BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説21-32「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-07-30 21:44:08 | ★ディスティニー21章
 社長は心から済まなそうに、
「麻也、本当に済まなかった。お前を信じてなかったわけじゃないんだけど、お前は今病気だから、また意識のない時に誘拐されて何かあったのかと…脅されてるとかさ。じゃあ、これから出版社には抗議しておくから。本当にすまなかった」
「いえ、わかってもらえてよかったです」
「まぁ、ちょっとコーヒーでも飲んで休んでけ」
 麻也以上にほっとしたような社長は弱々しく勧めてくれた。
 しかし、麻也はみんなに悪くて、
「あのー、打ち上げは…?」
「あっ、そうか、忘れてた。俺はこのくっだらねぇ雑誌に電話して抗議してから行くけど、麻也はどうする? 行けそうか?」
 そうは言われても、麻也はすっかり疲れ切ってしまい、
「いや、困ります…鈴木さん、俺今夜はどこで寝られるんだろう…?」
「じゃあ、私と須藤さんと川の字で」
「嫌ですよ、私達まで、諒さんに殺されちゃうじゃないですか」
 みんなの話題に、麻也も合わせたが、胸の中では、
(今の諒ならどうかな)
と、思っていた。
 それにしても、麻也にはもう出かける元気はなかったので、部屋で休むことにしたが、鈴木に意外なことを訊かれた。
「あのー、部屋はダブルにします、ツインにします?」
「えっ、選べるの?」
「はい万が一を想定して」
諒に相談したかったが、追い出されたら真樹の1人使いのツインに泊めてもらうのだから、それまでは広いダブルベッドで休んでおくことにした。
 と、鈴木が携帯に電源を入れるとすぐに諒から電話がきた。
「ああ、すみません、麻也さんは今お2人の部屋で休んでます。私は今荷物を整理中で。楽屋で麻也さんが倒れたとき、僕の他には須藤さんしかいなかったので…今替わりますね」
 麻也は電話を渡された。
 諒は何も知らないのだとわかって、麻也ほっとした。
「もしもし…」
「麻也さん、休んでいてくれたらそれでいいよ。悪いけど俺、二次会まで抜けられないみたいだから、鈴木さんにいてもらって」
「えー、でも悪いじゃん…」
 久しぶりに自然と電話できて、麻也は内心嬉しかった。
 自分でも困ったが、声まで笑いを含んでいたように思えて、少しきまりが悪かった。しかし諒も似た思いだったらしく、かつてのように、
「えー、だって俺、心配だもん。俺の留守中にまた具合悪くなってたら困るじゃん」
「うん、じゃあそうする…って、鈴木さんこそ大丈夫なのかな」
「俺交渉するから電話替わって」
 麻也は笑いながら鈴木携帯を渡した。
 でもあの写真のこと諒には伝わらないんだろうかと思いながらいつしか麻也は眠っていたらしい…
 諒と鈴木の話し声で、麻也は目が覚めた。