リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

対韓輸出規制:正当なものであればこそ近視眼的な報復に利用するな

2019-07-09 | 政治
安倍政権は韓国に対する半導体材料の輸出厳格化を決めた。韓国の輸出管理に不備があるということだが、WTO協定違反のおそれがあるという指摘が出ている。かつて中国漁船体当たり事件の際、中国は日本へのレアアースの輸出を制限したが、その後、WTO協定違反と判断された。中国と同じような無法を日本がするべきではない。
だが、政府は中国のレアアース輸出規制とは違い、協定違反ではないと説明している(朝日新聞2019-7-5)。政府の根拠は武器や軍用品に転用できる製品は安全を守るための輸出規制が認められていることだという。最近不適切な事案が続いたこともあって、審査の簡略化という優遇措置をやめただけで、適正に申請すれば輸出は許可されるので協定違反ではないという。
安倍政権のいつもの詭弁かとも思ったが、経済産業省で貿易管理の責任者として韓国に優遇措置が適用できるよう韓国の輸出管理を支援した経験のある細川昌彦氏のコメント(日経ビジネス2019-7-3)を読んで納得した。今回優遇措置をやめたことで韓国は2004年以前の「個別許可」が必要になったのだが、これはたとえばインドネシアも同じ待遇だ。また、EUも特別優遇しているのは日本を含めて8か国だといい、やはり韓国に対しては優遇措置はないという。だから、今回の措置がWTO協定違反ではない、という説明には理がありそうだ。

一方、今回の措置が韓国人徴用工への損害賠償問題で「信頼関係が著しく損なわれた」ことも背景として挙げられており、事実上の報復との見方がもっぱらだ。そういう側面はあるのだろうが、やはり相手国が輸出管理を厳格に管理できているかどうかを確認できるかどうかという、建前通りの「安全」をベースに考えるべきだ(上記朝日記事によれば、輸出管理の日韓当局者はここ3年間で1度しか会えていないという)。批判する側も賛同する側も、「報復だ」と大騒ぎするべきではない。

だが今回の輸出管理の厳格化が正当なものであったとしても、それが真に日本の国益にかなうものかどうかはまた別問題だ。韓国での日本製品に対する不買運動は識者は広がらないと見ており(朝日新聞2019-7-7)、一部報道に過剰に反応すべきではないが、韓国への輸出が減れば国内産業への影響も懸念される。今回の厳格化の対象には日本の世界シェアが9割に及ぶものもあるが、韓国はさっそく半導体の素材を含む部品の開発に注力することを決めた。日本でも、中国のレアアース輸出規制で苦しめられたときの開発努力により、すでに中国のレアアースへの依存度は下がっている(上記朝日新聞2019-7-5)。同じように韓国でも「脱日本」が進められれば、関連素材での日本の優位が損なわれるおそれもある。

もちろん、「自国の損になってでも筋は通す」という態度もわからないではない。だが支持者の歓心を買うためなら自国に有害な措置でもいとわないトランプ米大統領を見習った「トランプ化」だとの指摘がある(朝日新聞2019-7-4)。G20の日程さえ選挙の都合で変えさせた(過去ブログ)安倍政権が、党利党略で国益を無視することのないよう注視していく必要がある。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 選挙のために大阪都構想の態... | トップ | 対韓輸出規制:「不適切な事... »
最新の画像もっと見る

政治」カテゴリの最新記事