ってくれるのかと思ったら、みなさんそちらの方向ではないようで、「いいよ、いいよ。タクシーで帰るから。」と言う彼に、「そう。」というだけ。私は、今日は単なるパーティではなく、“シルバンの”パーティなのだから、せめて今日だけでも遠回りしてあげたらいいのに、と思いましたが、みなさん酔っているから頭が回らないのか、酔っているのを判っているので送らなかったのか。彼もとても酔っていましたし、いつものことだから何とも思わないというようにタクシーで帰りました。私は、今日パーティがあることを知らなかったので、いつものように自転車で、お役に立てることもなく、残念でした。
 お店を出たのは、朝の4時過ぎ。街にはまだ人が歩いていて、車もたくさん通っていました。