BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説21-8「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-07-08 21:37:43 | ★ディスティニー21章
 諒が宮城から話を聞いた翌日…
 ツアー終了まであと1か月となっていたが、みんなの疲れはピークを越えていた。
 結局麻也が動けない分をみんなでカバーしていて、しかし、その中でも須藤と鈴木とで秘密を共有していた諒は、疲れも人一倍だった。
 空港からのリムジンバスのサロンのソファーに陣取ってぼんやりしている麻也の横顔は本当に可愛らしかった。
 ファンにも言われているように、生意気な王子のようで、いつものおっとりした様子とのギャップが…
 それを可愛いと思ってしまう自分が今となっては腹立たしかった。
 この勝手に壊れていく姫君を連れてこの後もツアーを続けるのだ…またそんな風に諒は考えてしまう。
「真樹ごめん、カフェオレとって」
 はーい、とひとつ前の座席の真樹が嬉々として、カフェオレを渡すのは、今日初めて麻也が少しは栄養になりそうなものを口にするからだった。
  麻也の体調は相変わらず悪い。
 しかし、今回のシングルの曲「カテドラル」をラストの武道館2DAYSまで披露できなくなっても困るので、周囲はますます気をつかって麻也を疲れさせないようにしている。リハーサルが飛び飛びになるのが嫌だったからだ。 
(そういやCDの予約がどれだけ入っているのか聞くのも忘れてたな…)
 でも諒はもうそれを尋ねる元気すらなかった…

 諒がなんだか冷たい。
 昨日インタビューから帰ってから様子が何だか変だ。
 そのことに麻也は密かに傷ついていた。しかし、自分から理由を訊くのも気が引けた。
 その日の夕食はメンバーの体調を考えて宿泊のホテルのレストランだったが、食事も終わりの頃、珍しく母から電話が来たので麻也は店を抜け出して、折り返し電話をした…が、ただの操作ミスだと謝られた…
 すると、同じようにロビーで電話をしていた須藤が、笑みを押し殺したような表情で歩み寄ってきた。