中国は中東欧などの16か国と経済協力の枠組み「16+1」を作り、それにギリシャが加わり「17+1」となっている。そのギリシャでは2016年にピレウス港の経営権を中国企業が取得した。中国はそこからセルビアを経由してハンガリーのブダペストまでを高速鉄道で結ぶことをねらっている。単に巨大な経済圏を築くというだけではなく、そのための工事でも中国企業が潤うようになっており、クロアチアでも約380億円相当の架橋工事を受注したという。
モンテネグロも同様らしく、山中に空中回廊のような巨大な高速道路の建設が進んでいるというのだが、こちらは全長100キロで総工費は約2200億円。「世界で最も高額な道路の一つ」だそうだ。工事を請け負うのも、融資するのも中国側とのこと(朝日新聞2021-5-30)。ところがこれがとんだ「債務のわな」だった。
債務の最初の返済は今年7月に迫っているのだが、返済できない場合は中国側がモンテネグロの土地などを入手できる条項があるという。まさに「債務のわな」ではないか。モンテネグロは、コロナ禍でGDPの4分の1を占める観光が大打撃を受けており、EUに財政支援を要請したという。中国にモンテネグロの国土を明け渡すわけにはいかないだろうが、だからといって貧困国が勝手に中国と結んだ契約のしりぬぐいをさせられるのではEUはたまったものではない。契約時点でパンデミックまでは予見できなかったにしても、このようなあからさまな国土収奪条項がある契約をなぜ結んだのだろう。滞りなく返済できるとよほどの確信があったのだろうか。EUとしては、財政支援よりも、不当な契約として領土割譲を回避する法的助言や政治的交渉などで支援することはできないだろうか。
経済開発相が「EUや日本など信頼できる国々の投資が必要だった」と嘆くように、今回の一件は目先の開発に目がくらんだ小国がみすみす外国に食い物にされる契約を結んでしまった失敗例といえる。だが私にはこれが人ごとには思えない。日本でも横浜市などは、歳入減を打開するため、外国資本にカジノを開かせてそこからの収入をもくろんでいる。自治体によっては、安倍政権が成立させた改正水道法に基づき、水道運営権を外国資本に売却することを検討する動きが出てくるかもしれない(週刊SPA! 2018-12-11)。もちろん土地の割譲と同列には論じられないが、どちらもみすみす外国資本の食い物にされるだけではないだろうか。
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