ファッション誌「ViVi」(講談社)がウェブ版で自民党との広告企画記事を掲載した(ViVi 2019-6-10)件で、多くの批判の声が上がる一方、擁護する人もいる。すでにあちこちで論じられているようだが、何が問題なのだろうか。
まずその内容だが、「わたしたちの時代がやってくる!権利平等、動物保護、文化共生。みんなはどんな世の中にしたい?【PR】」としてタイトルで「PR」であることは明示している。そして若い女性たちの写真と一緒に「もっと自由に発言して、一般市民の意見も尊重される世の中にしたい」などのメッセージが並び、末尾に抽選でTシャツがもらえるとして「#2019自民党」など二つのハッシュタグをつけて投稿するよう促しているもの。自民党に言及されているのはこのハッシュタグと、自民党の問い合わせ先、URLのみだ。
まず、参院選が迫るなかでの「Tシャツプレゼント」が公職選挙法に違反するのでは、という疑問については、まだ選挙も始まっていないし、候補者を明示していないからシロ、ということらしい。
「PR」と明記されていることから、「ステマ」との批判も当たらない。
#自民党2019プロジェクト事務局は広告費用については「答えられない」としているが(AbemaTIMES)、政権与党の力で低価格で引き受けさせたりしていることさえなければ、自民党としては普通の広告活動をうまくやったというだけのことに思える。女性誌に広告を出すことは90年代からやっているというし、広告代理店の電通とのつきあいも長いというが、講談社が広告料はもちろん、どちらから企画を持ちかけたのかについても回答していないという点が気になる(HUFFPOST)。
ただ、資金力が圧倒的な自民党が断然有利なので(無党派層も含めた国民の税金が投入されている政党交付金の交付額は今年は自民党約179億円、立憲民主党約32億円(NHK))、選挙時の政見放送のような何らかの配慮は必要かもしれない(AbemaTIMESでも「キャンペーン競争が加熱すると最後は資本力の差になるので、必然的に自民党が強くなりそうなので、何か一定の規制をかける必要があるのかもしれない」とのコメントがある)。
問題は、若い女性たちの言葉が、必ずしも自民党のスタンスに合っていないということだ。
「他人の価値観を理解し、尊敬し合えることができたらどんなにいいだろう」など「自民党的でないこと」が述べられているのに、それについて自民党がどう考えているのかが明示されておらず、自民党の政策を正しく伝えずに投票行動を促しているので「正体が見えてこない不気味さがある」との指摘がある(朝日新聞2019-6-12))。上記HUFFPOSTでも同様に「気持ち悪さ」が言及されているし、AbemaTIMESでも「男女同権や多様性であったり、杉田議員などが反対するような意見を述べているにもかかわらず、自民党がなしているような形で宣伝しているように見えてしまう」と指摘されている。
結局、女性たちは自民党の主張とは全く関係のない、誰でも賛同できる聞こえのよいことを言っているにすぎないのだが、それを自民党と結び付けていることについて、自民党が責任をもつ形の記述になっていないことだ。これは有権者に誤った情報を届けることになるのではないか。
「明るい日本」のような漠然とした標語で支持を訴える事例はいくらでもあるのだが、今回の場合、自民党のやっていることに反すると思われる内容まで踏み込んでいるだけに罪が大きい。
追記:「政権与党とのタイアップに政治的背景も意図もないというなら、いったい何があったのか」という講談社への批判がある(朝日新聞2019-6-19)。「タイアップ」ならたしかに政治的背景はないという説明は通らない。だが世間相場並みの広告料を取ってのPRであれば批判しにくい(上記のように、資金力の少ない野党への配慮がほしい気はするが)。広告料を開示させることはできないだろうし、タイアップなのか広告なのかを調べる手立てはないのだろうか。
まずその内容だが、「わたしたちの時代がやってくる!権利平等、動物保護、文化共生。みんなはどんな世の中にしたい?【PR】」としてタイトルで「PR」であることは明示している。そして若い女性たちの写真と一緒に「もっと自由に発言して、一般市民の意見も尊重される世の中にしたい」などのメッセージが並び、末尾に抽選でTシャツがもらえるとして「#2019自民党」など二つのハッシュタグをつけて投稿するよう促しているもの。自民党に言及されているのはこのハッシュタグと、自民党の問い合わせ先、URLのみだ。
まず、参院選が迫るなかでの「Tシャツプレゼント」が公職選挙法に違反するのでは、という疑問については、まだ選挙も始まっていないし、候補者を明示していないからシロ、ということらしい。
「PR」と明記されていることから、「ステマ」との批判も当たらない。
#自民党2019プロジェクト事務局は広告費用については「答えられない」としているが(AbemaTIMES)、政権与党の力で低価格で引き受けさせたりしていることさえなければ、自民党としては普通の広告活動をうまくやったというだけのことに思える。女性誌に広告を出すことは90年代からやっているというし、広告代理店の電通とのつきあいも長いというが、講談社が広告料はもちろん、どちらから企画を持ちかけたのかについても回答していないという点が気になる(HUFFPOST)。
ただ、資金力が圧倒的な自民党が断然有利なので(無党派層も含めた国民の税金が投入されている政党交付金の交付額は今年は自民党約179億円、立憲民主党約32億円(NHK))、選挙時の政見放送のような何らかの配慮は必要かもしれない(AbemaTIMESでも「キャンペーン競争が加熱すると最後は資本力の差になるので、必然的に自民党が強くなりそうなので、何か一定の規制をかける必要があるのかもしれない」とのコメントがある)。
問題は、若い女性たちの言葉が、必ずしも自民党のスタンスに合っていないということだ。
「他人の価値観を理解し、尊敬し合えることができたらどんなにいいだろう」など「自民党的でないこと」が述べられているのに、それについて自民党がどう考えているのかが明示されておらず、自民党の政策を正しく伝えずに投票行動を促しているので「正体が見えてこない不気味さがある」との指摘がある(朝日新聞2019-6-12))。上記HUFFPOSTでも同様に「気持ち悪さ」が言及されているし、AbemaTIMESでも「男女同権や多様性であったり、杉田議員などが反対するような意見を述べているにもかかわらず、自民党がなしているような形で宣伝しているように見えてしまう」と指摘されている。
結局、女性たちは自民党の主張とは全く関係のない、誰でも賛同できる聞こえのよいことを言っているにすぎないのだが、それを自民党と結び付けていることについて、自民党が責任をもつ形の記述になっていないことだ。これは有権者に誤った情報を届けることになるのではないか。
「明るい日本」のような漠然とした標語で支持を訴える事例はいくらでもあるのだが、今回の場合、自民党のやっていることに反すると思われる内容まで踏み込んでいるだけに罪が大きい。
追記:「政権与党とのタイアップに政治的背景も意図もないというなら、いったい何があったのか」という講談社への批判がある(朝日新聞2019-6-19)。「タイアップ」ならたしかに政治的背景はないという説明は通らない。だが世間相場並みの広告料を取ってのPRであれば批判しにくい(上記のように、資金力の少ない野党への配慮がほしい気はするが)。広告料を開示させることはできないだろうし、タイアップなのか広告なのかを調べる手立てはないのだろうか。