性的虐待を、あなたから受けたかった。
神父様、ぼくは誰からも愛されてはいません。
あなたに懺悔致します。
ぼくはこの世界でたった一人、誰からも愛されていないのです。
だからあなたから性的虐待を受けた方がよっぽど幸福だった。
愛されていないのに、なぜ愛されていないことを知ることができるのですか。
例えばあなたは何故、存在しているのですか。
誰からも愛されていないのに、何故あなたが存在しているのでしょう。
何の為に、ずっとあなたが苦しんで来なければならなかったのでしょうか。
あなたは誰にも愛されてもいないのに、生きて苦しみ続ける資格はあると想っているのですか。
それを傲慢と想わないのは何故ですか。
あなたは自分の力で存在しているとでも想っているのですか。
あなたにはそんな奇跡の力があると?
ならばあなたは神と同等の力を備えているということです。
神と同等のあなたが、愛されていないと苦しんでいるに過ぎません。
神と同等のあなたが、すべては可能であることを忘却しているに過ぎません。
では想いだすだけでいいのです。
あなたは神と同等の存在であるということを。
あなたに不可能なことはありません。
あなたは自分の罪の為に、苦しみ続けているのではないのです。
あなたはそうしてたった独り、誰からも愛されずに苦しみ続けることこそが、あなたが愛されている証であることをあなたは知っているからです。
何れ程あなたを愛していると言おうとも、あなたは聴く耳を持たないのです。
あなたにすべての愛を、聴く耳は在りません。
あなたは自ら、耳を喪ったからです。
まるでゴッホのように、自分の手で自分の耳を切り落としたからです。
そしてあなたは嘆き続けてきたのです。
誰もいないと。あなたを愛する者は誰一人、存在しないと。
あなたはすべての愛を否定し続けて来た。
あなたはすべての愛を、詰まらないものだと見棄てて来た。
あなたは死だけを、信じてきた。
あなたは死だけが、愛であることを信じてきた。
あなたは死を感じるもの以外、すべてが退屈なのです。
だからわたしにあなたは要求してきました。
ほんの幼い頃から。
あなたは死を、わたしに要求してきました。
わたしはそれに、十分応えたと、想っていました。
でもあなたは、まだ足りないとせがむのです。
あなたが死を感じることに十分でなかったことを、わたしに責め続けるのです。
わたしがこれ以上あなたを苦しめることにわたしが堪えられなかったことを、あなたは咎めるのです。
わたしのあなたへの愛が足りないことを、蔑みながら侮辱するのです。
もともとわたしは存在しないということを、あなたは悲しみ続けるのです。
あなたは自ら、限界を設けました。
あなたは全てに限界を設けました。
わたしはあなたの求めるがまま、あなたを虐げて来ました。
あなたの求めるあなたの厭がるすべてをあなたに与えてきました。
あなたは倒れなかった。わたしの虐待に、あなたはずっと堪えて生きてきたのです。
しかしわたしの虐待は、あなたの最も大きな生きる喜びとなるのです。
或夜、あなたはいつものようにわたしのところへ遣ってきて、わたしを誘惑します。
わたしができうる限りに、あなたをどこまでも虐げることを。
でもわたしは、或夜、あなたをただ強く抱擁したのです。
そして涙を流し、あなたに誓います。
もう二度と、あなたを苦しめることはしないと。
あなたは少しあと、わたしから去りました。
人々はあなたが死んでしまったと言っていますが、わたしは信じていません。
何故なら今夜のように、あなたは何度とわたしに懺悔をしに、こうしてこの教会の懺悔室にひっそりと、月夜に照らされて其処へ座ってわたしを待っているからです。
あなたは悲しい目でわたしを咎め、わたしは早くあなたのところへ行きたいのですが、あなたはまだわたしの愛を否認している為、それが叶わないのです。
神父がそう言い放った瞬間、彼の姿は見えなくなり、向かいの小さな窓から懺悔室の腰掛けを、月明りが反射していた。