リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

沖縄知事選での民意を受け止める2つの道

2018-10-03 | 政治
沖縄知事選では沖縄県民は勇気ある選択をした.「反対しても基地は作られる」,「反対派知事のもとでは政府から助成金などで干される」――そんな思いはあったはずなのに,自民党・公明党が総力を注ぎ込んだ候補を破って玉城デニー氏を当選させた.
県が何と言おうと,国が裁判に訴えれば辺野古埋め立ての工事は止められそうもない(朝日新聞2018-10-1).政府も「沖縄県民の気持ちに火を付けない」よう「静かに進め」るべくタイミングは慎重に選ぶにしても,「進める」方針は変えていない.
市民団体が請求した県民投票が12月に実施される見込みというが,「辺野古移設に賛成か反対か」の一点での投票となれば「反対」が上回るのは目に見えている.かつて「最低でも県外」と言って果たせなかった鳩山首相だって,私だって,「反対」ではあるのだが,対案を示さないことには普天間基地の返還は進まない.ではどうするか.2つの道を示したい.

(1)政府は,前の翁長知事のときは当選後何か月も無視してきたのに,さすがに玉城知事とは対話はする,と言っていたと思う.本当に「辺野古以外にない」のかどうか,さまざまな選択肢を真摯に模索するべきだ.
私も実は「軍事的な要件を考えると辺野古以外は無理なのではないか」という気がしていたのだが,今日の朝刊で米紙ニューヨークタイムズの論評(朝日新聞2018-10-3)を読んで目からうろこが落ちた.沖縄県外では東シナ海での有事に即応できないという米軍の主張について,同紙は「日本や周辺地域の安全が,人々の不公平感や危険といった重荷の上にあってはならない」という.たしかに軍事上の要件を満たす候補のうちから選ぶとなると「辺野古しかない」という結論になるのだろうが,沖縄県民のために防衛上の必要性をどこまで譲れるか,という観点でもう少し広く候補を検討するべきだろう.

(2)もう一つ.沖縄の負担を軽減することとして現実的なのは日米地位協定の改定だ.朝日社説も指摘するように(朝日新聞2018-10-1),政府が全面支援した対立候補の佐喜真氏も,辺野古移設への態度はぼかしながらも地位協定の改定を公約の柱に据えていた.同盟国を脅迫してそれを自慢するようなトランプ大統領(朝日新聞2018-10-2)が相手ではやりにくいだろうが,毅然とした態度で臨むべきだ.

関連記事:
「米軍の地位協定問題:ドイツは交渉で自主独立を獲得していた」
「米軍の地位協定:ドイツとイタリアの場合」

追記:上記で「軍事上の要件」について触れたが,朝日新聞2018-10-7に触発されて,当然ふまえておくべきことを3点述べておきたい.
(1)米軍再編で海兵隊はすでにグアムなどへ主力部隊を分散移転することを決めており,残るのは小ぶりな部隊だという.それでもなお基地の新設が必要なのかどうか.
(2)軍事ジャーナリストの田岡俊次氏は鳩山政権のときに普天間の舞台を長崎や佐世保の海上自衛隊や陸上自衛隊の基地に移すことを提案したという.そのときどういう議論があってこの案が採用されなかったのかは承知していないが,米軍再編で残る小ぶりな部隊ならそれも可能なのではないか.もう一度真剣に考えてほしい.
(3)田岡氏はまた,「日米防衛協力のための指針」によれば尖閣諸島防衛に海兵隊が参加することはなく,在日米軍は日本を守るためではなく,西太平洋,インド洋に出動するために待機しているのだという.「リベラルくずれ」の私は,米軍への協力もある程度はやむを得ないとは思っているのだが,米軍が主張する「必要性」の内実をきちんと理解した上で議論するべきだとは思う.

追記2:海兵隊のグアム移転について,玉木知事と菅義偉官房長官との会談では,辺野古移設が進まなければグアム移転も難航する旨の発言をしたという(朝日新聞2018-10-13;「リンク論」というそうだ).これについては,民主党政権だった2012年に,グアム移転は辺野古移設とは切り離して進めることで日米間で合意ができており,移設問題を担当する若屋防衛相も「12年の日米合意の考え方に変わりはない」と述べている.せっかくアメリカと合意できたグアム移転という沖縄の負担軽減策を,辺野古移転を強要するための人質にするかのような菅氏の発言は見過ごしにできない.



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