リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

検定不合格教科書の訂正版のために採択をやり直すのはおかしくないか

2021-08-03 | 政治
横浜市教育委員会が明日4日、市立中学校の歴史教科書の採択をやり直す。採択はすでに2020年6月に行われており、今年度から4年間使う教科書が決まっているのだが、2019年度実施の検定で多数の欠陥が指摘されて不合格になった教科書が2020年度に再申請して合格したことを受けたものだ。文部科学省は「採択替えを行うことも可能」という通知を全国の都道府県教委に出したが、再採択をするかどうかは強制ではなく、任意となっている。だが市教委は「検定を通ったため公平性をもって手続きを踏むことが必要」という理由で採択をやり直すことを決定した。(朝日新聞2021-8-3横浜版)

どうだろうか。
多数の欠陥があって不合格になった教科書が翌年合格したからといって、すでに結論が出て、教育現場で使われている教科書の採択をやり直すというのは、教育委員会がよほどその、一度不合格になった教科書に執着があるとしか思えないのだが。ただでさえ忙しい先生たちにとっても負担増になるのではないか。

再申請で合格になった教科書が何かをここまで書かずにいたのは、党派的な理由ではなく、何が正義かを考えてほしかったからだ。
(横浜の教科書問題に関心のある人ならわかってしまっただろうが)問題の教科書は「つくる会」系のものだ。「公平」のために必要というが、それをいうなら他社の教科書にも改善の機会を与えるのが筋ではないか。もちろん採択が終わった後に他者の編集陣にそのような負担を強いるのは理不尽なので、やはり公平のためをいうなら、再採択はありえない。しかも、「つくる会」系の教科書は採択された教科書をねらい撃ちにしてセールスポイントを組み込む機会をもてたはずなので、「あと出しじゃんけん」という意味でも今回の教委の決定こそ不公平ではないか(実際、そのような編集がされたかどうかは検証する必要があるが)。他の教育委員会はどのように判断したのだろうか。
「横浜教科書採択連絡会」は「使い始めたばかりの教科書の再検討に不安を禁じ得ない」としているという。おそらく、日本の加害責任を認めるような教科書が不合格になって再検定で合格してもこのような配慮はされないだろう。教育委員会が「つくる会」系の教科書にこのようにチャンスを与えたことには、「結論ありき」の明白な意図を感じてしまう。
市民団体「横浜教科書問題市民・有識者会議」は「コロナ禍で疲弊している学校現場に新たな負担をかけることなく、帝国書院版の継続使用を」と求める声明を出した。同感だ。

関連記事:
「「つくる会」系の教科書採択は、教育委員会の人事だけでなく、「環境づくり」の成果だった!」

追記:検索してみたところ、「つくる会」系教科書は採択せず、帝国書院版を継続使用することになったという。京都市教委でも同様とのこと。

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