BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説21-25「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-07-22 21:39:59 | ★ディスティニー21章
やはり、須藤の先、廊下でびっくりして顔をして立ちすくんでいたのはローディーのケンのアシスタントのボム…
 そして、その先には化粧が汗くずれしているとはいえ、いかにも追っかけらしい、ちょっと服の乱れた、派手な20歳ぐらいの女の子2人がいて…
「ちょっとっ!」
 須藤の言葉も聞かず、その女の子達は非常階段の方へと必死に走っていく。付き人たちが追ったが、疲れ切っているせいか逃げられてしまった。
 しかし、それよりもみんなが驚いたのはボムの後から同室のケンではなく、乱れた髪の麻也がよろよろ出てきたことだった。
 サンドベージュ色のパンツのウエストをずり上げながら、白いシャツはややはだけていて…
「ええーっ!」
 みんなが混乱していると、エレベーターから誰かが降りてくる気配…
 姿をを現したのは、疲れ切ったケン、大きなシステム手帳を抱えたケンだった
「えっ、みなさんどうしたんですか?」
「ケンくん、ボムと一緒にいたんじゃなかったの?」
「いや、打ち合わせが長びいて、今帰ってきたところで…」
 疲れきったその様子に嘘があるとは思えなかった。
 そうなると当然麻也とボムに視線は集まるわけで…
 須藤は厳しく問いただす。
「ボム!これは一体どういうわけだ!女の子はホテルの中に入れるだって言ってあるだろう!」
次は麻也に、
「麻也さん、麻也さんも一体この部屋で何をしていたんですか!」
 怒りの矛先が向けられても、麻也は当惑した表情を浮かべるばかりだった。
 でも、どういう当惑なのだろう、諒は嫌な予感がして目をそらした。
 今の麻也のこと、女の方から何かされたのかも…いや、途中からは、麻也も合意のうえだったかも…
 最近では自分にもあまり反応しなかったし…
(女の子の方がいいって戻っていたかもね…)
「本当に何を、いや、何があったんですか麻也さん…」
 みんなヘトヘトなのに、更に疲れているはずの年長の須藤が気の毒にも見え、また諒自身も疲れていて、この場をどうにかしたいと投げやりにもなり、ささやかな動きを起こした。
 真樹に小声で言ってみたのだ。
「真樹、王子様の荷物持ってくる。そっちで泊めてあげて…」
「いいけど、諒、兄貴は無実だと思うよ、次から部屋はせめてツインにしたら…」
 その声を背中で聞きながら諒は自分の部屋に戻ると、クローゼットから麻也のバッグを取り出し、廊下に戻って真樹に突き出した。


★BLロック王子小説21-24「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-07-22 20:20:34 | ★ディスティニー21章
 鈴木は店の電話コーナーに張り付くようにして、自分の携帯に麻也の付き人の後藤からの連絡が来るのを待っていた。
 諒も地元のマスコミ関係者などと話していても、半分上の空だった。
(なんで鈴木さんたちは麻也さんを見失うんだ…)
 急激に仕事が増えて新しいスタッフも増えて、管理が大変なのはわかるが…
 結局、後藤が地元のイベンターの女性スタッフから麻也の愛用のバッグを受け取り、その中の携帯の電源を入れたが、最後のやり取りは昨日の鈴木からの受信記録で終わっていたという。
 二次会もどうにか切り上げると、メンバーとマネージャー陣が麻也と諒の部屋に集まった。
 諒は頭を抱えてダブルベッドに座り込んだ。もう朝の4時だ。
「誰かに変なことされていないか心配だし…」
 心配と怒りで諒は混乱しまくっていた。
「何より、何で麻也さん1人を見失うの? 何かあったらどうするの? それもみんなが飲みに行く前に…」
 と言いかけて、
(…ってことは、麻也さんの意思なのか…)
そう思い当たって諒は愕然とした。
 その時、女の子の話し声が廊下からかすかに聞こえてきた。
 全員、耳を疑った。
 今日は泊まりになる女性スタッフは1人もいない。
 つまり、貸し切りにしたこのフロアに女性がいるはずはないのだ。
 とすれば…
「また、ボム君の部屋かもしれない、見てきます!」
 と、いち早くドアを目指したのは須藤だった。
 みんなボムの女の子問題は知っていたので、マネージャーと付き人は全員須藤に続いて部屋を出ていく…
(こんな時に…)
 腹が立った諒は、止める真樹と直人の手を振り切り、様子を見についていった。