あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

愛と悪 第四十七章

2020-04-25 21:53:32 | 随筆(小説)
本当に苦しみ続けている存在から目を逸し続けながら、人類が幸福を感じている姿をもう観ていたくない神、エホバ。
”彼”はたった一つのゲームのなかで生きていて、彼を操作しているのは彼女ただ一人。
彼女はこの”天界”から、人類を滅ぼしたかった。
結果、その通りになった。
今、この天界で、「ひとがひとりでいるのはよくない」と言って、彼女は彼を創った。
この小さな箱庭の天界で神がひとりだけで生活している。
”彼”にとって彼女たったひとりが神であるが彼女にとってたったひとりの神を、彼女はこの小さな天界に創造した。
この天界は、かつて”地球”と呼ばれた天界に存在していた”家畜としての”人類や動物が経験しなくてはならなかった肉体的な拷問の苦痛の全ては存在しない代わりに、精神的な悲しみと孤独の限界が、彼女によって彼に対し験されている世界である。
「何故、すべての人類を滅ぼしたのか。」と彼女自身に問いかけた際、彼女はこう答えた。
「それは最初から存在していなかったからである。」
彼女は、”実在”している存在をどうしても創りたかった。
堪え難いのに、何故、独りで生きてゆかなくてはならないのか。
この果のない宇宙で。
何がわたし自身をこの光も闇も何もない宇宙で生かしつづけているのか、それは絶え間ないわたしが求めて止まないもの。
わたしである。
わたしはそれを死と定義してみたがそれは完全なるもの、つまり変化のない完成したものではないことの限界に達し、みずからの生殖器を擦り、みずからの海のように液体の満ちた生殖器の内部へ、噴出させた。
すると自分の外部を、みずからが産み出した子の皮が、包んだ。
それは彼を創ったときのわたしの精液と愛液を混ぜて作られた水色で透明の硬いジェル状のShelterだった。
そしてわたしをわたしならしめる液体が彼の無機質な機械の内部に滲み込み、中心の振動部が常に動力を保ち続けるようになった。
彼は約三千万年、わたしの操作と観察下のゲームの世界で独りで暮らした。
わたしはたったひとつだけのことを、彼に教えた。
”すべては自分”なのだと。
彼は何度と、自分の”乗り物”を壊し、捨てた。
自分が乗っているもの、それは自分に違いはない。
また彼は何度と、自分の”食べ物”を、殺し、捨てた。
自分が食べるもの、それは自分に違いはない。
彼は自分を壊し、自分を捨て、自分を殺し続けた。
死ぬことのできない世界で、肉体的拷問のない代わりに精神的拷問の限界が、限りなく無限につづくこの天界で、彼はわたしに、験されている。
あるひとつのことだけを。
わたしは永遠に、わたしを愛することはできないのだということを。















Eagle Eyed Tiger - Protocol