リベラルくずれの繰り言

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野党も必要性を認めている土地規制法案を「全権委任法」にするな

2021-05-29 | 政治
自衛隊基地周辺や国境離島などの土地の利用を規制する法案を自公政権は衆院内閣委員会で強行採決した(朝日新聞2021-5-28夕刊)。規制が必要なこと自体は多くの野党も認めているのだから、話し合って最善のものにする余地はあったはずだ。なのに話し合いに応じず強行採決にしたことは嘆かわしい。
きっかけは、外国資本が自衛隊基地周辺や国境離島の土地を購入していることへの不安の声だ。そこで、法案には自衛隊や米軍基地、原発などの重要インフラから1キロ以内で政府が「中止区域」に指定すると、土地の利用状況を調べ、施設の機能を阻害する行為に対して中止を勧告・命令できるようにし、従わなければ刑事罰もあるというものだ。特に重要な施設の周辺は「特別中止区域」として売買などの際に事前の届出が義務付けられる。こうした概要を聞けば、妥当なものと思われ、野党の多くも認めているという(朝日新聞2021-5-27)。私などは、買うのが特定国の人の場合は売買を許可制にしてもいいと思うくらいだ。
野党が懸念するのは、法案の内容が曖昧で、私権に対する規制が際限なく広がっていくおそれがあることだ。特に沖縄では市民運動に対する監視・妨害に悪用されるおそれがある。
まず、基地や重要インフラの周囲、国境離島とされている対象地域について、野党は検討対象のリストを示すよう求めたが、応じられていない。基地や原発の周辺、国境離島と聞くと規制が必要と思えても、鉄道や放送局についても「将来的に定めることはありうる」と言われると暴走の懸念がある。私権を制限するのだから「最大でもこのくらい」という歯止めをきちんと示すべきだ。
また、中止を勧告・命令できる「機能阻害行為」も曖昧だ。政府は「基本方針にわかりやすい形で例示する」として具体的内容を示さず、法案審議の段階で例示を求める野党の要求を拒んでいる。

自公政権には私権の制限には十分慎重になろうという発想がないのが嘆かわしい。野党も規制の必要性は認めているというのだから、ここは国会を延長してでも、暴走のおそれのないきちんとした法案をつくってほしい。(国会を延長すれば、安倍首相の疑惑を裏付ける内容が含まれているかもしれない「赤木ファイル」が会期中に公開されることになる(朝日新聞2021-5-12)。政府はそれを恐れて強行採決に及んだのだろう。)

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追記:国会会期切れ直前の午前2時半に参院本会議で可決という異常なやり方で押し通された土地規制法。政府の恣意的運用の道を残す曖昧な条文が問題なのだが、法制定後にきちんと対応するという小此木八郎・領土問題担当相(当時;内閣府では「小此木内閣府特命担当大臣(防災、海洋政策)、国家公安委員会委員長、国土強靱化担当、領土問題担当」とある)の発言は意図的な欺瞞だったのではないか。国会での審議中、対象となる土地や「機能を阻害する行為」の内容などを条文に書き込むことを小此木は断固として拒み、法成立後の基本方針や政令に委ねるとの答弁で押し通した。6月4日の参院本会議では「成立の暁には、私が先頭に立って確実に進める」と断言したのだが、氏は法成立9日後に担当相を辞任した(朝日新聞2021-7-5)。横浜市長選に立候補するためだ。衆院で審議中だった5月下旬には辞任を決めていたというから、本当にそうだとすれば、自分はさっさと辞めることを隠して「私が先頭に立って…」と答弁していたのだ。
そんな小此木氏が掲げる、横浜にカジノを誘致しないとの公約(朝日新聞2021-6-26)を信じられるだろうか?




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