リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

ポスト安倍は、バラマキによる経済下支えを当然視するな

2020-09-01 | 政治
安倍首相が辞意を表明し、最長政権となった安倍政権の総括があちこちで行なわれているが、野村総研の木内登英氏、大和総研の熊谷亮丸氏の見解が私の実感に合う(朝日新聞2020-8-29)。
木内氏は、アベノミクスは「財政規律を緩めたり、市場機能を損ねたりと弊害の方が大きかった」という。金融「異次元緩和」については、金利低下による景気浮揚効果をもったのは2013年に始まって最初の半年程度であり、「その後は、(緩和を)やめたときの市場への影響が怖くてやめられない状態が続いている」とする。
熊谷氏も金融政策に頼り過ぎて成長戦略が失敗したことを指摘している(「道半ば」という婉曲表現だが)。そして好景気や安定した政権基盤がある間に抜本的な改革に取り組むべきだったが、「高い支持率を安全保障分野などに使った印象を受ける」という。キャッチフレーズばかりが先行し、アベノミクスは「企業収益や株価を改善させたが、国民が豊かさを実感するには至らなかった」とする。(追記:元日銀理事の早川英男氏も「安倍政権にとって、経済政策は支持率を維持して安全保障政策を進めるための踏み台だった」と断言している(朝日新聞2020-9-3))
私も過去ブログなどあちこちで書いてきたし、多くの人が指摘してきたことでもある。

もちろん、世の中こうした冷めた見方ばかりではない。企業人などからはアベノミクスを絶賛する声も聞こえてくる。アベノミクスの期間中に株価が上がったのは事実だが、木内氏は「円安や株高が進んだのは、海外経済の回復によるところが大きい」とする(同様の見方は過去ブログでも紹介した)。それに株高といっても、日銀が買い支えているのが実情ではないか。日銀による株価操作で実力以上に株価が高まっているというのは、企業人にとってはありがたいことだろう。アベノミクスを絶賛するのも無理はない。だがそれは事実上「企業や株主にお金を配ること」だ(過去ブログ)。大企業がもうかれば、めぐりめぐって庶民も豊かになるというトリクルダウン理論はとうに破綻している。元自民党政調会長の亀井静香氏ですら、「日本経済はひどい状態です。株価はよくても、地方や中小零細企業の現状は大変です」と述べ、「地域に根をはって額に汗する人にお金が回るようにする」ことが必要と説いている(朝日新聞2020-9-1)。
ポスト安倍が誰になろうと、安倍政権下でゆがめられた日本経済の現状を見直してほしい。

とはいえ、コロナ禍中とあっては、経済を回すために大規模介入が必要なことはやむをえない。誰がやっても当面の経済政策は大きな変わりはないだろうというのが大方の見方だ。だが安倍政権下では、コロナ対策の予算で国会の目が行き届かない予備費として膨大な額が計上されたり、経済対策の事業費が民間に丸投げされて公金が無駄遣いされるなど、おかしなことが続出した。次期政権では、国民に対する説明責任をきちんと自覚してほしい。

次の首相が決まれば、衆院が任期切れを前に、1年以内に政権選択選挙があると思われるが、野党のほうでも国民の人気取りのための消費減税などの声が挙がっていることがなさけない。共産党、国民民主党あたりが消費減税を主張しているため、野党連携のために立憲民主党の枝野氏も消費減税を検討すると言ったそうだ(朝日新聞2020-9-1)。コロナ対策のために大規模な支援が必要なのはたしかだが、急場しのぎのために恒久的な財源を放棄するのは無責任と言わざるをえない(過去ブログ)。野党の協力は必要だが、自民党だって党内にいろいろな意見を抱えている。相違点を抱えながらも党としてのまとまりは保つという意味では、自民党のやり方を勉強すべきではないか。

9月にも選出されると思われる次期首相、そして1年以内の選挙で決まるその次の首相には、安倍政権下で続いたバラマキを当然と思わないでもらいたい(庶民を助けるコロナ対策は必要だが)。そしてそのためには、国民もばらまきにつられて投票するのではなく、たとえ痛みを伴う政策を訴えていても、日本の将来を見据えたビジョンをもっている政治家を選ぶことが大切だ。


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