BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説21-11「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-07-10 21:37:31 | ★ディスティニー21章
 隣の諒も麻也の方は見ずに一瞬黙り込む。
「直人が明日はよその人が入っちゃうから、今夜は気心知れたみんなでじっくり喜びを噛み締めようね」
 すると、真樹も何気なく運ばれたばかりの料理を突きながら、
「兄貴、座っているのつらくなったら諒に寄りかかればいいじゃない」
 その時どうして自分はいつものように諒に寄りかからなかったのだろう。
 そしてどうして諒はいつものように自分を抱き寄せてくれなかったのだろう。
 しかしそれを予想していたらしい真樹は話題を変えた。
「でもまだ曲を披露できないわけだから悩むよね」
 直人も、
「でも触れないわけにはいかないよね」
 そしてこう提案した。
「諒、キーボードで歌ったら? 1曲だけなら機材何とかならないかな」
 麻也は身の置き所がないような気がしたが、須藤は済まなそうに、
「諒さんすみませんがそうしてくれませんか、少しでもいいので。いくら皆さんの成長が早いって言っても、うまくスケジュールが組めなくて申し訳ないのです、でも…」
 諒は驚きのあまり、目を大きく見開き、口をパクパクして困っている。
 しかしすぐに、
「いや、わかった。やります。フルコーラスは無理があるけど、他の3人にもソロのコーナーがあるんだしこれから構成を練り直しましょう。みんな手伝ってね」
 はーい、と麻也も笑顔で返事はしたが、諒の横顔は、麻也の側はこわばっているように麻也には思えた。
 普段ならば何とかしようとか原因とかを考えるのだが、ここでどっと疲れが出てきた麻也にいい言葉はなかった。
 後から真樹に、兄貴はミリオンをどう思っているのと聞かれたが…
 そこからすぐにエンジニアや照明スタッフや、別の仕事で、東京に一度帰ったキーボーディストにも電話をし、新曲の準備が始まった。
 その間にメンバーの初ミリオンの喜びが広がっていく。麻也は無言でにっこりしながら話を聞いていたが諒は一度も自分を見てはくれなかった。
 もういい時間だが、ホテルの須藤の部屋で、集まれるスタッフとメンバーで打ち合わせることになった。
「兄貴は自分の部屋で休んだら。明日リハーサルの時は泊まったこと教えるからさ」
みんなにもその方がいいと言われ、諒も異論は唱えなかったので、麻也は一人で部屋に戻ることになった。

★BLロック王子小説21-10「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-07-10 21:04:12 | ★ディスティニー21章
 須藤が麻也の様子を伺いながら、ようやく真樹に新曲の奇跡を告げると、
「ええ、本当に?」
 そしてしゃがみこんでまた、本当に?を真樹は連発する。
「じゃあ、みんなに言わなきゃ!」
 真樹も信じられないのだろう。
 麻也を気遣ってという感じではなかったが、ミリオンと1位に驚いていた。
 しかしすぐに、
「じゃあホントに行ってくるわ」
 と立ち上がったところに麻也は手を引っ張って、
「真樹、今夜は泊めてくれない?」
と切実な声になってしまったが頼んでみた。
「ああ、いいよ。じゃあ行ってくる…ってちょっと兄貴、なんで俺の部屋?」
そのまま行ってくれたら良かったのに、と麻也は思いながらもできるだけ穏やかに、
「ゆうべから諒は冷たくて気まずい感じで…」
「いや、そりゃそうかも知れないけど、この話をすれば諒も喜ぶし、二人もいい感じになると思うよ。うーん、まあいいよ。でも二次会で気分が変わるかもよ」
 そう言った真樹に連れられ、麻也は須藤と一緒にレストランに戻っていった。
 テーブルで、麻也はみんなと再び発表を聞いた。
 チャートの一位というのは二度目でも嬉しかったが、ミリオンの方は誰も言葉が出ず、一瞬口を開けたままお互いの顔を見合ってしまった。
 そして、喜びの声をあげてしまった…
 しかし、次には、
「声が大きいです! 続きは次のお店の個室で…」
 と、須藤に叱られ、メンバー4人は子供のように可愛らしく口をぎゅっとつぐむと、移動のためにそろそろと椅子から立ち上がった…
 そして、次の居酒屋の個室で改めて男10人で万歳を叫んだ。まあ麻也は少し弱々しかったが…
 諒がボーカルとして、
「嬉しいけど、本当にみんなのおかげ、みんなで実現したミリオンだと思う。本当にみんなありがとうございます」
と言って、とりあえずビールで乾杯した。
 麻也はグラスに口をつけただけで拍手した。置いたグラスはすぐに鈴木がウーロン茶に取り替えてくれた。しかし、みんな密かに麻也を気遣っている気配で…
(ああ、俺、もう心配かけるばかりじゃん…)
 麻也は自己嫌悪を覚えてついうつむいてしまった。
 いい言葉も思いつかない。