中国漁船体当たり事件をきっかけに中国が尖閣諸島に関する姿勢を先鋭化させて以来,尖閣諸島の実効支配がどうなっているのか気になっていた.久しぶりにその一端を読んだ(朝日新聞2018ー9ー25).
一時は台湾漁船が大挙して押し寄せて日本漁船が近づけないのが問題になっていたように思う.だが今回の記事では逆だ.海上保安庁の厳しい取り締まりもあってフカヒレ目当ての台湾漁船がいなくなった.その結果サメが増えてしまい,漁がしづらくなったという.1970年代には年間160隻あまりが尖閣周辺で操業していたというが,最近は定期的に出る船は10隻未満だという.
数年前,海上保安庁が尖閣諸島には近づくなと指導していたと読んだような気がするが,今ではそんなことはないのだろうか.
関連記事:
「日本のEEZで中国漁船が急増して、水産庁はなぜ日本漁船を締め出すのか!?」
「尖閣諸島:「実効支配も頭数次第」にならないように」
「東シナ海・南シナ海,「棚上げ」はやむをえないが……」
追記:
朝日新聞2018-12-27は警備を担う海上保安庁の状況を解説している。200~300隻の中国漁船が押し寄せた2016年8月の「悪夢」はなくなったが、来航する中国公船が3隻から4隻になるなど、問題は決してなくなったわけではない。船の数も2012年の時点では海保のほうが多かったが、今では中国のほうが倍の公船を有し、海保の20ミリ機関砲に対して中国船は76ミリ砲を備えるという。
安倍政権のもとで防衛予算が膨張する一方で海保の予算は少ない。「海保が弱ければ海自を出せばよい」という声もあるが、元海上保安部長の「前線でエスカレーションさせずに踏みとどまるのが海保の役割」との言葉が印象に残った。
追記2:尖閣諸島沖で3日連続で日本の漁船に中国公船が接近した(朝日新聞2020-5-11)。海上保安庁の巡視船が警告すると去ったというが、どういうことなのだろう。中国側では日本の漁船を追い払ったと報道している、などということはないといいのだが。※さらに追記:やはりそうだった。中国外務省は「日本の漁船が中国領海で違法に操業した。海警局公船は追跡・監視を行った。海上保安庁の干渉にも対応した。すでに外交ルートを通じ日本側に厳正に抗議している」と述べた(朝日新聞2020-5-12)。日本側と中国側が両方とも相手の船を追い払ったという認識の場合、実効支配しているのはどちらなのだろう。この記事を見ると、日本の漁船は尖閣諸島では操業できなくなっているのではないか。
追記3:中国公船が尖閣諸島の領海の外側の接続水域を航行するのが80日連続になったという(朝日新聞2020-7-3)。あまりに毎度のことでベタ記事扱いになって久しいが、今回の記事は「海上保安庁によると、2隻は領海内で漁をしていた日本漁船に接近したため、海保の巡視船が間に入り退去するよう警告している。」とある。中国側はおそらく「日本の漁船が近付いたため中国公船が警告して追い払った」というような報道をしているのではないか。日本側の発表だけ見ていると今でも日本の実効支配ができていると思ってしまいそうだが、実際のところ、どうなのだろう。
追記4:尖閣諸島周辺への侵入を続けることについて、中国側は最近、「真相がわかっていない一部の日本漁船が釣魚島周辺の敏感な水域に入る事態が発声している」と主張している(朝日新聞2020-12-2など)。漁業ではなく政治的な思惑で周辺海域に行く日本人がいるということらしい。もちろん日本の領海なので中国にとやかく言われるいわれはないのではあるが、みすみす徴発するようなことはやめて、漁業を行なうことで実効支配を固めるほうが国益にかなうのではないか。いずれにせよ、漁業以外の目的で尖閣海域に行く日本人がいるというのが事実なのか、だとしたらどういう人がどういう目的で行っているのか、まずはそこをはっきりさせたい。
追記5:中国が連日尖閣諸島の領海に侵入している状況での安倍政権の対中融和政策はあちこちで批判されていたとは思うが、他の不祥事や疑惑にまぎれて盛り上がらなかった。だがこれで中国が「尖閣諸島について譲歩する必要はない」と確信させてしまったおそれがあるようだ(朝日新聞2021-5-26)。ある政府関係者は言う。
「一帯一路への協力姿勢を示して中国を動かすのはよいが、同時に尖閣諸島周辺での挑発行動をやめさせるとか、日本が何を得たのかは見えない。尖閣で譲歩せずとも日本と関係改善できると中国に錯覚させてしまった」
たしかに、米中対立で中国が日本との和解を模索したときこそ、尖閣諸島での振舞いを改めさせる好機だった。それを逃して中国船による領海侵犯常態化を許した罪は大きい。
追記6:尖閣諸島で中国公船による領海侵入が連続64時間に及び、過去最長になったという(朝日新聞2022-6-25)。だがポイントはそこではない。公船は日本の漁船に近づこうとする動きを見せていたが、漁船が操業を終えて領海を出ると、去ったという。つまり、中国側に言わせれば日本の漁船が領海侵入したのに対して取り締まりを行い、漁船が去ることで用が済んだということなのだろう。中国公船の妨害を受けそうになりながらも、今の段階では日本漁船が尖閣付近の領海で数日にわたって操業することができている、と思っていいのだろうか。
追記7:尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域に中国の公船を航行したのが過去最長の158日連続になったという小さな記事があった(朝日新聞2024-5-28)。これは領海ではないが、領海侵入も大きな記事ならなくなって久しい。いずれにせよ、日本での報道は、海上保安庁が警告し、その後退去したという形だが、一方、中国側では日本船が侵入し、退去させたという報道がされているのではないかとかねてから思っていた。
今日のフィリピン関連の記事では、「尖閣諸島周辺の日本の領海内で、日本漁船が中国船に『退去』するよう警告される」とさらっと書いてあった(朝日新聞2024-5-29)。やはりそうなのだ。中国では日本船が領海を侵犯して中国公船が追い払ったという報道がされているのだろう。
不愉快な現状だが、このことは認識しておく必要がある。
一時は台湾漁船が大挙して押し寄せて日本漁船が近づけないのが問題になっていたように思う.だが今回の記事では逆だ.海上保安庁の厳しい取り締まりもあってフカヒレ目当ての台湾漁船がいなくなった.その結果サメが増えてしまい,漁がしづらくなったという.1970年代には年間160隻あまりが尖閣周辺で操業していたというが,最近は定期的に出る船は10隻未満だという.
数年前,海上保安庁が尖閣諸島には近づくなと指導していたと読んだような気がするが,今ではそんなことはないのだろうか.
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「日本のEEZで中国漁船が急増して、水産庁はなぜ日本漁船を締め出すのか!?」
「尖閣諸島:「実効支配も頭数次第」にならないように」
「東シナ海・南シナ海,「棚上げ」はやむをえないが……」
追記:
朝日新聞2018-12-27は警備を担う海上保安庁の状況を解説している。200~300隻の中国漁船が押し寄せた2016年8月の「悪夢」はなくなったが、来航する中国公船が3隻から4隻になるなど、問題は決してなくなったわけではない。船の数も2012年の時点では海保のほうが多かったが、今では中国のほうが倍の公船を有し、海保の20ミリ機関砲に対して中国船は76ミリ砲を備えるという。
安倍政権のもとで防衛予算が膨張する一方で海保の予算は少ない。「海保が弱ければ海自を出せばよい」という声もあるが、元海上保安部長の「前線でエスカレーションさせずに踏みとどまるのが海保の役割」との言葉が印象に残った。
追記2:尖閣諸島沖で3日連続で日本の漁船に中国公船が接近した(朝日新聞2020-5-11)。海上保安庁の巡視船が警告すると去ったというが、どういうことなのだろう。中国側では日本の漁船を追い払ったと報道している、などということはないといいのだが。※さらに追記:やはりそうだった。中国外務省は「日本の漁船が中国領海で違法に操業した。海警局公船は追跡・監視を行った。海上保安庁の干渉にも対応した。すでに外交ルートを通じ日本側に厳正に抗議している」と述べた(朝日新聞2020-5-12)。日本側と中国側が両方とも相手の船を追い払ったという認識の場合、実効支配しているのはどちらなのだろう。この記事を見ると、日本の漁船は尖閣諸島では操業できなくなっているのではないか。
追記3:中国公船が尖閣諸島の領海の外側の接続水域を航行するのが80日連続になったという(朝日新聞2020-7-3)。あまりに毎度のことでベタ記事扱いになって久しいが、今回の記事は「海上保安庁によると、2隻は領海内で漁をしていた日本漁船に接近したため、海保の巡視船が間に入り退去するよう警告している。」とある。中国側はおそらく「日本の漁船が近付いたため中国公船が警告して追い払った」というような報道をしているのではないか。日本側の発表だけ見ていると今でも日本の実効支配ができていると思ってしまいそうだが、実際のところ、どうなのだろう。
追記4:尖閣諸島周辺への侵入を続けることについて、中国側は最近、「真相がわかっていない一部の日本漁船が釣魚島周辺の敏感な水域に入る事態が発声している」と主張している(朝日新聞2020-12-2など)。漁業ではなく政治的な思惑で周辺海域に行く日本人がいるということらしい。もちろん日本の領海なので中国にとやかく言われるいわれはないのではあるが、みすみす徴発するようなことはやめて、漁業を行なうことで実効支配を固めるほうが国益にかなうのではないか。いずれにせよ、漁業以外の目的で尖閣海域に行く日本人がいるというのが事実なのか、だとしたらどういう人がどういう目的で行っているのか、まずはそこをはっきりさせたい。
追記5:中国が連日尖閣諸島の領海に侵入している状況での安倍政権の対中融和政策はあちこちで批判されていたとは思うが、他の不祥事や疑惑にまぎれて盛り上がらなかった。だがこれで中国が「尖閣諸島について譲歩する必要はない」と確信させてしまったおそれがあるようだ(朝日新聞2021-5-26)。ある政府関係者は言う。
「一帯一路への協力姿勢を示して中国を動かすのはよいが、同時に尖閣諸島周辺での挑発行動をやめさせるとか、日本が何を得たのかは見えない。尖閣で譲歩せずとも日本と関係改善できると中国に錯覚させてしまった」
たしかに、米中対立で中国が日本との和解を模索したときこそ、尖閣諸島での振舞いを改めさせる好機だった。それを逃して中国船による領海侵犯常態化を許した罪は大きい。
追記6:尖閣諸島で中国公船による領海侵入が連続64時間に及び、過去最長になったという(朝日新聞2022-6-25)。だがポイントはそこではない。公船は日本の漁船に近づこうとする動きを見せていたが、漁船が操業を終えて領海を出ると、去ったという。つまり、中国側に言わせれば日本の漁船が領海侵入したのに対して取り締まりを行い、漁船が去ることで用が済んだということなのだろう。中国公船の妨害を受けそうになりながらも、今の段階では日本漁船が尖閣付近の領海で数日にわたって操業することができている、と思っていいのだろうか。
追記7:尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域に中国の公船を航行したのが過去最長の158日連続になったという小さな記事があった(朝日新聞2024-5-28)。これは領海ではないが、領海侵入も大きな記事ならなくなって久しい。いずれにせよ、日本での報道は、海上保安庁が警告し、その後退去したという形だが、一方、中国側では日本船が侵入し、退去させたという報道がされているのではないかとかねてから思っていた。
今日のフィリピン関連の記事では、「尖閣諸島周辺の日本の領海内で、日本漁船が中国船に『退去』するよう警告される」とさらっと書いてあった(朝日新聞2024-5-29)。やはりそうなのだ。中国では日本船が領海を侵犯して中国公船が追い払ったという報道がされているのだろう。
不愉快な現状だが、このことは認識しておく必要がある。