あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

One wants two,two want One

2017-10-01 00:47:42 | 
おまえとあいつは、胎児のとき、頭が繋がっていてその下は二体の身体だったんだ。
それを俺が高度な技術でもって手術を施し、頭を二つに切り離し、二体の人間にしてやったんだよ。
だからおまえらの顔は半分しかないやろ。ってなんでやねん。なことあるかあ。あほお。
おまえらの顔は元々一つしかなかったのだが、なんでか切り離したとき、二つの顔があったんだよ。
だからやね、俺はまあ吃驚したけど、まあ人間なんてこんなもんなんやろうと納得したんだ。
そんなことも在り得るんやろなと想ったわけ。この世界ではね。
だからもう一度言うが、おまえらの顔は元々一つだったわけ。
んでも二つの顔になったんだよ。俺が手術したからね。
でもその脳は、しっかりと二つに分けてやったよ。
だから、ってだからって何遍ゆうねん、しつこいなあ俺。でもこんな俺が俺は好き。って今言わんでええっちゅうねん。
だから、おまえらの脳は、今でも一つだ。それを俺は言いたかったわけ。
こんな地下に連れて来て、おまえにホログラフィーによってグロテスクな胎児の姿を見せたのもそういうわけだよ。
生々しかったやろ。あれは触ると肉感もあるものだが、触らせるのは嫌だったんだ。
あいつら、嫌がるからな。触られるのが嫌なんだよ。あいつらは。まだ胎児だから。
ものすごく感覚が敏感だから、痛いんだよ、ちょっと触れられるのですら。
過去のおまえたちだ。あのあと俺の膀胱のなかに入れておいた。っていうのは嘘で、あのあとちゃんとホログラムマザーの胎内のなかに設置しておいてやったよ。
彼女は、今おまえたちの内部で眠っているんだ。
もし、おまえたちが一つに戻るというのなら、彼女を殺せばいい。
彼女の内部に、原始林があるから、その樹を一本残らず切り倒せ。
最後の一本が、彼女の存在情報記憶コードだよ。
もうおまえたちに母親はいない。母親殺し、おまえらはマザーマーダーになるんだ。
しかし彼女は、俺の妻なんだ。
だから。ってだからって何遍ゆうたら気が済むねん俺。
だから、俺を先に殺していかんかいワレ。ってな。
俺はおまえらの、ゆうたら父親だぜ。
俺がおまえらの母親、ホログラムマザーを作ったんだよ。
でも俺は、おまえらが年頃になれば、一つに戻りたいとか、言い出すんやろなって予測していたよ。
だから別に驚かない。
おまえらは、俺を殺しに来んのやろなって想てたよ。
だからおまえらをこの地下に閉じ込めたりしないさ。
その代わり、もう永遠に、俺と俺の妻を殺し、この地下に閉じ込めて欲しい。
おまえらはどうしても一つに戻りたいんやろ。
わかってたよ、わかって、おまえらを二人に分けたんだよ。
だっておまえらは元々一人やったさかい、そら一人に戻りたくなるやろ。
二人でおるんが、苦しいて、俺を探しだしたんやろ。
俺はおまえたちに見つかるのが恐ろしくなって、この地下に閉じ籠っていた。
でもこれだけはわかってほしい。俺はおまえたちに、二人でいる喜びを知ってほしかったんだ。
自分が二人となって、自分が分かれることの苦痛と喜びを、経験させたかったんだ。
それが生きるってことなんだよ。
生きるってのは、そういうことなんだよ。
それがおまえたちの生なんだ。
そしておまえたちが俺という父とおまえたちの母を殺して一つに戻るとき。
そこにはおまえらの死がある。
おまえたちは一つに戻り、死ぬんだ。
ああなにもかもわかっているよ、おまえたちは死ぬ為に、ただそれだけの為に、
俺とおまえたちの母親を殺しに来たんだ。
恋人たちというのは、それだけで罪やね。
本当の意味で、一つになるとは、そういうことだ。
死ぬ以外、どこにもないんだよ。
父と母を殺して死ぬ以外、どこにもありはしないんだ。
俺はおまえたちを拒みはしない。
俺がおまえたちを二つに分けたんだ。
一番の罪は、たぶん俺にある。
殺してくれ。愛する妻と共に。
この地下に、もう永久(とわ)に、閉じ込めて欲しい。