どんなに問題があっても選挙をすれば自民党が勝って政権は自民党中心．ここ半世紀，ほぼ常にそんな状態だった．なぜだろう．
少なくとも現状では自民党の代わりになりうる野党がないのが根本にあるのだが，小熊英二氏の評論（１０月２７日朝刊）をヒントにもう少し考えたい．
まず，農業団体などが自民党の固定票になっているという．だから都市部以外では自民の支持層の底堅さがある．私などは自民党は対米従属で輸入自由化など農家には不利益な政策を進めるという印象なのだが，農業団体が自民党を支持するというのはどういうわけなのだろう．TPPのような話が出てもそのあたりに変化はないのだろうか．人間関係が濃密な地方では政策ではなく近所づきあいで自民党に……という印象があるが，実態はどうなのだろう（追記：朝日新聞の声欄にそれを証言する投稿があった．１０月２８日だったと思うが確認できない．）．変えようがないからなのか，このあたりの議論をあまり見ない．小熊氏など識者の意見を知りたい．
今の自民党は公明党の組織票に支えられているという側面もある．創価学会は各小選挙区に２～３万票をもち，公明党の半分が離反するだけで自民議席が１００減るという試算もあるという．７月の都議選で自民党が大敗した背景としては，小池氏率いる都民ファーストへの「風」もさることながら，やはり公明党が自民党とたもとを分かち都民ファーストと組んだことが大きい．だが公明党はこれまで安倍政権がどんなに危険な政策を推し進めようと，形ばかりの弱者対策と引き換えに寄り添ってきた．今後安倍政権が憲法改正を進めようとしたときにも同じことを繰り返すように思えてならない．だがこれに関しては，創価学会員は必ずしも党幹部の言いなりにはならないかもしれないという希望がある．これまでもたまに，良心的な創価学会員から党の方針をいさめる投書などを見たことがあるように思う．公明党が安倍政権すり寄りを続けたときに，ある時点で目が覚めた創価学会員の離反が起こることを期待したい．
農業団体にしても創価学会員の良心にしても，はたらきかけて簡単にどうこうなるものでもないだろう．自民党に勝つすべはないのだろうか．
「日本人は右が３割，左が２割，中道５割」と言われていて，自民・公明・維新あたりを「右」と考えればだいたい実態に合うらしい．そして投票率が５０％台という現状では中道＝無党派層の多くが棄権して，結果，３：２で自民が勝つというわけだ．自民を負かすには投票率が上がり，かつ無党派層が「３割：２割」の固定支持層の差を覆すほどリベラルに向かわなければならない．２００９年に民主党が勝った時にはそれが実現した．そんなわけで，無党派層の取り込みという，わかりきった結論になってしまう．
だが先日紹介した世論調査でも，若者が自民党を支持している．無党派層を自民批判票として取り込むにはそのあたりもきちっと分析する必要がある．
またそもそも，「アベノミクス」のばらまき政策が国民の間で歓迎されていることも問題だ．これについては野党も，負担を先送りにするという点では同じで，将来世代に膨大な借金を残さないという視点での政策は全くない．そうなると，「将来世代に禍根を残さぬために歯を食いしばる」という有権者の覚悟が問われる．これはどの政党も言い出せないだろう．ポピュリズムの暗黒面だ．
小熊氏の評論の主眼は，自民党を負かすための戦略として，「自民党に代わる保守政党」を立ち上げようとした小池氏や前原氏の方向性が間違っていたという点にあるようだ．だから「リベラル」を柱としつつ中道の支持も取り付けるという氏の提言はまっとうだと思う．だが今の野党の現状ではまだ道は長い．
政権交代を起こせる野党がないという現状では，自民政権が続くのは仕方ないとして，ある程度自民党が負けて安倍首相が降板するなどして，自民党内での「疑似政権交代」を起こす，という道しかないのだろうか．
追記：「実は長期的に見て、今の自民党には、都市部で安定的に勝てるような支持基盤は失われています。都市部の伝統的な自民支持層といえば、各選挙区に長年住む商工業者、中小企業経営者らでした。しかし、高齢化など人口動態の変化で、そうした堅い支持基盤は崩れています。頼みは無党派層の一時的支持と公明党なのです。」（朝日新聞2021-7-27の待鳥聡史教授の談話）なお、その公明党も支持母体の創価学会員の高齢化で得票を減らしつつあるという（朝日新聞2021-7-28）。
関連記事：「農業団体はなぜ自民を支持するのか？」
少なくとも現状では自民党の代わりになりうる野党がないのが根本にあるのだが，小熊英二氏の評論（１０月２７日朝刊）をヒントにもう少し考えたい．
まず，農業団体などが自民党の固定票になっているという．だから都市部以外では自民の支持層の底堅さがある．私などは自民党は対米従属で輸入自由化など農家には不利益な政策を進めるという印象なのだが，農業団体が自民党を支持するというのはどういうわけなのだろう．TPPのような話が出てもそのあたりに変化はないのだろうか．人間関係が濃密な地方では政策ではなく近所づきあいで自民党に……という印象があるが，実態はどうなのだろう（追記：朝日新聞の声欄にそれを証言する投稿があった．１０月２８日だったと思うが確認できない．）．変えようがないからなのか，このあたりの議論をあまり見ない．小熊氏など識者の意見を知りたい．
今の自民党は公明党の組織票に支えられているという側面もある．創価学会は各小選挙区に２～３万票をもち，公明党の半分が離反するだけで自民議席が１００減るという試算もあるという．７月の都議選で自民党が大敗した背景としては，小池氏率いる都民ファーストへの「風」もさることながら，やはり公明党が自民党とたもとを分かち都民ファーストと組んだことが大きい．だが公明党はこれまで安倍政権がどんなに危険な政策を推し進めようと，形ばかりの弱者対策と引き換えに寄り添ってきた．今後安倍政権が憲法改正を進めようとしたときにも同じことを繰り返すように思えてならない．だがこれに関しては，創価学会員は必ずしも党幹部の言いなりにはならないかもしれないという希望がある．これまでもたまに，良心的な創価学会員から党の方針をいさめる投書などを見たことがあるように思う．公明党が安倍政権すり寄りを続けたときに，ある時点で目が覚めた創価学会員の離反が起こることを期待したい．
農業団体にしても創価学会員の良心にしても，はたらきかけて簡単にどうこうなるものでもないだろう．自民党に勝つすべはないのだろうか．
「日本人は右が３割，左が２割，中道５割」と言われていて，自民・公明・維新あたりを「右」と考えればだいたい実態に合うらしい．そして投票率が５０％台という現状では中道＝無党派層の多くが棄権して，結果，３：２で自民が勝つというわけだ．自民を負かすには投票率が上がり，かつ無党派層が「３割：２割」の固定支持層の差を覆すほどリベラルに向かわなければならない．２００９年に民主党が勝った時にはそれが実現した．そんなわけで，無党派層の取り込みという，わかりきった結論になってしまう．
だが先日紹介した世論調査でも，若者が自民党を支持している．無党派層を自民批判票として取り込むにはそのあたりもきちっと分析する必要がある．
またそもそも，「アベノミクス」のばらまき政策が国民の間で歓迎されていることも問題だ．これについては野党も，負担を先送りにするという点では同じで，将来世代に膨大な借金を残さないという視点での政策は全くない．そうなると，「将来世代に禍根を残さぬために歯を食いしばる」という有権者の覚悟が問われる．これはどの政党も言い出せないだろう．ポピュリズムの暗黒面だ．
小熊氏の評論の主眼は，自民党を負かすための戦略として，「自民党に代わる保守政党」を立ち上げようとした小池氏や前原氏の方向性が間違っていたという点にあるようだ．だから「リベラル」を柱としつつ中道の支持も取り付けるという氏の提言はまっとうだと思う．だが今の野党の現状ではまだ道は長い．
政権交代を起こせる野党がないという現状では，自民政権が続くのは仕方ないとして，ある程度自民党が負けて安倍首相が降板するなどして，自民党内での「疑似政権交代」を起こす，という道しかないのだろうか．
追記：「実は長期的に見て、今の自民党には、都市部で安定的に勝てるような支持基盤は失われています。都市部の伝統的な自民支持層といえば、各選挙区に長年住む商工業者、中小企業経営者らでした。しかし、高齢化など人口動態の変化で、そうした堅い支持基盤は崩れています。頼みは無党派層の一時的支持と公明党なのです。」（朝日新聞2021-7-27の待鳥聡史教授の談話）なお、その公明党も支持母体の創価学会員の高齢化で得票を減らしつつあるという（朝日新聞2021-7-28）。
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