リベラルくずれの繰り言

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日米地位協定:在日米軍への「治外法権」はアメリカの押しつけでなく国際法なのか?

2019-01-14 | 政治
在日米軍には日本の法律は原則適用されないことになっており、米軍機の飛行や米軍の事故に関して問題になる。これはアメリカに押しつけられたものだと思っていたのだが、日本政府はそれが国際法の原則、という立場なのだという(朝日新聞2018-1-13)。「一般国際法上、外国軍隊には特別の取り決めがない限り接受国の法令は適用されず、日本に駐留する米軍も同様」とのこと。外務省ホームページの「日米地位協定Q&A」では1月11日に「国際法」に触れない説明に修正したが、見解を変えたわけではないという。
ただ、日弁連の2014年の意見書はそのような国際法はないと指摘した。野党から「一般国際法」の根拠を問われても政府はきちんと答えていない。「一般国際法」というのは具体的な条約があるわけではなく、「主に二国間合意の積み重ねから生まれる慣習」だというから(同3面)、明文の条約・条項を挙げられないとしても、ただちに政府見解が誤りというわけではないのかもしれない。だが、それならそれで、駐留軍に国内法が適用されていない諸外国の事例を挙げてもらいたいものだ。「総合的な判断」という外務省の見解は正しいのかもしれないが、「詳細は明かせない」というのは自国に不利な運用の理由を説明しないという意味で、国益に反する怠慢だ。
米軍は世界各地に派遣されているが、そのアメリカでも2015年の政府諮問委員会の調査報告書では受け入れ国の法が適用されるのが国際法の原則としており、2017年の陸軍の「法運用ハンドブック」も同様に、日本政府の見解とは反対だという。
そもそも1960年、日米地位協定が新日米安保条約とセットで承認された際の国会審議では「米軍に治外法権を与えるのでは」という指摘に対し、「当然日本の法令が原則として適用になる」と答弁されていた。国会での承認手続きの前提がその後の政府によって覆されるのでは、立法府を欺いたも同然ではないか。
もちろん外務省ホームページの今の説明でも「個別の取り決めがない限り、軍隊の性質に鑑み、公務について、受け入れ国の法令の執行や裁判権とうから免除される」と述べており、「個別の取り決め」は否定していない。政府が毅然として国内法適用を主張すれば「個別の取り決め」をすることで日本の主権を取り戻すことは不可能ではないはずだ。(下記関連記事で紹介したように、現にドイツはそれを実現した。)
(なお、外務省ホームページの新しい説明では「公務について」との文言が加わっている。だとしたら、勤務時間外の米兵の犯罪には日本の国内法が適用されるはず。そこはきちんと運用されているのだろうか。)
中国の脅威が増して日本がアメリカの軍事力に依存する度合いが高まると、アメリカに対して物をいうのは難しくなる。だがそれを割り引いても今の安倍政権はアメリカの顔色をうかがいすぎるように思えてならない。

関連記事:
「米軍の地位協定問題:ドイツは交渉で自主独立を獲得していた」
「米軍の地位協定:ドイツとイタリアの場合」

追記2:日本は2009年に自衛隊が拠点を置くアフリカのジブチと地位協定を結んだが、自衛隊員の事件・事故に関し、公務中かどうかによらず、刑事裁判権は日本にあると定めているという(朝日新聞2019-1-30)。(いつのまにか自衛隊がアフリカにいるのが常態化しているのにも驚いたが、それはさておき)まさに我々が苦しんでいる不平等条約をアフリカに押し付けた形になっている。これではアメリカを批判できないのではないか。

関連リンク:
「(社説)日米地位協定 国内法の適用を原則に」朝日新聞2019-2-13

追記2:沖縄県が欧州4か国(イギリス、ベルギー、ドイツ、イタリア)とNATO(米軍含む)との地位協定を調査した(朝日新聞2019-4-13)。これら4か国の内容に比べ、日本では、日米で合意した飛行制限も守られないなどかなり不利な扱いを受けていることが改めて浮き彫りになった。これについて、河野太郎外相は「様々な国内法を含めた一つの体系なので、何かを取り出して比較することに全く意味はない」と切り捨てた。一理あるが、そうならそうで、違いの前提として日本と4か国の「体系」にどういう違いがあるのを指摘してさらに沖縄県の反応を待つのが議論の順序というものだ。切り捨てるだけなら大臣などいらない。
一方、衆院外務委員会では「米国で(訓練に派遣された)自衛隊員が事件、事故を公務中に起こした場合は米国の裁判権から免除されるようきっちりしておくべきだ」という意見が出て河野外相は前向きに答弁したという(朝日新聞2019-4-13)。上記のように、日本はアフリカのジブチとの地位協定では、自衛隊員の事件・事故に関し刑事裁判権は日本にあると定めている。日本政府は、外国に駐留する軍隊は現地の法に縛られないのが当然だと思っているようだ。イギリス、ベルギー、ドイツ、イタリアの場合とどこに違いがあるのだろう。






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