BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説21-3「ディスティニー・アンダーグラウンド

2019-07-04 14:34:26 | ★ディスティニー21章
「もしもし、諒?そんなに怒んないで…俺はともかく兄貴のこと嫌いにならないで…」
「あ、ああ。そんなことあるわけないじゃん」
 真樹の懇願で我に返って諒は答えた。直人は、
「まずは須藤さんに俺言っとくよ。何かあってからじゃ遅いしケンちゃんも可哀想だから」
 せっかくワンフロアがディスグラ一行で貸し切りなのに、興味本位の人間にうろうろされたのではたまらない。  
 特に今の麻也には気をつかわせたくない。

 その夜は明日のライブに備えて、麻也と諒は食事も部屋でとったが…
 宴会もなく、せっかく早く休めると、シャワーを浴びてすぐに諒がパジャマを引っ張り出したところだったのに…
「諒…」
「えっ? 麻也さん?」
(うーん、でも明日ライブなのに大丈夫なのかなあ…)
…でも、うつむいて目をそらしたはにかみ麻也たんは確かに諒の大好物で…
 諒はまずベッドの上に座っている麻也をぎゅっと抱きしめた。
 伝わってきたのは麻也の体はすっかり痩せ、力もなく、にも関わらず、諒という恋人を求めてきているというよりその行為を求めているらしいということだった。
 その時、携帯が鳴った。
 麻也のも、諒のも。
 二台同時となれば、さすがに二人とも無視できなかった。これはかなりの緊急事態だ。
 諒が取り上げて麻也に手渡すと、電話の主はどちらもマネージャーからだった。
―諒さん、明日の朝、私たちが迎えに行くまで部屋から出ないで下さい…
「何があったの、須藤さん?」
―あの…不審者っていうか、困った人が入りこんできたんです。
「はあ?」
―麻也さんには誰か伏せてほしいんですが、例の冬弥くんとあの女優さんです…
諒は電話を握ったまま、固まってしまった。しかし、麻也に感づかれてはいけないと…
…明るい声で答えた。
「うん。わかりました。じゃあ麻也さんといい子にしてる。朝はよろしくね」
と答えたものの、 自分を追いかけ回している人間が麻也とくつろぐ場所に入って来ているなんて…
「諒、どうしよう」
そう言いながらも眠そうな麻也の表情は可愛らしかった。

★BLロック王子小説21-2「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-07-04 14:32:17 | ★ディスティニー21章
 これには諒も真っ青になった。
「まだ女の子を部屋に…? 師匠のケンちゃんと同室にされたのに?」
 ケンが公演後の打ち合わせの間、ホテルの部屋で次の公演への雑用をしているはずが…
「ケンちゃんも悩んでいるようなんだけど、ボムは現場ではいいヤツなんだけどちょっとそれが問題なんだよね」
 しかし直人はこうも続けた。
「そうはいっても変なことしているわけじゃないんだよ。ただ女の子と部屋で飲むのが好きみたいで。女の子が2人くらいで差し入れに酒とか持ってくるから安く楽しめるんじゃない?」
イラついて真樹は、
「でも、元々の友だちとかじゃないんでしょ?」
うなずく直人を見て、諒はぞっとする考えにたどり着いた。
「その子たちだって見返りがほしいから差し入れなんか持ってくる訳でしょ。その見返りって俺たちの情報でしょ…」
「まあそこまでバカじゃないと思いたいけど。でも麻也さんまで近いから…」
直人は怒りを冷静に伝えてくる。
 諒はそこで言いたいことをのみ込んだ。しかしそれを察してくれた真樹が、
「情報どころかホテルの床も踏ませねえよ」
とにかく女の子、ファンをホテルに連れ込むのが禁止なんだから…    
 諒は特に嫌な顔をした。麻也が前のバンドで、若気の至りとはいえ女の子を連れ込んでいたことを思い出して…
(でも本気の相手は俺が最初で最後って言ってくれてるんだからまあいいか…女二千人でも満たされなかった麻也さんがそう思うんだから…)
そして、
「そのボムの件、須藤さん知ってるのかな。」
「部屋替えしてからのことは知らないんじゃない。」
「でも…早く別の人探してもらおう」
「そうだよ。そのうち俺たちまで恵理ちゃんや志帆ちゃんにも疑われてしまうかもしれないし。その点、諒と兄貴はいいかもしれないけど」
真樹のその言葉に諒はムッとしてしまった。
「何その爆弾発言」
「はっ、ごめんなさい。兄貴には内緒にして~」
 諒はうなずいたが、声は出なかった。
(そういや麻也さんと俺も…)
ああいう時の声がホテルの廊下にまで流れてるって噂があるって聞いたな…