BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説21-7「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-07-07 21:24:44 | ★ディスティニー21章
 諒に肩を貸しながら須藤は尋ねる。
「どこで、でしょうか。」
「都内で見た、っていうヤツもいるし、地方で、っていうヤツもいるよ…って、諒くんも知らなかったの? っていうか、麻也くんとはホントにそういう関係なの? 俺、ああはいってもライブでチューするくらいだから、似た境遇の仲良し関係だと思ってた。」
 世間、ってそんなものか…
 諒はあらためて自分たちの見られ方を突き付けられた思いだった。
 諒の元気のない姿をこれ以上さらしては、と思ったらしい須藤は、
「宮城さん、では早速、帰って確認させていただきます…」
「ああ、忙しいのに悪いけど、頼みます。できたら、娘の名刺も返してほしい。名前は宮城冴香っていうんだ。」
 そこへやっと来た宮城のマネージャーと須藤が名刺を交換して四人は別れた。
「何かの間違いですよ、諒さん…」
「…そうかな? だってこんなにいろいろ言われることってある? 」
すると、ベテランらしく須藤はきっぱりと、
「足を引っ張られるのは、売れている証拠です。それに、宮城さんもあの様子じゃ確かな情報筋からじゃないでしょうし。ローベル企画は社長派と専務派でまだもめてるって聞きますし。」
 車の中では須藤はこんなことも教えてくれた。
 麻也は確かに前のバンドで、ラジオの番組も持っていた。しかし、2週でクビになったという。
「なぜ?」
諒が尋ねると、須藤は苦笑いしながら、
「本人によると、大人の事情ですよ。売れてきた後輩バンドに枠をとられたたらしいです」
「…」

★BLロック王子小説21-6「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-07-07 21:13:21 | ★ディスティニー21章
 諒も須藤も、さらに言われた思わぬことに固まってしまい、そして顔を見合わせた。
「麻也には娘なんていませんけど…」
 やっとのことで諒が言うと、宮城は須藤に向かって、
「ま、それはいいとして、マネージャーさん…」
「いえ、良くないです、宮城さん…」
諒は思わず宮城の両肩を掴んでいた。
「何だよ諒くん…」
「子持ちは俺だけで、それも、男の子なんです。それが間違って広まっただけかと…」
「いや、それはみんな知ってるよ。あんなに騒がれたじゃない? 性別までは知らなかったけど。それで、ディスグラはまだ若いのに、フロントの2人はもう子持ちなんだねえ、でも女の子のファンなくさなくてすごいねって言ってたの。」
 須藤も割って入って、
「いえ、宮城さん、そんなはずないんです。私にももっと詳しく聞かせてください。お願いします。」
 須藤も本当に知らないらしいのに諒は密かに安心したが、人のよさそうな宮城も複雑な表情だった。
 3人は座ることも考え付かず、茫然と立ち話になっていた。
 それで宮城が話してくれたのは、麻也が前のバンドで地方でラジオのレギュラーを持っていた時に、そこでとある女性と懇意になり、子供ができたということだった。
 その後は宮城の周りで言われているのは、諒も知っている噂で、麻也は自分の子供とは認めなかった。それならば、と女性は麻也の実家に泣きついた。麻也の両親は資産家なので、息子の将来のためにと、事務所には内緒にかなりの額を養育費と手切れ金として払ったということで…
 しかし…
「…でも、最近では麻也くんはその子供が気になったのか、たまに会ってるって話さ。」
「…諒さん!! 」
倒れそうになった諒の体を須藤はあわてて支え、宮城もそれを手伝ってくれた。